これまで、「助産師」について色々とご紹介をしてきました。
≪助産師の仕事内容や勤務先について≫
≪助産師のなり方について≫
助産師の仕事は、“新たな命が誕生する瞬間に立ち会える”という助産師ならではの大きな特徴があります。
しかし、母子の「命」を預かる大事な仕事であることから、その責任も重大であり、同時に綺麗なことばかりでもないのが実情です。
今回は、「助産師になるために大切なこと」「助産師の仕事に求められるもの(向き・不向きについて)」を中心に、詳しくご紹介していきたいと思います。
助産師にもっとも求められるものとは……?
助産師に求められるものは様々に存在し、内容は後述にてご紹介をしていきますが……。
まず、“助産師にとってもっとも大切な・求められるもの”をお話しておきたいと思います。
それは、「精神的な強さを持つこと」です。
冒頭でもお伝えしたように、この仕事は“新たな命が誕生する瞬間に立ち会える”という、助産師ならではの特徴があります。
しかし、「すべての出産・妊娠が幸せな結果で終わるとは限らない」のです。
「流産」や「死産」などの辛く・悲しい場面に立ち会うことも少なくありません。
この時、助産師さん自身も辛いことに間違いありませんが、もっとも辛く・悲しい気持ちでいるのはお母さんやお父さんなどの「家族」なのです。
流産や死産などの悲しい場面は、仮にどれだけ経験しても“慣れる”ということは絶対にありません。
辛く・悲しい気持ちを抑え込んで、悲しみの中にある母親や家族を支えるのも助産師の大切な役割なのです。
◆命に対して全力を尽くし、
◆何があっても周囲を”愛情”や”優しさ”で包むこむ……
このような「精神的な強さ」を持った人が、多くの方々に信頼されながら長く仕事を続けていくことができるのではないかと思います。
助産師に”向いている人”とは?
次に、助産師に“向いている人”の特徴をいくつかご紹介していきたいと思います。
1.思いやりの心を持ち、人に寄り添える人
出産というのは十人十色であり、全く同じ流れで妊娠~出産までが進むことは絶対にありません。
そして、妊娠中・出産後の女性は非常に繊細(デリケート)であり、情緒不安定にもなりやすい時期です。
(妊娠・出産など、将来のことに対する不安が非常に大きい)
この時期の妊産婦の心身をケアすることも、助産師の大切な仕事の一つなのです。
不安を抱えるお母さんに寄り添い、安心感を与えてあげる……。
たとえどんな小さな訴えであっても、真摯に耳を傾け一緒になって解決方法を考えてあげる……。
こういった「思いやり」や「共感力」が必要となってくるのです。
実は、客観的に見たら「些細な悩みだな……」と感じるようなことであっても、それが妊産婦さんからの“SOSのサイン”だったりもするのです。
何気ない会話やボディタッチから相手の不安や要望をしっかりと汲み取っていかなくてはいけないので、「コミュニケーション能力が高い人」や「人との触れ合いが好き」という人にも向いている仕事かと思います。
2.人を癒し・元気づけられる明るい人
自分が、辛く・悲しい思いをしている時、「相談に乗ってくれたり・元気づけてくれる存在に助けられた……」という人は大勢いらっしゃるかと思います。
これは妊産婦さんでも同じです。
むしろ、陣痛や不安などと長い期間闘う妊産婦さんにとって、一番近くで寄り添ってくれる助産師は、“誰よりも頼りになる存在”なのです。
日本では、「助産師は女性しか職に就くことができない」という法律があります。
それは、同性だからこそ相談や共感がしやすい”身近な存在”になり得るからです。
何でも相談しやすいオープンな雰囲気の人には、悩みを打ち明けやすいでしょう。
元気に声をかけてくれたり、いつも笑顔で明るい人には、不安な気持ちを和らげ・安心感を与えてくれるでしょう。
そういった「人を癒し・元気づけられる人」も、助産師に向いているのではないかと感じます。
3.体力があり、判断能力に優れている人
お産とは、24時間365日いつ始まるか分かりません。
そのため、助産師は「日勤」「夜勤」の交代制(2交代or3交代制)でシフトを回すことがほとんどです。
※交代制について、以下記事をご覧ください※
ただし、シフトが決まっているからと安心はできません。
同時に複数のお産がスタートしたり、お産が何件も重なることもあり、長時間勤務となる場合もあります。
また、休日出勤や緊急呼び出しなどもあり得るため、勤務スタイルがかなり不規則になりがちです。
だからこそ、体力がある人の方が、助産師に向いていると言えます。
もちろん、分娩の際は妊婦さんも相当な体力を消耗しますが、それと同じく助産師も体力を消耗するのです。
加えて、妊娠・出産中は何が起こるか分かりません。
時には、1秒を争う緊迫した現場に立ち向かうことだってあります。
そういった緊急事態時に、瞬時に状況判断ができ・適切な行動ができる(素早い判断や行動ができる)人が、この仕事に向いていると感じます。
助産師として働くことの「辛いこと」や「大変なこと」について
助産師に“向いていない人”というのは上の項目でお話した逆となりますので、説明は省きます。
ここでは、助産師として働く上での「苦労」や「辛いこと」についてお話していきたいと思います。
「命」を預かるプレッシャー
ここまでにご紹介した通り、助産師は「妊産婦」や「赤ちゃん」の“命を預かる”仕事です。
何かあってからでは取り返しがつかないため、業務に慣れるまでの間は厳しく指導を受けるケースも少なくありません。
加えて、「幸せな出産ばかりではない」ということも重要です。
分娩は、妊産婦さんも命がけで臨むことになります。
そして、生まれたての赤ちゃんの小さな命を預かりお世話をすることとなりますが、必ずしも健康に育ってくれるわけでもありません。
赤ちゃんの「流産」「死産」の可能性はもちろん、妊産婦さんの命に関わる問題が起こる可能性だって否定はできないのです。
そういった“命の重さ”を感じながら、日々業務を行い・勉強を続けていくこととなります。
こうした「命がけの出産現場と向き合い続ける苦労」も、また助産師という仕事ならではのものと言えるのです。
ハードワークで大きなストレスを感じてしまう
助産師という仕事は、医療職の中でも非常に多忙になりがちな職業であり、生活リズムが不規則になりがちです。
前項でも記載した通り、お産はいつ起こるか分からず、24時間365日緊急事態が発生すればいつでも出勤しなければいけません。
規模が非常に大きな病院であっても生活リズムが狂いやすく、特に小規模な診療所やクリニックの場合は「人手不足」で余計に生活リズムが不規則になり体の疲れも中々取れないかと思います……。
でも、助産師である以上、妊産婦さんや赤ちゃんとの関わりを避けることはできません。
◆「命を預かるというプレッシャー」
◆「ミスは絶対に許されないというストレス」
常にこれらと向き合い続けることから、助産師さん自身が心身の調子を崩してしまう例もなかにはあるのです。
医療現場は、常に「人手不足」である
医療や介護の業界は、様々な理由から常に「人手不足」が問題視されています。
それは、助産師であっても同じことが言えます。
上記の記事で「助産師資格の受験者数・合格者数」についてご紹介をしましたが、確かに助産師資格の所有者は年々少しずつ増加しています。
しかし、それでも助産師の数は足りていません。
このことから、少ない人数で運営している事業所も多く、“人が少ない=1人1人の業務負担が大きくなる”という点に繋がってしまいます。
加えて、「助産師は女性しか職に就くことができない」という点から、助産師である女性自身が、結婚・妊娠・出産・育児を機に離職してしまうケースも多いのです。
これも、助産師が人手不足となる要因の一つとも言われています。
まとめ
“母子の命を預かる仕事”である助産師は、助産師ならではの“良い面”と“苦労する面”が顕著に現れる仕事です。
また、「助産師資格に合格したから」「助産師の仕事に就けたから」といって、決してそこが“ゴール”ではありません。
現場では、どんなに勉強をしている人でも“予期せぬ事態”に見舞われ、混乱することが多々あります。
そのため、職に就いた後も「経験」はもちろん、日々の勉強も欠かすことができません。
どんな仕事でも同じことですが、決して楽な仕事はないことだけは確かです。
ただ、“命が誕生する瞬間に立ち会える”ということや“(妊産婦や赤ちゃんなど)誰かの役に立てる”仕事であることも確かです。
その瞬間に喜びを感じ、助産師を長く続けている人も大勢います。
合う合わない・向き不向きというのは誰にでもあります。
関心がある方は、まずは知見を広げてみてください。
そして「助産師になりたい」と感じるならば、是非その一歩を踏み出してみてください。
もしかしたら、それが貴方にとっての一生モノの“やりがい”となるかもしれません。