事業主は雇用している全ての従業員に対して一定割合以上の障害者を雇用しなければならないと「障害者雇用促進法」にて義務付けられています。
この法律は、障害のある人の職業の安定を実現するための取り組みを定めています。
そして、平成30年4月1日より、民間企業における法定雇用率が2.2%に引き上げられました。
(2021年には2.3%に引き上げられた)
具体的に、「障害者雇用促進法」や「法定雇用率」とはなんなのか。
今回は、これらについて詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「障害者雇用促進法」とはなんなのか?
概要
これは、障害のある人の職業の安定を実現するための具体的な方策を定めた法律のことであり、正式な名称を「障害者の雇用の促進等に関する法律」といいます。
元となるのは、1960年に制定された「身体障害者雇用促進法」であり、名称を含めこれまでさまざまな改正が行われ、現在にいたっています。
日本の障害者雇用に関する政策は、「雇用(一般就労)」と「福祉制度に基づく就労(福祉的就労)」に分けて制度が設計されています。
それぞれの制度を定める法律も、以下のように分かれています。
②「障害者総合支援法」
雇用契約に基づく場合は、①が適用されます。
そして、福祉的就労についての制度は②が定めており、例えば「就労移行支援」や「就労継続支援」を利用して働く形があります。
これらの制度、および各支援内容については、以下記事を参照ください。
対象となるのは、どういう人なの?
この制度における障害者の定義は、以下のように定められています。
・身体障害者手帳を持つ人◆「重度身体障害者」:
・身体障害者手帳の1.2級を持つ人
◆「知的障害者」:
・療育手帳を持つ人、または知的障害者判定機関の判定書を持つ人
◆「重度知的障害者」:
・療育手帳を持つ人、または知的障害者判定機関の判定書を持つ人
◆「精神障害者(発達障害者を含む)」:
・精神障害者保険福祉手帳を持つ人のうち症状が安定し、就労が可能な状態にある人
・総合失調症、躁うつ病(躁病およびうつ病を含む)、転換のある人のうち、症状が安定し、就労が可能な状態にある人
◆「その他の心身の機能障害者」;
・その他の心身の機能の障害があるために、長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、職業生活を営むことが著しく困難な人
尚、知的障害の判定機関は自治体によって異なります。
また、「その他の心身の機能障害者」については、明確な該当基準は示されていません。
これは、「長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、職業生活を営むことが著しく困難」であることを確認するには、さまざまな要素を考慮する必要があり、一律の判断基準を作ることが難しいからです。
したがって、医師の診断書や意見書、支援機関の担当者の意見書などを参考に判断されているのが実情のようです。
「法定雇用率」とはなにか?
概要
これは、「常時雇用している労働者数と雇用しなければならない障害者の割合を示したもの」のことをいいます。
民間企業だけでなく、国や地方自治体などの行政機関でも達成させることが義務付けられています。
計算式は、以下の通りです。
「障害雇用率=(対象障害者である常用労働者の数+失業している対象障害者の数)/(常用労働者数+失業者数)」
尚、国は段階的に法定雇用率を上げていく施策をとっています。
2021年12月時点の事業主別の法定雇用率は、以下のようになっています。
◆「国・地方公共団体」 :2.6%
◆「都道府県などの教育委員会」:2.5%
今後も、年を追うごとに各企業が雇用すべき障害者の割合が増加していくと予想されており、障害者の雇用機会がさらに広がるであろうと見込まれています。
この法定雇用率ですが、労働市場の状況や経済状況を反映しており、おおよそ5年周期で見直しが行われています。
例えば、民間企業の場合は、2013年に2.0%・2018年に2.2%・2021年に2.3%と上がっています。
もし”未達成”だった場合はどうなるのか?
まず、障害者の実雇用率が法定雇用率に対していない労働者が100名以上の民間企業は、「納付金支払いの義務」が生じることとなります。
(1名あたり、5万円/月)
加えて、6月1日の雇用状況により、2年間の肩入れ計画を作成し実施しなければいけません。
もし仮に2年間で法定雇用率が達成できなければ、厚生労働省のホームページに“障害者雇用率が未達成の企業”として掲載がされてしまい、社名検索で上位に表示されることとなるのです。
「障害者雇用納付金制度」とは?
障害のある方を雇用する場合、障害への配慮としてバリアフリー化やインフラ面の整備などが必要になる場合もあるかと思います。
そして、それらの環境整備を行うためには費用が発生し、その結果事業主に経済的な負担が伴う場合があるのです。
また、受け入れ態勢を整え積極的に障害者の社会進出に寄与している企業と、消極的な企業との間には、経済的なアンバランスが発生してしまいます。
これらを調整するために設けられているのが、この「障害者雇用納付金制度」なのです。
上記で、法定雇用率が未達の企業に対して「納付金」を収める義務があると記載しました。
逆に、雇用率を達成している企業(事業主等)へ「調整金等」を支給して、経済的な負担のバランスを取っているということなのです。
まとめ
以上が、「障害者雇用促進法」「法定雇用率」についてのご紹介となります。
障害のある人の職業の安定を実現するための取り組みは、これからもより良くなっていくはずです。
さまざまな制度が用意されているので、これらをうまく活用し、ぜひ社会とのつながりを持って自身の生活をより良いものにしてみてください。
また、障害者雇用率はこれからも増加していく可能性は高く、企業側も法定雇用率を高めるためにさまざまな取り組みを行っていかなくてはなりません。
相談に関しては、各地域のハローワークへ連絡を行ってみるのが良いでしょう。
障害者の就労に関してはさまざまな期間(障害者就業・生活支援センターや、就労移行支援事業所など)が存在しているため、そのような期間と連携しているハローワークを利用すると、スムーズに進めていくことができるはずです。
また、さまざまな助成金も利用することができますので、しっかり確認を取りながら取り組みを進めてみてください。