以前、「助産師」という仕事についての記事を公開しました。
上記の記事内では、
◆助産師の仕事内容
◆「就業者数」や「勤務地」
などについて詳しくご紹介をしてきましたが……、肝心の「助産師になるために必要なことは?」についてはほとんど触れておりませんでした。
ということで今回は、「助産師のなり方」に焦点を当てて、ご紹介をしていきたいと思います。
助産師になるために必要なものは何?
まずは、「助産師になるために必要なもの」について、詳しくお話をしていきたいと思います。
必要な「資格」について
「妊娠から出産・育児に至るまで、”母子の健康を支える仕事”」である助産師は、妊婦さんや赤ちゃんの大切な“命”を預かる仕事でもあります。
そのため、助産師には「2つの国家資格」に合格しなければ職に就くことができません(必須資格)。
その2つの国家資格とは、「看護師資格」と「助産師資格」です。
そして、この2つの国家試験の“受験資格”を得るためには、文部科学大臣または厚生労働大臣指定の養成学校を“卒業”する必要があります。
つまり、専門の大学・短大・専門学校などを卒業し各国家試験に合格することで、“助産師になるための条件を満たすことができる”となるのです。
この資格取得までの流れですが、大きく“2つ”存在します。
2つの「資格取得ルート」について
2つある資格取得ルートですが、この違いを端的に言うならば「2つの国家資格の取得を、同時に目指すか否か」となります。
2つのルートをそれぞれ分けてご紹介していきましょう。
ルート①:看護師・助産師の資格を同時に取得する
これは、学生の時から「私は助産師になる!」と決めている人向けのルートです。
高校卒業後、4年生の看護大学に進学し、「看護師課程」と「助産師課程」の両方を修了します(“助産師養成課程”に進む)。
その後、2つの国家試験に合格し、資格を取得することで助産師となる条件が整う……。
このような流れとなります。
間違いなく、助産師になるための最短ルートは、こちらです。
ただし、4年間で看護師・助産師の勉強を並行して行っていくため、効率的には見えますが決して楽な道のりではありません。
また、3年次に定員数の少ない選抜試験を通過しなければいけないため、非常に狭き門となっているのも事実です。
ちなみに……。
上述でも記載した通り、助産師になるには「看護師資格」と「助産師資格」の2つに合格する必要があります。
つまり、仮に助産師資格に合格し・看護師資格が不合格だった場合は、資格を得ることができません。
ただし、助産師資格の合格実績には“有効期限”はありません。
そのため、翌年以降に看護師の国家試験に再チャレンジし合格すれば、助産師免許の申請を行うことが可能となります。
ルート②:後から「助産師資格」を取得する
これは、主に看護師として勤務しているor看護師学校に通っている人が「助産師にも興味がある……」となって、後から助産師資格の取得を目指すルートのことです。
この場合は、まず、看護大学・短大・専門学校などで看護師課程を修了し、看護師試験に合格→看護師になることからはじまります。
そして、その学校を卒業後に短大・専門学校(1年)や大学院(2年)などで助産師課程を修了し、助産師の国家試験を受験→合格して資格を取得するというパターンとなります。
こちらの方が、看護師と助産師の勉強を別々に行うことができるため、時間(期間)こそ掛かりますが資格取得の難度は低いといえます。
重要なのは「看護師」である
どちらのルートを選択するにせよ、もっとも重要となるのは「看護師資格が必須である」ということです。
もちろん、重要なのは看護師の“知識”だけでなく“経験”も、ですが……。
病院や診療所には数多くの科目があり、「産婦人科」や「助産師外来」などは、その数ある診療科目の中の一つにすぎません。
その診療科の中で「助産師」という専門の資格(知識)が必要となるのですが、その重要な基礎となるのは「看護師」の知識と経験なのです。
看護師という大きな幹から、助産師などの様々な専門分野に枝分かれしている……というイメージでも良いのかもしれません。
なんにせよ、看護師の資格なくして助産師になることはできません。
この点だけはご留意いただければと思います。
尚、過去に「看護師のなり方」についての記事も公開しておりますので、以下にリンクを貼っておきたいと思います。
「助産師国家試験」の試験概要・合格率について
次に、助産師国家試験の試験概要や合格率について、ご紹介していきます。
尚、看護師国家試験の概要・合格率については、上記の「看護師のなり方」の方に記載しておりますので、そちらを参照ください。
試験内容について
まず、助産師試験の内容ですが、以下から出題されることとなります。
◆助産診断・技術学
◆地域母子保健学
◆助産管理学
合格基準は、「一般問題が75点満点+状況設定問題を70点満点=総得点145点」に対して、“87点以上”が合格となります。
試験は毎年2月中旬ごろに開催され、受験料は5,400円となります。
ちなみに、「看護師国家試験」の方も毎年2月中旬ごろ行われるため、看護師・助産師の資格を同時に取得するルートを選択する場合、試験勉強を同時並行して進める必要があります。
この点も、“同時取得は道のりが困難”と言われる所以かと思われます。
試験の合格率はどのくらい?
これは、厚生労働省に「受験者数・合格者・合格率の推移」が公表されています。
画像をご覧の通り、合格率は非常に高く“95%前後”となっています。
ちなみに、2021年2月にも看護師・助産師・保健師の国家試験は行われており、同年3月26日に国家試験の合格発表が行われました。
2021年の各合格率は以下の通りです。
合格率はどれも非常に高く、特に新卒者の合格者数は非常に高いものとなっています。
◆看護師:合格者数56,868人、合格率95.4%
◆助産師:合格者数2,091人、合格率99.7%
◆保健師:合格者数7,094人、合格率97.4%
ただし、“合格率が高い=取得難度が低い”という訳ではありません。
合格率が高い理由は、“専門の学校で合格に向けての勉強を行っているから”です。
冒頭にも記載しましたが、これら資格は全て「国家資格」です。
誰でも簡単に取得できる訳でも、まして「合格率が高いなら、それほど勉強しなくても大丈夫」なんてことは絶対にありませんので、その点だけはご留意ください。
「実務未経験」でも助産師として勤務できる?注意点は?
やっとの思いで助産師の免許を取得できたとして、次に気になるのは「未経験でも就職できるの?」という点ではないでしょうか。
結論から言ってしまうと、助産師は未経験でも職に就ける可能性はあります。
ただし、少し注意しておかなくてはいけない点もあるため、この項目にてそれらをご紹介していければと思います。
未経験でも採用の可能性はある
助産師の求人募集では、資格こそ必須であれど「助産師としての実務経験は不問」としているところも多いのが特徴です。
どちらかというと「看護師の実務経験の有無」を求められることの方が多いかと思います。
その理由は、看護師としての経験があるからこそ、医療現場の多忙さや様々な事情が理解できるからです。
ただし、全ての施設がそうとは限らず、施設によっては「資格のみ必須」や「助産師としての実務経験が必須」が求められる場合もあります。
これは勤務先によって様々なので、助産師の仕事をお探しの方は、求人情報の「応募条件」の項目をしっかりと確認し、不明点があれば問い合わせなどをしてみるといいでしょう。
実務未経験者が「選択してはいけない勤務地」とは……?
病院・診療所・助産所など……、助産師が勤務できる施設は数多く存在します。
その中で、実務未経験者が極力「選択してはいけない勤務地」があります。
それが、以下の2つです。
◆スタッフの人数が少ない現場
なぜかというと、“教育体制に不安が残るから”です。
看護師としての実務経験がある方なら、医療現場の多忙さは身に染みて理解いただけるかと思います。
それは、「産科/婦人科/産婦人科」であっても同じことです。
規模が小さい・スタッフの人数が少ない施設だと、現場そのものが毎日忙しく、十分な教育を受けることができない可能性が高くなってしまいます。
そのため、例えば「未経験者も歓迎!」と求人情報に記載がされていたとしても、規模の小さいクリニックであれば候補から外した方が賢明なようには思います(もちろん”どうしてもそこに勤務したい”と思う何かがあるなら話は別ですが)。
ただ、上記のような施設の場合、“即戦力となる人材を必要としている”ことがほとんどのため、経験者の方が採用されやすい傾向にはあります。
(教育に時間を割ける余裕がない……というのも理由の一つ)
実務未経験者が向いている・採用されやすい就業先とは?
簡単な話……上記で記載した“逆”が、実務未経験者が向いている・採用されやすい就業先と言えます。
つまり、以下のような施設です。
◆教育・研修制度が整っている医療機関
「規模の大きな医療機関=職員数も多い」ということになります。
そうなると、新人の教育に人を割り当てる余裕もできるので、新人教育が進みやすく行き届いた教育を受けることが可能となるのです。
また、医療業界はどこも人材不足であり、それは助産師にも同じことが言えます。
そのため、「新米助産師が早い段階で戦力となること」と「長く勤務できるように」という点を課題として問題改善に動いている医療機関も多くあります。
そのような問題解決に人手(時間)を割けるのも、規模の大きな医療機関の方が多いでしょう。
つまり「規模が大きい医療機関ほど、教育・研修制度を充実させている施設が多い」ということに繋がるのです。
助産師としての仕事をお探しの方は、「規模の大きな+教育・研修制度が充実している医療機関」にある程度絞り込みをかけて求人を探してみると良いかと思います。
特に、“教育・研修制度の充実”はとても重要です。
実際、教育・研修制度の整っている医療機関で働いている新米助産師の方が、長く勤務しており、確かなキャリアを積んでいるという人が多いのです。
ただ、求人情報を見ただけでは「教育・研修制度あり」と記載しているものは多くても、その詳細まで丁寧に記載しているものは少ないかと思います。
もし「どんな教育・研修制度があるのだろう?」と気になった方は、以下のことを試してみると良いでしょう。
2.実際に問い合わせて聞いてみる
企業のホームページには(規模にもよりますが)、「うちの病院では、こういう教育・研修制度を設けています!」と大々的にアピールしているところがあります(画像付きで解説しているところもある)。
後は、実際に電話や面接時に質問してみることです。
丁寧に事情を説明すれば、(理解のあるところなら)きちんと詳細を話してくれるはずです。
是非、試してみてください。
まとめ
「助産師」という仕事は、新しい命が誕生する瞬間に立ち会うことができる仕事です。
「命の誕生に携わりたい」
「看護師から助産師にステップしたい」
など、助産師を目指す動機も人それぞれ様々かと思います。
関心がある方は、是非知見を広げてその一歩を踏み出してみてください。
ただ、どんなものでも同じことが言えますが、道のりは決して楽ではありません。
初めから助産師を目指すにしろ、途中から助産師を目指すにしろ、どちらであっても専門の学校に一定数通う必要はあります。
また、国家試験にも合格しなければいけません。
そして、未経験からでも助産師として仕事をスタートすることはできますが、「命に携わる仕事」である以上、仕事に対する責任も相応なものとなってきます。
“新しい命が誕生する瞬間に立ち会うことができる”と言っても、必ずしもそうとは限らず、辛い現実を目の当たりにすることだってあります……。
その点の覚悟は必要な仕事と言えるかと思います。
別の記事にて、「助産師に求められる人物」や「適正」……そして「将来性」についても記載していきたいと考えておりますので、また公開されればそちらもご覧いただけばと思います。