多様な「雇用形態」と「勤務形態」があるのが特徴の、医療・介護業界。
前回の記事で“交代制とは何か?”について詳しくご紹介をしましたが、交代制には、「二交代制」と「三交代制」が存在します。
今回は、この2つの交代制の各メリット・デメリットについて、詳しくお話をしていきます。
また、“交代制=夜勤がある”が絶対でもありますので、交代制や夜勤に“向いている人”・“向いていない人”についてもご紹介していければと思います。
「二交代制」と「三交代制」とは何か?
それぞれの違いについて
まずは、簡単に交代制についてご紹介をしていきたいと思います。
これは、24時間体制や長時間営業する施設・店舗・事業所などで導入されるものであり、なじみ深い言い方をすると「シフト制」と呼ばれる勤務形態のことになります。
医療や介護の業界では、入院施設のある病院・老人ホームなど24時間体制で施設が運営されることも多いため、この制度を採用している事業所が数多く存在します。
そして、「二交代制」と「三交代制」の違いは、“1日の交代機会が2回か3回か”という点にあります。
◆「日勤」8:00~17:00
◆「夜勤」16:00~翌9:00
【三交代制】
◆「日勤」6:00~15:00
◆「淳夜勤」14:00~23:00
◆「夜勤(深夜勤)」22:00~翌7:00
施設によって時間帯に多少の差異はありますが、大まかには上記のように分けられます。
「三交代制」が導入された理由
元々、医療や介護の業界では「二交代制」がメジャーな働き方とされていました。
しかし、どうしても「夜勤」の勤務時間が長いという事情があり、近年の“働き方改革”に伴って「三交代制」を採用する事業所が増加してきたのです。
ちなみに、三交代制を広く採用しているのは医療(病院・病棟)の方が多く、2019年時点だと“42.8%”の病院・病棟が導入していると言われています。
逆に介護の方は二交代制の方が圧倒的に多く、2019年時点だと三交代制の採用率は“11%”となっています。
※「医療労働 2019年介護施設夜勤実態調査結果」の資料より※
ただ、現時点ではまだまだ二交代制の方がメジャーな働き方とされていますが、今後さらに働き方改革が進んでいけば、三交代制の数もどんどん増加していく可能性はあるかもしれません。
昔は、女性の深夜帯の勤務は禁止されていた?
実は、昔は(一部を除き)女性の深夜帯に係る交代勤務は禁止されていました(改正前の労働基準法第64条の3による)。
しかし、1999年(平成11年)の労働基準法の改正法施行により、女性の深夜勤務が可能となったのです。
(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)等の改正)
これにより、医療・介護の業界においても、女性の深夜帯の勤務者が増加していくこととなりました。
交代制に”向いている人”と”向いていない人”の特徴
各交代制のメリット・デメリットをご紹介する前に、まずは交代制に“向いている人”と“向いていない人”の特徴をご紹介していきたいと思います。
もっともネックになってくるのは、どちらの交代制にしろ「夜勤」が存在するという点にあります。
交代制に”向いている人”の特徴とは?
交代制に向いている人の特徴としては、以下が挙げられます。
②お金のために頑張れるという人
③睡眠環境にあまりこだわりがない人
夜勤の最大の特徴は“夜勤手当により大きな収入を得られる”という点にあります。
しかしいくら高収入を得られると言っても、“拘束時間が長く、生活リズムが乱れやすい”という問題点もあることから、その点に対応できるかどうかが重要となってきます。
また、③についてですが、夜勤で勤務する場合「仮眠」の時間が設けられている場合があります(特に二交代制の場合)。
不眠傾向のある人や睡眠に神経質な人は、交代制には向きません。
睡眠環境にこだわらない人の方が、交代制は向いていると言えるかと思います。
最後にもう一つ。
あくまで“どちらかというと”ではありますが、「独身や一人暮らしの人」の方が、交代制に向いていると言えます。
この点は、下記でもう少し掘り下げていきたいと思います。
交代制に”向いていない人”の特徴とは?
上記で挙げた逆……が、向いていない人の特徴として挙げられます。
特に“夜型の生活をしんどいと感じる人”は、要注意です。
交代制は、1ヶ月の間で日勤と夜勤を繰り返し行うこととなります。
仮に「夜型の生活はそれほど苦ではない」という人であっても、非常に生活リズムが狂いやすくなり、体調を崩しやすい人も出てきてしまうほどです。
それに加え、夜型の生活をしんどいと感じてしまう人であれば、余計に体調を崩しやすくなってしまうため、夜勤は極力避けた方がいいのではないかと思います。
そして、交代制が向いていない人のもう一つの特徴は、“家庭をお持ちの方”です。
特に、“お子さんがいらっしゃる(子育て中)お母さん・お父さん”の場合、長時間家を空けることができないはずなので、こういった人も夜勤にはあまり向いていません。
夜勤の勤務日数は日勤に比べて少ないので、ものは試しでチャレンジしてみるのもいいかもしれませんが、無理は禁物です。
もし「夜勤は厳しい……」と感じる方は、夜勤のないクリニックや介護施設で日勤のみの勤務をした方が良いかと思われます。
「二交代制」のメリット・デメリットについて
ここからは今回の記事の本題である、各交代制のメリット・デメリットのご紹介をしていきたいと思います。
まずは、「二交代制」からです。
二交代制の”メリット”とは?
メリットは、以下の2つが挙げられます。
◆プライベートを確保しやすい
二交代制の場合は「日勤」と「夜勤」の2つしか勤務形態がないため、三交代制に比べれば“まだ”生活リズムは整えやすい傾向にあります。
また、二交代制で夜勤業務を行った場合、“翌日は休み”となります。
有給休暇なども上手く活用すれば、まとまった休みを取ることも可能なため、旅行にも行きやすいですし、習い事や勉強などプライベートも充実させやすいと言ったメリットも存在します。
二交代制の”デメリット”とは?
最大のデメリットは、“夜勤が長時間勤務となる”ことです。
例えば上述で挙げた「16:00~翌9:00」までの勤務だった場合、勤務時間は“17時間労働”となってしまいます。
そのため、“身体への負担が大きくなり、集中力も低下する”という問題が発生するのです。
もちろん、夜勤の合間には休憩や仮眠時間が設けられてはいます。
しかし、病棟の状況によっては十分な休息を得られない場合もありますし、休憩中であってももし不測の事態が発生すれば対応に動かなくてはいけないこともあり得るのです。
“年齢が若い”や“体力がある”という方ならさほど気にならないかもしれませんが、年齢を重ねるにつれて「二交代制の夜勤が厳しい……」と感じる人は増えていくと言われています。
「三交代制」のメリット・デメリットについて
次に、三交代制のメリット・デメリットのご紹介です。
こちらは「日勤」「準夜勤」「夜勤」の3つの勤務時間に分けられ、全て8時間勤務(休憩1時間)がベースとなります。
もちろん施設により若干の変動はありますが、三交代制は上記の点が良くも悪くも様々な影響を及ぼすこととなります。
三交代制の”メリット”とは?
三交代制の最大のメリットは、“二交代制に比べて、夜勤の勤務時間が短くなる”という点にあります。
ベースが8時間勤務となるため、例えば22:00~翌7時などとなり、1回の夜勤の拘束時間が短くなります。
そのため、“身体的・精神的な負担が少なく、疲労回復も早くなる可能性が高い”と言われています。
また、“夜勤に勤務していれば”深夜手当というより「深夜割増賃金」が必ず発生しますので、高収入を得ることも可能ではあります。
三交代制の”デメリット”とは?
実を言うと、三交代制はデメリットの方が(現時点では)大きいと言われています。
その理由は、以下が挙げられます。
②夜勤の日数が、二交代制よりも増える可能性が高い
③夜勤明けの休みが、二交代制に比べ短くなる
④夜勤手当が発生しない可能性がある
三交代制は「日勤」「準夜勤」「夜勤」を、シフトに従って行っていくこととなります。
≪日勤→夜勤→夜勤明け→日勤→準夜勤→準夜勤→休み→日勤……≫
など、3つの勤務サイクルを回すこととなるため、「二交代制以上に生活リズムが狂いやすくなる」と言われています。
加えて、どれもベースが8時間勤務となるため、「夜勤」の勤務日数も二交代制に比べて増加する傾向にあります。
そして④の夜勤手当についてですが、「夜勤手当とは、そもそも法律による規定がなく、企業によって時間が異なる」のです。
混同されやすいのですが、労働基準法による規定があるのは「深夜割増賃金」であり、こちらは“22時~翌5時まで”という決まりがあります。
もちろん、深夜割増賃金は法で定められているので、不払いの場合は労働基準法違反となってしまいます。
しかし、夜勤手当には規定がなく、時間は企業によって様々です。
つまり“準夜勤は深夜手当の対象外となる”場合が多いのです。
また、勤務する施設によっては、夜勤手当に相当する金額が“基本給に含まれている場合”もあります。
そのため、仮に「三交代制で勤務したい」という人がいらっしゃれば、必ず求人の給与(手当)の部分はしっかりと確認しておくことをオススメします。
もし手当の部分が不明確な記載しかしていなかった場合、必ず詳細を伺った方が賢明です。
まとめ:交代制は一長一短である
二交代制と三交代制は選択制であり、どちらを選択するかは施設・事業所によって異なります。
もし「交代制で医療(看護)や介護の仕事を探している」という方がいらっしゃれば、どちらの交代制を採用しているのかを必ず確認するようにしてください。
そして、ここまでにご紹介した通り、どちらにもメリット・デメリットが存在します。
結論は、「どちらの働き方が自分に合っているか?」です。
また、「交代制が身体に馴染まない」という人の場合は、無理をせず日勤のみの仕事に切り替えるのも一つの選択肢だと思います。
現代は様々な働き方改革が行われ、今後この交代制にもさらにメスが入ってくる可能性も否定はできません。
特に、医療や介護の業界は人手不足が顕著であり、待遇の見直しを求める声も(以前から)ずっと上がり続けています。
超高齢化社会に突入している日本にとって、この業界で働く人は貴重な存在であり、今後も必要とされる人は増加していくものと考えられています。
その時のために、より働きやすい環境が整備されていくことを願っております。