言語聴覚士は比較的新しい職種で、理学療法士や作業療法士とともに医療や福祉の現場で活躍するリハビリの専門職です。
今回はそんな言語聴覚士の仕事内容や活躍の場、向いている人の特徴について解説していきます。
言語聴覚士とはどんなお仕事なの?
言語機能に関するリハビリの専門職
私たちが生活する上で「言葉」によるコミュニケーションは欠かせません。
言語聴覚士は病気や怪我、発達上の問題などによって言語機能に障害を負った人に対して機能回復のためのリハビリテーションを行う専門職です。
病気や怪我だけではなく、発達上の問題で言葉が出にくい子どもへのアプローチも行うため、子どもから高齢者まで幅広い年代の人を対象とします。
理学療法士や作業療法士が身体面の改善を目指すのに対して、言語聴覚士は言葉に関するリハビリテーションを行うので、身体面はもちろんコミュニケーション能力の回復もサポートする役割があります。
主な仕事内容
言語聴覚士の主な仕事内容は以下の3つです。
①言語障害に対するリハビリ
言語障害とは、病気や怪我によって脳の言語領域が傷つけられたことにより言葉が出なくなる「失語症」と、脳卒中などの後遺症によって呂律が回りにくくなる「構音障害」があります。
また、言語障害には「話す」ことの障害だけではなく、話の理解が難しかったり文字が読めなくなるといった症状が出ることもあります。
言語聴覚士はこのような言語障害を負った人に対して、その原因を分析して言葉のトレーニングを行います。
舌や唇などのリハビリテーションを行ったり、読み書きに関する訓練を行い、その機能回復を目指します。
②音声障害に対するリハビリ
音声障害とは、声帯ポリープや咽頭がんなどの病気、声の出しすぎやタバコ・お酒によって声が出づらくなってしまう状態のことです。
言語聴覚士はこのような音声障害を負った人に対して、発声指導を行います。
口周りのトレーニングや発声・呼吸のトレーニングを行い、音声機能の回復を目指します。
③嚥下障害に対するリハビリ
言語聴覚士は言葉に関するリハビリだけではなく、食事に関するリハビリも行います。
嚥下障害とは、病気や心因的な原因により上手く食事を噛んだり飲み込むことが難しくなってしまう状態です。
言語聴覚士はこのような嚥下障害を負った人に対して、口周りの筋力トレーニングや飲み込みの指導を行います。
言語聴覚士の男女比
平成28年に厚生労働省が実施した「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士需給調査」によると、病院に勤務する言語聴覚士のうち73.5%が女性という結果になっています。
理学療法士や作業療法士と比べて、あまり身体を大きく使わない仕事であるため、女性が働きやすい職種なのかもしれません。
また、小さな子どもも対象とすることが多いので子どもが好きな女性にとってもやりがいのある仕事だと言えるでしょう。
言語聴覚士が働く現場には理学療法士や作業療法士も多く在籍しています。
理学療法士は男性が61.2%、作業療法士は男性が40.7%であることから、言語聴覚士が働く現場には男性も一定数在籍しています。
圧倒的に女性が多い職場というわけではないので、その点では男性にとっても働きやすい職種と言えるのではないでしょうか。
言語聴覚士の活躍の場
言語聴覚士は全国に約36,000名いますが、その約7割が医療機関に所属しています。
ですが、言語聴覚士の活躍の場は医療機関だけではありません。
日本言語聴覚士協会に所属する言語聴覚士の勤務先は以下のとおりです。
医療:71.7%
老健・特養:14.7%
福祉:7.3%
学校教育:1.8%
養成校:1.9%
研究・教育機関:1.1%
その他:1.5%
参考:言語聴覚士とは | 一般社団法人 日本言語聴覚士協会(https://www.japanslht.or.jp/what/)
ここでは言語聴覚士の主な活躍の場について詳しく解説していきます。
医療
主な勤務先は大学病院、総合病院、リハビリテーションセンター、地域の診療所などで、所属はリハビリテーション科、耳鼻咽喉科、小児科、形成外科、口腔外科などが多いです。
医療機関での言語聴覚士の役割は、医師の指示書に沿って患者さんに対して適切なリハビリテーションを行うことです。
保健
主な勤務先は介護老人保健施設、訪問リハビリテーション、訪問看護ステーション、通所リハビリテーションなどです。
主に高齢者を対象とし、医師の指示書に沿ってリハビリテーションをしたり言語機能に関するレクリエーションを行ったりします。
福祉
主な勤務先は特別養護老人ホーム、デイサービス、肢体不自由児施設、重症心身障害者施設などです。
高齢者施設では、施設に入所もしくは通所している高齢者に対して、言語機能に関するリハビリテーションやレクリエーションを行います。
障害者施設では、言語機能などに障害を負った人に対して適切なリハビリテーションを行います。
教育
主な勤務先は特別支援学校、研究施設、言語聴覚士養成施設などです。
発達の遅れで言葉が出にくい子どもに対して訓練を行ったり、言語聴覚士を目指している学生に対して指導を行ったりします。
言語聴覚士に向いている人とは
人とコミュニケーションを取るのが好きな人
言語聴覚士は言葉を扱うリハビリテーションの専門職ですから、他人とのコミュニケーションは不可欠です。
相手の話をよく聞いて分析し、その人に合ったリハビリテーションを提供していく役割があるので、人とコミュニケーションを取ることが好きな人が向いていると言えるでしょう。
また、言語聴覚士は子どもから高齢者まで幅広い年代の人を対象とするので、どんな年代の人とも分け隔てなく接することができる人が向いています。
患者さんだけではなく、同じ現場で働く専門職との意思疎通も必要になりますから、コミュニケーション力は言語聴覚士に求められるスキルであると言えます。
相手のペースに合わせられる人
言語障害によって言葉が出づらい人にとって、一番辛いのは急かされることです。
本人が一番焦っているわけですから、急かすのではなくその人のペースに合わせて一緒に訓練をしていく姿勢が大切です。
また、発達の遅れで言葉が出づらい子どもに対しても、焦らせるのではなく楽しみながら言葉を習得していくことができるよう工夫することが必要です。
どのような障害がある人に対しても、相手に寄り添う姿勢で接することができる人が言語聴覚士に向いていると言えるでしょう。
忍耐力がある人
言葉は他人とコミュニケーションを取る上で欠かせないツールです。
言語聴覚士が対象とする言語障害を持つ人は、他人とのコミュニケーションを取ることが難しい状態にあります。
ですから、リハビリテーションをする中で患者さんとの意思疎通が上手くいかない場面も多くあるでしょう。
そんなとき、どうすれば相手の意思を汲み取ることができるのかを根気強く考え、時間をかけて信頼関係を築いていける人は言語聴覚士に向いていると言えます。
言葉が出づらい人に対しても、焦らず忍耐強く接することが大切です。
まとめ
言語聴覚士は言葉に関するリハビリテーションを行う専門家です。
言葉は他者とコミュニケーションを取る上で欠かせないツールですから、言語聴覚士はそんなコミュニケーション能力を回復させる重要なお仕事であると言えます。
子どもから高齢者まで幅広い年代の人と接することができる言語聴覚士は、とてもやりがいを感じられる仕事なのではないでしょうか。