みなさんは、生活指導員という仕事をご存じですか?
生活指導員とは、老人福祉施設に入所あるいは通所している利用者の方が快適に、できる範囲で自律的に日常生活を送ることができるよう、相談業務や連絡調整を行う仕事です。
2000年に介護保険制度が導入されてからは、「生活相談員」と呼ばれてきました。
施設を利用する方やそのご家族にとって、適切なサービスと繋いでくれる頼りになる存在です。
介護職からのキャリアアップとして目指されている仕事でもあります。
そんな生活相談員にどのようにしてなることができるか、解説していきます。
生活相談員の仕事内容・働く場所
生活相談員は、主に老人福祉施設で働きます。
老人福祉施設とは、老人デイサービスセンターや老人短期入所施設(ショートステイ)、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、経費老人ホーム、老人福祉センター、老人介護支援センターのことです。
主な仕事内容は次の通りです。
①施設利用に関する手続き
②相談援助業務
③連絡調整業務
④他職種との情報共有
⑤サービス提供内容の見直し
⑥地域住民への対応
⑦その他(実習やインターンシップの受け入れ、利用者の送迎管理、行事の企画運営等)
生活相談員の仕事のうちとても重要なのが、相談援助業務と連絡調整業務です。
利用者やその家族の相談にのりより良いサービスに繋げるため、施設内外の専門職の方や役所との連絡調整を行います。
そのためには、生活相談員も様々な知識を学び活用することが求められます。
そのため、生活相談員になるには資格を取得する必要があります。
生活相談員になるために必要な資格
生活相談員になるためには、社会福祉士、精神保健福祉士、社会福祉主事任用資格のうちどれか一つを取得することが必要です。
自治体によっては、介護福祉士や介護支援専門員の資格を有している者も対象となる場合があります。
ご自分の自治体はどうなのか確認してみてください。
①社会福祉士
社会福祉士は専門知識や技術を使い福祉に関する相談に応じ、助言や指導、福祉サービスや医療サービスを提供する者やその関係者との連絡調整を行うことが仕事です。
これを、相談援助といいます。
国家試験を受験し合格した者が資格を取得することができます。
社会福祉士の国家試験受験資格を得るには、いくつかのルートがあります。
(1)福祉系大学等4年 → 指定科目履修
(2)福祉系短大等3年 → 指定科目履修 → 相談援助実務1年
(3)福祉系短大等2年 → 指定科目履修 → 相談援助実務2年
(4)福祉系大学等4年 → 基礎科目履修 → 短期養成施設等(6か月以上)
(5)福祉系短大等3年 → 基礎科目履修 → 相談援助実務1年 → 短期養成施設等(6か月以上)
(6)福祉系短大等2年 → 基礎科目履修 → 相談援助実務2年 → 短期養成施設等(6か月以上)
(7)社会福祉主事養成機関 → 相談援助実務2年 → 短期養成施設等(6か月以上)
(8)児童福祉司・身体障害者福祉司・査察指導員・知的障害者福祉司・老人福祉指導主事・実務4年 → 短期養成施設等(6か月以上)
(9)一般大学等4年 → 一般養成施設等(1年以上)
(10)一般短期大学等3年 → 相談援助実務1年 → 一般養成施設等(1年以上)
(11)一般短期大学等2年 → 相談援助実務2年 → 一般養成施設等(1年以上)
(12)相談援助実務4年 → 一般養成施設等(1年以上)
社会福祉士は、大学等で勉強し受験資格を取得する他に、養成施設に通い資格を取得する方法があります。
社会人として働きながら受験資格を得るためには、一般養成施設等に通うことがおすすめです。
通信制のところもあるため、仕事と勉強を両立させることができます。
どちらの場合も、23日以上かつ180時間以上の実習を行うことが必須となっています。
実習場所は、実習指導者となれる社会福祉士が実際に活躍している場であればどこでも実習先になります。
福祉事務所などでは実際の相談援助業務を担当することが多く、高齢者施設や介護施設では介護業務の時間があることもあります。
②精神保健福祉士
精神保健福祉士は、精神障害者の保健および福祉に関する専門的知識と技術を使い精神障害者の相談に応じ、助言や指導、日常生活への適応のために必要な訓練やその他の業務を行うことが仕事です。
これを相談援助と言います。
国家試験を受験し合格した者が資格を取得することができます。
精神保健福祉士の国家試験受験資格を得るには、いくつかのルートがあります。
(1)福祉系大学等4年 → 指定科目履修
(2)福祉系短大等3年 → 指定科目履修 → 相談援助実務1年
(3)福祉系短大等2年 → 指定科目履修 → 相談援助実務2年
(4)福祉系大学等4年 → 基礎科目履修 → 短期養成施設等(6か月以上)
(5)福祉系短大等3年 → 基礎科目履修 → 相談援助実務1年 → 短期養成施設等(6か月以上)
(6)福祉系短大等2年 → 基礎科目履修 → 相談援助実務2年 → 短期養成施設等(6か月以上)
(7)社会福祉士登録者 → 短期養成施設等(6か月以上)
(8)一般大学等4年 → 一般養成施設等(1年以上)
(9)一般短期大学等3年 → 相談援助実務1年 → 一般養成施設等(1年以上)
(10)一般短期大学等2年 → 相談援助実務2年 → 一般養成施設等(1年以上)
(11)相談援助実務4年 → 一般養成施設等(1年以上)
精神保健福祉士は、大学等で勉強し受験資格を取得する他に、養成施設に通い資格を取得する方法があります。
社会福祉士と同様、働きながら受験資格を取得する場合は養成施設をおすすめします。
どちらの場合も、精神科病院や精神科診療所などで合計210時間の精神保健福祉援助実習を行うことが必須となっています。
実習時間の内訳は、医療分野の機関(90時間以上、12日間)、地域分野の施設(120時間以上、16日間)とされています。
なお、社会福祉士の相談援助実習の履修者は、地域分野での実習が60時間以上、8日間に短縮できます。
③社会福祉主事任用資格
社会福祉主事とは、福祉事務所現業員として任用される者に求められる資格です。
社会福祉施設職員などの資格に適用されています。
社会福祉各法に定められている援護または更生の処置に関する事務を行うため、福祉事務所には必ず配置しなければならい義務があります。
社会福祉主事任用資格を取得するには、いくつかのルートがあります。
(1)大学等において社会福祉に関する科目を3科目以上修めて卒業
(2)全社協中央福祉学院社会福祉主事資格認定通信課程、日本社会事業大学通信教育科(通信1年)
(3)指定養成機関を修了(22科目、1500時間)
(4)都道府県等講習会(19科目、279時間)
(5)社会福祉士、精神保健福祉士等
社会福祉主事任用資格は、厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する科目を修了することで資格を取得することができます。
指定科目は、時代の変遷とともに科目名が変更されるため、自分が大学等を卒業する年度において決められた指定科目名が該当するか確認する必要があります。
原則、指定科目名が一言一句同じでなければ履修したものと認められません。
学費はいくら?
生活相談員になりたいと思っていても、資格取得にはお金がかかります。
同じ資格を取得するにしても、ルートによってはかかる学費が大きく異なります。
記載してある学費はあくまでも目安ですので、参考にしてみてください。
①社会福祉士になるためにかかる学費
福祉系の大学や短大、専門学校にかかる初年度の学費は次の表の通りです。
初年度納入金 | |
福祉系大学(4年) | 100~150万円 |
福祉系短大 | 100~140万円 |
専門学校 | 100~120万円 |
一般養成施設と短期養成施設の学費は次の表の通りです。
費用総額 | |
昼間の一般養成施設 | 約100万円 |
夜間の一般養成施設 | 40~60万円 |
通信の一般養成施設 | 30~50万円 |
短期養成施設 | 20~40万円 |
②精神保健福祉士になるための学費
福祉系の大学や短大、専門学校にかかる初年度の学費は次の表の通りです。
初年度納入金 | |
福祉系大学(4年) | 100~150万円 |
福祉系短大 | 100~140万円 |
専門学校 | 100~140万円 |
一般養成施設と短期養成施設の学費は次の表の通りです。
費用総額 | |
昼間の一般養成施設 | 100~150万円 |
通信の一般養成施設 | 30~50万円 |
短期養成施設 | 20~40万円 |
学生のうちから、生活相談員として働きたい、社会福祉士の資格を取得したいと考える方には、福祉系4年生大学に進学することがおすすめです。
短大や専門学校では、相談援助業務の実務経験が必要となってくるからです。
資格がないうちは、就職先ですぐに生活相談員の業務につくことはできません。
福祉系4年生大学に進学し資格を取得することが、生活相談員の仕事に就くための一番の近道になります。
③社会福祉主事任用資格
社会福祉主事任用資格は、大学において社会福祉に関する科目を3科目以上履修することで取得できます。
その場合は上記の社会福祉士と精神保健福祉士の大学の学費を参考にしてください。
指定養成機関を修了するには約10万円程度かかります。
教育訓練給付金制度
これは、働く人のための給付金で、中長期的なキャリア形成の支援し、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的とされています。
この給付金の対象には、社会福祉士と精神保健福祉士の資格が該当しています。
申請できる資格は
①受講開始日に雇用保険の一般被保険者であり支給要件期間が3年以上ある
②受講開始日に一般被保険者資格を喪失した日以降受講開始日までが1年以内であり、支給要件期間が3年以上あるものです。
①か②のどちらかにあてはまっていれば申請ができます。養成施設等に入学前にハローワークに事前申請が必要です。
この給付金は、訓練費用の50%(年間40万円を上限)を支給されます。
さらに、資格を取得してから1年以内に就職につながった場合は追加で20%の給付を受けられます。
詳しくは厚生労働省のホームページをご確認ください。
まとめ
生活相談員になるためには、社会福祉士、精神保健福祉士、社会福祉主事任用資格のどれかを取得しなければなりません。
資格取得のためには様々なルートがありますが、自分の学歴や職務経験の有無によって決まります。
どの大学や養成校に通うかによっても学費が大きく異なります。
社会人の方は助成金を上手く活用することで金銭的な負担を軽減できます。
ご自分の学歴や職務経験、ライフワークにあった資格取得の方法を検討してみてください。