超高齢化社会に突入する日本。
今後、『介護』の重要性はより高まってくると予想されています。
介護の仕事は、資格や経験がなくても始められる仕事ではありますが、資格を所持していることで、より就職や待遇の面で有利に働きます。
そして、『介護福祉士』は、介護資格の中で唯一の国家資格となります。
当然、所持していれば介護の世界で幅広い仕事に対応できるようになり、様々な面で未所持の人よりも仕事に取り組みやすくなります。
では、どうすればこの資格を所持できるのでしょうか?
今回は、この介護福祉士のなり方について、ご紹介していきたいと思います。
介護福祉士って、そもそも何?
介護における、唯一の国家資格である
まずはじめに、介護福祉士について簡単にお話をしておこうと思います。
これは、社会福祉士及び介護福祉士法を根拠とする国家資格であり、数多く存在する介護系の資格の中で、唯一の国家資格となります。
福祉系の中では、『社会福祉士』『精神保健福祉士』と並ぶ、名称独占資格です。
この、名称に“福祉士”が入る3つの資格を合わせて『福祉系三大国家資格』もしくは『三福祉士』と呼ばれることがあります。
尚、『名称独占資格』というのは、資格所持者以外の人が、その資格の”呼称(肩書き)”を利用することが法律により禁じられているというものです。
例えば、『介護』という仕事は、冒頭でもお伝えした通り資格を所有していなくても仕事に携わることが可能です。
しかし、介護福祉士の資格を所持していなければ、介護福祉士を名乗ることはできず、名刺に資格名称を印刷することもできません。
もし未所持で介護福祉士を名乗った場合、法律により罰せられてしまいます。
ちなみに少し余談となりますが、この名称独占資格に似たものとして、『業務独占資格』というものが存在します。
この2つは名前こそ似た部分がありますが、意味合いは大きく異なります。
この点は、本記事の趣旨からズレるのと、説明しだすと長くなるので……別の記事にて改めて詳しくお話をしていきたいと思います。
どんな仕事をするの?
まず、『介護』と書かれている通り、高齢者や心身に障がいを持っている人たちの生活をサポートすることが、業務内容の一つに挙げられます。
加えて、他の介護従事者への指導や、利用者および利用者の家族への相談・助言なども担当する場合があります。
介護福祉士の資格を取得するには、相応の知識(経験)を必要とします。
そのため、「有資格者=介護に関する確かな知識を有した者」であり、介護従事者の不足問題を解消するためのリーダーシップを取ったり、介護を取り巻く“環境の改善”という役割が求められるようにもなります。
需要の高い仕事であり、就職先は多数存在する
前述でご紹介した通り、介護に関する確かな知識と経験を有した介護福祉士は、現在多くの施設で必要とされる存在です。
現代の介護サービスは、多種多様に存在します。
まず、『高齢者』と『障がい者』で大きく分野が分かれますし、それぞれで複数の勤務先が存在します。
例えば、高齢者の介護でいくつか挙げるとすると…。
『通所介護(デイサービス)』
『介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)』
『サービス付き高齢者住宅』
『グループホーム』
『小規模多機能型ホーム』
他にも介護サービスは複数存在しますし、上記で挙げた施設も全国各地に所在しています。
このことから、就職先に困るということは(少なくとも現段階では)まず無いといえます。
また、今後はより超高齢化社会となっていくことが確定しているため、介護福祉士の存在はより一層重要なものとなっていくと考えられています。
3つのルートが存在する?資格取得の方法について
概要
まずはじめに。
介護福祉士の資格は、無資格・未経験からでも取得を目指すことが可能であり、学校に通わなくても受験資格を得ることも可能です。
この資格を取得する方法は、以下の3つが存在します。
☆養成施設ルート
☆福祉系高校ルート
端的にまとめるなら、『現場で経験を積む』か『専門の学校で知識と技術を学ぶ』かの違いとなります。
それぞれにメリットがあるので、個別に詳細をご紹介していきましょう。
①実務経験ルート
これは、その名の通り介護の現場で経験を積むことで、受験資格を得ることができるルートです。
ただし、ただ経験を積めば良いと訳ではなく、以下の条件が存在します。
- 介護の現場で、『3年以上』かつ『540日以上』働くこと
- 実務者研修を修了すること
ちなみに、働き方には規定がありません。
介護職やヘルパーとして働いた実績(実務経験)を積めば問題ないため、勤務施設や雇用形態の縛りはありません(正社員だけでなく、派遣やパートでも認められる)。
実務経験ルートのメリットは、
・他2つのルートに比べ、費用を大幅に減らすことができる
という点です。
介護の仕事は、無資格・未経験でスタートできるので、例えば派遣やパートからスタートして「介護の仕事というのはどういうものか?」というのを肌で感じることができます。
実際に現場を経験してみて、「今後も長く続けて行けそう」と感じれば、資格取得を目指してみるのも良いかと思います。
また、ルートごとの費用については後述で比較しますが、学校に通わずに現場で働きながら取得を目指せるため、お給料をもらいながら知識と技術を学ぶことができます。
ただし、実務経験が3年以上(勤務日数540日以上)であるため、受験資格を得るための期間は長くなってしまいます。
②養成施設ルート
これは、福祉系の専門学校などの『養成施設』を卒業することで、受験資格を得られるルートです。
今までは卒業と同時に資格を取得できていたのですが、2022年度からは資格を取得するためには、筆記試験に合格しなければいけないという条件が課されることとなります。
※2017年~2021年度の卒業生には、経過措置があります※
尚、養成施設に入学するための資格は“高卒以上”で、養成施設に通う期間は卒業した学校によって異なります。
・【1年以上】福祉系大学/社会福祉士・保育士の専門学校などを卒業した場合
資格取得までの期間は他2つに比べ短いですが、掛かる費用は最も高くなる可能性が高いのが特徴です。
③福祉系高校ルート
名称の通り、福祉系(福祉科・介護福祉コースなど)の高校や特例高校を卒業することで、受験資格を得ることができるルートです。
「高校に通いながら、専門的な知識や技術を学ぶことができる」というのが、このルートの最大の特徴です(高校卒業後に就職も可能)。
そのため、高校進学の時点で「介護の仕事に就きたい」という明確な目標があるのであれば、このルートが最適解と言えるのではないでしょうか。
尚、入学年次によって、筆記試験+技術講習もしくは実技試験を受けなければいけない場合があります。
これは、平成19年のカリキュラム変更により、実施されるようになりました。
どのルートを選択する?
結論から言うと、どのルートを選択するかは「その人次第」です。
以下は、それぞれのルートで必要となる『費用』および『期間』の比較表となります。
学校は、進学先によって費用が大きく異なりますが、中学or高校卒業と同時に学校で学ぶことができ、一緒に学ぶ仲間と出会うこともできます。
また、福祉業界に関する知識を幅広く学ぶことができます。
対して、実務経験ルートは、費用を大幅に減らすことができ、実際の現場で介護の世界に触れることが可能です。
何事も、経験に勝るものはありません。
それに、(良くも悪くも)介護の世界の現実を知った上で「本当に介護の道を進み続けるべきか?」を選択することができます。
学校に通う場合、数百万円という高額の費用が発生してしまうため、いざ介護の職に就いた際に「思っていたのと違う……」となっても、中々に軌道修正することが難しくなります。
どれが正解という訳ではありません。
人それぞれ、自分が「これだ!」と思うルートを選択して、進めていくのが良いのかなと思います。
なんにせよ、『ルートがいくつか用意されている』というのは有り難いものです。
「専門の学校を卒業」「一定の実務経験が必須」など、そもそもルートが1つしかない(受験資格を得ることが厳しい)資格だって山のように存在します。
未経験・無資格からでも始められ、費用を抑え、どの年齢からでも取得を目指すことができる介護福祉士という資格は、他の国家資格に比べても挑戦しやすい資格と言えるのではないでしょうか。
資格について
試験の概要
次に介護福祉士の試験内容について触れていきたいと思います。
試験の概要は以下の表の通りです。
そして、上表の通り、試験は『筆記試験』と『実技試験』があります。
ただし、例えば、『実務経験3年以上+実務者研修の終了者』(実務経験ルート)などの一定の条件を満たしている場合は、実技試験が免除される場合があります。
どんな試験が出題される?合格基準は?
筆記試験
まず、筆記試験の合格基準は、下記2つを満たす必要があります。
◆上記を満たした上で、以下の試験科目11科目群すべてにおいて得点があった者
・人間の尊厳と自立、介護の基本
・人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術
・社会の理解
・生活支援技術
・介護過程
・発達と老化の理解
・認知症の理解
・障害の理解
・こころとからだのしくみ
・医療的ケア
・総合問題
※問題数は科目ごとに異なります※
「以下の試験科目11科目群すべてにおいて得点があった者」と記載している通り、上記の1科目でも全問不正解になってしまうと、総合得点が補正後の合格基準点を上回っていても『不合格』となってしまいます。
実技試験
前述の通り、一定の条件を満たしている人は免除となる実技試験ですが、条件を満たしていない場合は、筆記試験の合格後に、実技試験にも合格する必要があります。
実技試験で出題される問題は以下の通りです。
② 健康状況の把握
③ 環境整備
④ 身体介護
試験時間は5分。
その間に、「介護の現場において、適切な業務が行えているかどうか?」、そして「様々な状況に対応できているかどうか?」が試されています。
そして、試験の合格基準についてですが、『課題の総得点の60%程度を基準として、課題の難易度で補正した点数以上の得点の者』となります。
試験の『受験者数』と『合格率』はどのくらい?
以下は、厚生労働省が公開している『受験者数』と『合格率』のデータを表にしてまとめたものです。
介護資格の中で唯一の国家資格である介護福祉士ですが、試験の合格率は『60%~70%』と、比較的高い水準を誇っています。
これは、「学校や現場で、しっかりと知識や経験を積むことができること」が理由の一つです。
もちろん、試験そのものが簡単な訳ではありませんので、試験勉強もせずに合格するのは不可能です。
ただ、しっかりと勉強を行い、過去問などを使って対策を立てていれば、比較的気持ちに余裕を持って試験に臨めるのではないかと思います。
忘れないで!『試験合格後にするべきこと』
「試験に合格できた!」となっても、まだ『介護福祉士』を名乗ることはできません。
合格後には、『必要な書類』を提出し、『資格登録』を行わければいけません。
順番に見ていきましょう。
必要な書類とは?
これは、実務経験ルートで受験した人が提出しなければいけない『従業期間・従事日数の証明書類』のことです。
上述でもご紹介した通り、実務経験ルートの場合『3年以上の実務経験』が必須となります。
もし、受験申し込みの際に『見込み』で申し込みをして「無事に合格できた!」という場合は、受験資格を得たことを証明する書類を提出しなければいけないのです。
もし仮に、提出期限までに提出ができなかった場合、試験の合格は無効となってしまいます。
受験後すぐに提出ができるように、必ず事前に準備しておくようにしましょう。
資格登録とは?
資格登録は、合格後に必ず行わなければいけないものです。
なぜなら、この手続きが完了し、登録証の交付を受けてはじめて『介護福祉士』と名乗ることができるからです。
これは、「介護福祉士としての資格条件を満たす人物である」ということを、国に証明してもらうための、大事な手続きとなります。
ただ、資格登録そのものに期日はありません。
登録後、(不備がなければ)約1ヶ月ほどで『登録証』が発送されます。
不備があれば、当然登録証の発送が遅くなってしまうため、問題がないかを確認してから提出するようにしましょう。
まとめ
ここまででもお伝えしたように、介護の仕事は「無資格・未経験」からでも職に就くことができます。
しかし、資格を所持していれば、就職に有利になることはもちろん、『仕事を任される立場=待遇が良くなる』可能性が高いということにも繋がります。
また、資格手当として、収入が+αされる可能性もあります。
介護の仕事は、今後もなくなることはなく、むしろ今よりも重要性が増す業種の一つです。
現在は「介護は厳しい仕事」と言われることがありますが、今後労働条件に改善が見られてくれば、介護の仕事に携わる人もどんどん増えてくるかもしれません。
そうなった時に、企業(施設)側がまず重要視するのは、『資格の有無』と『実務経験』です。
当然、無資格・未経験の人に比べて、採用率は高まります。
今後のことを見据えて、介護福祉士の取得を目指して今の内から勉強をしていくのも、将来の役に立つかもしれません。