社会人になってどこかの企業へ勤めると、毎月の労働の対価として「給与」を受け取ることができます。
そして、毎月の定期給与とは別に、一定期間ごとに「ボーナス」が支給されるところもあります。
この「ボーナス」ですが、企業によって「賞与」と呼ばれることもあるのです。
また、求人募集を見ていると、時には賞与・ボーナスではなく、「寸志あり」などと記載されていることもあります。
「賞与」「ボーナス」「寸志」……言葉が違えば、それぞれの意味合いも異なってくるのでしょうか。
そして、これらも税金が差し引かれる対象となるのでしょうか。
今回は、こういった内容について、詳しくご紹介していきたいと思います。
「賞与」「ボーナス」とはなにか?
結論:日本において、賞与とボーナスは同義である
結論からいうと、「賞与」と「ボーナス」は、日本においては同じ意味合いとして用いられています。
つまり、「企業や役所などで、定期給与とは別に支給される金銭」のことを指しています。
職員や従業員に対し、“臨時に支給される給与”を意味します。
ただし、正確な意味合いは少々異なります。
以下で、それぞれを掘り下げていきましょう。
「賞与」とは?
「賞与」という制度は、日本独特のものです。
原型となるのは江戸時代の「仕着せ」という仕組みにあります。
この「仕着せ」というのは、店の奉行人に対し、夏と冬に衣服や金銭を支給していた慣習のことであり、この仕組みが現在まで受け継がれ「賞与」へと変化したのです。
ちなみに、「賞=ほうび」を表し、「与=与える」を意味しています。
つまり、言い方を変えると「従業員の功労に対して贈られる、臨時のほうび」となるのです。
一般的に「夏」と「冬」の年2回支給されることが多いですが、その他にも決算の前後に支払われる「決算賞与」などもあります。
「ボーナス」とは?
これは、英語の「bonus」を元とした外来語です。
上記でも記載した通り、日本においては「賞与」と同じ意味合いをもっていますが、本来の意味は少し異なります。
というのも、「bonus(ボーナス)」の語源は、ラテン語で“良い”を意味する「bonus(ボヌス)」であり、成功と収穫の神である「ボヌス・エヴェントス」に由来しているのです。
日本における賞与は、支給している企業であれば基本的に正規の社員すべてに支給されます。
企業の中には、アルバイトやパートなどの非正規の社員に対しても支給しているところがあるでしょう。
しかし欧米における「bonus」は、業績に対して与えられる“報奨金”やエージェントなどに対する“基本手数料”といったものを表しており、貰える人が限られる上に、個人によってもその金額が異なることとなるのです。
「寸志」とはなにか?
賞与やボーナスとは、意味が異なる
上項で記載した通り、賞与やボーナスは「年末や夏期などに、従業員に対し正規の給与以外に贈られる金銭のこと」を意味しています。
しかし「寸志」は、意味合いからしてまったく異なることとなります。
端的にいうならば、「誰かに対して贈る、些細な心配りのようなもの」となります。
つまり、必ずしも「従業員の功労に対して贈られる、臨時のほうび」という用途にのみ使われるものではないのです。
例えば、もっとも一般的なシチュエーションとしては「結婚式」や「お葬式」のシーンが挙げられるでしょうか。
このように、さまざまな場面で「お礼」「感謝」の気持ちでとして手渡されるものなのです。
ビジネスシーンでも利用されている
もちろん、ビジネスシーンでも利用されることがあります。
一つは、今回の主題でもある「会社から社員に寸志が手渡されるケース」です。
この場合の意味は、「本来の給料ではないけれど、賞与・ボーナスほどの額でもない」となり、「日頃の労をねぎらって、気持ちばかりの金額を支給する」という意味として捉えることができるのです。
また、アルバイトやパートは賞与が支給されないことも多いですが、代わりにこちらを支給している場合もあります。
ビジネスシーンで使われるケースとしてもう一つ上げられるのは「会合の場」です。
「親睦会」「懇親会」「歓迎会」「送迎会」など、さまざまな会合が催されますが、その際に主賓が会を開いてくれたメンバーに対して渡すことがあるのです。
「寸志」における注意点
寸志について、注意すべきポイントがいくつかあります。
一つは、「寸志は”粗品”のような言葉と同じ意味合いを持つ」ということです。
そのため、受け取った側がこの言葉で表現するのは、先方に対して失礼となります。
もう一つは、「目上の人から目下の人へ贈るもの」ということです。
ちなみに、あくまで「寸志」という言葉の使い方に注意しなければいけないだけであり、決して「目下の人が目上の人に金品を手渡すことがダメ」というわけではありません。
表現を、「御礼」「ご挨拶」「松の葉」などと変えればいいのです。
最後にもう一つ。
寸志としてお金を渡す際の“封筒”についてです。
結婚式などお祝いの席で渡す場合は、「熨斗袋(のしぶくろ)」に入れて渡します。
その際は、花結びか赤棒のものを使うのが一般的です。
そして、葬儀の際には白黒の「香典袋」を使用するとよいでしょう。
しかし、仕事関係の場で渡す場合には「熨斗袋ではなく白封筒に寸志と表書きをするだけ」でも問題はありません。
このように、立場や状況に応じて、使い方を間違えないように注意しておくといいでしょう。
どのくらいの「金額」が支給されるのか?
まず、「賞与」「ボーナス」「寸志」のどれに対しても言えることがあります。
それは、「支払うかどうかは、会社の任意で決めることができる」という点です。
就業規則に「必ず支払う」と記載されているわけでないのであれば、支払わないからといって労働法違反になることはありません。
そのため、「どのくらいの金額支払われるのか?」は、企業によってさまざまに異なることとなります。
ただ、賞与・ボーナスに関しては、一般的に“月給の数ヶ月分”であることは多いとされています。
寸志に関しては、あくまで「気持ち」なので、企業によって額はさまざまです。
賞与・ボーナスに関しては、例えば求人情報に「給与の〇ヶ月分」と記載されていることもありますので、この点を確認しておくのもいいかもしれません。
また、入社したばかりの新入社員に対しては、「賞与」「ボーナス」ではなく「寸志」を支払う場合もありますので、この点にも若干注意しておいた方がいいかもしれません。
「税金」について
結論としては、どれに対しても“税金が差し引かれる”こととなります。
「給与ではないから税金がかからない」というわけでも「寸志はボーナスとは違うから税金がかからない」というわけでもありません。
会社が給与規定などによって算出したボーナスや寸志の額を「額面」といいます。
(賞与の明細に記載される金額のこと)
そして、会社から口座に振り込まれる際には、まずこの「額面」金額から社会保険料が控除され(課税対象額)、さらにこの課税対象額から算出した所得税額が天引きされます。
そうして社会保険料と所得税を差し引いた額が、賞与・ボーナスや寸志として口座に振り込まれるのです。
この、実際に振り込まれる金額のことを「手取り」といいます。
この点にも、十分注意しておきましょう。
企業側としては、賞与・ボーナスを支給すべきなのか?
従業員サイドとしては、「賞与・ボーナスがあった方が良いに決まっている!」と考えるかと思います。
ただ、企業側としては、給与基準を決める際に「賞与・ボーナスを支給するべきか否か」について悩む場合も多いかと思います。
ここでは、賞与・ボーナスの有無に関するメリット・デメリットについて、解説をしていきたいと思います。
賞与・ボーナスがある企業における、メリット・デメリットについて
まず賞与・ボーナスのメリットは、「従業員のモチベーションの維持・向上に役立てることができる」というのが挙げられます。
金額は企業によって異なるものの、一般的には「給与の〇ヶ月分」であることが多く、有る無しでは従業員のモチベーションにも大きな影響を与えるかと思います。
対して、デメリットは、「離職が同一期間に固まってしまうリスクがある」ことが挙げられます。
当然のことですが、賞与を受け取らずに退職するよりも、賞与を受け取ってから退職した方がまとまった金額を手にすることができるため、「賞与を受け取った後(時期)に退職する」を選択する従業員は多いかと思います。
そうなると、一定時期に人員が大きく変動するリスクを伴う可能性があり、組織運営に大きな影響を及ぼすこととなるのです。
そしてもう一つ、「賞与は、業績の良し悪しに左右される」という点にも注意が必要です。
賞与は、絶対に従業員に支給しなければいけないものではないため、「業績による」としているところも多いです。
もし、業績が悪く支給額が下がる……もしくは“賞与支給なし”なんてことになれば、当然従業員のモチベーションダウンにつながってしまいます。
極論を言うと、「賞与=目に見えたご褒美」とも取れるため、この点が従業員のモチベーションに大きな影響を与えることとなるのです。
賞与・ボーナスがない企業における、メリットデメリットについて
こちらは、まずデメリットからのご紹介となりますが、上記でも記載した「目に見えたご褒美がない」ことから、給与面でのモチベーションアップが期待しづらいといった点が挙げられます。
そしてメリットですが「賞与なしにメリットなんてない」と思う人もいるかもしれませんが、実は企業によってはそうでもないことがあるのです。
というのは、企業によっては「賞与がない=基本給が高めに設定されていることがある」からです。
年棒制などの会社も同様で、多めの基本給が企業から支給される場合には、ボーナスがでません。
上記でも記載した通り、“賞与=業績と連動させるケースが多い”ため、業績によっては「基本給は安い上に、賞与も支給されない」なんて可能性も十分あり得るのです。
対して、「基本給は一度上げたら下げにくい」ことから、“業績が悪くなったとしても、月給が一度に大きく下がることはあまりなく、安定した収入を得ることができる”というメリットがあるのです。
企業側からしても、“ボーナス支給の手間を省け・ボーナスのためにお金を用意しなくても済む”というメリットもあります。
もちろん、「賞与を支給しない代わりに基本給が高い」かどうかは企業によりますし、その基本給が”当たり前”になれば、給与面でのモチベーションアップには期待はしづらくなるかと思います。
とはいえ、「賞与を支給する」場合であっても、結局は“企業(業績)次第”となるのです。
必ずしも、“賞与があるのが良い”には直結しないのです。
求人を見る際、「賞与の有る無し」を比較・検討の指標とする人も多いかとは思いますが、それ以外の部分(基本給・手当・福利厚生など)もしっかりと確認を取っておいた方が良いかと思います。
まとめ
以上が、「賞与・ボーナス・寸志、それぞれの意味や違い」についてのご紹介となります。
ここまでに何度か記載した通り、「賞与・ボーナス・寸志=企業の任意で支給するかどうかを決めることができる」であるため、支給額や時期も企業によってさまざまに異なることとなります。
言い方を変えると、賞与・ボーナスは「会社の定める給与規定によって金額が決まる」こととなるため、ある程度事前にいくら支給されるのかが分かるようにもなっています(寸志は別である)。
ボーナスを当てにして買い物をしたり資金計画を立てたりしている人も多いかとは思いますので、そういう人は、ボーナスの支給日や回数、どういった方式でボーナス額が決まるのかといったことをあらかじめしっかり把握しておくことをオススメします。
もちろん、税金のことも忘れてはいけません。
また、「賞与が支給されることが、必ずしも優位に働くわけではない」ということにも注意しておいた方がいいとも言えます。
就職・転職を希望している方は、求人情報を見る際に、基本給・手当・福利厚生など、さまざまな項目をしっかりチェックし、自分に合った企業を選択できるように工夫してみてください。