高齢者を対象とした介護福祉施設には、さまざまなタイプが存在します。
その中の一つに、「介護医療院」という施設が存在します。
これは2018年から新たに創設されたものであり、“医療”と“介護”が同時に受けられる施設としてニーズが高まっています。
しかし、創設されて間がないため、詳細をご存じない方も多いのではないしょうか。
今回は、この施設について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「介護医療院」とはなにか?
概要
この施設は、「要介護者の”長期療養”と”生活支援”」を目的としています。
2018年4月に新しく定義づけられた高齢者施設であり、もともとあった介護保険施設「介護療養型医療施設(療養病床)」の機能を引き継ぐ形で誕生しました。
この「介護療養型医療施設」は“療養病床”というタイプの病床であり、医療保険が適用される「医療療養病床」と介護保険が適用される「介護療養病床」に分かれていました。
その後、2018年4月に「介護医療院」を創設し「介護療養型医療施設」を廃止、6年間の経過措置期間を経て転換するという方針を決定したのです。
この背景には、家族の介護や在宅介護が困難なため、仕方なく入院を長引かせていた“社会的入院”が増え、病床が足りなくなるという点が社会問題にまで発展したことにあります。
施設の特徴について
名称の通り、本施設は「医療と介護サービスが一緒に受けられる施設」です。
そのため、医師や看護師も常駐しており、看取りやターミナルケアの対応もしています。
他にも、機能訓練や日常生活の支援、利用者の尊厳の保持や自立支援などを重視したサービスも提供されています。
また、地域との交流の場としての機能も備えていることも特徴の一つに挙げられるでしょうか。
ちなみに、本施設は「介護保険施設」の一つであり、介護保険サービスで利用することができる公的施設となっています。
介護保険施設には、以下4つの種類があります。
上記施設は国からの補助金で運営しているため、月額利用料が低めに設定されています。
そのため、民間施設に比べて比較的低額で利用できるのも、特徴の一つといえます。
施設の種類について
本施設には、以下3つの種類が存在します。
②「Ⅱ型」:入居者の家庭復帰をリハビリなどでサポートする介護老人保健施設に相当する施設
③「医療外付け型」:居住部分と医療機関を併設した施設
尚、「Ⅰ型」は、さらに「療養機能強化型A・B」の2タイプに分かれています。
それぞれの違いは、以下の通りです。
・重症度割合 :50%超
・医療処置 :50%超
・ターミナルケア:10%超
・リハビリ :要件あり
・地域貢献活動 :要件あり
【強化型B】
・重症度割合 :50%超
・医療処置 :30%超
・ターミナルケア:5%超
・リハビリ :要件あり
・地域貢献活動 :要件あり
端的にまとめると、「強化型Aの方が、医療処置やターミナルケアを受ける人の割合が大きい」となります。
どのようなサービスが提供されるのか?
本施設で利用できるサービスは、「医療ケア」と「介護サービス」に大別されます。
まず、「医療ケア」として提供されているサービスには、以下が挙げられます。
◆経管栄養
◆点滴
◆酸素吸入
◆褥瘡(じょくそう)ケア
◆注射や薬の処方
◆看取り、ターミナルケア
投薬や処置・検査なども必要に応じて行われています。
他の施設に比べて医療ケアが充実していることが大きな強みの一つであり、「入院するほどではないけれど、専門的な医療ケアを受けたい」と考えている人にオススメできる施設です。
そして、「介護サービス」として提供されているものには、以下があります。
◆レクリエーション
◆機能訓練
◆その他の日常生活上のお世話
本施設では、医療ケアだけでなく、他の介護施設と同レベルの介護サービスも受けられます。
また、上記に加えて“日常生活のサポート”も提供されます。
例えば、掃除や洗濯など、加齢や病気の進行に伴って自力で行うことが難しくなる日常生活の支援サービスが行われているのです。
どのようなスタッフが働いているのか?
施設には、以下のスタッフが勤務しています。
◆「薬剤師」
◆「看護職員」
◆「介護職員」
◆「リハビリ専門職」
◆「栄養士」
◆「介護支援専門員(ケアマネージャー)」
◆「放射線技師」
◆「調理員・事務員など」
尚、定められている人員配置は、「Ⅰ型」と「Ⅱ型」で異なります。
例えば、医師ですが、「Ⅰ型」の場合は入所者48人ごとに1名の配置が定められていますが、「Ⅱ型」の場合は入所者100人ごとに1名の配置が定められています。
看護職員の場合は、どちらも同じで入所者6人ごとに1名の配置。
介護職員は、「Ⅰ型」の場合は入所者5人ごとに1名配置、「Ⅱ型」の場合は入所者6人ごとに1名配置……などです。
入所基準について
申し込めば誰でも入所できる……というわけではなく、入所するためには一定の基準を満たしている必要があります。
それは、「要介護認定を受けている」ことです。
※「要介護認定」については、以下を参照ください※
「要介護」が必須であり、「要支援」の場合は対象外となります。
尚、要介護認定を受けることができるのは原則65歳以上ですが、特定疾病を抱えていれば64歳以下でも申請することが可能です。
また、要介護には1~5の段階があり、数字の高い人=介護度が高い・緊急性があるといった方が優先されます。
例えば、「自宅での介護が難しい」「日常的に医療ケアを必要とする」などの場合です。
“要介護認定を受けている=誰でも入所できるわけでもない(優先度がある)”という点にも、注意しておいてください。
さらにもう一つ。
「入所には担当医の協力が必要」という点も忘れてはいけません。
入居を希望する場合、本人・家族・診療所・病院・担当ケアマネージャーなどから、施設の入所担当者に連絡をします。
その後、入所担当者が入所の日程を調整し・調整後に入所……という流れになるのですが、入所希望者の症状によっては、入所担当者から担当医に連絡(相談)が来る場合があるのです。
加えて、本人の症状を確認するために、「紹介状」や「情報提供書」が求められます。
入所を希望される方は、事前に担当医やケアマネージャーにしっかりと相談したうえで進めてみてください。
費用について
まず、入居一時金などの初期費用はかかりません。
また、「介護保険」も適用可能です。
収入によりますが、1割~3割の自己負担で施設を利用することができます。
ただし、入居後の月額費用として「介護サービス費」「居住費」「食費」「日常生活費」が発生します。
さらに、「Ⅰ型」と「Ⅱ型」によっても金額は変わります。
この金額についてですが、利用状況によって変化します。
「介護サービス費」は要介護度によって変わります(要介護度が高くなるほど費用も高くなる)し、「居住費」も施設の居室タイプによって費用が異なります(多床室よりも個室の方が当然値段は高くなる)。
また、「日常生活費」……例えば、電気代/理美容代/新聞・雑誌代など、生活の中で発生する費用も人によって金額は異なります。
ただし、「食費」だけは、部屋の種類などに関係なく、基準費用額が「1,445円(1日3食)」で統一されています。
跡、もう一つ、「加算項目」にも注意しておいた方が良いかと思います。
これは、基本的な介護サービスとは別に、追加のサービスを受けた場合に料金が加算されるというものです(排せつケアや口腔ケアなども加算の対象となる)。
金額に関しては利用者の状況などによって変化するので、この点も事前に確認をとっておくといいでしょう。
施設を利用する「メリット」「デメリット」とは?
「手厚いサービスが利用できる」
「民間施設に比べ低額で利用できる」
こう聞くとメリットばかりのように感じる人もいるかもしれませんが、利点があれば注意すべき点もあります。
この項目にて、それぞれの特徴をまとめておこうと思います。
メリットについて
まず、最大のメリットは、「医療と介護が充実している」という点にあります。
家ではできないケアも医師が看護師が行ってくれますし、介護スタッフにより介助や専門の療法士によるリハビリも得られるため、非常に生活がしやすいといえます。
また、病院に併設されて作られることも多く、万が一にも容体が悪化したとしても、すぐに関連病院に受け入れてもらえる可能性も高いです。
看取りやターミナルケアもしてもらえるため、最後まで安心して暮らすこともできるでしょう。
デメリットについて
デメリットとして挙げられる点は、2つあります。
一つは、「費用が高くなる」ということです。
というのも、本施設では「介護保険サービス費用」だけでなく「居住費」「食費」「日常生活費」がかかります。
いくら介護保険が適用されるといっても、入所が長引くほどにトータルの費用が高額になることは多く、人によっては支払いが難しくなる場合もあります。
費用については、支払いが難しくなる前に生活相談員に相談してみることをオススメします。
もう一つの注意点は、「プライバシーの確保が難しい」ということです。
介護医療院の部屋は、「多床室」であることが多く、プライバシーの確保が難しいのです。
仮に個室が用意されていたとしても、多床室に比べて居住費は高くなってしまいます。
「多床室=一室に複数の人が利用している」ということであり、パーテーションやカーテン・家具などで仕切られていることが多く、人によっては「隣の人の生活音が気になる……」という可能性もあるのです。
こういった点には、注意が必要かと思います。
まとめ
介護医療院は、高齢者が入居できる介護施設の中では歴史が浅く、新設されたばかりの施設です。
そのため、「実際に入居した場合の暮らし方」や、「具体的にどのくらいの費用がかかるのか?」、そして「十分な医療ケアが受けられるのか?」など、さまざまな点で不安を感じる人もいらっしゃるかと思います。
不明点があれば、直接介護医療院に確認を取ってみてください。
疑問や不安をそのままにしておかず、本人とその家族が納得できる選択を目指してみてください。