病気・老化・障害・児童虐待・DV・貧困など……さまざまな悩みごとの相談に乗り、解決のための支援を行う「社会福祉士」という仕事。
相談の対象範囲が広いことからわかる通り、就職先は多岐に渡り・雇用形態も非常にバラエティに富んでいるのが特徴です。
また、社会福祉士は“フリーランス”として働くことも可能です。
ただし、選択肢が多様な分だけ「どこに就職すればいいの?お給料や勤務日数などはどうなるの?」といった疑問も生まれてくるでしょう。
今回は、社会福祉士の働き方(雇用形態・給与・勤務日数など)について、詳しくご紹介をしていければと思います。
社会福祉士の「就職先」や「働き方」について
冒頭でもお伝えしたように、社会福祉士の働く先は複数の業界にまたがって多岐に渡ります。
そして働く先が様々ということから、雇用形態や働き方もそれぞれで変わってきます。
まずは、この点について詳しくご紹介していきたいと思います。
「就職先」は、どんなところがあるの?
特に就職先が多いのは、「介護業界」と「福祉業界」でしょうか。
介護業界であれば、“入所形式”(介護老人保健施設・特別養護老人ホーム・グループホーム)や、“通所形式”(デイサービスセンター)、“訪問形式”(訪問介護or訪問看護ステーション)などが挙げられます。
そして、福祉業界の場合は“対象となる人”によって、以下のように勤務する施設が変わることとなります。
◆障害者が対象:障害者福祉施設
◆児童が対象 :児童福祉施設 など
もちろん、他にもさまざまな勤務先があります。
医療施設・福祉事務所・学校・市役所・社会福祉協議会など……。
相談対象や勤務地域に特に強いこだわりがない人であれば、それこそ日本全国に社会福祉士を必要とする施設があることになります。
「雇用形態」も就職先によってさまざまである
就職先と同じく、雇用形態も非常にさまざまな種類が存在します。
「正規職員/常勤職員/正社員/非常勤職員/嘱託職員/派遣社員/アルバイト/パート」などなど……。
大まかに分けるのであれば、「正規雇用」と「非正規雇用」に分かれます。
ちなみに「正規職員」と「正社員」は、勤め先によって呼び方が変わるだけで、基本的な意味合いは同じです。
(正規職員→団体など、正社員→一般企業)
もちろん、どちらが言い・悪いということはなく、それぞれにメリット・デメリットが存在します。
以下で、それぞれの働き方(特徴)や、給与・待遇などについて、もう少し掘り下げていきたいと思います。
「正規雇用」の特徴
仕事としての”安定”を求めるのであれば、正規雇用がオススメです。
企業に直接雇用されることとなるので、自分から退職を申し出たり、問題を起こして解雇とならない限りは、基本的に同じ職場に勤め続けることが可能です。
また、給与や待遇も(非正規雇用に比べれば)整っているところが多いかと思います。
年収の相場は「380万円~550万円ほど」と言われており、昇給・賞与・社会保険・各種手当などの福利厚生もある程度は充実しているでしょう。
もちろん、キャリアを積んでいけば役職者に昇進できる可能性もあり、キャリアアップも目指せるかもしれません。
※勤務先によりけりではある※
勤務時間は、基本的には「1日8時間ほどのフルタイムで働く」ことが多いかと思います。
日中……例えば、“9時~18時”などが多く、土日休みの週休2日制としているところも少なくありません。
ただし、上記は「福祉業界」で働く場合のパターンです。
「介護業界」で働く人の場合は、業界自体が人手不足ということもあり、他の介護職員と同じようにシフト制となるパターンが非常に多いです。
早番・遅番……施設によっては、「夜勤」が発生するパターンも珍しくはありません。
正規雇用は“責任ある仕事”を求められるため、非正規雇用に比べ業務内容や働き方についてあまり自分の意見を発信しずらいのが難点です。
そのため、体力的・精神的な負担は、非正規雇用に比べて大きくなる可能性が高いと言えます。
「非正規雇用」の特徴
こちらは「自分のライフスタイルに合わせて仕事がしたい人にオススメの働き方」となります。
基本的にはシフト制で働くこととなりますが、勤務日数や勤務時間は、就職先によって大きく異なります。
また非正規雇用であるがゆえに、働く曜日や時間帯はある程度自分で調整することができます。
もちろん、全てが自分の求めている通りにはなりませんが、それでも正規雇用に比べれば融通は通りやすい方です。
そのため、「家の事情(家事・育児・介護など)もこなさなければならない」という人や「別の資格取得のために、仕事と勉強を両立できる環境を作りたい」と言った方には、なにかと都合が良い雇用形態かと思います。
ただし、“雇用形態としては不安定になりがち”というデメリットが存在します。
そもそも非正規雇用の社会福祉士は“任期”が決まっていることがほとんどです(“有期雇用”という)。
任期を過ぎれば契約は終了し、別の職場を探すこととなります。
(1年などの更新制もあるが、契約更新回数に上限があるケースが一般的である)
一定期間ごとに職場を転々とする必要があるため、この点には注意しておいた方がいいかもしれません。
ただ、「正社員登用あり」としている企業もあります。
勤務態度や成績次第で正規雇用に切り替わるチャンスが与えられることもあるので、「将来的には正規雇用で働きたい」と考えている方は、正社員登用制度ありの職場を探してみるのも一つの手段かと思われます。
最後に、非正規雇用の給与や待遇についてですが、これも勤務先によってさまざまです。
お給料も、時給制のところもあれば、日給・月給で支払われる場合もあります。
(費用相場としては、1,000円~1,700円ほどと言われている)
その他の福利厚生も同様で、勤務先によりけりです。
この点については、さまざまな求人情報を照らし合わせて、自分が納得できる職場を選択するのが吉と言えるでしょう。
社会福祉士は「公務員」としても働ける?
どうすれば「公務員」として仕事ができるのか?
さまざまな分野の就職先がある社会福祉士ですが、中には「公務員」として仕事をしている人もいます。
例えば、以下のような施設です。
◆国立・県立・市立などの「公立病院」
◆自治体直営の「地域包括支援センター」 など
社会福祉士が公務員として働くためには、社会福祉士の国家試験の他にもう一つ合格しなければいけない試験があります。
それが「福祉職の地方公務員試験」です。
この試験に合格することで、市役所の福祉課や生活保護課といった、福祉に関連する部署に配属されることとなります。
公務員として働くメリットとは?
今も昔も、公務員は非常に人気があります。
その最大の理由は“安定した身分が得られる”という点です。
自治体が財政破綻を起こしたり自分から退職を申し出ない限り、ずっと続けていくことができる仕事であり、勤続年数に応じて確実に昇給もしていきます(法律で定められた”俸給表”に従って、給料は増加していく)。
特に昨今は長引く景気低迷の影響もあり、より公務員としての“安定”を求める人が多くなっています。
また、「福利厚生など、待遇も充実している」という点や、「残業や休日出勤なども基本的にないなど、働きやすい環境である」というのもメリットの一つに挙げられるかと思います。
近年は「働き方改革」が政府主導で進められており、公務員はその働き方改革を先導する立場でもあります(公務員=国や地方自治体が管轄しているから)。
そのため、民間企業よりも働き方改革に対して積極的な取り組みが行われており、安定した収入を得ながら仕事とプライベートを両立できる環境が作られているのです。
ただし、確かなメリットがある公務員ですが、目指す際に注意しておくべき点もいくつかあります。
公務員を目指すうえで注意すべき点とは?
注意すべき点は、大きく以下の3つが挙げられます。
②募集期間が限られている
③年齢制限がある
上記で挙げたメリットがあるため、基本的に公務員が定年前に退職することはほとんどありません。
そのため、「採用自体、欠員が生じた時だけ行われる」もしくは「年度ごとに(=年に1回だけ)募集期間を設けている」公共施設が多いです。
また、前項で挙げた理由から、公務員を目指す人も非常に多くなっています。
このことから「公共施設からの募集自体が非常に少なく、公務員を目指す人の多さから採用場率が非常に高くなっている」のです。
また、公務員試験は誰でも受けられる訳ではなく、自治体ごとに“年齢制限”が設けられています。
福祉職の場合は、「35歳~40歳」くらいを上限としているケースが多いと言われています。
ただ、この点は自治体によって変わってきます。
そもそも、近年は公務員全体の年齢制限を引き上げる動きも見られているので、条件は年度ごとに変わる可能性も否定はできません。
募集期間・年齢は自治体によってさまざまなので、気になる方は各自治体のホームページなどを自身で確認してみることをオススメいたします。
社会福祉士は「フリーランス」としても働ける?
「フリーランス」とは?
最近耳にすることが何かと多い「フリーランス」という働き方。
これは、「個人事業主」という意味であり、“特定の企業や団体・組織に属さずに自らの技能を提供すること”を言います。
デザイナーやSE、ライターなどが名乗ることが多い職業かと思いますが、実は“社会福祉士もフリーランスとなることが可能な職業”なのです。
フリーランスとして仕事をする社会福祉士は、一般的に「独立型社会福祉士」と呼ばれることが多いです。
組織に所属しない“身軽さ”を生かして、「コミュニティソーシャルワーカー」として地域施設の連携を強化するという活躍が期待されています。
フリーランスとして働くメリットとは?
最大のメリットは、「仕事の自由度が格段に跳ね上がる」という点です。
何度もお伝えしてきた通り、社会福祉士の支援対象は幅広く、勤務する施設によって対象者は限定されてしまいます。
しかし、独立して自分の事務所を立ち上げれば、“経営者”として支援対象を自分ができる範囲まで拡大することができます。
もちろん“自身=経営者”なので、上司や責任者の意向に従う必要もありません。
誰に気兼ねすることもなく、自分のやりたい方法で支援をしていくことが可能となるのです。
また、働く時間も自分で決めることができますし、自分の努力次第で給与はどんどん増加していく可能性もあります。
自分が雇われる側でいると月々の給料は固定ですし、勤務する施設のルールに従って仕事をしていかなくてはいけません。
こういった点が“一切自由となる”ため、どんな働き方をするのも自分次第となるのです。
ただし、フリーランスとして仕事をしていくには、“相応の覚悟”も必要となります。
フリーランスとして働くデメリットとは?
デメリットは、大きく2つ存在します。
◆「実績」と「コネクション」が必要となる
仕事を取ってくるのも、いつ仕事をするのも、いつ休むのも、全て“自分次第”です。
自分が雇われる側であれば、企業や事業所側が仕事をくれます。
そして、それに見合った対価として給料を支払ってくれます。
しかし個人事業主は誰かが仕事を与えてくれる訳ではなく、“自分の力で仕事を取りに行く必要がある”のです。
「社会福祉士って世間に必要とされているんでしょう?じゃあ仕事もたくさんあるんじゃないの?」
確かに社会福祉士は今の世の中に必要とされる職業の一つで、仕事もたくさんあります。
しかし……。
「個人経営をしている社会福祉士に相談に乗ってほしい」と考える利用者は、果たしてどれくらいいるでしょうか?
だからこそ「実績」と「コネクション」が必要となるのです。
“実績=信用”に繋がるため、実績のある人のもとに利用者は訪れます。
そしてコネクションがあれば、「〇〇の相談なら、あの人に相談すると良いと思いますよ」と言った感じで、自分のもとにお客様を紹介してくれるキッカケが生まれます。
こういったものがないと、いざ独立したは良いものの「仕事が全然取れず、自分の生活すら危うくなってきた……」という状況に陥りかねません。
独立するのは、実績を積んでからがオススメ!
上記で挙げたデメリットの関係上、社会福祉士の資格を取得してすぐにフリーランスになることは、絶対にオススメしません。
資格取得後すぐに独立しても、仕事を見つけられず生活に困るのが目に見えています。
資格取得後は、まず社会福祉士としての実績を得るため、どこかの施設に勤務することをオススメします。
社会福祉士として仕事をしていれば、多くの“横の繋がり”ができてきます。
そこで、確かな実績とコネクションが生まれ「独立してもやっていける!」というある程度の確信ができた時に、フリーランスとして働くという選択肢を持っても良いと思います。
フリーランスに必要なのは、知識や経験はもちろんのこと「経営力」も必要となってきます。
これは、会社務めしている時からでも十分鍛えることが可能です。
もし「将来的に社会福祉士のフリーランスとして仕事をしていきたい!」と考える人は、会社務めしている時から経営についての知識も学んでみてください。
それは、独立した後に必ず役立つものとなります。
まとめ
社会福祉士の就職先、そして働き方は多種多様に存在します。
資格を取得できれば、まずは通っている(通っていた)学校やハローワーク、求人・転職サイトなどで社会福祉士の仕事を探してみましょう。
そして、実績を積み確かな技術や知識をしっかりと習得し+コネクションも築くことができれば、将来的にはフリーランスとして活躍するのも一つの手段かとも思います。
(いきなりフリーランスとして仕事をスタートするのはオススメしません)
◆正職員・正社員として企業に勤める
◆公務員として安定した公共施設で働く
◆フリーランスとして自分の求める社会福祉士を追求する
多様な働き方ができるのが、社会福祉士の魅力の一つです。
「将来的にどうしていきたいだろう?」と言った点も考えながら、社会福祉士を目指す・社会福祉士として実績を積むのも良いのではないかと考えます。
尚、今回は“社会福祉士の働き方”に焦点をあててご紹介してきましたが、別の記事にて“就職先を選ぶ際のポイント”についても詳しくご紹介していきたいと思います。