点字通訳者を目指している方にとって、どこに就職できるだろうか? また収入はいくら得られるのだろうか? という疑問はとても気になるところです。
この記事では、点字通訳者の実際の就職先・年収について詳しく解説しています。
点字通訳者になりたい方、また今点字通訳を学んでいる方にとって参考になると思います。
ぜひ、最後までお読みください。
点字通訳者通訳とはどんな仕事?
仕事内容
目で読む文字を「墨字」、目の不自由な方が指で触って読む文字を「点字」と言います。
この「墨字」を「点字」に打ち直していくのが、点字通訳者の主な仕事です。
以前は、点筆と呼ばれる針、または点字タイプライターで一文字ずつ紙の上に打ち込んでいましたが、最近ではパソコンで入力できるようになりました。
紙にプリントアウトすることもできますし、データファイル化することも可能です。
そのため今は、必要最低限のパソコンのスキルが必要です。
どうしたらなれるのですか?
高校を卒業後、点字について学ぶことのできる大学・短大、または専門学校に進むのが一般的です。
後述しますが、ただ点字だけを学ぶのではなく、障害者福祉全般を理解する必要があります。
また「ビジネス点字検定」という初心者向けの資格を取得し、まずボランティアから始めるという方法もあります。
どんな就職先がありますか?
独立は難しい
点字通訳=点訳だけを専業として働いている人は本当に少ないといいます。ほとんどの点字通訳者は、障害者支援施設や点字図書館などへ勤めながら点訳のスキルを活かしている、というのが実情です。
以下では、点字通訳者の勤務先として上記施設や図書館などを紹介していきます。
障害者支援施設
点字通訳者は、障害者支援施設へ勤めるケースが多いと言えます。
しかし、障害者支援施設も職種はさまざまです。生活支援員や就労支援員、職業支援員などの職種があります。
生活支援員は障害者の介護全般を行い、施設によっては就労支援・健康管理指導を行うところもあります。
就労支援員は職場実習や就職活動の支援、実習先や就職先の開拓を行います。
職業指導員は障害のある人が就職するために必要な知識や技術を身につけるため支援を行ないます。また、事業所が地域に提供する商品やサービスに関する技術を教える役割もあります。
障害者支援施設で働く場合、それらの職種に就きながら点字通訳者としてその技術を役立てていくことになります。そのため点字通訳者は、点字だけを学べばいいというのではなく、障害者福祉全般についての理解が必要です。さらに介護福祉士や社会福祉士、最低でも社会福祉主事や(介護)実務者研修の資格を有することが望ましいでしょう。
点字図書館
点字図書館は、必ず各県に1か所以上設置されています。
そこでの仕事は、点訳だけではありません。
点訳のほかに音訳といって、耳で聞く録音図書の製作もあります。これは図書を朗読・録音し、録音された図書は視覚障害者に再生機器と一緒に貸し出されます。またデイジー(DAZY=Digital Accessibie Information SYstem)形式というデータに編集して、ザビエ図書館(インターネット上で視覚障害者が利用できる仕組み)に登録します。
図書館員の仕事は、図書の製作、図書・機器の貸し出し・返却、事務、見学者の案内など広範囲に渡ります。
資格としては、図書館書士、普通自動車免許があれば有利になります。また点訳の実務経験を3年間積めば、点字技能士の資格を取得することができます。資格の有無は、給与に反映されると思われます。
その他 点字出版部会
上記のほかに、点字出版部会という日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)の部会に、26施設が所属しています。
これらの施設は、点字通訳者の就職先として考えてもよいと思います。福祉施設や出版所、新聞社などがあります。
年収はどのくらいですか?
平均年収
点字通訳者の常勤としての平均年収は、約289万円と言われています。
ただこれは、福祉・介護職全体の平均の年収額です。
以下では、それぞれの職種・職場について年収を詳しくみていきます。
障害者支援施設
障害者支援施設で働く場合、平均給与は職種によって異なり、以下の通りになります(常勤の場合 訪問系サービスも含む 2018年度厚生労働省調べ)
・サービス管理責任者(※):平均月収373,206円/年収換算約448万円
・生活支援員:311,023円/約373万円
・就労支援員:311,652円/約374万円
・職業指導員:268,200円/約322万円
(引用)厚生労働省資料https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/toukei/shogu_tyousa/dl/h30_gaiyou.pdf
月収には基本給だけでなく、通勤手当など各種手当、および一時金や処遇改善加算が含まれています。年収金額は、月収×12ヶ月で計算したものです。
各種手当(処遇改善加算含む)は、全職種平均して年626,280円、一時金(賞与その他)は、年平均基本給の約2.0ヶ月分となっています。
これらの数字は平均額ですので、経験年数や資格の有無によって違ってきます。
当然、経験年数が高い人や資格を有する人の方が、給与がより高くなります。点字通訳者も上述したように、別の福祉資格を取得した方がよいというのはそのためです。専門性も高くなりますし、ほとんどどの場合、給与に反映されるからです。
なお非常勤の人の場合は、常勤の人よりも月収として27%~38%低くなっています。
(※)サービス管理責任者とは、適切なサービスが提供できるように全体的な管理を行う職種です。主に管理職や指導者といったベテラン職員が務めることが多くなります。
点字図書館
日本点字図書館(東京都)の場合を解説します。
4年制大学を卒業して入職した場合、初任給は191,500円(2020年度)となります。それに通勤費や住宅手当、時間外勤務手当の諸手当が付き、夏冬の年2回一時金が支給されます。単純に初任給だけで計算すると、年収は約230万円です。
また点字図書館に嘱託職員・パートタイマーとして継続した5年の実績があり、かつ現在も勤務している人は、正職員として登用される場合があります。その際は新卒者と同じく筆記試験・面接試験が必須です。また初任給も新卒者と同額になります。
その他
現在求人誌には、以下のような募集が載っています。
・視覚障害者支援センターの看護師:月給18,600円
・県立盲学校の教諭:月給206,000円~264,000円
当然、看護師になるためには看護師免許が必要ですし、教諭になるためには教員免許が必要です。
点字通訳者になるために学びながら、どちらの免許も取得することはたいへん難しいことです。ただ点字に関する知識や技術はあった方がなおよいと思える仕事です。
情報として、参考のために載せておきます。
まとめ
いかがでしたか?
この記事では、
・点字通訳者の仕事内容・その進路設定
・点字通訳者の就職先
・点字通訳者の年収
について解説してきました。
点字通訳者はどんな仕事をして、どのくらい収入が得られるのか、お分かりいただけたと思います。
現実として点字通訳者は、必ずしも高い報酬が得られる仕事ではないかもしれません。
しかし障害のある方のために働くということは、お金に換算できないものが得られるのではないでしょうか。
点字通訳者を志している方は、ぜひがんばってください。