以前に、「登録ヘルパー」という働き方についてのご紹介をしました。
登録ヘルパーは介護業界における独自の雇用形態ですが、介護および看護の業界では「夜勤専従」という特徴的な“勤務形態”が存在します。
夜勤専従とは、どんな勤務形態で、どんな働き方をするのか?
今回は、夜勤専従の特徴について詳しくご紹介をしていきたいと思います。
そもそも「勤務形態」って何?「雇用形態」と何が違うの?
「雇用形態」については、以前に別の記事でご紹介をしたことがあります。
端的に説明すると、「正社員/アルバイト/パート/契約社員」などの、”雇用契約”の種類のことを「雇用形態」と言います。
対して「勤務形態」とは、「どんな時間帯に、どんな働き方をするか?」を表すものとなります。
一般的に認知されている勤務形態は、「日勤」「夜勤」「交代制(シフト制)」などでしょうか。
他にも、働き方改革や新型コロナウイルスなどの影響から、「フレックスタイム制」「在宅勤務」などの新しい働き方も増えてきています。
「勤務形態」と「雇用形態」は、時に似た意味合いで利用される人もいるようですが、両者の意味はそれぞれ異なるのです。
そして、「夜勤専従」は、そんな勤務形態の一つとなります。
これは、介護や看護の業界だけでなく、他の業種でも働き方の一つとして利用されているのです。
「夜勤専従」とはなんなのか?
“夜~朝方まで業務を行う人”のことを指している
「夜勤専従」とは、読んで字のごとく“夜勤の時間帯のみを専門に働く職員”のことを指しています。
例えば、入所型の老人ホームや病院などは、24時間体制で利用者や患者の介助を行う必要があります。
また、数は少ないですが、訪問介護や訪問看護業界においても夜中に利用者宅に訪問し、介助を行う場合もあります。
(訪問看護の場合は、オンコールの方が中心となりますが)
上記業務を円滑に行うために、日勤・夜勤を“交代制(シフト制)”で担当し、シフトに応じて働く時間を決めていたのです。
人手不足と負担増加の懸念
日勤・夜勤を交代制(シフト制)で回すということは、日によって“働く時間帯が大きく異なる”ということになります。
つまり、“生活リズムが狂いやすく、働く職員の負担が大きくなる”という問題点が浮上してきたのです。
そもそも、介護業界にしろ看護業界にしろ「人手不足」は常に業界の悩みの種です。
“業務の負担が大きい仕事”なうえに、“交代制で勤務を続ける”ことによって、働いている職員の精神的・肉体的な負担はさらに増加し、体調を崩してしまう恐れがあります。
そうなると、余計に離職者が増え、さらなる人手不足を招く原因にもなってしまいます。
この「人員確保」や「経営の安定化」などを図っていくために、新たな働き方の手段として「夜勤専従」という勤務形態が誕生したと言われています。
「夜勤専従の職員」は、ほんとに夜勤だけ?求人募集は多いの?
交代制などの場合、日勤と夜勤がシフトで入り混じっているので、人の関係で急遽シフト(スケジュール)の変更を余儀なくされることもあると思います。
「元々夜勤の予定はなかったのに、急遽勤務することになった……」なんてことも、状況によってはあり得る話です。
しかし、夜勤専従の場合は、夜勤を専門としているため日勤の仕事をお願いされることはありません。
加えて、前述の人手不足や職員の負担軽減の点から、夜勤専従の求人募集は増加傾向にあります。
特に現代は「超高齢化社会」に突入しており、これからも高齢者の数は増加し続けていきます。
これに対応するため、訪問介護(看護)ステーション・老人ホーム・サービス付き高齢者住宅など、24時間体制で介助を行う施設も増えていくものと考えられています。
このことから、通常の職員はもちろんのこと、夜勤専従職員も相応に必要とされる数が増加していくものと思われます。
夜勤専従の”特徴”について
メリット・デメリットは後述でご紹介しますが、その前に“夜勤専従の特徴”について、いくつか触れていきたいと思います。
その1.「勤務時間」について
“夜勤”と一言で言っても、夜は非常に長く「いつからいつまで働かなければいけないのか?」と疑問を感じる人も少なくないと思います。
夜勤の勤務時間帯は、以下の2つに大別されます。
◆「ショート夜勤」
「ロング夜勤」の場合、夕方16時or17時~翌朝9時or10時くらいまでの勤務がベースとなります。
そして「ショート夜勤」は「準夜勤」とも呼ばれており、夜21時~翌朝9時までの時間帯がベースとなります。
ただし、上記時間帯はあくまでベースのため、勤務時間は事業所によって若干異なる場合はあります。
ここで一つ、疑問を持つ人もいらっしゃると思います。
「ロング夜勤って、勤務時間がめちゃくちゃ長くない?」ということです。
本来、労働基準法で定められている1日の労働時間は、“原則8時間”と定められています。
例えば16時~翌9時まで勤務した場合、“17時間勤務”となり、どう考えても労基法で定められた時間を大幅にオーバーしてしまうことになります……。
これについては、仮眠の時間や休憩の時間がしっかりと取られているので、実際に17時間フルで勤務するということはありません。
とはいえ、仮眠や休憩の時間が多めに設けられているといっても、労基法の枠を大きくはみ出してしまうことには違いありません。
そのため、夜勤専従の場合は、「変形労働時間制」という制度を基準とし、“1週間あたりの労働時間を、原則40時間以内として定めている”ことが一般的となります。
その2.「勤務日数」ってどのくらい?
上記でご紹介した通り、夜勤の仕事は勤務時間が長く、仮にショート夜勤であっても12時間ほどの勤務時間を要求されることとなります。
これを、日勤と同じように週5日ペースで続けると、確実に体調を崩してしまいますし、私生活にも大きな影響が出てしまいます。
そのため、夜勤専従の勤務日数は、基本的に少ないことがほとんどです。
例えば夜勤専従の正社員の方であっても、夜勤は月に10回程度が基本となります。
(あくまで基本であり、多少増減することはある)
週ペースで換算すると、週2~3回くらいとなります。
また、アルバイトやパート勤務であれば、さらに数は少なくなる可能性も高いかと思います。
その3.「夜勤の仕事内容」について
介護・看護の対象となる人は、「高齢者」「障害や難病を持った方」「怪我や病気を患っている方」ばかりです。
そして夜間ともなれば、基本的に施設利用者のほぼ全ての人が就寝しています。
このことから、夜勤専従職員が行う仕事は、以下のようなものが挙げられます。
◆就寝準備・起床準備の介助
◆様態が急変した方への緊急対応(介助など)
◆食事の準備 など
同じ介護・看護であっても、日勤帯と夜勤帯とでは行う業務は異なります。
その4.研修は”日勤帯”となることが多い
いわゆる「慣らし日勤」と呼ばれるものです。
夜勤帯は、基本的に職員の数が日勤帯に比べて少ないことが特徴に挙げられます。
そのため、夜勤のシフトに入る前に、日勤で「仕事に慣れてもらう」ための研修期間を設けている施設が多いのです。
もちろん施設によりけりで、慣らし日勤がない事業所もあります。
また、研修期間も事業所によって様々で、1週間~1か月ほどと大きな開きがあります。
この慣らし日勤(研修)は、どんな雇用形態であっても行う事業所がほとんどです。
もし夜勤専従の求人を探している人がいらっしゃれば、就業前に内容を確認しておくことをオススメします。
まとめ
前項で大まかな仕事内容について紹介しましたが、「夜勤専従」と一言でいっても施設によって行う業務に違いはあります。
例えば介護の場合、特別養護老人ホームや老人保健施設などの場合は、要介護度の高い利用者が多いため「身体介助」が業務の中心となることが多いです。
しかし、グループホームや小規模多機能型居宅介護の場合は、要介護度が低めの利用者も多いため、「生活支援」の要素が多くなる可能性が高いと言われています。
看護も同様です。
病院はもちろん、訪問看護ステーションや上記で挙げた各種介護施設であっても、夜勤専従の看護師として活躍している人は多く、施設の利用者によって行う看護業務には大なり小なり違いがあります。
もし「夜勤専従の職員として働きたい」と考えている人は、まずは求人・転職サイトなどで色んな施設を確認してみてください。
必要な資格や経験も職種によって違いますし、働き方・給与・福利厚生なども事業所によって千差万別です。
ただ、一つ言えることは、“事業所側にとって、夜勤の人員確保は困難である”ということです。
それでなくても、介護・看護の業界は慢性的な人手不足に悩まされています。
特に、昼夜が逆転する生活を余儀なくされる夜勤は、特に人員確保が困難です。
「夜勤の仕事であっても、特に問題はない」という人であれば、比較的採用率が高い勤務形態と言えるかもしれません。
ちなみに、夜勤専従には“デメリット”も確かにありますが、同時に“メリット”も存在します。
次回は、この「夜勤専従で勤務するメリット・デメリット」について、詳しくご紹介をしていければと思います。