皆さんは、病院などに通院・入院などをした際、以下のような経験はないでしょうか。
②何万円もの差額ベッド代を取られた
③〇週間(早い期間)で退院してほしいと言われた
④看護師さんとても忙しそうで声をかけられない
上記はすべて「診療報酬」が密接なかかわりを持っているのです。
今回は、この報酬について、簡単かつわかりやすくご紹介していきたいと思います。
「診療報酬」について
概要
この報酬は、その名の通り“医療機関が患者を診療したときに受け取る報酬”のことを指しています。
これは、“公定価格”として国が定めているものです。
そして、これについては「日本医師会」の「なるほど!診療報酬」の項目にて、画像込みで丁寧に説明されています。
怪我や病気をした時に病院などに行きますが、その際に「国民健康保険」などの保険証を提示するはずです。
これを「公的医療保険制度」と言います
(誰でも必要な医療行為を受けることができる)
ちなみに、この報酬は全額を患者が払う訳ではありません。
現在の日本では、3割を自費として払い、残りの7割は健康保険によって負担されているのです。
この報酬は「点数(単位)」を加算して算出される
医療行為はすべて、厚生労働省によって「点数(単位)」が定められています。
金額は、“1点=10円”です。
(これは日本全国どこでも変わりはない)
この報酬は、これら“一つひとつの点数を足し合わせて算出される金額”となるのです。
「医師の収入」ではない
ここで一つ注意しておかなくてはいけないのは、この報酬は「医師の収入ではない」ということです。
病院や診療所(クリニック)などは、医師一人で経営している訳ではなく、看護師さんや事務員などの人員はもちろん、多数の医薬品や医療機器などが存在します。
◆医薬品費
◆医療機器・機材費
◆設備関係費・その他ランニングコスト など
こういった、医療機関を経営していく上で、この報酬は欠かせないものなのです。
ちなみに診療報酬は、基本的に“2年に一度改定”されています。
医療機関にとっては経営の要となる大事な収入なので、定期的にこまめに調整していく必要があるのです。
また、この改定には、以下の3つのタイプが存在します。
②同時改定 :「診療報酬」と「介護報酬」の改定タイミングが同じ時期に起こるもの
③消費増税による改定:消費税が増税された際に行われるもの(直近であれば2019年)
少し補足しておくと、②は6年に1度同時改定のタイミングが訪れます。
なぜかというと、「介護報酬は3年に1度」行われるものだからです。
そして③ですが、「診療報酬=非課税」ではあります。
ただし、医療機器や医薬品などは、消費増税とともに増税分金額が増えてしまいます。
「(増税分)負担は増えるのに、収入は増えない」といった問題(=利益が減る)を防ぐために、増税に合わせて報酬改定を行うのです。
なぜ「点数」で設定されているのか?
上記でご紹介した通り、この報酬は「点数(単位)」で設定されています。
「なぜ〇〇円と、”日本円”で表示してくれないのか?」という点についてですが、これは「物価変動に対応するため」と言われています。
例えば、物の値段が全て1.1倍になったとき、診療報酬を変えるのではなく“1点を11円にする”ことで対応しようという考え方です。
こうすることで、情勢に合わせて臨機応変に対応できるようになるのです。
「3つの役割」について
“医療機関への収入”という直接的な役割とは別に、この報酬には「3つの役割」があると言われています。
まとめると、以下のようになります。
2.「医療の質を均一化する」
3.「医療機関の運営をしやすくする」
順番に掘り下げていきましょう。
「政策誘導」
「医療」というのは、国民を支える大切なインフラ(基盤)です。
しかし、公的な医療機関は全体の20%ほどにしか過ぎず、残り80%は民間が運営している医療機関となります。
つまり、国が「〇〇を行います!」と医療の方針を決めたとしても、民間の医療機関は動かない(動けない)可能性があるのです。
それを未然に防ぎ・医療機関全体を動かしていくために、一種の金銭的なインセンティブを付ける……これが、診療報酬の役割となります。
「医療の質を均一化する」
診療報酬というのは、“一定の要件”を満たさなくては受け取ることができません。
この詳細は長くなるので説明を省きますが、結論として「診療報酬で設定する要件によって、医療の質を均一化することができる」のです。
一番わかりやすいのは、「看護職員の配置基準」や「看護師の比率」に関する要件でしょうか。
なんにせよ、どの医療機関においても、各自が掲げる機能に必要な体制が整うように、診療報酬の要件が設定されています。
これにより、医療の質を“ある程度”均一に保つことができるのです。
「医療機関の運営をしやすくする
例えば、2020年に診療報酬の改定が行われた際は、「働き方改革」が大きなテーマとなりました。
医師や看護師の負担を軽減するために、“補助的な人員を配置した場合の加算の点数が上がった”のです。
上述で「診療報酬は、2年に一度改定されている」と言いましたが、これは時代や状況に応じて、医療機関の運営をしやすくするという点でもメリットとなるのです。
冒頭で挙げた「こんな経験」の理由について
②何万円もの差額ベッド代を取られた
③〇週間(早い期間)で退院してほしいと言われた
④看護師さんとても忙しそうで声をかけられない
冒頭で、「上記のような経験はありませんか?」とお伝えし、これには「診療報酬が密接なかかわりを持っている」と記載しましたが、これは“点数(単位)”が設定されているからです。
例えば、③についてですが、厳密には「”2週間”で退院してほしいと言われた」となります。
その理由は、以下のような問題が発生するからです。
②「平均在院日数」という規定があり、これを超えると入院料が下がってしまう
医療機関側にとっては、報酬が減ってしまう理由に繋がるため、そうならないように入院期間を短縮しようとするのです。
また④の「看護師さんとても忙しそうで声をかけられないですが、前項の「医療の質を均一化する」の項目の中で、“診療報酬を得るには一定の要件を満たす必要がある”と説明しました。
この中に“看護師の配置人数が決められている”という問題点があるのです。
「看護師の配置人数が決められている=限られた人数で仕事をしなければいけない」ということになり、これが“過密労働が医療事故の原因の一つ”として問題になっています。
ただしこの点については、2020年の診療報酬の改定など、状況に応じて変更が加えられる可能性もあります(=補助的な人員を配置した場合の加算の点数が上がった)。
とはいえ、“慢性的な人手不足”は、医療業界全体の問題として今なお残り続けています。
医療業界でも働き方改革は行われてきてはいますが、まだまだ現場で働く人にとっては「報酬(給与や待遇など)と労働内容が比例していない」と声が挙がっているのも事実です。
この点をどうしていくかが、今後の医療業界を支える大事な基盤となってくるかと思います。
まとめ
「医療」とは、人々の生活を支える重要なインフラ(基盤)の一つです。
しかし医療機関も慈善事業を行っているわけでありません。
そこで働く人々に対価としてお給料を支払わなくてはいけませんし、医療機器や医薬品などを取りそろえる必要があり、そこには「お金」が発生してしまうのです。
それをやりくりするために、「診療報酬」というものが存在します。
一般の人からするとあまり関係のない話のように感じるかもしれませんが、頭の片隅にでも「診療報酬とはなにか?」を知っておいていただければ幸いです。
そしてこれから医療関係の仕事に従事する人はには、この記事が少しでも役に立ってもらえれば幸いです。
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