アメリカというと、高度医療が進んだ先進国というイメージが先行する人が多いでしょう。
しかし、その一方で保険制度が充実していません。
介護事情もその影響を受けています。
この記事では、アメリカの保険制度と介護事情、アメリカの高齢者施設や介護士の仕事や待遇について説明します。
高度医療が進んでいるが介護事情が思わしくないアメリカ
アメリカの医療技術の水準の高さは知られていますが、介護事情というとまた別の話になります。
高齢者、障碍者向けのメディケア、貧困層向けのメディケイドという公的医療制度は存在しますが、どんな人にもあてはまるとは言い難いです。
長期在宅介護向けの給付制度となると、対象者はメディケア・アドバンテージ・マネージドケアプランというものに加入していないと利用できません。
メディケアやメディケイドに該当しない場合は、高額な民間保険に入ることになっています。
保険制度の遅れが介護事情に影響している
アメリカの保険制度は、日本に比べると遅れています。
オバマケア後、日本のように国民すべてが保険に入る制度になりましたが、まだ定着しているとは言えません。
上記で説明したメディケアだと、長期間の介護保険はありません。
ただ、ワシントン州のみが独自に創設しいているだけです。
こうした制度は先進国ではめずらしいと言われています。
実際、介護保険がないために適切なサービスを受けられない人も出てきています。
メディケアとメディケイド
メディケア、メディケイドは共にアメリカの公的医療制度です。主な特徴を表にしました。
対象者 | 特徴 | |
メディケア | 高齢者、障害者 | 入院期間が150日を超えるとすべて自己負担になるので、長期の介護には向かない。 主に治療のための医療費用を保障する。 |
メディケイド | 貧困層、高齢者、妊婦、子供 | 病院での入院、治療、検査、妊婦ケアや子供の予防接種に適用できる。 |
誰もが保険に加入できるわけではない
かつては、保険に入るか否かは個人の自由だったアメリカですが、オバマ大統領が唱えたオバマケアにより、国民すべてが保険に入ることになりました。
しかし、アメリカ国民すべてが保険に入ったわけではありません。高額な民間保険に入れないという人も多いものです。
結局は、高額な民間保険制度が100%見直されたとは言えない状態だからです。
しかし、アメリカも日本のように高齢者が増えています。
バイデン大統領は、オバマケアの拡充を課題に挙げていますが、まだ完全に動き出していません。
コロナ感染拡大のための医療を確保する問題もあるので、なかなか軌道に乗らないのでしょう。
しかし、そんな中でも65歳以上で介護を受ける人の割合も増加傾向です。
今後の動向が注目されます。
高額な民間保険
今まで説明しました通り、アメリカの民間保険は高額です。
民間保険にはグレードがあり、内容や自己負担額が異なりますが、グレードが下でも安いといえないものです。
たとえば、2016年時点で一番安い民間保険の掛け金が400ドル(日本円で4万4000円ほど)となっています。
病院には、保険会社とのネットワークがあり、それ以外の民間保険に加入している人が医療を受けると医療費の自己負担額が高額になるというシステムも存在します。
保険会社によってプランによる金額の差はありますが、気軽に入れるというものではありません。
アメリカの介護事情の実態
元来、アメリカでは子供と親は別世帯と思われ、結婚したら、同居することはほとんどありませんでした。
しかし、昨今では高齢化が進んだ上に、保険制度が充実していないため、家で家族が介護する事も増えてきています。
また、ここ数年は在宅介護の担い手は全体の半数が男性になっているというデータもあり、2021年現在では親と同居する若者も増えています。
今後は在宅介護がますますさかんになる可能性も否めません。
そんなアメリカの介護事情を説明します。
かつては子供と同居する高齢者は5%以下
人種のるつぼとか自由の国などと言われるアメリカは、かつての日本のように結婚して親と同居する割合は非常に少なく5%以下でした。
だからといって、愛情が薄いというわけではありません。
お互いの家に行くなど、交流はさかんに行われていました。
誕生日やクリスマス、ハロウィンなど、家族で盛大に祝う姿はしばしば日本のメディアでも取り上げられていますし、映画やドラマでもよく見る光景です。
しかし、そんな家族関係も2020年のコロナ禍をきっかけに変化し、親子同居も増えてきました。
2020年7月の調べでは、18~29歳の若者の半数が親と同居しています。かつてのアメリカでは家を出て一人暮らしをする年齢でした。
介護保険を使えないため高齢者の90%が在宅
上記のような保険制度の遅れがあるために、高齢者は介護保険を気軽に使えず、90%が在宅介護になっています。
そのうちの70%が支援も受けていないという実態です。
残りの10%はケア付き住宅や高齢者向けの施設で介護を受けています。
高齢者施設に入居するケース
本来、アメリカ人は高齢になると、子供に介護してもらうと考える人は少ないものでした。
最近は施設入居が高額という理由で在宅介護が多くなりましたが、裕福な層になると高齢者施設に入るという人、高齢者住宅で暮らす人もいます。
そんな高齢者施設や高齢者住宅をご紹介します。
医療介護付きナーシングホームケアホーム
医療介護付きのナーシングホームは、アメリカの介護が必要な高齢者が入居する高齢者住宅です。
その特徴をあげてみ増した。
- 民営のため、地域や種類、規模により費用は異なる。
- 病気やけがによる短期利用も可能。
- 長期利用の場合は、平均年間約9万ドルなので、日本円にすると約990万。
- 費用のわりにサービスが満足いかないと感じる人が多い。
- メディケアからの給付は100日間以下のみなので、それを過ぎたら自己負担になる。
CCRC
CCRCはContinuing Care Retirement Communityの略でアメリカの高級老人ホームです。
裕福なシニア世代が入居しています。
- 入居金約3000万。
- 緑豊かな広大な敷地に建つヴィラ風の戸建てで高級レストランの食事を味わえるところもある。
- 自立~要支援「インディペンデント・リビング」要介護1~3の「アシステッド・リビング」要介護4~5の「ナーシング・ホーム」に分かれる。
- 24時間体制のフル介護の場合は月60~70万円かかる。
- 「インディペンデント・リビング」段階から入居していくシステム。
高齢者向け住宅に転居
フルタイムケア付きではない、高齢者向け住宅に転居する人もいます。
3つの例をご紹介します。
1.55歳以上限定のコミュニティ
夫婦のどちらかが55歳以上か55歳以上の独身世帯であれば、入れるコミュニティです。
一般的な住宅に居住し、コミュニティで行われるイベントやクラブなどを楽しめます。
コミュニティ内には施設があり、安い価格か無料で使えます。
2.介護者がスタンバイする住宅
フルサポートは必要ないけれども、所々でヘルプが欲しい人は、介護者スタンバイの住宅に住みます。独立した住宅ですが、いざというときに介護者に手伝ってもらえるので助かるでしょう。食事の提供もあります。
3.選択できるコミュニティ
上記の2つの良いところ取りのコミュニティです。
1と2のどちらか選択できます。または、1から2に移行することも可能です。
通所サービスの「オンロック」
「オンロック」は日本の小規模型居宅介護施設に似ているデイサービスを行う通所サービス。
元々は1970年代にサンフランシスコのチャイナタウンでオープンした施設で、中国語の「案楽居」を英語で「オンロック」と表現しました。
今も昔も中国系高齢者の利用が多いです。最近はアメリカ国内で似たような施設がどんどん作られています。
以下にその特徴を挙げます。
- 在宅療養やCCRへの入居が厳しい低所得者を受け入れている。
- 55歳以上の要介護者に医療や介護のサービスを提供している。
- デイサービス、通所リハビリ、訪問介護、訪問看護を行う。
- 麻雀などのレクリエーションを行うところもある。
- 財源はメディケア、メディケイド
- 要介護度が高くなると施設の経営が厳しくなるため、介護予防に力を入れている。
- プールがある施設も存在。
- 高齢者医療に熟知しているプライマリケア医が配置。
- 医療と介護のチームケアがなされている。
自宅に介護設備を設置して在宅サービスを受ける
自宅に介護設備を設置し、在宅で医療ケアを受ける人もいます。
その特徴をあげてみました。
- メディケア、メディケイドの給付範囲で調整している。
- 各州がメディケイド中心に在宅サービスを奨励した時期があった。(1980年~1990年。)
- 1997年にメディケアの制度改正があったため、事業者、受給者ともに減少した。
アメリカの介護士の資格・仕事内容・待遇は?
日本同様、アメリカでも介護士は存在します。
そんなアメリカの介護士について、資格、仕事内容、待遇をご紹介します。
それぞれ日本の介護士と比べてみると、日米の違いを理解できるでしょう。
資格なしでも働ける
日本でも働きながら、介護士の資格を取ることができます。
アメリカでも資格なしで介護士の仕事は可能です。ただし、資格の有無で呼び名が異なります。
- 資格のない介護士の呼称:Caregiver
- 資格のある介護士の呼称:CNA(Certifired nurse assistant)
資格のあるCNAになるための条件は州ごとに異なり、CNAになるための養成校も存在します。
看護師業務も担う
アメリカの介護士仕事内容は、日本であれば看護師が担う業務も行います。
たとえば、血糖測定と透析回路組みです。
アメリカの介護士の行うその他の業務を以下に挙げます。
- 体温測定
- 血圧、脈拍測定
- 体重測定
- オムツ交換
- 体を拭く
- 買い物に一緒に行く
- 家の洗い物
- トイレの手助け
こうした業務は、資格の有無にかかわらずに行います。
仕事への考え方の違い
仕事に対しての考え方も日本とアメリカでは違いがあります。
日本はマニュアル重視で、利用者優先の細やかなケアを行います。
しかし、アメリカで重視するのはユーモアや個性です。
利用者が喜ぶことを中心に介護を行います。そのため、日本のようにかっちりとしたマニュアルが存在しません。
たとえば、日本では利用者から物をもらったり、お小遣いをもらったりするのはNGですが、アメリカはすべてOKです。
お誕生日のプレゼントやちょっとしたお小遣いなども拒まずに頂けます。
ただし、事務所には報告をする義務はあるので、内緒でもらうことは出来ません。
アメリカの介護士の待遇
アメリカの介護士のお給料は資格なしであれば、日本とそんなに変わりません。
資格ありでもと日本と同じくらいです。以下で比べてみましょう。
資格ありの時給 | 資格なしの時給 | |
日本 | ホームヘルパー2級以上 身体介護時給2200円~ 生活援助時給1400円~ | 時給1150円くらい |
アメリカ | 時給2200円くらい | 時給1210円くらい |
どちらも仕事のハードさを考えるとそんなに高い時給とはいえないでしょう。
シフトは日本もアメリカも事務所によりいろいろです。事例で比べてみます。
日本 | アメリカ |
2交代制のケース 日勤:9時~18時 夜勤:17時~翌日の11時 | 日勤:7時~19時 夜勤:19時~翌朝7時 |
どちらも介護士の都合によって短時間にする場合もあります。
アメリカの場合、施設で働くこともありますし、利用者宅に行くこともあるでしょう。
ただし利用者の家に行く場合、広い国土なので行くまでに車の運転ができないと、かなり時間を要することもしばしばです。
車を運転出来る人は車通勤と思われます。
日本でも介護施設で働く場合もありますが、利用者宅に訪問することもあるでしょう。
車を利用する人が多いです。
気に入られれば専属介護士になれる
日本では余り専属介護士は聞かないものですが、アメリカでは気に入ってもらえると、その利用者の専属介護士になれます。
日本特有の丁寧な介護を気に入られて、日本人がアメリカ人家庭の専属介護士になったという事例もあります。
アメリカ人にとって、日本式介護は心地よいものだったと考えられます。
まとめ
アメリカの介護は保健体制が整っていないため、受けたい人が受けられないなどの問題があります。
オバマケアによって国民すべてが保険に入るように義務付けられましたが、民間の保険は高額なうえ、公的保険なので、入らない人も存在します。
また、メディケア、メディケイドは貧民層には手厚いものですが、標準的な高齢者にとっては、恩恵を受けにくいものです。
たとえば、費用のかかる長期入院には適用できないなどのデメリットが存在します。
そのため、施設に入居できるのは、一部の富裕層のみで、その他の人は家で家族が介護することになります。
最近は男性野介護者も多くなり、若者の親との同居も増えてきたので、今後も自宅での介護が主流になりそうです。
家での介護は介護士が担うこともあります。
アメリカの介護士は日本のようにマニュアル通りではなく、個性重視に利用者が喜ぶことを行います。お給料面は日本と変わりません。
ただし、利用者に気に入られれば、専属介護士なることもできるので、お給料がアップする可能性もあります。