年齢を重ねていくと、認知機能が衰えてしまったり、筋力が衰えて動くのがつらくなったりするものです。
また、人によっては、病気のために規定量の薬が必要となる場合も考えられます。
近くに家族がいてお世話をするケースもありますが、仕事や子供の世話などのために近くにいても年齢が高くなった親を世話できないケース、遠方に住んでいるためにお世話がままならない、なかなか会いに行けないケースも少なくありません。
そんな時は、地域に介護をお願いすることもあるでしょう。
もしも、あなたの親が要介護状態になったら、介護プランを立ててくれる、介護の頼もしい味方のケアマネージャーにお世話になることも考えられます。
この記事では、そんなケアマネージャーとはどんな役割を果たすのか、探し方やポイントを押さえた選び方、付き合い方を解説します。
大事な親を任せるケアマネージャーなので、信頼できる人であってほしいものです。
親が元気なうちから知識を深めておくと、いざというときに助かります。参考にしてください。
ケアマネージャーとは
まずは、ケアマネージャーとは、どんな役割があり、どんな仕事をするのか理解しておきましょう。詳しく知ることで、どんな人にお願いすべきかイメージしておくことも大事です。
ケアマネージャーは、介護支援専門員です。介護保険全般に詳しく、介護を受ける方が介護保険適用のサービスをきちんと受けられるように、家族にアドバイスしたり、サービス業者との橋渡しをしたりします。
そんなケアマネージャーが所属している職場は以下です。
- 居宅介護支援事業所:自宅介護を受ける高齢者の介護サービスを行う事業所
- 特別養護老人ホームなどの施設:在宅介護ができない高齢者のための施設
- 地域包括支援センター:自治体の介護相談の受け皿となっている公共の施設
- 介護用品事業を展開する企業
①ケアプランの作成を担う
ケアマネージャーの役割の1つはケアプランを作成することです。
介護保険利用者やその家族と話し合いながら、リハビリを頑張って自力で歩けるようにするなど、前向きな気持ちになる目標を立てケアプランを決めます。
その際にケアマネージャに求められるのは、いかに課題を分析するアセスメントという力があるか否かです。
②介護保険の給付管理をする
ケアマネージャーは、介護保険の給付管理も行います。
事業所は介護保険からの給付費が払われるので、それを管理する仕事です。
事業所によっては、事務員が行いますが、基本はケアマネージャーの仕事の一部です。
国民保険団体連合会に定められた書類を提出し、事業所の経営がスムーズにいくように管理します。
③利用者と各サービスとのパイプ役
ケアマネージャーには、利用者と各サービスのパイプ役として、お互いの関係がうまくいくように調整する仕事もあります。
たとえば、要介護1のAさんは軽い認知症がありますが、自宅で問題なく生活ができます。
しかし、近所に話す相手もなく、家族は50代の娘のみ。娘は普段会社に行っているので、昼間は一人です。
そのため、昼間は週に3回、デイサービスに通うことになりました。
昼間一人でいる母を心配した娘が担当のケアマネージャーに相談したことがきっかけでした。ケアマネージャーは地域にある軽い運動を楽しめる事業所をこの親子に紹介。
以来、Aさんは楽しみながらデイサービスに通うようになり、笑顔も増えてきました。
ケアマネージャーは、事例のAさんのようなデイサービスのみでなく、ホームヘルパーを派遣する訪問介護の事業所を紹介することもあります。
また、こうした事業所に関するクレームがあれば、ケアマネージャーが仲介役になり、お互いの関係がこじれないような調整もします。
ケアマネージャーの選び方
利用者やその家族にとっての強い味方になるケアマネージャーとの出会いは、要介護認定を受けてからです。
まずは、自治体で要介護認定の申請をして認定を受けます。
その判定結果に基づいて、ケアマネージャーによって作成されたケアプランの元に介護サービスを受けます。ただし、判定結果により、受けられる介護サービスが異なります。
- 要介護1~5:居宅介護支援事業所のケアマネージャーがケアプランを作成。
- 要支援1~2:地域包括支援センターのケアマネージャーがケアプランを作成。
要介護の方のケアプランを作成する居宅介護支援事業所は、地域包括支援センターが紹介することが多いです。
地域包括支援センターには、居宅介護支援事業所のリストがあるので、利用者に合う事業所を家族と共に考えてくれます。
決定した居宅介護支援事業所で、ケアマネージャーを選ぶことになるでしょう。
①ケアマネージャーの探し方
要介護1~5の方のケースで、ケアマネージャーの探し方を解説します。
まずはケアマネージャーの所属する居宅介護支援事業所を決める必要があります。どんなことをポイントに決めたらよいでしょうか。
以下に考えられるポイントを挙げます。こうしたポイントから、介護を受ける人に合う事業所を考えると良いでしょう。
- 家から近い
- 医療との連携がある
- 評判が良い
- 電話の対応が親切
- 希望のサービスがある
- 24時間体制になっている
希望の居宅介護支援事業所が決まり、サービスを受けられる事になったら、契約書を交わします。ただし、一度契約を交わしても、不都合があれば変更も可能です。
事業所が決まったら、そこに所属するケアマネージャーを選定することになります。
②ポイントを押さえたケアマネージャーの選び方
ケアマネージャーを選ぶ際は、どんなことをポイントに選んだらよいか考えてみます。
まずは、以下に一般的に考えられるポイントを挙げます。
こうしたポイントを押さえたケアマネージャーの選び方もあるので、知っておくと役に立つはずです。
- 利用者との相性は良いか
- 話がわかりやすいか
- 親身になって話を聞いてくれるか
- 質問に答えてくれるか
- フットワークが軽いか
- 電話がつながりやすいか
- 相談しやすい雰囲気か
- 介護の知識が豊富か
③実際に会ったり評判を聞いたりして選ぶ
ケアマネージャーに実際に家を訪問してもらい、会話をしてみるのもおすすめです。
その際には、実際に介護保険を利用する親の様子もチェックしましょう。
もしも家族がケアマネージャーを気に入っても、利用者本人が気に入らない様子であれば、他の人を当たった方が良い場合も考えられます。
また、ケアマネージャーの評判も大事です。
知り合いで同じ事業所を利用している人がいたら、ケアマネージャーの評判について聞いてみましょう。人それぞれ感想は違いますが参考になることは間違いありません。
④ケアマネージャーは変更できる
ケアマネージャーは、一度契約しても変更することができます。その際は事業所にその理由を話して対処してもらいましょう。
また、居宅介護支援事業所を変更することも可能です。その際は別の居宅介護支援事業所か地域包括支援センターに相談することをおすすめします。
以下にケアマネージャー、居宅介護支援事業所それぞれを変更した事例をご紹介します。
ケアマネージャーの変更事例
50代のMさんは、80代の母親のケアマネージャーを変更してもらいたいと思いました。その理由は、ケアマネージャーと連絡が取りにくいことです。
母と離れて暮らすMさんは、兄一家と暮らす要介護1の母の様子が心配でした。兄も兄嫁も母の面倒を見てくれているとは思えなかったからです。そのことで相談したくて、何度もケアマネージャーに電話しましたが通じません。
やっと通じたと思っても「ちょっと忙しくて。」と言われ、相談にのってもらえず、困ってしまいました。そのため、事業所に相談してケアマネージャーを変更しました。
居宅介護支援事業所を変更した例
50代で自営業のNさんは、認知症の父と暮らしていますが、Nさんの仕事がある昼間の間は居宅介護支援事業所のデイサービスを利用しています。
Nさんは、デイサービスから帰ってきて元気のない様子の父が気になっていました。そのため、ケアマネージャーに相談してデイサービスを少なくしてもらえるように頼みましたが、聞き入れてもらえず困ってしまったのです。
仕方なく事業所で相談してケアマネージャーを希望しましたが、そこの事業所は手いっぱいのため、変更はできないと言われました。困ったNさんは、地域包括支援センターに相談して事業所を変更したのです。
ケアマネージャーとの良い付き合い方
せっかく決まったケアマネージャーとは、親のためにも良い付き合い方をしたいものです。
ここでは4つのポイントを挙げてみました。
①包み隠さずに親のことを話す
お願いする親については、ちょっと恥ずかしい、こんなことを行ったら嫌われるかなと思うような情報でも、包み隠さずに話した方が良いです。
ケアマネージャーとの信頼関係にも繋がります。
また、ケアマネージャーの立場で考えてみても、利用者の情報は参考になるので、できるだけ把握しておきたいものです。
例えば、プライドが高い、コミュニケーションが苦手、動物好き、または極端な動物嫌いなど。
その他にも、こうしたこだわりがある、何度も同じ昔話をするという情報も良いでしょう。
その他には、生い立ちやかつての職業といった個人情報を話しても大丈夫です。ケアマネージャーには守秘義務があるので、周囲に漏れることはありません。
②困ったことは何でも話す
こんなことで困っているといったら、ケアマネージャーにどう思われるかなと不安に思うことも話しておいた方が良です。
例えば、理由はわからないけれども、親がデイサービスを嫌がる。デイサービスで怪我をしたから行きたくないと言っているなど。
認知症の人は自分のことをうまく話せません。
そのため、嫌がる理由や過去の出来事をうまく伝えられない場合を考えられます。
もしかすると、苦手な職員や利用者がいるのかもしれませんし、転んだときに誰も助けてくれなかったのかもしれません。
困っていることをケアマネージャーに話しておくと、何かしら解決の糸口が見えてくれる可能性が高いです。
利用者をよくチェックしたり、周囲から情報を得たりしながら、独自のルートから情報を得て、アドバイスしてもらえます。
③質問があれば積極的にする
どんなにささいなことでも、質問は積極的にした方が良いです。
たとえば、デイサービスでの様子を知りたい、食事をきちんと食べているか知りたいなど、自分の見ていないところでの様子を質問するのも良いでしょう。
ケアマネージャーはきちんと調べて答えてくれます。
また、老人ホームへの入所、ホームヘルパーの派遣なども考えているのであれば、質問してみてください。利用者の様子を考えて適切なやり方を提案してくれるでしょう。
その他には、デイサービスで注意されたといっているけれども、本当なのかとか、○○さんにこんなことを言われて困ったと言っているなど、親から聞いた情報の真偽を確かめるのも良いでしょう。
④連絡を密にとる
ケアマネージャーとは、連絡を密に取っておくと、いざという時に助かるものです。
たとえば、認知症の親と離れて暮らしているケースで、親の様子が気になる場合です。
ケアマネージャーにお願いすると、訪問日以外でも様子を見てもらうこともできます。
その他には、電話で話した時に気になることを言っていたので、もしかすると「オレオレ詐欺」に引っかかったのかもしれないと思った時や、話の端々で聞いたこともないような人の名前が出てくるので、何かトラブルに巻き込まれているのではないかと心配になった時など。
こういった数々の不安や心配もケアマネージャーへの連絡で、解決できることがあります。
仮にケアマネージャー、一人で解決できないような問題であれば、解決できる機関を教えてくれたり、掛け合ってくれたりします。
このようにケアマネージャーは頼れる存在です。
まとめ
ケアマネージャーは、介護を受ける利用者と各サービス先とをつないでくれるパイプ役です。
また、介護保険のプロフェッショナルなので、受けられるサービスについても熟知しています。
そんなケアマネージャーは、要介護1~5のケースだと居宅介護支援事業所のなかで選定され、ケアプランを作成してくれます。
ケアマネージャーを選び方は、利用者との相性、話の分かりやすさ等のポイントを押さえて選ぶ方法があります。
また、実際に訪問してもらう、利用者の評判を参考に選ぶという方法もおすすめです。
そんなケアマネージャーや居宅介護支援事業所は、理由が認められれば、変更することも可能です。
こうしたことを踏まえて皆さまの大事な親を任せられるケアマネージャーを選びましょう。そして、選んだあとはケアマネージャーとよりよい付き合い方ができるようにしたいものです。