「音楽」を通して、老若男女さまざまな人たちの心身の改善を働く仕事が存在します。
前回の記事にて、この職種の仕事内容などをご紹介しましたが、今回は“音楽療法士のなり方”や“雇用形態・給与”などに焦点を当てて、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
尚、仕事内容についての記事のリンクは以下に張り付けておきますので、関心がある方はこちらも是非ご覧ください。
「音楽療法士」になるために必要なこと
そもそも”必須”となる資格はあるのか?
結論から言うと、必須となる資格はない”です。
そもそも2021年時点では、音楽療法士には“公的な資格(=国家資格)”は存在しません。
そのため、現時点であれば“無資格・未経験”でも職に就ける可能性は十分にあります。
ただし、この仕事は専門性が問われる職業であり、“音楽療法に精通している”必要性があります。
専門的な知識を身に着けることはもちろん、音楽の演奏技術を高めたりする必要もあります。
そのため、関連する資格を取得しておけば、仕事をするうえで優位になることは間違いありません。
尚、この関連する資格は、現時点ではすべて「民間資格」であり、その種類はいくつか存在しています。
そのなかでも特に認知度が高いのは、≪日本音楽療法学会≫が認定している「音楽療法士」という資格です。
この資格には、以下の2種類が存在し、それぞれで資格取得の条件が異なります。
◆「音楽療法士」(専修・1種・2種)
音楽療法士の「資格取得条件」とは?
まず、「学会認定音楽療法士」もしくは「音楽療法士(専修・1種・2種)」になるためには、それぞれに定められた要件(=受験資格)をクリアする必要があります。
それは、大きく以下の2種類が存在します。
②全国音楽療法士養成協議会に加盟している大学や短期大学を卒業する
①に関しては、「音楽を使用した一定期間の”臨床経験”を有していること」も条件となります。
(他にもいくつかの条件が存在する)
そして②についてですが、「専修・1種・2種」の違いは、「修士・学士・短期大学士」という学位の違いと、取得する単位数の違いによって決まります。
確かに、音楽療法士の資格は「民間資格」であり、国が認める(国の法律に基づく)資格ではありません。
しかし、民間資格だからと言って、思い立ったら誰にでもすぐに取得できる資格でもありません。
音楽療法士は、その特性上“専門的な知識・技術が必要な職種”と捉えられているのです。
そのため、決して“誰でも・容易に取得できる資格ではない”という点だけはご留意いただければと思います。
以下で、①についてもう少し掘り下げてご紹介したいと思います。
学会が認定する学校で学ぶこと
まず、学会が認定する学校では、最低でも“3年以上の教育”が課せられることとなります。
具体的に言うと、「3年生の専門学校」か「4年制の大学」に通う必要があるのです。
この認定校にて、以下のようなことを学んでいくこととなります。
◆医学・福祉・心理学の知識といった関連分野の学び
◆音楽の技術と援助の技術などの実践力
ただし、学会が認定する学校はまだまだ数が少なく、全国でも“20校程度しかない”のが現状です。
とはいえ、「音楽に関する専門学校で音楽療法について学べる」ところも増えており、「高卒の人でも受講できる音楽系専門学校が独自で認定をしている通信講座」などもあるため、必ずしも“認定学校に通う必要はない”とも言えます。
この点についての詳細は、関心がある人個々人で色々と調べてみていただければと思います。
手段は一つではありませんので、ぜひ自分に合ったやり方で、音楽療法士の資格取得を目指してみてください。
「試験内容」について
試験は、「実技・筆記・面接」の3つをクリアしなければいけません。
そして「実技」では、事前に課題として出されるいくつかのピアノ音楽から1つを選び、演奏することとなります。
「音楽療法士の試験に合格するには楽器を演奏できるようにならないといけないの?」ですが、これはYESです。
ただし、学校に進学して音楽についての知識・技術を高めていくこととなるため、きちんと学習をしていれば演奏も学ぶことができますので、この点はご安心ください。
また、“試験の合格率”についてですが、正式な合格率というのは発表されていません。
とはいえ、必修講習会を含めた長期間の授業をしっかり受講し、真面目に取り組んでいれば概ね合格できる基準ではあります。
日々の積み重ねが重要となってきますので、学習期間中は特に毎日の勉強(練習)を欠かさないようにしましょう。
音楽療法士の「給与」や「待遇」について
多くの人が別の職種と”兼任”で勤務している
音楽療法士の「給与」や「待遇」についてですが、これは「勤務先によって大きなばらつきがある」となります。
その理由は、“多くの人が兼任で働いているから”です。
この点については、実際に「音楽療法士 求人」などで検索をかけてみるとお判りいただけるかと思いますが、「看護師・理学療法士(機能訓練士)・介護士・生活相談員」など、別の職業として働きながら音楽療法士として活躍するというケースが多いのです。
そのため、音楽療法士だけの資格を持っているだけでは、高収入・好待遇を得ることは難しいと言えます。
◆最終学歴はなにか?
◆どんな資格を取得しているか?
上記のような点が重要となってきます。
また、就職・転職時にも他の資格を取得している方が優位に動くことができます。
「看護師・理学療法士・介護福祉士・保育士」などの国家資格を取得していることは当然として、「介護職員初任者(実務者)研修・児童指導員」などの資格を有しているだけでも、採用される可能性は高まります。
当然、“実務経験の有無”も重要となってきます。
このことから言えることは、「音楽療法士を”専業”とすること・専業として高い収入を得ることは難しい」ということです。
なぜ音楽療法士の「認知度」は低いのか?
“癒し”と言えば“ヒーリング曲”をイメージする人は多いかと思いますが、これはあくまでも“手段”であって、実際にその仕事に従事している人(=音楽療法士)のことをご存じの方は少ないのが現状です。
そして、上記でもお伝えしたように、この仕事は“兼業”している人が多く“専業の音楽療法士”というのはほとんどいません。
そもそも、音楽療法士としての求人募集を出す施設もほとんどないのです。
なぜ、これほどまでに音楽療法士の認知度は低いのか?
その理由の一つは、「音楽療法士の資格が国家資格化されていない=社会的地位を確立できていない」という点が挙げられます。
また、「音楽療法の研究はまだまだ発展途上のため、音楽療法そのものが仕事として発展していない」というのも理由に挙げられるかと思います。
音楽療法士に「将来性」はあるのか?
結論から言うと、「今後、音楽療法士の需要は高まっていく可能性は高い」です。
あくまで日本ではまだまだ認知度が低く・仕事としても発展しきれていないというだけであり、海外ではすでに医療行為の一つとして積極的に取り入れられているところもあります。
また、現代社会に生きる人々は“さまざまなストレス”と闘っていかなくてはいけません。
このストレスは、老若男女を問わずすべての人が向き合っていかなくてはいけないものであり、音楽療法を取り入れようとしている医療機関・福祉機関・学校・保育園もどんどん増加傾向にあるのです。
そもそも、音楽を通して健全な精神を育もうとしている施設もあります。
◆音楽療法を取り入れようとしている施設は増加傾向にある
◆病気や障害に対する医療行為としても研究が進められている
◆健全な精神を育むため、健常者に対しても音楽療法は取り入れられている
こういった点から、音楽療法はさらにその需要を高めていくことと思います。
そうなれば、音楽療法の専門家である「ミュージックセラピスト(音楽療法士)」の需要もどんどん高まっていく可能性があり、いずれは国家資格なども設けられるかもしれません。
そうやって、少しずつでも社会的地位が確立されていけば、音楽療法士の働き先はもっと増えていくものと考えられます。
このことから、“将来性は十分にある”と言えるでしょう。
音楽療法士に「適正のある人」や「仕事を行う上で大変なこと」について
音楽を使用して、さまざまな人々の心身のリラックスをさせる「ミュージックセラピスト(音楽療法士)」ですが、この仕事にも“向いている人・向いていない人”がいます。
そして、“仕事”である以上、業務を行う上で大変なことというのも存在します。
この項目にて、それぞれいくつかご紹介していきたいと思います。
音楽療法士の「適正」について
結論を言うと、この仕事に向いている人(適性のある人)は、「音楽が好きな人」、そして「音楽を通じて誰かの役に立ちたいと考えている人」です。
(音楽療法士は自身でピアノやギターなどの楽器を演奏することもあります)
正直なところ、“誰かの役に立つ仕事”であれば、音楽療法士を選択する必要はありません。
医療なら「医師」や「看護師」など、介護なら「介護士」や「理学療法士」など、保育であれば「保育士」や「児童指導員」など……各業種では、他にも人々の役に立てる仕事はたくさん存在します。
そもそも前項で挙げたように、現時点では音楽療法士は兼任して業務にあたることがほとんどのため、音楽療法士として周囲の人に認識されない可能性もあります。
だからこそ、“音楽が好きであり、音楽を通じて誰かを笑顔にしたい・誰かの役に立ちたい”と考えている人こそがなれる職業なのです。
音楽療法士という仕事は、専門職(技術職)です。
音楽のリズムや音色というのは、人によって心地よく感じる度合いが異なります。
だからこそ、一人ひとりの疾患や体調に合わせた音楽プログラムを作ることは大変に難しいことなのです。
時には、心地よいリズムとリハビリを組み合わせることに苦労をすることもありますが、利用者が笑顔で運動をしたりくつろいだりする様子を見た時に、「やりがいを感じる」という人もいます。
ちなみに、現時点で音楽療法士を目指す人に多い理由は、以下の2つが挙げられます。
◆元々は別の職種で勤務していたが、音楽療法に興味を持ち資格取得を目指した
「音楽療法」自体はさまざまな施設で取り入れられていますが、今はまだ「音楽療法士」自体の数は少ないのが現状です。
今後の将来性も含め、関心がある方は今から資格取得を目指してみるのもいいかもしれません。
音楽療法士をする上で「大変なこと」について
上記でもお伝えしたように、音楽において人が「心地良い」と感じるポイントは千差万別です。
時には、リズムが利用者に合わずに体に負担をかけ、余計にリラックスできない状態になってしまうこともあります。
上手に音楽プログラムを作成しないと利用者の心身に負担が掛かってしまうことから、プログラムの作成にはかなりの神経を使うこととなります。
音楽療法は、健常者だけでなく、心身に病気や障害を持った人も利用します。
中には“心にゆとりがない状態の人”もいます。
そのため、うまく利用者に合ったプログラムを作成できなかった場合、時には厳しい言葉や態度を投げられることもあるのです。
こういう状態が続くと、音楽療法士自身に負担が掛かり、音楽やリハビリテーション自体が苦手になってしまう可能性もあります。
これが、音楽療法士をする上で「大変……」と感じる最大のポイントかと思います。
(もちろん、感じ方は人それぞれで異なりますが)
加えて、「音楽療法士としての社会的地位が確立されていない」という点も、仕事を行う上で「辛い……」と感じてしまう点かもしれません。
“社会的地位が確立されていない=活躍の場が少ない”ということに繋がるのです。
音楽療法士の資格を取得するには、長い勉強機関などの一定の条件を満たさなければ取得することができません。
「やっとの思いで資格を取得したのに、(社会的に)音楽療法士として認めてもらえない……」
現時点では、こういった点で苦労を感じることもあるかもしれません。
まとめ
2021年時点での音楽療法士の社会的地位は、まだまだ確立されているとは言えません。
音楽療法については、日本ではまだまだ未開拓な部分も多く、なかなか“専属”として勤務することも難しい状況です。
しかし、だからこそ“将来性のある職業”とも言えます。
ストレス社会と言われる現代において、音楽療法を利用する人は老若男女を問わず、誰にでも必要とされる療法です。
また、音楽療法に関する研究はずっと続けられており、医療や介護の分野でもその必要性はどんどん高まっています。
加えて、現在の日本は“超高齢化社会”に突入しています。
今後は、数多くの介護施設でも「音楽療法士の専門性や必要性は高まっていく」と考えられているのです。
現時点でも資格取得の条件は厳しいですが、今後は国家資格などが設けられ、さらに資格取得の難度が上昇する可能性も否定はできません。
だからこそ、今の段階から音楽療法士となるべく資格取得を目指しておいた方が良いとも言えるのです。
将来性は十分にありますので、「音楽療法に興味がある」という方や「自身のキャリアアップのために……」という方は、ぜひ知見を広げ、音楽療法士になるべくその一歩を踏み出してみてください。