在宅で介護をしていると、時折介護者が体調を崩してしまったり・急な用事で家を空けることになったりして、一時的に介護をできなくなる場合があります。
そんなときに活用できるのが、「ショートステイ」です。
これは、“被介護者が一時的に施設に入所し、介護サービスを受けられる”というものですが、詳細を良く知らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
◆どんな利用条件を満たす必要があるのか
◆どのくらいの費用がかかるのか
◆「お泊まりデイサービス」との違いはなにか
今回は、こういった内容について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「ショートステイ」とはなにか?
概要
これは、「被介護者が一時的に施設に入所し、食事や入浴などの介護を受けることができるサービス」のことをいいます。
普段は在宅介護を中心としている方であっても、介護する側・される側それぞれの事情によって、一時的に在宅での介護が難しくなることもあります。
そんなときに、最短1泊から最大30日間連続で利用することが可能な施設が「ショートステイ」なのです。
3つの種類に大別ができる
ショートステイは、以下の3種類に大別することができます。
②「短期入所療養介護」
③「介護保険適用外のショートステイ」
①は“介護を中心としたサービスを希望される方”に向いており、介護スタッフが日常生活上の支援や機能訓練、レクリエーションなどを提供してくれます。
②は“医療的なケアを希望される方”に向いています。
介護スタッフ以外に医師や看護師も在中しており、リハビリや医療ケアなどの医療サービスも受けることができるのです。
そして③は“要介護認定を受けていないが、ショートステイを利用したい方”が利用できる施設となります。
サービス内容は「短期入所生活介護」と同様ですが、介護保険適用外となるため、利用料はすべて自己負担となってしまう点には注意が必要です。
ちなみに、「全額自己負担となってしまう介護保険適用外の方を選ぶメリットはあるの?」と感じる人もいるかもしれません。
最大のメリットは、“予約が取りやすく・気軽に利用できる”という点です。
介護保険が適用される①と②は、やはり自己負担が抑えられるという点で非常に人気が高いのですが、その分予約が埋まりやすく思う通りに利用できないという注意点もあるのです。
「単独型」と「併設型」がある
ショートステイには、「単独型」と「併設型」が存在します。
前者はショートステイを専門とする施設であり、後者は特別養護老人ホームなどに文字通り“併設”されています。
併設型は長期入院などによる空きベッドを利用することとなるため、数に限りがあり予約が取りにくいという注意点があります。
ただし、併設型で他のサービスを利用していた場合は、通い慣れた施設のために利用がしやすいといったメリットもあります。
受けられるサービス内容に大きな違いはありませんので、予約状況などを考慮して利用先を検討してみてください。
「利用場面」や「目的」について
人によって事情はさまざまですが、ショートステイを利用することは「介護をする側」と「介護をされる側」の双方に利点があります。
まず、介護をする側についてですが、主に“介護できない事情があるとき”に利用が検討されます。
例えば、以下のような場合です。
◆介護者が休息を取りたいと考えたとき
◆介護者が旅行などに出かけることになったとき
◆介護をしている家族が体調を崩したとき
介護は、肉体的にも精神的にも負担が大きく、介護者自身にも時には休息が必要となります。
短期間だけ施設に入所してもらって、その間は介護から一旦離れリフレッシュを行う……。
これも、負担を減らしつつ在宅介護をするためには必要不可欠なことなのです。
そして、介護をされる側にとっても、以下のような利点があります。
◆ヘルパーが来ない日が一定期間続くとき
◆被保険者の病状が悪くなったとき
◆施設に入居した際のイメージを掴んでおきたいとき
◆孤独を感じたとき
特に、「孤独を感じたとき」は利用を検討してみることをオススメします。
人は、年齢を重ねるごとに社会とのつながりが希薄になっていく可能性が高くなります。
“介護を受ける=体の自由が効かない”という人も多く、そうなると外出するのも億劫になって、会話をする機会がさらに激減してしまいます。
しかし、このサービスを利用することで、スタッフはもちろん似た境遇の人たちと接するキッカケができます。
レクリエーションなども行ってくれるので、他者とのつながりを作る場として活用することもできるのです。
このように、介護する側・される側の双方にとって利点があるといえるでしょう。
利用条件について
ショートステイは、「自宅で介護を受けている人に短期間だけ施設に入居してもらい、食事・入浴・排泄の介助や機能訓練・レクリエーションなどのサービスを提供する」施設です。
上述の通り3種類の施設形態がありますが、その中で「短期入所生活介護」と「短期入所療養介護」の2つは、介護保険サービスであるため介護保険が適用されます。
ただし、介護保険を活用する場合は、注意点があります。
それは、「要介護認定を受ける必要がある」という点です。
具体的にいうと、以下のいずれかに該当している必要があります。
●40歳以上65歳未満で特定疾病で要介護認定を受けた人
また、ショートステイは最大で30日連続で利用できますが、“要介護度別に定められている介護保険適用となる日数を超えた場合”は、全額自己負担となってしまうため注意が必要です。
要介護度別に設定されている利用可能日数は、以下の通りです。
要支援2:11日
要介護1:17日
要介護2:20日
要介護3:28日
要介護4:30日
要介護5:30日
ちなみに、介護保険適用外であれば、要介護認定を受けていなくても利用することができる場合があります。
ただし、利用の際の費用は、全額自己負担となります。
要介護状態でなくても利用できるかは施設によって異なるため、必ず事前に確認しておいてください。
そしてもう一つ。
介護保険が適用されるショートステイを利用する場合は、「ケアマネージャーにケアプランを作成してもらう」必要があります。
(介護保険適用外の場合は、ケアプランは不要)
ただ、1~3日程度のごく短期間であれば、ケアプランがなくても利用できる場合もありますので、こちらも施設に確認しておくことをオススメいたします。
どのくらいの費用が発生するの?
ショートステイの費用は、以下の状況で変わります。
◆居室の種類
◆介護度
◆地域
そのため、費用の詳細は利用を検討している施設などに確認をとってみてください。
介護保険が適用される場合は、自己負担額が1~3割に抑えることができ、非常にリーズナブルに施設を利用できるようになります。
ただし、いくら1回あたりの利用料金が少額であったとしても、長期に渡って利用するとなれば当然費用は高額になってしまいます。
「少しでも費用を抑えたい」と考える人は、以下の2点に注意しておくといいでしょう。
●「介護保険適用外費用」
施設によって特徴は異なりますし、利用したサービスに対して料金を支払う必要もあります。
利用料にプラスして「サービス加算」がかかることがあるのです。
例えば、「口腔機能向上加算」「栄養スクリーニング加算」「栄養改善加算」「認知症加算」「入浴介助加算」などです。
また、食費や滞在費(居住費)は施設によって差が出る要因となります。
より良い食事を求めると食費が高くなりますし、より良い場所や部屋を求めてしまうと滞在費が高くなってしまうのです。
施設によって特徴は異なりますので、「なにを重視するか?」をしっかりと考えたうえで、いろいろな施設を比較してみるのが良いかと思います。
「お泊まりデイサービス」との違いはなに?
まず、「デイサービス」というのは、「利用者自らが施設に通い、食事・入浴介助や機能訓練・レクリエーションなどを行う介護サービスの一種」のことです。
デイサービスについては、別の記事にて詳細をご紹介しておりますので、以下を参照ください。
このデイサービスの中には、日中に介護サービスを受けたあと、そのまま施設に宿泊できる「お泊まりデイサービス」というものがあります。
ショートステイと似た機能を有していますが、両者にはどういった違いがあるのでしょうか。
最大の違いは、“介護保険が適用されるかどうか”にあります。
上述でご紹介した通り、ショートステイの「短期入所生活介護」と「短期入所療養介護」は、介護保険が適用されます。
しかし、デイサービスにて宿泊を行う場合は介護保険が適用されず、すべての費用が自己負担となります。
また、“宿泊する部屋”にも違いがあります。
ショートステイで使用されるのは専門の施設であり、プライバシーの確保できる個室が多く用意されています。
しかし、お泊まりデイサービスの場合は、日中利用している施設にそのまま宿泊します。
そのため、個室が用意されていないなど、宿泊施設としての機能が充実していない場合があるのです。
デイサービスは、あくまでも“日中の通所介護”がメインであるため、宿泊や長期間の利用を前提としたサービスではないという点には注意しておいた方が良いかと思います。
ただ、こう見ると「ショートステイを利用する方が良いのではないか?」と感じる人もいるかもしれませんが、実はお泊まりデイサービスにもメリットはあります。
最たるメリットは、「予約が取りやすい」ことと「通い慣れた場所での宿泊なので安心できる」という点です。
介護保険を利用できるタイプは非常に人気が高く、なかなか予約が取れない・希望通りに利用できないということが多々あります。
また、基本的にケアプランに沿った定期利用が主体となっており、早め早めに依頼(準備)をしておく必要があるのです。
対してお泊まりデイサービスの場合は、通所介護の施設にそのまま宿泊することができるため、ショートステイよりも予約が取りやすく、急に介護ができなくなったなどのニーズに応えやすくなっています。
日頃から利用している場所・顔見知りのスタッフばかりでもあるため、気軽に安心して夜を過ごすことができるのも利点の一つとなります。
利用の際の「メリット」「デメリット」について
ショートステイの利用には、メリットがあればデメリットも存在します。
事前に特徴をしっかりと把握したうえで、利用を検討してみてください。
「メリット」について
まず、メリットとして挙げられるのは、以下の3つです。
②「施設の方々との交流を楽しめる」
③「将来の施設入居を考えて利用することができる」
まず①ですが、介護する側にも休息は必要です。
ショートステイは1日単位で利用できるため、これを活用して介護する側の負担を軽減することができるのです。
もちろん、休息目的以外でも「なんらかの事情があって介護ができない」というときにも利用できます。
そして②ですが、ショートステイを利用することで、被介護者側のリフレッシュにもなります。
機能訓練やレクリエーションをしたり、施設のスタッフや他の利用者の方とコミュニケーションを取ることで、社会とのつながりができ・認知症の予防にも役立てることができます。
最後に③ですが、将来的に施設入居を検討している方は事前に施設を見学をすると思いますが、簡易的に施設入居の体験をすることができるのです。
いきなり自宅以外の施設を利用することに抵抗を示す方もいますが、事前に体験しておくことで心理的なハードルを下げる効果が期待できるのです。
資料や見学だけでは、なかなか細かい部分までを把握することは難しいです。
ショートステイを利用することで、不安を解消したり将来の安心に繋げることができるといえます。
「デメリット」について
次にデメリットですが、挙げられる内容としては主に以下の3つがあります。
②「利用可能日数に制限がある」
③「短期的な利用であるため、馴染みにくい」
まず①ですが、特に介護保険が適用可能なショートステイは人気が高く、1~2ヶ月先まで予約がいっぱいということもザラにあります。
連休が続くタイミングなどはさらに予約が取りづらくなってしまうため、あらかじめ利用したい日が決まっている場合は、早めにケアマネージャーに相談することをオススメいたします。
尚、介護保険適用外であれば、(費用こそ高くなりますが)柔軟に対応してもらえる施設もありますので、急な利用が必要となった場合は利用を検討してみるのもいいかもしれません。
そして②ですが、上述でもお伝えした通り、要介護度別に利用日数制限が設定されています。
利用可能日数を過ぎると費用が全額自己負担となってしまうため、利用日数制限はしっかりと把握しておく必要があるといえます。
最後に③ですが、「短期的な利用だからこそ、環境に馴染みにくくストレスになってしまう」可能性があります。
上記2つの問題もあって、同じ施設を何度も利用することもなかなかに難しいのが現状です。
この場合、お泊まりデイサービスを検討したり、なるべく早くに予約を取るなど、環境に馴染みやすくなるような工夫ができないかを検討する必要があるかと思います。
まとめ
短期間での利用ができるからこそ、介護する側・される側それぞれの目的に沿った利用が可能となります。
また、将来の施設入居のためにショートステイで感覚を掴んでおけば、将来の不安を多少緩和することもできるかもしれません。
ただし、「人気が高く予約が取りづらい」という注意点もありますので、前もって予定が分かっている場合は、早め早めに予約を取っていくことを意識してみてください。
また、急な利用を検討する場合は、介護保険適用外のショートステイを考慮に入れてみるのも良いかもしれません。
在宅介護を中心に行う場合、長く介護を続けていくためには(介護する側・される側ともに)時にはリフレッシュすることも必要なことです。
そういった際にも、ショートステイを利用をぜひ検討してみてください。