「福祉士」という名称が就く資格・職種には、以下の3つが存在します。
◆「精神保健福祉士」
◆「社会福祉士」
「介護福祉士」と「精神保健福祉士」のご紹介は別の記事にて行いましたので、以下にリンクを貼っておきます。
「介護福祉士」について
「精神保健福祉士」について
そして今回は、「社会福祉士」について、具体的な仕事内容や勤務先などをご紹介していきたいと思います。
また、混同しやすい職種として「ケアマネージャー」というものがありますが、こちらとの違いについてもお話をしていきます。
「社会福祉士」ってどんな仕事?
まずは、「介護福祉士」というものについて、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「福祉分野」のエキスパートである
この仕事のことを端的に表現すると「日常生活が困難な人の”相談”にのり、個々の事情に合った福祉サービスを提供すること」となります。
また、資格の名称そのものを指してもいます(名称独占資格である)。
冒頭でもご紹介した通り、「介護福祉士」「精神保健福祉士」と同じ“国家資格”であり、この3つを合わせて“福祉系三大国家資格”とも呼ばれています。
(三福祉士と呼ばれることもある)
ちなみに、社会福祉士=(社会福祉士の)国家資格を有する人のことを指していますが、職場によっては「ソーシャルワーカー」や「生活相談員」と呼ばれ、各施設で勤務している人もいます。
いつ頃誕生したの?
福祉関係の国家資格者は、総じて「ソーシャルワーカー」と呼ばれており、そこから社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士などさまざまな職種(資格)に枝分かれしていきます。
これらの誕生は、1987年に現在の厚生労働省が制定した「社会福祉士及び介護福祉士法」からです。
発端は、日本の“将来的な高齢社会の訪れが予測されていた”こと。
昔であれば、介護=「各家庭において家族が行う」もしくは「特別養護老人ホームなどで”福祉寮母”と呼ばれる専門職の人が行う」ことが基本となっていました。
しかし、高齢者人口の増加や人々のライフスタイルの変化に伴って、以前のままの介護の仕方だけでは対応が難しくなってしまう……改めて介護の重要性が再認識されるようなったのです。
現に、今の日本は「超高齢化社会」に突入しており、核家族化の家庭も増加しています。
1人暮らしの高齢者も増加傾向にあることから、その人達の相談に乗り・適切なサービスを提供(指導)できるような立場の職員が必要とされたのです。
これが、社会福祉士と介護福祉士のはじまりです。
加えて、日本は台風や地震などの自然災害も多く、古くは「阪神大震災」、最近であれば「東日本大震災」などが発生……。
2020年から発生した新型コロナウイルスも同様に、こういった外部要因から生活に苦しむ人も大勢います。
そこで、“介護のエキスパート=介護福祉士”、“社会的に困窮している人の援助・アドバイスを行うエキスパート=社会福祉士”と立場が分けられることなったのです。
他の「福祉士」となにが違うの?
「介護/精神保健/社会」と名称が異なる通り、それぞれ活躍する分野が異なります。
詳細は各記事をご覧いただければと思いますが、簡潔に記載すると以下のようになります。
◆「精神保健福祉士」:心に病を持っている人(精神障害)やその家族に対し、相談・助言を行う(介護を行うこともある)
◆「社会福祉士」:日常生活が困難な人に対し、相談・助言を行い、最適な福祉サービスや福祉制度に関する具体的なアドバイスを行う(介護を行うこともある)
社会福祉士のサポート対象となる人は「なんらかの理由で日常生活を送ることが困難となった人」であり、他2つの仕事よりもサポート対象が広いことが最大の特徴となります。
高齢者や身体的・精神的な障害をもつ人はもちろん、貧困(お金がなく生活に困っている人)などもサポート対象となるのです。
特に、2020年以後は「新型コロナウイルス」の影響もあり、生活困窮者が大幅に増加しました。
こういった方々に対しても、最適な福祉サービス・福祉制度に関する具体的なアドバイスを行うなどし、大活躍しているのです。
また、現代は国の福祉制度が多様化・複雑化しています。
その一方で、高齢者社会が進み、福祉制度を必要としている人も増加傾向にあります。
多種多様な福祉制度を、個々のケースに合わせてどのように利用できるかをサポートする社会福祉士の重要性は、今後さらに高まっていくと考えられているのです。
「ケアマネージャー」との違いはなに?
上記の「介護福祉士」とは別に「ケアマネージャー(介護支援専門員)」という職種・資格があります。
この「ケアマネージャー」と「社会福祉士」を混同される方もいらっしゃるので、両者の違いについてもご紹介しておこうと思います。
ケアマネージャーの主な仕事は、以下の通りです。
「介護を必要とする方が介護保険サービスを受けられるように、ケアプラン(サービス計画書)の作成やサービス事業者との調整を行うこと」
つまり、ケアマネージャーは“介護保険に関するスペシャリスト”なのです。
要介護者が適切な介護保険サービスを受けられるように、要介護者およびその家族に具体的なアドバイス(相談・助言)を行う……。
この「相談・助言」の部分が、社会福祉士と似た印象を与えるのかもしれません。
対して「介護福祉士」の方は、”介護”だけでなく”児童福祉”や”障害者福祉”、”生活困窮者”など対象となる範囲が非常に広いのが特徴です。
生活に困っている人に対して、安心して社会活動できるように手助けする……これが介護福祉士の主な仕事となるのです。
この2つの違いをまとめると、以下のようになります。
◆「ケアマネージャー」:”介護”に関するスペシャリスト
余談ですが、名称が異なる通り「介護福祉士」と「ケアマネージャー」も“介護”という分野は同じでも、その仕事内容は異なります。
この点については、別途ケアマネージャーに関する記事を公開しますので、そちらをご覧いただければと思います。
社会福祉士の具体的な「仕事内容」について
支援対象が幅広いということは、=社会福祉士の仕事内容は多岐に渡ることとなります。
この項目にて、具体的な業務内容について詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「相談」業務が主な仕事である
上記にも記載した通り、「日常生活が困難な人の相談に乗る」ことが、主な仕事の一つとなります。
社会福祉士に相談に来る人は様々な悩みを抱えています。
◆福祉施設への入居方法
◆介護サービスの利用方法 など
相談を通じて、適切な支援サービスや福祉施設などを提案していくのです。
支援サービスの「提供」や「管理」を行う
利用者が安心して支援サービスを利用できるように、サービス利用に向けた手続きを行ったり・環境を整備したりするのも社会福祉士の大事な仕事の一つです。
もちろん、サービス提供までを誘導して終わりではありません。
サービスを提供した後も、「適切に・十分なサービスを受けることができているか?」を記録・管理し、問題があれば状況に応じて対応していくこととなります。
関係機関との連携・サービスの見直しや調整も行う
社会福祉士の相談対象は非常に幅広く、それぞれに合った支援サービスを提供していくこととなります。
その中には、「行政機関」や「医療機関」などともしっかりと連携を図っていく必要があります。
利用者の状況は、人によって様々であり状況に応じて都度変化します。
つまり、提供している支援サービスが常に利用者にとって適切なサービスであるとは限らないのです。
そういった「利用者と各種機関との仲介役」を担い、利用者が常に十分な支援サービスを受けられるように、状況に応じて“サービスの見直し”や“調整”を行っていくことも社会福祉士の業務の一つとなります。
「介護」業務を行う
社会福祉士の主な仕事は、上記で挙げたものになります。
つまり、「相談/助言/適切なサービスへの誘導/サービスの見直しや調整」です。
そのため、実際に「身体介護」や「生活援助」などの介護業務に携わることは基本的にはありません。
ただ、“介護施設などに勤務する場合、社会福祉士が介護スタッフを兼任するケース”もあり得ます。
介護業界は人手不足が顕著であるため、業務範囲が広がってしまうことも少なくないのが現状です。
とはいえ、実際の介助行為にあたるのは稀でもあり、絶対ではありません。
そもそも「身体介護」を行う場合は、「介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)」以上の資格を必要とし、無資格の場合は「生活援助」しか行うことができないのです。
言い方を変えると、「介護に関する資格を所持していれば、業務の幅がさらに広がる」ということでもあります。
他にも「精神保健福祉士」の資格も取得し、Wライセンスで業務の幅を広げている人もいます。
社会福祉士の勤務先は多岐に渡るため、自身が「勤務したい」と考える職場に応じて、+αで業務に役立てられる資格を取得していくのもキャリアアップに繋がると言えるでしょう。
社会福祉士の「勤務先」はどこ?
勤務先は多岐に渡る
ここまでにご紹介した通り、社会福祉士の勤務先は多岐に渡ります。
例えば、以下のような施設です。
◆市町村役所
◆児童相談所
◆障害児関連施設
◆障害者福祉施設
◆保健所老人福祉施設
◆老人保健施設
◆母子生活支援施設地域包括支援センター
◆社会福祉協議会 など
大別すると、「医療」「福祉」「介護」となり、それぞれで呼ばれ方が若干異なります。
この項目にて、上記3つに分けてもう少し勤務先について補足をしておきたいと思います。
「医療」
「医療=病院」が一般的にであり、医療現場で勤務する人は「医療ソーシャルワーカー」と呼ばれています。
基本的には、患者や家族の経済的・身体的な不安に対しての支援を行っています。
また、治療や入院に関して適切な支援制度を紹介したり、患者や家族が希望する治療を受けられるよう医師や看護師との連携・調整を行ったりもします。
ちなみに、規模が大きな病院であれば、「生活相談室」「地域連携室」といった相談所が設置されていることがあり、そこに常駐することもあります。
「福祉」
勤務先は非常に幅広く、呼び方も施設によってさまざまです。
例えば、障害者支援施設に勤める場合は「生活支援員」「就労支援員」「サービス管理責任者」といった呼ばれ方(肩書き)で勤務します。
他にも、児童福祉施設(児童発達支援・放課後等デイサービスなど)であれば「児童指導員」、母子生活支援施設であれば「母子支援員」と呼ばれています。
福祉の現場で行う仕事は、基本的に「相談業務」がほとんどです。
利用者やご家族への相談対応・連絡、各種支援サービスへの誘導・調整・見直し……など。
利用者が自立するための支援や援助を行うこととなります。
「介護」
現在の日本は「介護」と一言でいってもさまざまな勤務先があります。
例えば、以下の施設が該当します。
◆特別養護老人ホーム
◆グループホーム
◆ケアハウス など
介護施設で働く人は主に「生活相談員」と呼ばれており、介護サービスの利用希望者やその家族からの相談受付、対象となる介護サービスの評価や査定、利用希望者に対する支援計画の作成などを行うこととなります。
ちなみに、社会福祉士が勤務する施設としては、この介護施設がもっとも多いとされています。
- 介護施設:全体の4割
- 医療施設:全体の2割弱
- 福祉施設:全体の1割
これで全体の7割ほど。
実は、社会福祉士が勤務する場所は他にも数多く存在するのです。
その他の勤務先について
まずは、学校に食して「スクールソーシャルワーカー」として勤務している人。
他にも、地域組織を束ねる「社会福祉協議会」に務める人や、福祉事業を手掛ける「一般企業」で働く人などもいます。
ここで、もし社会福祉士のお仕事をお探しの方がいた場合の注意点を一つお話しておこうと思います。
「求人募集の仕方」について
さまざまな施設で勤務が可能な社会福祉士は、当然働き方もある程度自分のライフスタイルに合わせて勤務することが可能です。
正社員・常勤だけでなく、アルバイト/パート/契約社員などの非正規雇用として時間に融通を利かせて働くこともできるでしょう。
この求人募集を探す際に注意しなければいけないのは「施設によって呼び名が変わる可能性がある」ということです。
◆就労支援員
◆生活相談員
◆医療相談員
◆児童指導員
◆母子支援員
◆サービス管理責任者
など、求人募集時の名称が「社会福祉士」でない場合があります。
※「社会福祉士 求人」などで調べていたとしてもです※
社会福祉士は国家資格の名称であるため、この点は“応募要件”のところに記載されていることが多いのです。
お仕事をお探しの方がいらっしゃれば、仕事探しの際はご注意ください。
まとめ
社会福祉士は福祉に関するエキスパートであり、支援対象は非常に広いです。
そのため勤務先は多岐に渡り、業務内容も施設によって若干の違いがあります。
もし「社会福祉士として人の役に立ちたい!」とお考えの方は、“どんな人たちの助けとなりたいのか?”を事前に明確にしておくといいかもしれません。
対象を絞れば、その分勤務先の選択肢も狭くなり、情報を調べやすくなります。
また、対象を絞る=関連する職種の別の資格のことも知れ、資格取得からのキャリアアップを目指すこともできるでしょう。
選択肢は数多く存在するので、あなたに合った仕事先を見つけることができるよう、情報を精査してみてください。