「自立訓練」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
もしかしたら、「耳にしたことはあるけれど、具体的にどんなことをしているのかは分からない」という人もいらっしゃるかもしれません。
これは、「障害のある方が”自立”して日常生活を送ることができるよう、生活能力を身に着けること」を指しています。
この記事にて、自立訓練の具体的なサービス内容や対象者について、詳しくご紹介していきたいと思います。
「自立訓練」とはなにか?
「自立訓練」は、2種類に大別することができる
冒頭でも記載した通り、これは「障害のある方が自立した日常生活を送るために必要な、訓練・相談・支援を行う」ことをいい、「指定障がい福祉サービス」の一つとなります。
この自立訓練には、大きく以下2つの訓練に分けられることとなります。
◆「機能訓練」:身体機能のリハビリテーションを行う
この訓練は、基本的に「福祉施設」や「障がい者支援施設」などへの“通所”でサービスを受ける方が多いとされています。
ただし、利用者の状況によっては、「自宅」へ訪問し訓練を行う場合もあります。
それぞれの訓練方法について、もう少し掘り下げていきましょう。
「生活訓練」とは?
こちらは、障害のある方が自立した生活に向けて「生活能力の維持・向上」を目指していく場となります。
具体的には、次のような方が対象となります。
◆特別支援学校を卒業した人
◆定期的に病院に通っており、症状が安定している人
◆今は難しいが、いずれ仕事をしながら自立して生活していきたい人
など
長い間「入院していた」や「施設で暮らしていた」という場合、人によっては日常生活に必要な能力が低下していることがあります。
そこで、住み慣れた地域で自立して暮らしていく際に必要となる“能力の訓練”や“悩み事へのアドバイス”、そして必要であれば“専門的な支援機関への紹介”などを行うのです。
ちなみに、“自立した生活”というのがどういう状態なのか?と、イメージがしにくい人もいらっしゃるかもしれません。
ただ、これに関しては障害のある方におかれた状況もさまざまであるため、人によって定義が異なることとなります。
人によっては「生活リズムを整えること」を目的とする場合もありますし、中には「外出の機会を増やし、コミュニケーション力を高めること」を目的として利用する人もいます。
このように、人によって“自立の定義”は異なり、目的もさまざまとなるのです。
「機能訓練」とは?
こちらも、「障害のある方が自立した生活を送ること」が目的であることに違いはありません。
ただし、そのための“手段”が異なります。
違いは、以下の通りです。
◆「機能訓練」:目標に向けて”身体機能”を維持・向上していく
例えば、歩行や寝返りなどの基本動作、家事に必要な動作、話すための練習などが挙げられます。
機能訓練の場合、身体機能を維持・向上していくために、理学療法士や作業療法士などによるリハビリテーションを中心に行っていくのです。
「事業所の種類」について
自立訓練の事業所には、以下のような種類があり、自身の状況に合わせて施設を選択していくこととなります。
2.「訪問型」
3.「宿泊型」
4.「多機能型」
順に補足を加えていきましょう。
1.「通所型」とは?
“通う所”ということで、こちらは自宅から訓練が受けられる施設に通って訓練を受けるタイプとなります。
事業所によって開始や終了時刻は異なりますが、多くの施設が“午前中~夕方まで”訓練を行うことが大半となります。
2.「訪問型」とは?
その名の通り、施設のスタッフが訪問して利用者の自宅に訪問して、訓練や支援を行うタイプのことです。
◆引きこもりがちな方
などが利用の対象となる場合が多いとされています。
3.「宿泊型」とは?
自立訓練を受ける人の中には、以下のような方もいらっしゃいます。
◆障害福祉サービス事業所を利用している方
◆デイケアなどを利用している方
そういった方は、日中に自立訓練を受けることが困難です。
そのため、夜間の宿泊場所を提供して、帰宅後の食事や家事などの生活能力向上のための訓練を行うタイプのことを指すのです。
上記「通所型」や「訪問型」の利用期間は、原則2年・最大3年となっています。
しかし、この「宿泊型」の場合は、原則1年で利用開始から3か月ごとに利用継続の必要性についての確認が行われることとなります。
4.「多機能型」とは?
これは、下記事業のうち、2つ以上の事業を一体的に行う事業所のことを指しています。
◆自立訓練(生活訓練)
◆生活介護
◆就労移行支援
◆就労継続支援A型
◆就労継続支援B型
◆児童福祉法に基づく児童発達支援
◆医療型児童発達支援
◆放課後デイサービス
◆保育所訪問支援
この中でも特に、「就労移行支援」や「就労継続支援」と組み合わせて行われるケースが多いとされています。
生活訓練の「プログラム内容」について
プログラム内容は事業所によってさまざまです。
そして、集団で行うものもあれば個人で行うものもあるため、自分に合った事業所を選択する必要があります。
以下にて、プログラムの一例をご紹介しておきたいと思います。
◆食事、洗濯、掃除など
◆金銭管理
◆身だしなみ
◆公共交通機関、医療機関などの利用
◆地域生活のマナー など
【体調管理系プログラム】
◆スポーツ
◆ストレス対処法
◆生活リズムの整え方
◆リラクゼーショントレーニング
◆アンガーマネジメント など
【コミュニケーション系プログラム】
◆グループミーティング
◆ソーシャルスキルトレーニング(社会生活技能訓練)
◆社会ルール、マナー など
【レクリエーション系プログラム】
◆音楽
◆調理
◆外出行事
◆イベント企画
◆ゲーム など
【就労系プログラム】
◆ビジネスマナー
◆パソコンスキル
◆応募書類作成
◆面接練習 など
利用にかかる「料金」および「期間」について
冒頭でもお伝えした通り、自立訓練は「障害福祉サービス」の一つとなります。
そのため、サービスの自己負担は所得に応じて負担上限月額が設定されているのです。
(ひと月に利用したサービス量に関わらず、それ以上の負担は発生しない)
◆「低所得」:市町村民税非課税世帯……0円
◆「一般1」:市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)(※)……9,300円
◆「一般2」:上記以外
(※)入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム、ケアホーム利用者は除く
利用料金については、お住まいの市区町村(障害福祉窓口)に確認をしてみてください。
そして、自立訓練を利用できる「期間」についてですが、これは原則として“最長2年”とされています。
2年を超えて利用を希望する場合は、お住まいの市区町村に申請をし、審査で必要性が認められた場合に限り“最大3年”まで利用することができます。
ただし、上記でもお伝えした通り、「宿泊型」の場合のみ“原則1年で利用開始から3か月ごとに利用継続の必要性についての確認が行われる”こととなります。
「利用方法」について
サービスを利用する方法・流れは、以下のようになります。
その1.「利用する事業所を決める」
上記でもお伝えした通り、事業所はさまざまに存在し、プログラムの内容も事業所によって異なります。
そのため、まずは「利用したい事業所を決める」ことからはじめてみましょう。
実際に事業所を訪問することもできますので、どんなサービスを受けられるのかを聞いてみたり、事業所の雰囲気を確かめてみるのも良いでしょう。
また、「相談会」「見学会」「体験会」などを開催している事業所も多いので、合わせて確認をしてみてください。
ちなみに、お住まいの地域にある自立訓練事業所を知る方法は、以下の方法が良いかと思います。
◆相談支援を行っている障害福祉サービス事業所に相談する
加えて、ホームページに事業所の情報が掲載されている都道府県や市区町村もあります。
その2.「障害福祉サービスの支給申請を行う」
利用したい事業所が決定すれば、事業所に利用希望の旨を伝え、「いつ頃から利用できるのか?」を確認しましょう。
そして利用時期が明確になれば、「障害福祉課」など、市区町村の窓口で障害福祉サービスの利用を申請してください。
(手続きは、利用予定の事業所がサポートしてくれるケースがほとんどである)
ちなみに、申請の際には、以下書類の提出が求められることとなります。
◆障害があることを確認できる書類
手元に必要な書類がなければ、事前に通院している病院で書類を受け取っておいてください。
その3.契約と利用開始
全ての書類を提出すれば、市区町村の認定会議でサービスを支給するかどうかの審査が行われることとなります。
この時に、一つ注意点があります。
それは、「申請から利用開始までに、1~2ヶ月ほどかかる場合がある」ということです。
この理由は、“障害の状況などの確認”や、“自立訓練サービスの利用計画の作成”などが行われるためです。
その後支給が決定すれば、後は利用を予定している事業所に“支援開始日”を連絡し、契約日を決定します。
そして、「受給者証」が発行されれば、事業所と契約を行います。
最後に、受給者証を持参して事業所に行き、説明(契約に際しての重要事項など)を受けて、契約書類を交わすこととなります。
もし、利用に関して何か不安や質問があれば、最後にこの場で確認をしておきましょう。
後は、利用を開始するだけです。
まとめ
以上が、「自立訓練のサービス内容や対象者」についてのご紹介となります。
このサービスは、生活に必要なさまざまな能力についての訓練プログラムがあるほか、就労を見据えた基礎能力を鍛えることができます。
また、仕事をしながら暮らしていきたい人は「就労移行支援」や「就労継続支援」などの多機能型を利用するなど、地域生活に移った後の希望に合わせてサービスを選ぶことも可能です。
ぜひ、自分の状況や希望に合う事業所を見つけて、自立した生活が送れるようにしてみてください。
ただし、受けられるサービス内容は、事業所によってさまざまに異なります。
事業所を選ぶ際は、プログラム内容だけでなく、「事業所の雰囲気が自分に合っているか」も大切となります。
気になる事業所が見つかれば、見学会や体験会などに参加をして、まずは事業所をことを知ることから始めてみてください。