前回の記事で「診療報酬」についてのご紹介をさせていただきました。
「診療報酬」とは、その名の通り“患者を診療したときに、医療機関側が受け取る報酬”のことを指しています。
そして、これに似た報酬として“介護サービスを提供した際に、介護事業者側に支払われる「介護報酬」”というものが存在します。
今回は、この「介護報酬」について、詳しくご紹介をしていければと思います。
「介護報酬」ってなに?
概要
この報酬は、「介護事業者が、介護利用者に対して”介護保険が適用される介護サービス”を提供した際に、その対価として受け取れる費用」のことを言います。
この制度が誕生したのは「2000年」からであり、以後は介護保険制度とともに“3年に一度改定される”こととなっています。
尚、後述の通り、この「介護報酬制度」と「介護保険制度」は密接な関係を持っており、事業所だけでなく利用者にとっても大きな影響を及ぼす可能性があります。
報酬支払いの流れについて
年齢を重ねると、どうしても日常生活を自分一人だけで行うことが困難になってくる時期が訪れます。
その“介護・支援が必要となった際”に、自治体に要介護・要支援認定を申請して認定されれば「介護保険」が適用されることとなります。
その介護保険を使用することで、利用者負担は(介護報酬)の原則1割分となり、残りは介護保険から支払われることとなるのです。
ただし、自己負担額1割というのはあくまで“原則”であり、以下のような条件で最大3割負担まで増加することとなります。
【世帯に65歳以上の方が、1人いる場合】
【世帯に65歳以上の方が、2人以上いる場合】
この制度自体まだ日ができて浅いものではありますが、改定によって所得に応じて自己負担額が変化するようになったのです。
尚、現在は1割~3割負担となっていますが、この負担額も今後の改定で変更される恐れもあるため、介護保険を利用される(利用しようと考えている)人は、随時確認を行っておいた方が良いかと思います。
介護保険サービスに分類されるものとはなにか?
介護保険が提供するサービスは、大きく分けると以下の3つが存在します。
◆「施設サービス」 :施設に入所する
◆「地域密着型サービス」:住み慣れた地域で末永く生活する
そして、それぞれをさらに細かく分類すると、以下表のようになります。
この「介護保険法」や「介護保険サービス」については、改めて別の記事にて詳しくご紹介をしていければと思います。
「単位」が存在する
上記でご紹介した“介護保険サービスに該当するもの”ですが、これには各サービスごとに「単位」が定められています。
(厚生労働大臣が定める基準により算定されている)
その「単位」に、地域ごとの「単価」をかけた金額が、サービス提供者の事業所に支払われる報酬となるのです。
例えばの話ですが、単位数が250単位・1単位が10円と定められている業務があった場合、以下のように計算されます。
「単位数:250単位×1単位の単価:10円=2,500円」
単価は“1単位10円”を基本としており、サービスの種類ごとに設定された人件費率や地域ごとに設定されたパーセンテージに合わせて、11.40円まで加算されます。
介護報酬の計算が単位を元に行われるのは、地域によって物価や人件費に違いがあるため、その地域差を吸収する仕組みが必要だからです。
ちなみに、“利用者が1か月で受けられるサービスの上限単位数”は決まっています。
これを「区分支給限度基準額」というのですが、知商社自身がこの単位をしっかりと把握し、必要なサービスを選択して利用していく必要があるのです。
介護報酬の「改定率」の推移について
上述で「介護報酬は3年に一度改定される」と記載しましたが、この報酬の“上げ幅/下げ幅”のことを「介護報酬の改定率」と呼んでいます。
そして、その改定率の推移は、以下の通りです。
尚、上記でもお伝えした通り、この報酬は「事業所」と「利用者」ともに密接な関係を持っています。
基本的には、“介護報酬が引き上がる=事業所の利益が上がる”こととなります。
しかし、それと同時に“利用者の負担額も上がる”のです。
逆に、引き下げが行われると、利用者の負担は下がりますが、事業所の収入も減ってしまうことになります。
利用者側の立場からすると「負担額は減ってくれた方が助かる……」ではありますが、事業所側からすると「介護報酬は引き上がってくれた方が助かる……」となり、これがこの報酬の難しいところです。
ちなみに、2018年・2021年と2期連続で引き上げが行われていますが、これには理由があります。
2018年の方は、少子高齢社会である現代において、「介護保険の利用者が増加したから=事業所側の負担が増加したから」……が挙げられます。
そして2021年は、「新型コロナウイルス」の影響によって、感染症対策などのコストが増えたため、介護事業者にとっての履歴率が低下していることが原因となります。
この改定は3年に一度なので、次回の改定は2024年となります。
その際に、日本はどうなっているのでしょうか……。
まとめ
以上が、介護報酬の詳細となります。
再三お伝えしている通り、この報酬は事業所と利用者に密接な関係があり、単純に“上がればor下がれば良い”という訳でもないのが難しいところです。
また、現代は「超高齢化社会」に突入しており、今後も介護を必要とする人々は増えていくはずです。
しかし、同時に「少子化問題」も抱えており、介護の仕事に携わる人が高齢者に比例して増加していくか?と言われると、これもまた難しいところとなります。
介護業界は慢性的な人手不足に悩まされており、「給与や待遇を仕事量に見合った分もらいたい」と考える人が多いのも事実です。
この制度そのものが今後どうなっていくのか、次回改定は2024年ですが、その時に日本はどうなっているのか……。
この点が興味深くもあり、怖くも感じる部分でもあります。
ただし、この現状は国ももちろん理解しています。
そのために、働き方改革が介護業界にも浸透してきているわけですし、介護報酬も二期連続で引き上げが行われているのです。
今後も介護の現場で働く人々にとって、少しでも良い条件で働ける世の中になっていくことを望むばかりです。
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