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「ロコモティブシンドローム」とはなにか?症状や原因、予防法について解説します!

この記事は約9分で読めます。

「人生100年時代」と言われている現代日本。

健康寿命を延ばし、できるだけ長く健康に過ごしたいと考え、日々の生活習慣に気を配る方も多いと思います。

しかし、どれだけ健康に気を配っていたとしても、年齢が進むにつれ体の自由が利かなくなってくることは十分にあり得ます。

そんな中、日本の健康寿命を延ばす取り組みを促すために「日本整形外科学会」が提唱した言葉があります。

それが、「ロコモティブシンドローム」というものです。

今回は、この症状や原因、予防法について解説していきたいと思います。

「ロコモティブシンドローム」とはなんなのか?

概要


「ロコモティブシンドローム」……略して「ロコモ」とは、「運動器が障害を起こし、立ったり歩いたりしづらくなった状態」のことをいいます。

運動器は、骨・関節・筋肉・軟骨・椎間板・神経など、さまざまな要素で成り立っています。

これらの機能のいずれかもしくは複数に障害が起こると、いずれは立ったり歩いたりといった日常生活の中で行う簡単な動作をすることすら困難となってしまうのです。

この状態を放置しておくと、当然運動器機能はさらに低下していくこととなり、最悪の場合は寝たきり状態になる恐れもあります。

高齢者に多い病気であり、要介護の原因になりやすい

骨や筋肉というのは、20歳~30歳代でその量のピークを迎え、その後も適度な運動により刺激を与えたり、適切な栄養を摂ったりすることで、良い状態が維持されることとなります。

しかし、どれだけ健康に気を配っていたとしても、体は年齢とともに衰えていってしまうものです。

そのため、特に高齢者に起こりやすい病気と言われているのです。

また、ロコモは“要支援・要介護の大きな原因の一つである”とも言われています。

◆運動器機能が低下し、立つ・歩くといったことが困難になる
◆転倒して負傷したことをきっかけに寝たきりになる
◆体の痛みをかばううちに筋力が落ちてしまい、日常動作を行うことができなくなる

このように、介護が必要な状態につながりやすいのです。

ただし、必ずしも高齢者だけに起こりうるものではありません。

若いうちに適切な体作りをしておかないと、30歳~40歳代のもっと早いタイミングから体の衰えを感じやすくなります。

また、自覚症状がない=日常生活に支障はないと思っていても、自身でも気づかないうちに病状が進行しているケースも多くあります。

近年では、高血圧などの生活習慣病を抱えている方も多いですし、そもそも「運動不足な人」も増加しています。

運動不足な人は、それだけ早く運動器機能が衰えていき、そういう人ほどロコモになりやすいのです。

ただし、既にロコモであると分かった場合であっても、「普段の生活を改めることで進行を遅らせる」ことはできます。

長く健康的に老後を過ごすためにも、運動器を長持ちさせて健康寿命を延ばしていくことを意識してみてください。

尚、ここまでに何度かでてきた「健康寿命」に関しては、別の記事にて詳しく説明しておりますので、以下にリンクを貼っておきたいと思います。

「原因」と引き起こされる「負のスパイラル」について

「原因」について

原因となり得るのは、主に以下の2点に大別できます。

①加齢による筋力やバランス能力の低下
②骨や関節、筋肉の病気

まず①ですが、年齢を重ねるごとに、全身の筋肉量や筋力は自然と低下してしまいます。

このことを「サルコペニア」といいます。

特に下半身は人が「歩く」上で非常に重要な箇所であり、下半身の筋肉量や筋力が低下すると、それだけ移動機能が低下し動くことが辛くなります。

移動機能が低下すると、動くことそのものが億劫になり、より運動不足を引き起こします。

そして、運動不足になれば、より筋力が低下してしまいます。

加えて、加齢や運動不足によって、バランス能力や神経伝達反応の感度も低下します。

これらのことが複合し・負のスパイラルに陥り、ロコモの進行を速めてしまうこととなるのです。

そして②ですが、骨・関節・筋肉の病気によっても起こり得ます。

◆「骨粗鬆症」
◆「変形性関節症」
◆「変形性脊椎症」

上記は「3大原因病」と言われており、特に注意が必要とされています。

ほかの病気と合わさることで起こる「負のスパイラル」について

特に高齢者の方が注意しなければいけないのは、「ロコモ」「骨粗鬆症」「認知症」による負のスパイラルに陥ることです。

まず、ロコモによって運動機能が低下してしまうと、骨が弱り「骨粗鬆症」を発症しやすくなります。

「骨粗鬆症」とは骨密度が低下する病気であり、骨がもろくなることです。

そのため、軽く転んだだけでも骨折につながるリスクがあり、高齢者の方は特に注意しなければいけません。

骨折してしまうと治療のために「臥床」(※)で過ごす時間が発生してしまいますが、安静にする期間(ベッドが離れられない期間)が長引いてしまうと、さらに運動機能が低下するだけでなく「認知症」を発症するリスクも高まってしまいます。
※臥床(がしょう):ベッドなどに寝ること

そして、認知症を発症すると、さらに転倒のリスクが高まるというデータもあります。

このように、これらの病気が合わさって深刻な悪循環となり、どれか一つでも発症すると、要介護状態や寝たきりの状態になるリスクを高めてしまう可能性があるのです。

ロコモのセルフチェック

「日本整形外科学会」では、誰でも簡単にロコモ診断ができるチェック項目を挙げています。

それが、以下です。

◆片脚立ちで靴下がはけない
◆家の中でつまずいたり、滑ったりする
◆階段を上るのに手すりが必要
◆掃除機を使ったり、布団を上げ下ろしするなど、やや重い家事をするのが難しい
◆2kg(1リットルの牛乳パック2個)程度の買い物袋を歩いて持って帰るのが難しい
◆15分間続けて歩くと激しく疲れてしまう
◆横断歩道を青信号の時間で渡りきれない

1つでも当てはまるものがあれば、注意+改善のために動き出してみてください。

「予防法」について


ここまでにご紹介した通り、ロコモの原因は「加齢」だけでなく「運動不足」も影響してきます。

高齢者が陥りやすい病気ではありますが、(もちろん将来のためにも)若い人であっても注意しておくことに越したことはありません。

ロコモを予防する方法は、以下が挙げられます。

1.「食生活を改善する」
2.「適度な運動を心がける」
3.「鎮痛剤などを活用する」

順に解説していきたいと思います。

予防法1.「食生活を改善する」

まず、ロコモに陥りやすい人として“肥満体系の人”が挙げられます。

肥満体系の人は腰や膝に負担がかかりやすく、長い期間その体系のままでいると、いずれ関節などに障害が生じてしまう可能性があるのです。

また、ダイエット中の人や体が細い人であっても「低栄養の食生活」を続けている人は注意が必要です。

そのため「食生活を改善し、規則正しい食生活を送ることが重要」となってきます。

骨や筋肉を作るのに必要なのは、以下の栄養素です。

◆「カルシウム」:牛乳・乳製品
◆「ビタミンD」:魚類
◆「ビタミンB6」:レバーや・にんにく
◆「タンパク質」:肉類

ただし、偏った食生活になれば肥満を招いてしまう恐れもあるため、他の栄養素とのバランスを考えて摂取する必要があります。

大切なのは、「炭水化物」「脂質」「タンパク質」「ビタミン」「ミネラル」の5大栄養素をバランスよく摂取すること。

身体は“食べたもので作られる”ため、早いうちから食生活の改善には目を向けておいた方が良いと思います。

予防法2.「適度な運動を心がける」

運動器の機能は、日頃の生活で体を動かして負荷をかけることで維持することができます。

だからこそ、若いうちから適度に運動する習慣を作っておき、運動器を意識的に使い続けることが重要となるのです。

ただし、無理にハードな運動を取り入れる必要はありません。

大切なのは“継続し続けること”であり、“体を意識的に動かすこと”なので、以下のような簡単な動きを実践するでも問題はありません。

◆歩幅を広くして、速歩きする
◆エレベーターやエスカレーターではなく、階段を使う
◆地域の体作りイベントに参加する
◆テレビを見ながらトレーニングやストレッチをする
◆いつもより少し遠くのお店まで歩いて買い物に行く
◆近所の公園や運動施設を活用する
◆なるべく外出の機会を作る

特に高齢の方は、「体を動かす時間を少しずつ増やしていく」こと、そして「体調が悪いときは無理をしない」ことを意識してみてください。

無理に体を動かして怪我の原因となってしまったら、それこそ本末転倒です。

加えて、“関節への負担を避ける”ことも大切です。

例えば、歩くときはつま先に体重をかけず、足の裏全体で着地すると膝の負担を抑えることができます。

靴は必ず自分の足に合うサイズや形状のものを選んで履くといいでしょう。

食生活の改善はもちろん、体を動かす習慣を合わせて設けることで、ロコモの予防となるのです。

予防法3.「鎮痛剤などを活用する」

「立つ」「歩く」といった基本的な動作に痛みが伴うと、痛みを感じる体制を避けたり、そもそも動くこと自体が億劫になる人もいらっしゃるかもしれません。

しかし、そのままの状態を長く放置すると、余計に筋力は落ち続けてしまい、運動器の機能低下が進行する悪循環に陥りかねません。

湿布で炎症を抑えたり、場合によっては医師の診断を受けて「鎮痛剤」などを処方してもらったりして、状態の悪化を防ぐことも視野にいれてみてください。

また、膝や腰などに痛みがある場合でもできる運動方法というのはあります。

適切な運動を続けていれば、痛みが改善することだってあるのです。

問題なのは、「痛いからといってその部分を動かさずに放置してしまうこと」です。

少し酷なように聞こえるかもしれませんが、自身の体のためにも「痛みがあっても動かすことが必要である」ということを覚えておいてください。

ただし、自己の判断のみで無理に体を動かすことは避けましょう。

専門家に適切な運動やストレッチ方法を聞き、できる範囲で継続できるよう工夫してみてください。

まとめ:自分に合った方法を模索すること

ロコモの怖いところは、「体が思うように動かない」→「動くのをやめる」→「さらに体が思い通りに動かなくなる」という悪循環に陥りやすい点にあります。

もし症状に心当たりがあるのであれば、できるだけ早期に生活習慣の改善を行い、悪循環に陥る前に抜け出す工夫をしてみてください。

尚、生活習慣の改善を行う上で大切なことは、「継続すること」です。

食生活をいきなり大きく変更する。

はじめから辛いトレーニングを行う。

こうなると、継続できない(精神的ストレスになる)ばかりか、筋肉や関節を痛める原因にもなってしまいます。

まずは、負担が少ない・自分ができることからスタートし、徐々に改善に深みを持たせていけば良いのです。

後は、「続ける工夫」も大切です。

身体が思うように動かなくなればなるほど、運動意欲はなかなか湧いてきません。

また、一人で実践しようとすれば、継続の意思も徐々に薄れていってしまうかもしれません。

そのため、「楽しく続けられるように工夫する」こともロコモ予防には欠かせないのです。

例えば、

◆友人と一緒にサークルに入る
◆スポーツクラブや地域のイベントなどを利用する
◆地域のラジオ体操に参加する
◆スマホなどのトレーニングアプリなどを利用してゲーム感覚で継続する

など。

継続する工夫はさまざまに存在し、どの手段を用いるかは人それぞれです。

ぜひ、自分に合ったやり方で、長く継続できるよう工夫してみてください。

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