臨床心理士の年収は高いのか、それとも低いのか気になっている方もいるかと思います。
臨床心理士の平均年収は、実は思っているよりも低いと言われることが多いのをご存知でしょうか。
こちらでは臨床心理士の平均年収をはじめ、仕事内容や、給料をアップさせるためのポイントなどを細かく解説します。
臨床心理士とはどんな仕事?
まずは、臨床心理士がどのような仕事なのかを解説します。
臨床心理士は別名、心理カウンセラーや心理相談員、サイコセラピストなどとも呼ばれる専門職で、臨床心理学という理論に基づき、その知識や技術を使って人々をサポートする職業です。
臨床心理士は民間資格の一種で、心の問題を解決するエキスパートとして知られています。
2018年には国家資格である公認心理士の制度が開始しましたが、民間資格の臨床心理士とはあくまで別の資格として定められており、臨床心理士と公認心理士資格はそれぞれ独立した資格です。
それぞれの資格の内容自体に大きな特徴はなく、民間資格か国家資格かという違いだけと言っても過言ではありません。
臨床心理士の資格の取り方
臨床心理士の資格は民間資格とは言えども、合格率は非常に低く、受験資格も一部の方に限られます。受験資格は大きく分けて4つあり、いずれかを満たすことが条件です。
・指定されている大学院を修了している
・臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了している
・諸外国で指定大学院と同等以上の教育歴があると認められ、終了後、国内で心理臨床経験が2年以上ある
・医師免許を取得しており心理臨床経験が2年以上ある
これら4つのうちいずれかに該当している方のみが受験資格対象となりますが、現在全く何の経験もしていないという方であれば、1つめか2つめの方法で受験資格を得るのが現実的です。
臨床心理士として働く場合、病院や公的施設などで働くのがメジャーですが、ある程度実績経験を積んでいる方であれば、独立開業をするケースもあるでしょう。
臨床心理士の平均年収
ここからは、臨床心理士の平均年収について触れていきます。臨床心理士の平均年収は、フルタイムで働く常勤か、パートなどの形式で働く非常勤かによっても大きく異なるのが特徴です。
また勤め先によっても平均年収は大きく変わってくるでしょう。
- 常勤の場合
まず常勤の場合ですが、こちらの平均年収は300~500万円前後が相場です。初任給は20万円、一般的な臨床心理士の場合は360万円前後が平均値となります。
常勤の勤務先は病院や福祉施設、企業など多岐に渡しますが、公共施設で公務員として働く臨床心理士の場合は、公務員の俸給表に準じて価格が決められるのが特徴です。
- 非常勤の場合
非常勤の場合は常勤とは違い、月収制ではなく時給制で考えている場所が少なくありません。時給換算で平均千円~1万円前後が相場とされており、実績経験が多ければ多いほど高い時給になります。
また非常勤の中でもとくに安定して時給が高いのがスクールカウンセラーです。
こちらは学校に通う子供たちや教師を対象にして行われるカウンセラーで、平均時給は5千円に設定しているところが多いでしょう。
非常勤の場合も常勤と同様、勤め先によって平均値は大幅に変動があります。
- 独立開業の場合
常勤でも非常勤でもない、自分で独立開業している臨床心理士の場合。
こちらも平均年収は非常に幅広く、年収は高ければ1千万円を超えています。ですが独立開業の場合は完全歩合制、クライアントを探すにも自分自身で頑張らなければいけませんので、上手く仕事が取れない場合は年収百万円にも満たないような方もいます。
独立開業の場合、年収は自分次第で上がりも下がりもしますので、ある程度クライアントの伝手が出来てから独立開業した方が安心です。
- 高収入のケース
臨床心理士の中でも高収入を得ている方の平均年収は、ゆうに1千万円を超えていると言われています。
その理由として最もあげられるのが、メディアへの露出や講演会、書籍の執筆による収入です。臨床心理士の仕事単体の給料というよりも、臨床心理士として呼ばれる機会が多い方が、収入が高い傾向にあるでしょう。
また元々大学教授や医師をしながら臨床心理士の資格を取得している方もいます。
そちらの場合臨床心理士の資格はあくまで付属としてとらえている場合が多いですが、持っていて損はない資格として取得する医師が多いのです。
上記ほどではないですが、安定して稼げる臨床心理士の中でも有名なのはやはり小学校や企業のスクールカウンセラーでしょう。
こちらはフリーランスとして勤めている方が多いですが、日給4万円を稼いでいる方も珍しくありません。どこかに勤めるだけではなく、フリーランスとして稼ぎやすいのも臨床心理士の特徴といえるでしょう。
臨床心理士の年齢別平均年収
ここからは、年齢別で臨床心理士の平均年収をご紹介していきます。
まずは最も若い臨床心理士の年代である20~24歳ですが、こちらの平均年収は190万円です。ここから年齢を重ねるごとに少しずつ平均年収はアップしていきます。
25~29歳で240万円、30~34歳で260万円、35~39歳で300万円、40~44歳で340万円、45~49歳で380万円と、徐々に平均年収はアップしていく傾向にあります。
ですが、55~59歳になると400万円、60~65歳で270万円と、マックスで上がったとしても400万円が打ち止めになっており、一般的な定年後の年収はより減少する傾向にあるのが特徴です。
臨床心理士は意外と給料が低い理由
ここまで読んだ方で「臨床心理士の給料は意外と低い」と思われた方もいるかもしれません。
一般的な医師資格を持つ方と比べると、確かにそこまで高い年収とは言えないでしょう。
人々の心の健康を支えるはずの臨床心理士は、どうしてそこまで給料が高くないのか、その理由はこれらがあげられます。
資格保有者肩による募集の減少
まず臨床心理士は、正規雇用の求人がほとんどないのが年収が下がる理由といえるでしょう。
臨床心理士を正社員として募集している病院や機関は現状ほとんどあらず、いわゆる非正規雇用(時給制)で募集をかけている場所が少なくありません。
その理由は、資格を持っている人が増えたことが理由としてあげられます。
臨床心理士の資格は一時非常に人気を集め、多くの医療従事者が取得したからこそ、臨床心理士の資格を持っている医師が多数いる状況となりました。
医師資格に加えて臨床心理士の資格を持つ方と、臨床心理士の資格のみを集める方が面接に現れた場合、大抵前者の方が採用されるでしょう。
このように、医師が臨床心理士の資格を持っているから、臨床心理士に頼まずとも物事は解決すると考える方が増え、臨床心理士単体で募集する際には、正規雇用ではなく非正規雇用の形態で採用する企業が増加しました。
そのため臨床心理士は給与が上がりにくいのが特徴といえるでしょう。
臨床心理士になって収入をアップさせる方法
そんな臨床心理ですが、上記の通り年収1千万円を超える高収入な方もいますので、絶対に稼げないというわけでは断じてありません。
これはどの職業においても言えることですが、臨床心理士の場合は違いが特に顕著に表れるため、収入をアップさせたい方はこのような方法を検討してみましょう。
病院で医師として勤務しながら臨床心理士になる
臨床心理士として高い収入を得るのは難しいですが、医師として働きながら臨床心理士の資格を生かす場面は多数あります。
東京都内の精神神経科や心療内科の求人の場合、初任給でも月給22万円以上、パートなどの非常勤従業員でも時給1500円プラス患者さん1人につきいくらというような歩合制を設けているところが多いため、安定した年収を狙えるのが特徴です。
当然病院ですので各種社会保険完備、退職金ももらえます。
長年勤めることで役職手当をもらえることもあるため、将来的な収入アップも見込めるでしょう。
公務員になり臨床心理士として働く
次に、公務員になって臨床心理士の資格を取る方法です。
こちらの場合、学校の教育相談室相談員など公的機関で働く方法がメジャーで、表向きは公務員ではありますが、仕事内容は臨床心理士の仕事を行うことになります。
求人倍率は非常に高いですが、採用されれば臨床心理士の中でもかなり安定した給与を手に入れられるでしょう。
非常勤講師でも時給2千円~5千円ですので、フリーランスとして働く上でも恵まれた給料で働けます。
フリーランスとして独立開業する
臨床心理士として自分で独立開業をするのも、年収をアップする方法です。
ですが、こちらの場合自分の手腕次第となりますので、ビジネススキルがないと当然ですが無収入ということもあり得ます。
独立開業をして収入を得たい場合、必ずクライアントが既に固定でいることからスタートしないといけません。
まずは病院でも企業などで自身のコネクションを作り、安定した仕事を得られるように努力をするべきでしょう。
フリーランスとして成功することができれば、自分が頑張れば頑張るほど収入はアップします。休みの日なども自分で設定ができますので、色々と検討してみるといいでしょう。
臨床心理士になる上で気を付けたいこと
ここまで、臨床心理士とは何か、臨床心理士の平均年収について解説してきましたが、臨床心理士になる上でいくつか気を付けておきたいことがあります。
独立開業するなら横のつながりも大事にする
臨床心理士として収入をアップさせるため、独立開業の道を選ぶ方は少なくありません。
クライアントを獲得するためにお客様の確保を重要視する方が多いですが、実は独立開業して長年仕事を得るために重要となるのが横のつながりです。
横のつながりとは自分と同じ立場の人、病院や医師のことを指しますが、一度横のつながりが出来たらお客様を紹介してもらえるケースも多いため、独立開業する前には必ず医師の知り合いも増やしておくべきでしょう。
この部分がおざなりになると、独立と同時に孤立してしまう場合もあります。
臨床心理士はスキルを磨き続けないといけない
人の心や体は日々変わっていくもので、現在の常識が通用しなくなるケースも多々あります。臨床心理士もこれは同じことで、現在使っている知識や技術が全く使えなくなるケースも出てくるでしょう。
臨床心理士はカウンセリングを中心に、観察力が重要な仕事です。せっかく仕事を頂いたとしても成果を出せなければ意味がありませんので、知識と技術を日々磨き続けて治療に臨むことを忘れてはいけません。
並行業務は大変
医師や公務員として臨床心理士の資格を取り、臨床心理士の仕事に集中できる環境が整っているのであれば良いですが、大抵の場合は、医師は医師の仕事、公務員は公務員の仕事も別で行いながら、臨床心理士資格を生かさないといけない場面も出てきます。
ある程度仕事に慣れていれば問題ありませんが、1から仕事を始める場合、二兎を追う者は一兎をも得ずという状態に陥りかねません。
臨床心理士はもちろんですが、医師も公務員もどちらも専門職であることに変わりはないため、それぞれの仕事がある程度できるようになってから臨床心理士の仕事を突き詰めることをおすすめします。
臨床心理士資格は更新を忘れずに
臨床心理士の資格は一度取ったら取りっぱなしというわけではなく、定期的に更新する必要があります。
資格は5年ごとに1回、資格の再認定を受ける必要がありますので、忘れずに受けてください。
更新時、専門家としてスキルを満たしていないと判断された場合、資格が認定されない場合もあるため心して臨みましょう。
まとめ
臨床心理士はこのように、平均年収は労働形態によって大きく異なります。
仕事の性質上、年収があがりやすい仕事ではありますが、勤め先によっては一般企業よりも低い収入で働く可能性も少なくありません。
ですが臨床心理士の需要は日に日に高まっており、スキルがある臨床心理士の場合はメディアなどでも引っ張りだこです。
そうなると自然と年収もアップしますので、臨床心理士の収入は自分次第でどうにでもなると言っても過言ではないでしょう。
臨床心理士として大成するためには日々スキルを磨き、独立開業を目標にコネクションづくりに励むことも重要なポイントです。
これから臨床心理士として働きたいと考えている方は、人々の心のケアを行いながらも、安定した収入を得られるように体制を整えましょう。