「障害者雇用」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
これは、「障害のある人・障害のない人の双方が、同じように能力・適性に応じた雇用の場に就けるようにするため、自治体や事業主が中心となって障害のある人を積極的に雇用すること」を指しています。
ただ、この働き方を検討されている方の中には、以下のような点でお悩みを持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
◆「そもそも障害者雇用と一般雇用の違いは?」
◆「自分は障害者雇用で就職活動をすることができるの?」
今回は、こういった悩みを解消するため、「障害者雇用制度」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「障害者雇用」とはなにか?
そもそも「障害者」の定義とはなにか?
障害者雇用の中の「障害者」という言葉には、定義があります。
これは、障害者基本法の中で、「身体障害、知的障害、または精神障害があるため長期にわたり日常生活、または社会生活に相当な制限を受ける者」とされているのです。
「障害者雇用枠」について
障害のある方が就労の機会を得るための方法の一つとして、「障害者雇用枠」というものがあります。
障害のある方は、そうでない方と比べて就労の機会をなかなか確保できないという傾向があります。
しかし、実際には障害のある方もさまざまな能力を持っており、仕事で活かせることも多々あるのです。
そこで、自立や社会参加を目的として、一般的な労働市場とは別に障害のある方だけを対象にした雇用の仕組みが整えられました。
この枠が、「障害者雇用枠」なのです。
これは障害者雇用促進法に定められている「障害者雇用率制度」に基づく雇用のことを指しており、従業員を43.5人以上雇用している民間企業は、1人以上の障害者を雇用しなければならないと定められています。
(もちろん、公的機関も同様に障害者雇用率が定められている)
以前は「知的障害」と「身体障害」のある方が対象とされていましたが、2018年4月に「改正障害者雇用促進法」が施行され「精神障害」のある方も対象に加わっています。
障害者雇用の「条件」および「対象者」とは?
まず、この制度を利用して労働者として働くためには、自治体から発行される「障害者手帳」を所有していなくてはいけません。
(障害の種類によって、手帳は異なることとなる)
※「障害者手帳」については、以下記事を参照ください※
そして、障害のある方が求人に応募するためのルートは、主に以下の3つが挙げられます。
◆民間企業や自治体などの「採用ホームページ」から応募する方法
◆障害者向けの「企業説明会」や「合同企業説明会」などに参加する方法
ちなみに、「障害者手帳を持っている=障害者雇用の求人にしか応募できない」というわけではありません。
一般求人にも応募することができますし、障害雇用の求人にも応募することができます。
障害のある人の中には、障害あることを会社に知らせずに、障害の無い人と同様の雇用条件で働いている人もいます。
(企業に開示することは”義務”ではない)
「障害者雇用」と「一般雇用」の働き方の違いとは?
「障害者雇用」と「一般雇用」の違いは、以下の通りとなります。
◆「一般雇用」 :企業の応募条件さえ満たせば、誰でも応募できる求人
まず「障害者雇用」ですが、こちらの最大の特徴は「障害があることを企業側が理解した上で雇用されるもの」であるため、障害の特性や体調などへの配慮を受けやすくなります。
例えば、「職場環境が自分に合っていない」と判断する場合、相談する事で体調や障害特性に配慮した設備投資をしてもらえる可能性もあるのです。
ただ、人によっては「障害があることを他人に知られたくない」「一般求人に応募したい」という方もいるはずです。
上記でも記載した通り、「障害があること」「障害手帳を所有していること」を企業に開示することは“義務”ではありません。
「障害があることを企業側に伝えない」という選択肢もあるのです。
そういう人は、「一般雇用」で求人に応募することとなります。
ただし、こちらは障害のある方の採用を前提としたものではないため、応募する企業によっては障害に対する理解や配慮が得られない可能性があります。
厚生労働省のデータによると、障害のある方の就職後の定着率は「障害者雇用」と「一般雇用」で大きく差がついています。
◆「一般雇用」:平均30.8%
※就職して1年後の定着率
※すべての職種が対象
この通り、定着率は約2倍以上の差が付くことが判明しています。
とはいえ、どちらの求人に応募するかは人それぞれです。
自分の状況をしっかりと把握して、自分に合った求人・自分が募集したい求人を選択してみてください。
障害者雇用で働く「メリット」「デメリット」とはなにか?
何を「どう受け取り・どう感じるか?」は、もちろん人それぞれで変わると思います。
そのため、ここでご紹介したものが、必ずしもメリット・デメリットになるわけではありません。
ただ、両方の特性を知ることで、自分に合う求人がどちかを考え・選択していくことはできるかと思います。
この項目にて、障害者雇用で働くメリット・デメリットについて、ご紹介をしたいと思います。
「メリット」について
メリットは、大きく2つ存在します。
一つは、「職場や職場で働く人たちに、障害に対する理解があることが多い」ということです。
上項でもご紹介した通り、「障害者雇用枠」は、障害者手帳を所有している人が募集できる求人であるため、企業はもちろんその職場で働く人も「障害に対する理解がある」ことが多いのです。
このことから、障害者の方にとって“働きやすい職場環境にある”といっても良いかと思います。
そしてもう一つは、「障害の特性やひとり一人の状況に合わせて、職場と本人の間で相互理解のもとに配慮を受けることができる」という点です。
例えば、「定期面談で状態を確認し合うことができる」であったり、「職場環境に慣れるまでは通勤ラッシュを避けた勤務時間にすることができる」などがあります。
もちろん、勤務する職場にとって配慮の仕方は変わってくるかと思いますが、こちらも障害者の方にとって“働きやすい環境を整備してもらえる可能性が高い”といえるでしょう。
「一般雇用」で求人に申し込みをする場合、企業や職場の人から障害に対する理解を得られない場合もあります。
それに対して「障害者雇用」で申し込みをすれば、理解がある人や職場環境のもとで仕事ができるため、「障害者の方にとって、働きやすい環境の下で仕事をしていくことができる」ということにつながるのです。
これが、上項でご紹介した定着率の違いにも表れることとなります。
「デメリット」について
こちらは、大きく2つあります。
一つは、「障害者手帳を持っていないと、障害者雇用の求人に応募することができない」という点です。
そのため、障害者雇用の求人を希望する場合、まずは「障害者手帳を取得する」ことから始めなくてはいけません。
しかし、障害者手帳を取得するには、申請から発行まで“1ヶ月~2ヶ月”ほどかかり、申請するためには「診断書」など必要な書類も用意しなければいけません。
発行までに時間がかかるため、「応募したいと思っていた求人が締め切られていた」という可能性も否定はできないのです。
そしてもう一つは「一般雇用に比べて、求人の数自体が少ない傾向にある」ということです。
確かに、障害者雇用促進法によって、障害者の方も働きやすい環境づくりは整備されてきてはいます。
しかし、それでも「障害者雇用」の枠そのものが数少ないことは確かなのです。
障害者雇用の求人は、ハローワークやインターネットなどでも検索することはできますが、地域によっては非常に数が少なく、「通勤可能範囲でなかなか見つけられない」という場合もあるかもしれません。
まとめ
以上が、「障害者雇用」に関するご紹介となります。
ここまでにご紹介した通り、メリット・デメリットは受け取り手によって変わってきます。
そのため、両方の特性をしっかりと理解し、自分に合った求人に申し込みをするのが一番良いかと思います。
尚、障害者雇用で働くために活用できる社会制度も以下のようにさまざまに存在します。
◆「障碍者職業センター」
◆「就労移行支援」
◆「就労定着支援」 など
「ハローワーク」では、障害のある方専用の相談窓口が用意されているので、そちらで職員と相談しながら求人の選択や面接の設定などを行うことができます。
「障碍者職業センター」では、就職のために必要な訓練や講習を受けたり、リハビリテーション計画の作成・職業適性・検査など、働くための支援を受けることができます。
「就労移行支援」では、一般企業に就職を希望する人に向けて、働くためのさまざまなサポートを行ってくれます(障害福祉サービスの一つである)。
「就労定着支援」は、働いたあとに受けることができる支援であり、企業や本人との定期面談や業務の調整などを間に入って行うことで長く働くことをサポートする制度のことです。
このように、さまざまな施設でさまざまな支援が行われているため、それらを有効に活用することで、より自分に合った求人(職場)を探したり、長く務めることができるようになるのです。
障害のあるなしに関わらずどんな人にも言えることですが、大切なことは「一人で悩まないこと」です。
現在はさまざまな支援サービスが展開されているので、それらを有効に活用し、そして自分自身の状況をしっかりと理解し、自分に合った働き方を見つけられるよう頑張ってみてください。