昨今、人生の終わりに備えて「終活」をする人が増えています。
終活には、「老後の資金計画を立てる」「財産整理」「治療・介護の意思表示」「遺言書の作成」「お葬式やお墓の準備」など、やらなければいけないことがたくさんあります。
そして、その終活の一つに「エンディングノート」の作成というものがあります。
◆記載するべき内容はなにか
◆「遺言書」とはどういった違いがあるのか
今回は、こういった内容について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
尚、「終活」については、以前に別の記事で詳細をご紹介しておりますので、以下を参考にしてみてください。
「エンディングノート」とはなにか?
これはその名の通り、「自分の人生の終末について記したノート」のことを指しています。
(別名「終活ノート」とも呼ばれている)
終活をする中でこれまでの人生を振り返り、自分の考えや家族への想いをまとめて残しておくことを目的に作成する「備忘録」のことをいいます。
エンディングノートには何を書いても構いませんし、遺言書のように法的拘束力もありません。
また、記入しやすい専用のノートが市販されているのでそれを利用するのも良いですし、普通のノートに記載したり手紙形式にしたり、デジタルツールで作成しても問題ありません。
記載内容を自由に決めることができ、法的効力もないので、気軽に書いて・何度でも書き直したりもできます。
ちなみに、エンディングノートを作成するのに年齢は関係ありません。
「これまでの人生を振り返る」という目的で使用されることもあり、年齢が若いうちから日々の備忘録として作成している人もいます。
「遺言書」とはなにか?
次に、「遺言書」についてご紹介をします。
これは、「被相続人(故人)の最終的な意思表示を記した書類」のことを指しています。
相続に関する重要な書類であり、これがなければ相続に関するトラブルが起こり、残された大切な家族が揉めてしまうこともあります。
もし仮に遺言書が作成されていない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行って、分割方法などを決めることになります。
遺言書がなければ、被相続人の意思を示すことができないのです。
しかし、遺言書を作成しておけば、被相続人の意思にもとづいた相続分割ができるようになり、また相続人以外への遺贈も可能となります。
尚、一般的な遺言書の種類としては、以下の3つが挙げられます。
◆「公正証書遺言」:公証役場で公証人に作成してもらう公正証書としての遺言書のこと
◆「秘密証書遺言」:遺言の内容を誰にも知られないように作成する遺言書のこと
遺言書の作成に関しても、作成したいと考えたタイミングで早めに作成するでも問題ありません。
なぜなら、突然の病気や事故で亡くなったり、老化により判断能力が失われたりするリスクがあるからです。
ただし、「自筆証書遺言」の作成にあたっては、いくつか注意しておくべきポイントもあります。
「遺言者の遺言能力が必要(15歳以上)」「作成日の明記が必要」「署名・押印が必須(押印は実印、認印でも可能)」などです。
ちなみに、以前は遺言者の自筆で作成する必要がありましたが、2019年の相続法の改正に伴い、自筆証書遺言に添付する財産目録は手書きで作成する必要がなくなりました。
作成した財産目録に自筆の署名・捺印をする必要はありますが、今までよりも少ない負担で財産目録を作成できるようになっています。
「エンディングノート」と「遺言書」の違いはなに?
ここまでにご紹介してきた通り、「エンディングノート」と「遺言書」はまったく異なるものであるということがご理解いただけるかと思います。
両者の違いをまとめてみると、以下のようになります。
◆エンディングノート:なし
◆遺言書 :あり
【形式・様式】
◆エンディングノート:なし
◆遺言書 :あり ※既定の要件を満たさないと無効となる※
◆エンディングノート:数百円~
◆遺言書 :「自筆証書遺言」数百円~、「公正証書遺言」数万円~
◆エンディングノート:自由
◆遺言書 :主に「財産分配」に関すること
エンディングノートの場合、自分の好きなように作成することができます。
何を書いても良いですし、どんな用紙(ノートや手紙形式など)に記載してもいいですし、デジタルツールで作成しても問題ありません。
また、保有する財産や不動産などについても記載することもできます……が、法的効力は一切ないため、遺言書のような使い方はできません。
対して遺言書の場合は、一般的には「財産分与」について記載されるものであり、法的効力を持っています。
ただし、民法で定められている既定の要件に従って作成する必要があり、既定の要件を満たしていないと、その遺言書は無効となってしまいます。
つまり、エンディングノートほど気軽に作成できるものではないのです。
両者は、似て非なるものです。
作成する際の目的が大きく異なるので、それぞれの違いをしっかりと理解したうえで作成するようにしてください。
エンディングノートを書く「メリット」とは?
エンディングノートを記載するメリットは、遺言書のように決められた事柄だけに縛られることなく「自由に自分の意思や希望を書き留めることができる」という点が挙げられます。
◆「家族の負担を軽減する」
◆「自分の経済状況を把握できる」
◆「今後の人生と向き合える」
大切な家族や友人・知人への想いを綴るだけでなく、“自分のこれまでの人生を振り返り・今後の人生と向き合う時間を作る”ことができるのです。
「終活」と聞くと、ネガティブなイメージを持つ人もいらっしゃるかと思います。
しかし、終活とは「死と向き合い・最後まで自分らしい人生を送るための準備を行う」ことであり、今後の人生をより充実させるためにも大切な活動の一つなのです。
決して、ネガティブに捉える必要はありません。
残りの人生を充実したものにするために、自分の人生を見つめなおし・考えるキッカケづくりとして、エンディングノートの作成に取り組んでみてください。
なにを書けばいいのか?
ここまでにご紹介した通り、エンディングノートは自由に作成することができ、どんな内容を記載しても構いません。
とはいえ、自由に書けるからこそ「なにを書いたらいいのか分からない……」という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう方は、「自分史」を作るつもりで、まずは自分自身のこれまでの人生を振り返ってみるのも良いかと思います。
また、家族・友人・知人などへの感謝の気持ちなどの“思い”を綴ってみるのも良いでしょう。
そうすることで、「これからの人生をどう過ごしていきたいか?」が明確に把握できるようになるかと思います。
後は、「自分自身の基本情報」を記載しておくのも良いです。
例えば、本籍地・年金証書・運転免許証番号・健康保険証番号・各種情報(IDやパスワード)などの基本情報を書いておけば、万が一のことがあった際にも家族が一目瞭然で把握することができるようになります。
他にも、「終末期医療」「葬儀」「葬式」などに関する自身の希望を記載しておくのも良いかと思います。
「自身になにかが起こったとき、こうしてほしい」という話題は、家族を不安にさせてしまう可能性もあるため、なかなか面と向かって話すことが難しいと感じる方もいらっしゃるはずです。
また、認知症などで意思の疎通ができなくなった場合も考えて、介護のこと・費用のこと・アレルギーや持病・常備薬についても記入しておくと、いざというときに家族の負担を減らすことができるはずです。
もしペットを飼っている方でしたら、残されたペットを引き取り、きちんと世話してくれる人も決めておく必要もあります。
加えて、法的効力はないものの、相続や遺言書について記載しておくのも良いでしょう。
このように、エンディングノートには記載できる内容はたくさん存在するのです。
ただし、いきなりすべての事柄を記載する必要はありません。
なにを書いてもいいですし、いつから書き始めるのも自由なので、自分のペースで書き進めてみてください。
エンディングノートの選び方・保管方法について
エンディングノートに決まった形式はなく、作成方法は自由です。
市販のノートに記載するもよし、手紙形式にするのもよし、写真を使ってアルバムのように作成するのもよし、パソコンやスマホを使ってデジタルに情報を残すもよし……と、作成方法は自由に決めてもらって問題ありません。
また、「なにを書けばいいのか分からない……」と書く内容に困る方は、市販のエンディングノートを遣うのも良いかと思います。
市販のものであれば書く内容があらかじめ設定されているので、それに従って記入していけば誰でも簡単に・迷うことなくエンディングノートを作成することができます。
そして保管方法についてですが、これは人によって異なります。
“エンディングノート=書いたら終わり”ではなく、定期的に見直したり、時には内容を書き直すこともあるはずです。
「誰にも見られたくない」と、周囲には簡単に見つからない場所に厳重に保管する人もいらっしゃるかもしれません。
この点は、自己責任のもとで保管先を決めておくといいでしょう。
ただし、見つけるのに苦労する場所だと、いざというときに誰にも見つからない恐れもありますので、信頼できる親族など一部の人はその存在を伝えておくのもいいかもしれません。
まとめ
人には「寿命」があり、また生きている限りいつなにが起こっても不思議ではありません。
“エンディングノート=自分の終末を記すもの”であるため、ネガティブなイメージを持つ人もいらっしゃるかとは思いますが、そうではありません。
「これまでの自分の人生を振り返り、これからの人生をどう過ごしていくか?」を考えるために存在するのです。
そのため、エンディングノートの作成に年齢は関係なく、若いうちから作成してもなんの問題もありません。
記載方法や形式は定められておらず自由に作成できるので、自分好みのエンディングノートを自分のペースで作ってみてください。