以前に、「セラピー」についてご紹介をさせていただいたことがありますが、この「セラピー」には実にさまざまな種類が存在します。
そして、近年日本においても少しずつ注目を集め始めているのが「ミュージックセラピスト(音楽療法士)」という職業です。
読んで字のごとく、「音楽を利用したセラピー」のことを指しますが、この仕事はどういった分野で活躍しているのでしょうか?
今回は、この「ミュージックセラピスト(音楽療法士)」の仕事内容や働き方について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「ミュージックセラピスト(音楽療法士)」ってどんな職業?
「音楽」には、人々にさまざまな効果をもたらします。
音楽を聴くことで元気が出たり、思い出を懐かしんだり……。
時には、歌うことでストレス発散をする人もいらっしゃるでしょう。
そして、「ヒーリング曲」というものが存在する通り、音楽の中には“リラックス効果”をもたらしてくれるものも存在します。
「ミュージックセラピー(音楽療法)」とは、音楽によってもたらされる効果を“治療”に用いる療法のことを言います。
そして、このミュージックセラピー(音楽療法)を生業としている人のことを、「ミュージックセラピスト(音楽療法士)」というのです。
どんな仕事をしているの?
この仕事の最大の特徴は、「悩みを抱える人や障害のある人などのリハビリテーションを行うこと」となります。
音楽の力を通じて、以下のような「より良い生活(QOLの向上)」につなげるのです。
※QOL(クオリティ・オブ・ライフ):一人ひとりの人生の内容の質や社会的にみた『生活の質』のことを指している※
◆人との交流を通じて、孤立を防ぐ
◆健康維持・介護予防・言語や身体のリハビリを行う
◆心の安定や精神的な成長を図る
◆社会性問題行動の減少
◆子どもの心身の発達(学習支援も含む)
このことから、対象となる人は老若男女を問いません。
幼児から高齢者まで、心身に何かしらの悩みや障害を持っている人の「運動機能の回復・社会性・認知力を向上させるための手助けを行う」のです。
ちなみに、この音楽療法は、医療や介護の現場でも積極的に採用されています。
例えば、以下のような病気や障害に対しても用いられています。
●アルツハイマー病の治療
●パーキンソン病の治療
●精神安定
●自閉症(うつ病)
●コミュニーケーション障害 など
このミュージックセラピーは、アメリカで確立されました。
そして日本においては、「日本音楽療法学会」が2001年に設立され、医療機関や高齢者施設・障害者施設等で実施されているのです。
また、「NPO法人日本ミュージックセラピスト協会」という、ミュージックセラピスト・ミュージックサポーターの育成や、ミュージックセラピーのさらなる発展と充実に寄与するための団体も活動をしています。
「音楽療法」には”2つ”の方法が存在する
音楽は、「聴く」だけでなく、「楽器を演奏」したり「歌う」ことでも、心身にさまざまな好影響を及ぼしてくれます。
ミュージックセラピストは、利用者に合わせた音楽プログラムを作成し、そのプログラムに沿って音楽療法を行っていくのです。
この時、2つの音楽療法が存在します。
◆「能動的」音楽療法
意味は上記に記載した通りであり、「受動的音楽療法」は、“音楽を聴く”ことによって、さまざまな効果をもたらす療法のことを言います。
対して「能動的音楽療法」は、歌を歌ったり、楽器を演奏したりして“演奏する”ことを目的とします。
※演奏=楽器を奏でるだけでなく、歌を歌うことも含まれる※
ちなみに、これらは個別で行うこともあれば、グループでセッションをする場合もあり、方法はさまざまです。
「音楽療法士」はどこで働いているの?
活躍の場は多様に存在する
上記でも記載した通り、音楽療法は老若男女問わず必要とされています。
そのため、勤務先も以下のように多岐に渡ります。
●病院・精神病院
●メンタルクリニック
●リハビリテーション施設 など
【福祉】
●高齢者施設(老人ホームなどの介護施設)
●障害児・障害者施設(就労継続支援事業所など)
●地域社会での取り組み など
【教育】
●学校・養護学校
●保育園・幼稚園
●児童発達支援・放課後等デイサービス など
【その他】
●刑務所
●NPO法人
●一般企業 など
音楽“療法”といっても、これは病気や障害を抱えている人だけが利用するものではありません。
健常者(健康な人)であっても、より良い心身の向上やリラクゼーション効果として利用することも多く、誰に対しても意味のある療法となるのです。
そのため、どんな施設であっても必要とされる仕事であるといえます。
ただ……。
現時点では、まだ“ミュージックセラピスト(音楽療法士)の認知度はそれほど高いものではない”のが現状です。
なぜ認知度がそれほど高くないのか?
この点については、「ミュージックセラピスト(音楽療法士)のなり方」として、別の記事で詳しくご紹介をしようと思いますが……。
求人・転職サイトなどで「音楽療法士 求人」と検索をかけても、なかなか“専属”で募集をかけているものを目にすることはありません。
大概、「看護師兼~」や「介護士兼~」など、“他業種との兼任”で募集がかかっているものがほとんどです。
音楽療法士という職業自体の認知度が低く、専属で常勤や正社員を募集しているのは少ないのが現状なのです。
そもそも、この職業に関する資格は、2021年時点の日本においては“国家資格”は存在しません。
「音楽療法士」という資格は存在しますが、これは民間資格となります。
(ただし、受験資格を必要とし、取得難度は高めではある)
少し聞こえは悪くなってしまうかもしれませんが、現時点の音楽療法士は「医療や福祉の現場で働く人がプラスαで目指す職業・資格と考えられている」のです。
ただし、今後はその認知度が増加していく可能性は高いです。
「ヒーリング曲」を筆頭に、現在のストレス社会において「音楽で癒されたい」と考えてる人は増加しています。
また、音楽療法の治療効果は日本でも認められつつあり、働ける職場は増えつつあります。
(現時点では、非常勤や派遣といった雇用形態が多いのは事実である)
今後は活躍の場がどんどん増え、いずれは音楽療法士に関する国家資格も登場するかもしれません。
“社会的地位が確立されれば”、音楽療法士の待遇もどんどん良くなっていくはずです。
そういう意味で、“将来性のある仕事”といえるかもしれません。
まとめ
現代社会において、人が抱える“心の問題”は社会問題化しており、多くの人が「癒し」を求めています。
実際に音楽療法は、老若男女問わずを問わずさまざまな年代の人に求められており、そのため活躍の場も多様に存在します。
今後は、さらに医療や介護の現場においても、音楽療法士の存在が必要不可欠となる日も来るかもしれません。
しかし、現時点では、まだまだ社会的地位が確立されている職業とは言えないのが現状です。
音楽療法(ヒーリング)自体の需要は高まっていますが、それを専門とする「ミュージックセラピスト(音楽療法士)」という職業自体が、まだまだ認知度が低いからです。
今後どうなっていくのかは未知数ではありますが、確実に需要が伸びていることは確かなので、先を見越して資格取得や音楽療法士を目指すというのも、一つの手段ではないかと思われます。