言語聴覚士は理学療法士や作業療法士に並ぶリハビリテーションの専門家です。
主に「言葉」に関する機能の改善を目指して、子どもから高齢者まで幅広い年代の人を対象とします。
理学療法士や作業療法士に比べるとまだ有資格者数は少ないですが、今後の高齢化社会で言語聴覚士はさらに求められる存在になっていくでしょう。
今回はそんな言語聴覚士になる為に必要な資格や学費について解説していきます。
言語聴覚士になる為には何が必要なの?
言語聴覚士とは
言語聴覚士は病気や怪我、発達の遅れなどの理由で言語障害を負った人に対してその機能を回復する為のリハビリテーションを行う専門家です。
理学療法士や作業療法士と同じく、病院などの医療機関や高齢者施設などに勤務することが多いです。
言語聴覚士は1997年に国家資格となった医療関係の資格としては比較的新しい資格で、国内には現在約36,000人の言語聴覚士がいます。
理学療法士(約130,000人)や作業療法士(約80,000人)に比べると有資格者数は少ないですが、高齢化に伴い増加する医療ニーズにおいて言語聴覚士は求められる存在になっていくと言えるでしょう。
言語聴覚士は女性の割合が多いのが特徴で、日本言語聴覚士協会の会員動向によると全体の8割を女性が占めています。
また、年齢比では20代が全体の3割、30代が全体の4割を占めています。
言語聴覚士になる為には国家試験に合格すること
言語聴覚士になる為には、毎年3月に行われる国家試験に合格する必要があります。
国家試験を受験する為の受験資格は、言語聴覚士になる為の専門の学校で3~4年必要な知識や技能を学ぶことで得られます。
2021年に実施された、第23回言語聴覚士国家試験の試験科目及び試験地は以下のとおりです。
<試験科目>
基礎医学、臨床医学、臨床歯科医学、音声・言語・聴覚医学、心理学、音声・言語学、社会福祉・教育、言語聴覚障害学総論、失語・高次脳機能障害学、言語発達障害学、発声発語・嚥下障害学及び聴覚障害学
<試験地>
北海道、東京都、愛知県、大阪府、広島県及び福岡県
引用:言語聴覚士国家試験の施行|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/gengochoukakushi/)
言語聴覚士国家試験の難易度
言語聴覚士国家試験の合格率は例年7割前後となっており、合格率が8割~9割の理学療法士や作業療法士と比べるとやや低めとなっています。
言語聴覚士国家試験の過去5年間の合格率は以下のとおりです。
年度 | 受験者 | 合格者 | 合格率(%) |
第19回(2017年) | 2571 | 1951 | 75.9 |
第20回(2018年) | 2531 | 2008 | 79.3 |
第21回(2019年) | 2367 | 1630 | 68.9 |
第22回(2020年) | 2486 | 1626 | 65.4 |
第23回(2021年) | 2566 | 1766 | 69.4 |
全体の合格率は7割程度ですが、新卒者の合格率を見ると8~9割とかなり高くなっています。
やはり、しっかりと勉強時間を確保できる新卒での合格を目指すことが望ましいと言えるでしょう。
言語聴覚士になる為に必要な学費は?
言語聴覚士になる為の学校
言語聴覚士の国家試験を受験する為の受験資格が得られる学校は、以下の3パターンです。
①4年制大学
②3年制短期大学
③専門学校
言語聴覚士の受験資格が得られる4年制大学や3年制短期大学は、医療系の学部に言語聴覚学科として設けられていることが多いです。
大学なので言語聴覚士の専門知識だけではなく、語学などの一般教養まで幅広く学ぶことができます。
また、言語聴覚士の受験資格が得られる専門学校はほとんどが3~4年制ですが、中には2年制の学校もあります。
大学と違い、言語聴覚士となる為の専門知識を短期集中型で学ぶことができます。
学費はどれぐらい掛かる?
言語聴覚士となる為にかかる学費について、それぞれの学校別に解説していきます。
①4年制大学
4年制大学の学費は、私立で年間約130~160万円、国公立で年間約50~60万円程度です。
また、それぞれ初年度は入学金として30万円程度かかる学校が多いです。
・北海道医療大学(http://www.hoku-iryo-u.ac.jp/~koho/youkou/gakuhi_index.html)
年間授業料:1,375,000円
入学金:300,000円
・大阪江﨑リハビリテーション大学(https://www.kawasakigakuen.ac.jp/admissions/expenses.html)
年間授業料:1,570,000円
入学金:280,000円
②3年制短期大学
3年制短期大学の授業料は年間約130~150万円程度で、入学金として30万円程度かかるところが多いです。
・仙台青葉学院短期大学(https://seiyogakuin.ac.jp/examinee/schoolexpenses/index.php#a06)
年間授業料:1,400,000円
入学金:250,000円
・弘前医療福祉短期大学(https://www.hirosakiuhw.jp/entrance/gakuhi_daigaku/)
年間授業料:1,390,000円
入学金:250,000円
③専門学校
専門学校の学費は年間約110~140万円程度で、入学金として10~30万円程度かかるところが多いです。
・札幌医学技術福祉歯科専門学校(https://nishino-g.ac.jp/iga/nyushi/gakuhi/gakuhi-gengochokakushi/)
年間授業料:1,245,000円
入学金:200,000円
・東京医薬専門学校(https://www.tcm.ac.jp/information/tuition/)
年間授業料:1,183,000円
入学金:100,000円
言語聴覚士のやりがい
言語聴覚士は患者さんの「話す」「聞く」「食べる」など、生活に欠かせないコミュニケーションや食事に関わる機能を回復させるサポートをします。
このように患者さんの「生きがい」を取り戻すためのサポートができるという点が、言語聴覚士の一番のやりがいではないでしょうか。
また、国家資格であることから専門性が高く、医療だけではなく介護や福祉など様々な現場で言語聴覚士のスキルは必要とされています。
子どもから高齢者まで幅広い年代の人との出会いがあることや、様々な分野で活躍できるという点も言語聴覚士の仕事の面白いポイントではないでしょうか。
まとめ
言語聴覚士になる為には3年制または4年制の大学や専門学校を卒業することで受験資格を得て、国家試験に合格する必要があります。
理学療法士や作業療法士に比べると有資格者が少ないので、今後の高齢化社会において言語聴覚士の資格を持っている人はますます求められる存在になっていくでしょう。
国家試験の合格率は例年7割程度で理学療法士や作業療法士に比べるとやや低い傾向にありますが、新卒者の合格率は8割を超えています。
勉強時間を確保できる新卒での合格を目指し、自分に合った学校選びをしていきましょう。