「障害福祉サービス」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
これは「障害者総合支援法」に基づいて、障害者や難病患者を対象に行われる支援の総称となります。
今回は、これらの具体的な内容について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「障害福祉サービス」とはなにか?
冒頭でもお伝えした通り、これは「障害者総合支援法」に基づいて提供される支援の総称です。
対象となるのは、「障害者」や「難病患者」となります。
ただし、”障害”と一括りにいっても、障害の程度や必要とする支援の内容は、人それぞれで異なります。
そのため、このサービスは「それぞれの事業や程度を考慮した上で、個別に支給のあり方が決定される」こととなるのです。
「障害者総合支援法」とはなんなの?
これは、「障害や難病を抱えている人が、基本的人権のある個人としての尊厳にふさわしい日常生活や社会生活を営むことができるように、必要となる福祉サービスに関わる給付・地域生活支援事業やそのほかの支援を総合的に行う」ことを定めた法律のことです。
この法律自体は、2013年に施行されました。
ただ、障害保健福祉施策はそれ以前からも行われています。
ノーマライゼーションの理念に基づいた2003年の支援費制度を皮切りに大きく変わり、その後も、改正を重ねて現在に至ることとなります。
この制度の目的は「障害者および障害児が、基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活または社会生活を営むこと」にあります。
上記を地域生活支援事業などにより総合的に支援するとしており、基本理念は以下を掲げています。
②障害の有無に関係なく相互に人格と個性を尊重し合える共生社会を実現する
③障害者・障害児が可能な限り身近な場所で支援を受けられること
④社会参加の機会が確保されること
⑤どこで誰と住むかなど他者との共生が妨げられないこと
⑥障害者・障害児が社会生活をする上での障壁の除去に資すること
障害福祉サービスの「具体的な内容」について
上項でもお伝えした通り、障害の程度や必要とする支援の内容は人それぞれです。
ただ、以下のように大まかに大別することはできます。
◆「訓練等給付」;自立した社会生活を営むために、必要な生活能力や仕事のスキルなどを身に着ける訓練を提供する
そして、ここからそれぞれに応じたサービスが、以下のように提供されていくのです。
・居住介護(ホームヘルパー)
・重度訪問介護
・同行援護
・行動援護
・重度障害者等包括支援
・短期入所(ショートステイ)
・療養介護
・生活介護
・施設入所支援
【訓練等給付】
・自立訓練
・就労移行支援
・就労継続支援
・共同生活援助(グループホーム)
尚、「障害福祉サービス」という言葉の通り、上記以外だけでなく、以下のようにより広い範囲のサービスを指す場合もあります。
◆自立支援医療:「育成医療」「厚生医療」「精神通院医療」
◆補装具
など
「利用対象者」はどんな人なの?
このサービスは、障害や難病を抱えている人が対象となりますが、その程度は人によってさまざまです。
この点については、「障害者総合支援法」にて、具体的に以下のように定められています。
◆知的障害者:知的障害者福祉法にいう知的障害者のうち18歳以上の人
◆精神障害者:統合失調症、精神作用物質による急性中毒、またはその依存症、知的障害、精神病質などの精神疾患を持つ人(知的障害は除く)
◆発達障害者:発達障害があるため、日常生活や社会生活に制限がある18歳以上の人
◆難病患者 :難病等があり、症状の変化などにより身体障害者手帳を取得できないが、一定の障害がある18歳以上の人
◆障害児 :身体障害、知的障害、発達障害を含んだ精神障害がある児童、または難病等があり、一定の障害がある児童
尚、障害児も対象にはなっていますが、利用者は全体の数%にしかすぎません。
実際は、「児童福祉法」に基づく支援を受けることが多いとされています。
「利用方法」について
このサービスは、給付の対象(介護給付と訓練等給付)に応じて、申請の流れが異なることとなります。
なぜなら、介護給付を受ける場合は「障害支援区分認定」を受ける必要があるからです。
(訓練等給付を希望する場合でも、グループホームを利用する場合は障害支援区分認定が必要になることがある)
大まかな流れとしては、以下のようになります。
◆市区町村の障害福祉担当窓口
↓
◆障害支援区分認定調査
↓
◆一次判定(市区町村)
↓
◆二次判定(審査会)
↓
◆障害支援区分の認定
↓
◆サービス利用意向の聴取・サービス等利用計画案の作成
↓
◆支給決定
↓
◆サービス担当者会議
↓
◆支給決定時のサービス等利用計画案の作成
↓
◆サービス利用の開始
【訓練等給付】
◆市区町村の障害福祉担当窓口
↓
◆サービス利用意向の聴取・サービス等利用計画案の作成
↓
◆支給決定
↓
◆サービス担当者会議
↓
◆支給決定時のサービス等利用計画案の作成
↓
◆サービス利用の開始
尚、このサービスを利用するためには、「障害福祉サービス受給者証」の交付が必須となります。
(障害者手帳を持っていなくても、受給者証があればサービスの利用が可能)
これは、お住まいの市区町村へ申請して認められると交付されることとなります。
サービスの「利用負担額」について
サービスの利用料としては、基本的に「利用料の1割」を利用者が負担することとなります。
ただし、世帯の前年の収入に応じて負担額の月額上限が決まっているので、利用料の1割にあたる金額が月額上限を超えていた場合は、月額料以上の自己負担が生じることはありません。
◆市区町村民税非課税世帯:0円
◆前年の収入約300万円以上~約600万円以下の方:9,300円
◆前年の収入約600万円以上:37,200円
ちなみに、施設入所や日中活動サービスを伴う光熱水費等の実費や食費については、在宅で生活する人との公平を図るため、自己負担となります。
ただし、その負担が大きくならないように軽減措置が設けられています。
この点については、詳細は市区町村のホームページなどから確認をしてみてください。
「介護保険サービス」との関係性について
そもそも「介護保険サービス」とはなにか?
こちらのサービスは、要介護・支援状態にある「65歳以上の高齢者」と「40歳から64歳までの特定疾患の患者」が、介護保険料と国・自治体からの財源によって、1割の自己負担で受けられるサービスのことをいいます。
(自己負担割合は、収入に応じて変動する)
こちらもさまざまな種類が存在しますが、大別すると以下の3つに分類されます。
◆「施設サービス」
◆「地域密着型サービス」
両者は似たサービスに感じるかもしれませんが、「介護の必要度を測る指標」「サービスの支給限度の決定方法」「サービス利用計画の作成者」「利用者負担額の決まり」などにそれぞれ違いがあり、制度としては別のものであると認識しておいてください。
同じ内容のときは、どちらが優先されるのか?
支援の内容や機能を比較し、仮に両方に同じサービスがあった場合は、基本的に「介護保険サービスの方を優先して受ける」こととなります。
(一部併用可能なサービスもある)
ただ、介護保険のサービスに相当するものがない障害福祉サービス固有の支援については、障害者総合支援法に基づく支援を受けることができます。
例を出すと、「行動援護」「自立訓練」「就労移行支援」「就労継続支援」などです。
また、両方に同じサービスがあったとしても、必ずしも介護保険制度が優先されるというわけでもありません。
例えば、「サービス事業所が自宅の近くにない場合」や、「事業所が変わることが利用者にとって大きな心理的負担となる恐れがある場合」などです。
その他の支援についても、状況次第では障害福祉サービスの適用範囲内として認められる場合もありますので、詳細はお住まいの市区町村に相談してみるのが良いかと思います。
まとめ
以上が、「障害福祉サービス」「障碍者総合支援法」についてのご紹介となります。
介護や訓練に関するさまざまなサービスが用意されており、利用者のニーズに応じてサービスを組み合わせて使うことができます。
ぜひ自分に合ったサービスを選択して、生活での負担を減らしたり、暮らしやすい環境を作っていく手段として活用してみてください。
ただ、こういったサービスにはさまざまな種類があり、申請の手続きも複雑です。
そのため、市区町村の窓口や「相談支援事業者」などにも相談してみるといいかと思います。
また、利用するサービスが決まっている場合は、直接その事業所へ問い合わせを行うのも良いです。
施設によっては、見学や相談ができる場合があります。
一人で進めようと思うと非常に大変なので、各種サービスをうまく活用して、自分に合ったものを選択してみてください。