看護職と聞くと、一番最初に思い浮かべるのは『看護師』だと思います。
しかし、看護職と一言でいっても、実は下記4つの種類が存在するのです。
准看護師
助産師
保健師
そして、看護師と准看護師は、仕事内容そのものに大きな違いはありません。
「仕事内容が同じなのに、どうして名称が異なるの?」ごもっともな疑問だと思います。
今回は、この准看護師について、色々とご紹介をしていきたいと思います。
どんな仕事をするの?
准看護師とは、看護職の一種に該当すると同時に、この仕事に従事できる資格(免許)のことを指しています。
この仕事のことを端的に表現するならば、こうです。
「各都道府県知事の免許を得て、医師・看護師の指示の元で、患者のお世話や診療上の補助を行う」
これが、そのまま看護師との違いを意味しています。
正看護師との違いは何なの?
患者のお世話や診療上の補助を行うという点で、この2つの業務内容に違いはありません。
ただし、それ以外の点で、両者は大きく異なる点があります。
この2つの違いを表にしてまとめてみると、以下のようになります。
現場での正看護師との最たる違いは、『自身の判断で業務をすることができない』『他の看護師に指示を出すことはできない』という点です。
また、後述で詳細をお話しますが、准看護師の年収は正看護師に比べると低くなります。
「仕事内容は同じなのに給料が低い……?准看護師になるメリットってあるの?」
そう感じる方も少なくないはずです。
准看護師になる”メリット”とは?
看護師として長く勤めていきたいとお考えの方は、最終的に正看護師を目指すべきです。
実際に、まず准看護師として仕事を始めた人であっても、後に看護師の国家資格の取得を目指すという人は非常に多いと言われています。
ただし、だからといって「准看護師を目指す意味はない」と言われると、一概にそうとは言い切れません。
実は、下記のようなメリットが存在するのです。
働きながら、学校に通える
正看護師へステップアップすることができる
准看護師だから、就職先に困るということはない
それぞれ、もう少し詳しくご紹介していきます。
資格取得までの期間と費用
例えば、正看護師を目指す場合は、看護に関連する学校(大学・短期大学・専門学校など)に3年以上通い、必要な学科を修める必要があります。
対して准看護師は、准看護師養成所に2年以上通うことで、受験資格を得ることができるのです。
当然、学校に通う期間が短くなる分、掛かる費用も抑えることができます。
実際に表にしてみると一目瞭然ですが、学校ごとに掛かる費用は以下ほどの違いが出ます(学校により変動するため、大まかな数字です)。
前述の通り、仕事内容に大きな違いはないため「できるだけ早く、費用を抑えて、キチンと資格(免許を)取得した上で、看護師の仕事に携わりたい」という人にとっては、最適とも言えるのです。
尚、一つ余談ですが、正看護師・准看護師どちらも100万円以上の多額の費用が発生してしまいます。
この時、多くの病院が準備をしている福利厚生制度を活用するのも良いかと思います。
奨学金制度を活用でき、卒業後はその病院に就職できる可能性もあるため、便利な制度として活用することが可能です。
働きながら学校に通うことができる
准看護師養成所は、
半日性:平日の午後や夜間に授業を行う
2つの授業スタイルから選択することができます。
また、全日制であっても、週3日で授業を行うところも多く、週5日であれば午後の授業のみという場合も多々存在します。
このことから、仕事と学業を両立させながら資格取得を目指すことが可能となります。
ただし、2年目は実習に入ることが多くなることから、1年目と同じように……というのは難しくなります。
その場合であっても、短期間のアルバイトなどは可能ですので、自身の生活スタイルに合わせて両立させていくといいでしょう。
正看護師にステップアップできる
「准看護師として仕事を始めたものの、今の待遇には不満がある……」という方は、やはりたくさんいらっしゃいます。
実は、既に准看護師の資格をお持ちの方であれば、指定の看護学校に2年間通うことで、国家資格への受験資格を得ることができるのです。
- まずは准看護師として仕事に携わり、その後キャリアを積みつつ、お金を貯める
- そして、改めて看護学校に通い、国家資格を得て正看護師として勤務をする
このような方法で、正看護師を目指すことが可能となります。
ただし、要注意点として養成所に通うためには就業経験年数が7年必要というものがあります。
元々は10年実務を必要としていたのですが、2018年度より7年に変更されました。
お金を貯めながらキャリアを積むことができるのがメリットの一つではありますが、必要な実務経験年数が長いため、この点だけは注意が必要かと思われます。
就職先に困ることはない
確かに、正看護師と比べると、若干収入は低くなってしまいます。
しかし、准看護師だから就職が難しくなるということはありません。
看護師は、どこも人手不足です。
そして、病院や診療所だけでなく、老人ホームや訪問看護など、仕事先は数多く存在します。
特に、昨今は介護関連の施設での需要が非常に高まっています。
その理由は、介護福祉士にはできない医療行為が、准看護師であれば可能だからです。
このことから「やっと准看護師になったのに、仕事先が見つからない……」ということは早々ないと言えるでしょう。
試験内容・合格率について
どんな問題が出題される?
まず、准看護師試験の問題は、150あります。
そして、科目ごとの問題は以下のようになります。
食生活と栄養:3問
薬物と看護 3問
疾病の成り立ち:6問
感染と予防:3問
看護と倫理:2問
患者の心理:3問
保健医療福祉の仕組み:2問
看護と法律:2問
基礎看護:43問
成人看護:36問
老年看護:14問
母子看護:12問
精神看護:12問
尚、出題形式は、客観式(四肢択一)ととなります。
合格基準・合格率はどのくらい?
まず、合格基準は満点中、60%以上の得点率で、合格となります。
そして合格率ですが、95%前後と非常に高い数値となります。
下表は、平成26年(2014年)~平成30年(2018年)の受験者数・合格者数・合格率です。
参考:厚生労働省ホームページ
専門の学校で勉強した後に受験の臨むため、合格率はかなりのものです。
尚、2019年4月1日より、保健師助産師看護師法の一部改正が行われ、都道府県で行われた問題作成が外部に委託できるように変更されました。
加えて、2020年より日本准看護師推進センターが、試験業務を担えるようになりました。
全ての都道府県が委託するとは限りませんが、試験内容が変化する可能性が考えられます。
今後、准看護師を目指そうとお考えの方は、必ず試験情報を確認しておくことをオススメします。
准看護師の年収について
『正看護師よりも年収が低い』と言っても、具体的にどのくらい違いがあるのかが分からないという人は多いと思います。
この点については、厚生労働省にて平均年収の調査が行われており、おおよそ以下の通りです。
参考:厚生労働省ホームページ
対して、正看護師の平均収入は、以下となります。
- 年収:483万円
- 月収:33万円
- 賞与:82万円
ただし、これはあくまで平均収入です。
そのため、実際の収入は、勤務先・勤務時間・各種手当・勤続年数・役職など、人によって大きく変動します。
また、看護師の共通認識として基本給は他業種と大きな差がない(少し高いくらい)ことが注意点として挙げられます。
看護職は、「他業種に比べて収入が多い」と言われることがありますが、あくまでそれは『夜勤手当』や『休日出勤手当』などの手当てが重なってこそです。
仮に、日勤(9時~17時など)が中心であったり土日祝休みなどの場合は、平均年収よりも大幅に金額が落ちると考えなければいけません。
珠看護師の将来性について
年々減少傾向にある
准看護師は、人数・養成所の数ともに、年々減少し続けています。
下表は、平成20年(2008年)~平成30年(2018年)の実人数と構成割合です。
参考:厚生労働省ホームページ
10年の間に、70,563人も減少しています。
また、日本看護協会は「准看護師の新規要請を停止し、看護師に一本化するべき」とも明言しています。
なぜ、准看護師が誕生したの?
「そもそも、同じ仕事内容なのに、どうして正看護師と准看護師を分ける必要があるの?」と疑問を感じた方もいらっしゃるでしょう。
准看護師が誕生したキッカケは、第二次世界大戦後の看護師不足を背景としています。
この頃は、まだ女性の進学率が高くない時代でした。
そのため、中学卒業後に働きながら資格を取得でき、且つ正看護師への道も開かれる准看護師というキャリアパスが設けられたのです。
少し言い方は悪く聞こえるかもしれませんが、准看護師は前時代的な制度と考えている人もいるのです(実際はそんなことはありませんし、准看護師も必要な存在であることに変わりはありません)。
准看護師は、医師や看護師の指示なく自身の判断で業務を行うことができません。
しかし、現場の看護職は、より自律的な判断・行動が求められるようになってきています。
このことから、「看護師として一本化する」という方向性で、少しずつ話が進みつつあるのです。
実際に、一部の都道府県では准看護師過程の新規募集を停止する動きも見られています。
今後どうなる?
すぐすぐに准看護師が廃止される……ということはありませんが、近い将来に看護師に一本化される可能性は高いと言えます。
上述でお伝えした通り、学費を抑えつつ・働きながら資格取得を目指せるというのは、准看護師の大きなメリットです。
しかし、一方で、「業務内容は同じなのに、看護師に比べて収入が少ない」や「役職に就き辛い」といった就業後のデメリットが大きいことも、問題点として挙げられています。
にも関わらず、看護師の退職・看護者の増加により、看護師1人ひとりの業務量がどんどん増えているのが現状です。
これらの点から、「仕事量に見合った給与ではない」と感じる方は非常に多いのです(これは正看護師も同様の意見ではありますが)。
ただ、では「准看護師は今後必要なくなるか?」と言われると、当然そうとは言い切れません。
例えば、准看護師は地域への定着率が高いと言われており、日本医師会では准看護師の減少を危惧しています。
また、看護師不足を背景として、クリニックや介護施設などでは、准看護師のニーズが高まってもいます。
「無くなる可能性があるなら、准看護師を目指す必要はない」というのは早計です。
どちらから目指すかは、自身の状況や働き方のスタイルに合わせて考えてみるのが良いかと思います。
加えて、看護職の今後の動向についても、常に目を光らせておくことです。
まとめ
看護職という仕事は、今後も必要とされる職業であり、人が生活を続けていく限り無くなることはありません。
むしろ、高齢化社会はこれからも進行していくため、今後さらに人出が必要となる仕事と言っても過言ではないのです。
准看護師の養成については、日本医師会と日本看護協会の間で、長期に渡って意見が対立しています。
そのため、今後、准看護師がどうなっていくかは定かではありません。
ただ、一つだけハッキリと言えることは、正看護師も准看護師も現代に無くてはならない大切な仕事ということです。
現在、看護師においての働き方改革も少しずつ進められており、今後は勤務時間や収入面なども改善される可能性があるかもしれません。
少しでも早く、看護師の方々が働きやすい環境が整備されていくことを願っております。