以前より、「看護業界の人材不足」は常に課題視されています。
それは2021年現在でも変わらず……というより、むしろ多くの病院で“転職・離職”などを検討されている看護師が増加しています。
その原因はいくつかあり後述で詳しくご紹介していこうと思いますが、2020年以降であれば、日本国内でも蔓延した新型コロナウイルスが、看護師の離職率を高くしている要因の一つになっているのは確かです。
ただ、どんな仕事でも同じですが……、問題は「仕事を辞めるとして、次をどうしようか……?」という“転職”についての悩みがつきまといます。
「看護師として、別の施設を探すか」それとも、「看護師とは全く違う他の職種に就く」か。
でも、「せっかく看護師免許を取得したのだから、看護師以外の道にいくのはなぁ……」と考える人も多いでしょう。
「看護師」と聞くと、勤務先は「病院」というイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、現代は看護師が働ける環境は、数多く存在します。
場合によっては、「公務員」として働くことだってできることもあります。
今回は、「看護師の離職率」や「病院以外の勤務先について」などに焦点を当てて、詳しくご紹介していけたらと思います。
今、なぜ「離職率」が増加しているのか?
まず、2021年3月26日付けの「公益社団法人 日本看護協会」が公開している、「病院看護職員の離職率の推移」の画像データをご覧ください。
画像の通り、「新卒」と「正規雇用」は2018年度に比べて離職率が増加しています。
ただし、既卒(※)のみ、2018年度よりも離職率は減少しています。
※既卒:新卒ではない看護職経験者のこと※
「なぜ、看護師の離職率は高いのか?」
この理由についてはいくつかありますが、最たる原因は“労働環境の厳しさ”が挙げられます。
特に、2020年からは新型コロナウイルスの影響があって、医療関係の仕事に従事している方々の精神的・肉体的負担は相当なものとなっているのです。
これは、コロナ対応に関連する病院・病棟以外でも同じあり、看護師の労働環境もより過酷なものになっています。
その理由は、「人手が足りない」ということだけでなく、「新型コロナに感染してしまう危険性がある」というのがあります。
それに加えて、「その危険と隣り合わせの環境に身を置く割に、十分な補償を受けられない」のも原因の一つとなっています。
これらのことから、「今のままで大丈夫だろうか……?」「転職(離職)を考えた方がいいのだろうか……?」と、転職・離職を検討する看護師がより増加傾向にあるのです。
看護師の働ける場所は「病院」だけではない
「看護師の勤務先=病院」とイメージされる方もいるかもしれませんが、看護師として働ける施設は他にも数多く存在します。
例えば、以下が挙げられます。
2.介護保険施設
3.知的・身体・精神障害者支援施設
4.保健所・保健センター
5.看護大学・看護専門学校の教員職
それぞれ、個別にもう少し掘り下げてみたいと思います。
1.訪問看護ステーション
「訪問看護」は、「訪問介護」と同じく、現在ニーズが高まっている仕事の一つです。
この仕事の基本は、利用者の自宅に訪問し、医療処置(注射・点滴・測定・記録など)を行うことです。
加えて、食事・排泄・機能回復訓練などの“介護”に近い業務を行うこともあります。
(これは、訪問介護士が行う場合もある)
病院などと違い、訪問看護ステーションは基本的に夜勤の仕事はありません。
ただし、施設によってはオンコール当番があるので、少々不規則な生活リズムになる可能性は否定できません。
2.介護保険施設
これは、例えば以下のような施設が該当します。
◆「介護老人保健施設」
◆「介護療養型医療施設」
ここでの仕事は、「要介護認定」を受けて利用される方々に対する、“生活支援”が中心となります。
健康管理であったり、投薬管理などです。
介護保険施設は、「通所タイプ」と「入所タイプ」に分かれますが、入所タイプの場合は、夜勤が発生する可能性が高くなります。
同じく夜勤のある病院と比べれば体力的には楽な方ではありますが、施設によって勤務時間に変動がある点は注意しておいた方がいいかと思います。
3.知的・身体・精神障害者支援施設
これら施設は、障害や難病を持った方に対して障害福祉サービスを提供する施設のことです。
- 入所タイプ
- 訪問タイプ
- ショートステイ
- グループホーム
など、施設の形態は様々です。
また、「放課後等デイサービス」などの「児童福祉施設」も対象となります。
これら施設で働く看護師は、どちらかというと“介護”の側面が強くなる傾向にあります(利用者の、介護度や重症度、身体・精神の障害によっても変わってくる)。
こちらも、施設の形態が様々に存在するため、勤務時間も様々です。
ただ、どちらかというと、残業や夜勤が無い(少ない)施設の方が多い傾向にはあると思います。
ワークライフバランスを取りやすくするには良いかもしれません。
4.保健所・保健センター
これまでに紹介してきたのは「病気の人に対する看護」がほとんどでしたが、これは「予防看護」が業務の中心となります。
保健所や保健センターなので、運営は地方自治体であり、勤務は「地方公務員」として行うこととなります。
業務内容は、地域住民の健康相談や健康診断・家庭訪問や予防接種の実施などが挙げられます。
「公務員」なので、収入も安定しており、残業は少なめ+夜勤もなしということから、病院勤務に比べると非常に働きやすい環境になるかと思います。
ただし、こういった施設には「保健師」が勤務していることが多いため、看護師の採用自体があまりされていない可能性も高いです。
5.看護大学・看護専門学校の教員職
最後は、“看護師を目指す学生を教育する、先生”という道です。
ただし、いきなり看護の教員を目指せる訳ではなく、看護師としての「経験」や「学位」を必要とするため、職に就くための難度が高い仕事でもあります。
人に教える仕事であるため、もちろん「教員免許」も必要とします。
「人に教えることが好き」という人であれば、向いている仕事と言えるかもしません。
ただ、講義や演習の準備、試験・成績に関する業務など、指導以外の業務も多くなるため、時間外労働が増える傾向にはあると言えます。
どの仕事を選ぶにしても「資格」が必要となる
2種類の「看護師資格」について
上記でご紹介した仕事……というよりも、「看護の仕事」に就く場合は、必ず「看護師資格」が必要となります。
そして、看護師資格は、以下の2種類が存在します。
◆「准看護師」:都道府県が発行する資格
当然、国家資格である「正看護師」の資格を所有している方が、転職の際には有利になります。
また、「准看護師」は、“医師や正看護師の指示に従って業務を行わなければいけない”というルールが存在するため、業務の範囲が限られてきます。
そのため、極力「正看護師」の資格を取得しておいた方が良いかとは思います。
ちなみに、正看護師の合格率は「90%前後」と、非常に高い数値を誇っています。
もちろん、看護に関する大学や専門学校などに通って勉強することが条件ではありますが、他の国家資格に比べると取得難度はかなり易しい方であると言えます。
転職の際に、「実務経験」は必須となる?
結論としては、「実務経験があるに越したことはないが、実務未経験でも応募可能としている施設もある」です。
前項でご紹介した通り、看護師の資格を役立てられる職種・施設は数多く存在します。
そのため、“全ての施設で看護の経験をしている人”は、ほぼ(全くと言っていいほど)いないはずです。
また、看護師不足が課題となっている現在であれば、「経験がなくても、資格を持っているだけで戦力になり得る可能性がある」として、重宝されるでしょう。
このことから、求人募集を見ていても「実務未経験者も大歓迎!(もしくは応募可能)」と記載している企業は多いです。
ただし、上記でもお伝えした通り、“看護師の資格は必須”です。
資格がないと応募資格すら満たすことができないので、この点だけは注意しておきましょう。
資格があれば、「未経験者可」などで絞り込み検索をかければ、結構な求人募集がかかっていることと思います(もちろん時期や地域にもよりますが)。
まとめ:看護師の働き方は多種多様に存在する
ここまでにご紹介した通り、看護師の勤務先は様々に存在します。
それに、雇用形態も「正社員/契約社員/アルバイト・パート」など様々ですし、上記でご紹介した通り「公務員」として働くことだって可能です。
「看護師の仕事は労働条件が厳しい」と言われており、それが問題で看護師不足になっているのも確かではあります。
ただ、労働条件というのは、“施設や人間関係に多大な影響を受ける部分”でもあります。
そして、国や自治体がこの問題点を把握し、環境の改善に動いていることも事実です。
それに、勤務先は様々+ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方も可能ですので、「自分はどんな働き方をしたいのか?」を自分自身で明確にして、その上で転職するか否か、そして「どんな施設に転職を希望するか?」を明確にしていくといいのではないかと思います。
次回は、「看護師が転職する際に注意すべきこと」や「オススメの求人サイトのご紹介」などに焦点を当てて、お話していきたいと思います。