前回の記事にて、「介護予防運動指導員」の役割や活躍の場についてのご紹介をさせていただきました。
現在の日本は高齢化が進んでおり、これからも高齢者の数が増えていくことを踏まえ「介護予防」に着目・さまざまな取り組みが進められています。
また、病気や介護に依存することなく生活できる期間……すなわち「健康寿命」を高めようと意識する高齢者も増えています。
◆病気や怪我で身体を動かすことが難しくなっても、できるだけ回復を目指してこれ以上の悪化を防ぎたい
上記のように考える人も大勢いらっしゃるのです。
そんな高齢者の健康寿命を伸ばすためのサポートを行う資格および専門家のことを、「介護予防運動指導員」といいます。
今回は、この資格の取得方法や取得するメリットについて、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「介護予防運動指導員」とはなにか?
「介護予防運動指導員」とは、“介護予防に関する知識とスキルを学べる民間資格”のこと、もしくは“介護予防に精通する専門家”のことを指しています。
これは「地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター」が認定しており、介護予防の現場で働く人材の育成を目的に、介護予防運動指導員の養成事業を展開しています。
この資格を所持している人の主な仕事は、「介護予防のプログラム作成とトレーニングや運動の指導」および「高齢者の自立した生活をサポートする」ことです。
◆低栄養を防ぐ食事のとり方
◆口腔ケア
などの適切な支援および広範囲の指導を行うことで、利用者さんの寝たきりや要介護状態の予防・生活の質の向上につなげていくのです。
ちなみに、“利用者”や“高齢者”と一言で言い表していますが、利用する人の健康状態やこれまでの境遇は人によって千差万別です。
そのため、利用者一人ひとりの身体機能を理解し、その人らしい暮らしを実現するために指導を行うのは、生半可なことではできません。
このことから、受験資格は誰にでもあるわけではなく“一定条件”をクリアしておく必要があります。
まさにプロフェッショナルな資格であるといえるでしょう。
資格試験について
次に、この資格の取得方法について、詳しくご紹介していきたいと思います。
また、資格の取得難度についてもご紹介していきますので、資格取得を検討している方はぜひチェックしてみてください。
受験資格について
まず、この資格を取得するためには「養成講座を受講し、修了試験に合格する」必要があります。
この「養成講座」ですが、誰もが受講できるわけではなく、以下の“国家資格の保有”もしくは“要件”を満たしている必要があるのです。
◆歯科医師
◆薬剤師
◆保健師
◆助産師
◆看護師
◆准看護師
◆臨床検査技師
◆理学療法士
◆作業療法士
◆言語聴覚士
◆社会福祉士
◆介護福祉士
◆精神保健福祉士
◆歯科衛生士
◆あん摩マッサージ指圧師
◆はり師
◆きゅう師
◆柔道整復師
◆栄養士
◆介護支援専門員
◆健康運動指導士等
◆介護職員基礎研修課程修了者
◆訪問介護員2級以上で実務経験2年以上の方
◆実務者研修修了者
◆初任者研修修了者で実務経験2年以上の方
ちなみに、この養成講座は上記“資格の取得見込み”がある方や“養成校などの卒業見込み”がある方でも受講が可能です。
また、これまでは通学により受講をしなければいけませんでしたが、2021年10月1日からは、講習の一部を「eラーニング」でも受けることも可能となりました。
この養成講座の受講後、修了試験に合格すれば、資格を取得することができます。
養成講座の学習内容について
まず取得に必要なカリキュラムは、「東京都健康長寿医療センター」の指定事業者が実施している“全23講座、31.5時間の講座”で学ぶことができます。
(指定事業者については、上記公式サイトからご確認ください)
そして、講座の内容は“講義”と“実習”の2つに大別でき、以下のようなことを学ぶこととなります。
老年学、介護予防の概要
◆介護予防評価学(講義1.5時間、実習1.5時間)
介護予防の評価法の習得
◆介護予防統計学(講義1.5時間)
データの種類の区別と検定方法
◆行動科学(講義1.5時間)
行動科学の概要と健康行動の定着を促す手法について
◆リスクマネジメント(講義1.5時間)
リスクマネジメントの概要と対処法
◆高齢者筋力向上トレーニング(講義1.5時間、実習10.5時間)
筋力向上トレーニング、包括的トレーニングプログラムの習得
◆転倒予防(講義1.5時間、プログラム実習1.5時間)
転倒予防プログラムの習得
◆失禁予防(講義1.5時間、プログラム実習1.5時間)
尿失禁予防プログラムの習得
◆高齢者の栄養改善活動(講義1.5時間)
栄養改善プログラムの習得
◆口腔機能向上(講義1.5時間)
口腔機能向上プログラムの習得
◆認知症予防(講義1.5時間)
認知症予防プログラムの習得
◆うつ・閉じこもり(講義0.75時間)
高齢者のうつと社会的孤立、閉じこもりについて
尚、上記で“講習の一部をeラーニングで受けることが可能”と記載しましたが、講習には“実習”も含まれるため、通信教育のみですべての講座を履修することはできません。
とはいえ講習は計31.5時間で済むので、受験資格さえ持っていれば、比較的短期間で資格取得は目指せます。
受講の費用について
次に、受講にかかる費用についてですが、これは「80,000円~100,000円程度」となります。
なぜ金額に幅があるのかというと、“受講費用は事業所によって異なるため”です。
そのため受講する際は、さまざまなスクールの受講費用を確認し、比較・検討してみることをオススメします。
修了試験と合格率について
まず修了試験ですが、これは「マークシート方式の45問」「所要時間は1時間」で行われることとなります。
この試験は、講座内容の振り返りがメインとなっているので、カリキュラムをしっかりと復習しておくといいでしょう。
そして合格率ですが、実は介護予防運動指導員の合格率は、正式には公開されていません。
ただ、上記の通り試験は講座内容の振り返りがメインとなっており、“おおむね90%以上の方が合格できる”といわれています。
とはいえ、しっかりと試験対策を行っていればこその合格率ではありますので「9割も合格できるならそんなに勉強しなくてもいいや」というわけではありません。
合格こそ目指しやすい資格ですが、油断していると足元をすくわれるので、試験対策はしっかりと行っておくようにしてください。
最後に。
もし仮に修了試験が不合格となってしまった場合は、“初回の受験日より1年以内”であれば、再受験が可能となります。
期限が設けられているため、再受験の際には十分ご注意ください。
資格の更新は必要なの?
結論から言うと、“資格維持には更新が必要”となります。
試験合格後は「地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター」に登録され、3年ごとに登録の更新を行うこととなります。
資格の更新日が近づいてくると、資格取得の際に登録した住所へ「更新申請書」が届くので、その申請書に必要事項を記入・送付し、更新料を支払うことで、3年間有効となる登録書を受け取ることができるのです。
ちなみに、もし住所や氏名などが変更している場合は、その変更手続きを忘れないようにしてください。
資格を取得するメリットとは?
この記事の最後に、介護予防運動指導員の資格を取得した際のメリットについて、ご紹介をしていきたいと思います。
その1.スキル・キャリアアップに活かせる
この資格を取得することで、介護予防に関する知識を身に着けることができます。
それは=資格を通してスキルアップができるということにつながるのです。
資格を活かして積極的に活躍すれば、利用者さんはもちろん周囲のスタッフからも頼りにされるはずです。
そして、資格を取得できれば「資格手当」としてお給料のアップも見込めるかもしれません。
介護予防運動指導員の資格に手当てがつくかどうかは事業所によって異なるため、資格手当がつく職場を探すといいかと思います。
また、社会の高齢化は今後も進むことが予想されるため、この資格の需要はさらに高まった行くものと考えられています。
知識や技術が評価されれば、給与面だけでなく、待遇やキャリアアップなど多くの面で優遇してもらえる可能性もあるかもしれません。
その2.仕事を見つけやすい
社会の高齢化が進むこれからの日本にとって、この資格はさまざまな職場で必要とされます。
前回の記事でもご紹介しましたが、介護予防運動指導員の資格は以下のようにさまざまな施設での活躍が期待できるのです。
◆老人ホームやデイサービスなどの介護施設
◆スポーツジムやフィットネスクラブ など
上記事業所や施設は全国各地に存在するため、資格を取得すれば勤務先の選択肢を大きく広げることができるでしょう。
また、介護の仕事は全般的に需要が高いにも関わらず、人手が足りない状況が続いています。
そのため、介護全般の仕事は今後も需要が高まっていくと考えられます。
その3.アピールポイントになる
何度もお伝えしている通り、現在の日本は超高齢化社会が進んでおり、今後も「介護」の需要は高まり続けていきます。
それと同時に「介護予防」の需要も高まり続けていくのです。
今後は、より「高齢者が住み慣れた地域で健康的に暮らせることが課題となる」といえるのです。
そうなった時、介護予防運動指導員の有資格者のニーズはますます高まっていくこととなります。
現時点でも採用のニーズは高く多くの事業所が必要としている存在であるため、就職・転職の際のアピールポイントとしても活用することができ、より良い条件の職場へ転職することもしやすくなるかと思います。
日中に働きやすくなる
“介護や医療の現場=夜勤業務もある”という事業所・施設が多いと思います。
(ただし、デイサービスなど一部の介護施設では夜勤がないところもある)
介護予防運動指導員の仕事も、(勤務する施設は選ぶ必要はありますが)夜勤業務は基本的にありません。
なぜなら、“介護予防は高齢者とコミュニケーションを取る仕事=日中に行われることがほとんど”であるからです。
残業も基本的には発生しません。
そのため、家庭の事情などで日中しか働けないという人にもオススメできるかと思います。
ただし、これはあくまで“基本的”な話です。
勤務する事業所によっては、(人手が足りないなどの理由で)夜勤をお願いしてくるところもあるかもしれません。
この点は事業所によりけりなので、就職・転職の際に勤務時間をしっかり確認しておくといいでしょう。
利用者の状態が改善していく様子を見守れる
介護予防運動指導員は「どの運動でどの筋肉が鍛えられるのかを理解できる」ので、利用者さんの状態改善を見守ることができるのです。
高齢者であっても、適切な運動をすれば筋肉量は増えますし、身体のバランス能力も向上していきます。
このことから、「介護予防運動をサポートすれば、利用者さんの転倒事故の防止ができたり健康増進につながったりする」のです。
そうなると、(自由に身体を動かせることに大きな喜びを感じるため)利用者さんから感謝の気持ちを伝えられることも増えていき、そこに仕事のやりがいを感じる人もいらっしゃいます。
後は、介護予防で健康寿命が伸びていけば、介護の仕事に携わっている人たちの“業務負担の軽減”にもつなげることができます。
そうなれば、介護の仕事に携わっている方々からも頼りにされる存在として一目置かれることとなるでしょう。
まとめ
少子高齢化が進む日本では、「介護予防の取り組み」が必要不可欠なものとなっていきます。
健康意識の高まりにより、元気なうちから介護予防を気にかける高齢者も増えています。
そのため、今後は「介護予防運動指導員」の資格はまずますその需要を高めていくこととなるでしょう。
資格については、応募条件こそあるものの、(現時点では)養成講座の学習時間は短めであり、資格の合格率も9割以上と取得がしやすいのが特徴です。
介護の分野でのキャリアアップを目指したい方であれば、取得しておいて損のない資格といえるでしょう。
介護予防の知識や実践は、現代の介護では欠かせない重要なものとなっています。
このことから、今後はこの資格の応募資格や取得難度も高まっていくかもしれません。
そうなる前に、資格を取得しておくのも一つの手段であるといえるのです。
関心がある方は、ぜひ知見を広げて、資格取得に向けてその一歩を踏み出してみてください。
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