ダイエットを行う上で多くの人が経験するであろう、「ダイエット停滞期」。
何をやっても効果が見られず、ここでモチベーションが低下してダイエットに失敗するということも珍しいことではありません。
しかし、これは誰にでも起こりうる可能性があり、かつ「ダイエットを成功に導くための一つの指標」でもあるのです。
今回は、この「ダイエット停滞期」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
ダイエットにおける「停滞期」とはなにか?
概要
ダイエットを始めて最初のうちは順調に体重が減っていきますが、ある時期を境に突然数値が変動しなくなります。
これまでと同じような食事・運動を続けているにも関わらずです。
この時期のことを、「停滞期」といいます。
「頑張っているのに効果が得られない……」とモチベーションが低下し、ここでダイエットを中断してしまう人は多いです。
しかし、これは誰にでも起こる自然な現象であり、停滞期が来ても焦る必要もダイエットを諦める必要もありません。
体重が減る時期と停滞する時期を繰り返しながら、目標体重へと近づけていくものなのです。
発生する時期や続く期間はどのくらい?
訪れるタイミングはもちろん人によって異なりますが、一般的には以下のようなタイミングで訪れることが多いと言われています。
◆ダイエット開始から1ヶ月ほどが経過した時期
また、女性の場合は生理前に起こりやすいとも言われています。
そして、停滞期が続く期間は、一般的には「2週間~1ヶ月」ほど……長い場合だと「2ヶ月」ほど続くと言われているのです。
上記は、あくまで一般的なものであり、個人差はあります。
ただ、もし上記の条件を大きく超えるようであれば停滞期以外の原因もあり得ますので、一度ダイエット方法そのものを見直してみるのも良いかもしれません。
停滞期が起こる原因について
停滞期は誰にでも訪れるものであり、発生する理由(原因)があります。
一般的に言われているのは、以下の3つです。
2.筋肉の減少による基礎代謝量の低下
3.ホルモンバランスの影響
順に解説を加えていきます。
原因1.「ホメオスタシス機能」の働きによるもの
原因の一つは、人間の身体に備わっている「ホメオスタシス」という機能によるものと言われています。
これは、“恒常性”、つまり「体の状態を一定に保とうとする働き」のことです。
人間の身体は、この機能によって、自律神経・免疫・内分泌などのバランスを取り、生命活動を維持しています。
ダイエットによって体重が減ると、人の身体は“飢餓状態=生命の危機”と考えて、少ないエネルギーでも活用できるようにコントロールします。
いわば、“省エネモード状態”のようなものです。
身体からすれば、「ダイエットをしているから体重が減っているんだな」なんて判断することはできないのです。
このホメオスタシスの機能が働くと、食事によるエネルギーの吸収率が上がり、基礎代謝や運動によるエネルギーの消費量が少なくなると言われています。
そのため、「食事制限や運動をしているのに、一行に体重が減らない」ということが起こるのです。
尚、この機能は、人の生命維持に必要なものであり、誰にでも備わっているものです。
例えば、暑いときに体温を下げるために汗をかく、寒いときに体温を上げるためにぶるぶる震える(=シバリング)なども、このホメオスタシス機能が働いているからこそ起こるものなのです。
これが、停滞期が誰にでも起こる理由となります。
そして、この状態を乗り越えることで、身体がその状態に徐々に慣れていき、再び体重が減少していく……つまりダイエットの成功につながるのです。
原因2.筋肉の減少による基礎代謝量の低下
ダイエット中……特に、“食事制限のみでダイエットをしている人”は、脂肪だけでなく筋肉量も低下してしまう恐れがあります。
筋肉というのは、年齢とともに減少していくものであり、意識的に筋肉をつける努力をしなければ減っていく一方なのです。
また、食事制限によって摂取カロリーが少なくなると、身体はエネルギーを確保するために筋肉を分解し始めます。
筋肉量が減ると、その分「基礎代謝」も低下していきます。
基礎代謝というのは、「何もしていない状態でも消費するエネルギーのこと」で、この悪循環によってどんどん脂肪が燃えにくい身体になってしまいます。
基礎代謝は総エネルギー消費量の約60%にもなり、基礎代謝を高めることは、ダイエットはもちろん健康にも良いのです。
加えてもう一つ。
筋肉を作る栄養素として「たんぱく質」があります。
そして、たんぱく質を多く含んでいる食品といえば「肉類」「魚介類」「卵類」「大豆製品」「乳製品」などが挙げられます。
食事制限のみでダイエットをする人は、”野菜のみ”など偏食する人が多く、特に肉類は敬遠しがちです。
しかし、「1日のたんぱく質の摂取量が少なくなる=筋肉を作る栄養素が足りていない」ということになり、結果として筋肉量の低下につながってしまいます。
筋肉量の低下は、ダイエットだけでなく健康にも悪影響を及ぼしてしまうため、「バランスよく栄養を摂取する」ことと「適度に運動を行う」ことを意識しておくことが大切です。
原因3.ホルモンバランスの影響
ホルモンバランスも、停滞期に影響を及ぼす原因の一つです。
まず、摂取カロリーが少なくなると、「T3」と呼ばれる、甲状腺から分泌されている代謝調節に影響するホルモンの量が減ります。
そのため、代謝量が低下してしまいます。
また、ダイエット中は心にも体にもストレスとなるため、「コルチゾール」というストレスホルモンが増加してしまい、脂肪を蓄えやすくなります。
ストレスが発生すると、空腹を感じやすくなったり、食欲が増進する(食欲でストレスを発散しようとする)傾向もあるため、余計に痩せにくい身体になってしまうのです。
これらに加えて、女性の場合は、生理によるホルモンバランスの変化によって停滞期につながることもあります。
これは、「プロゲステロン」という女性ホルモンの影響によるものです。
プロゲステロンは体内に脂肪や水分を溜め込む働きがあるため、上項にも記載した通り「女性の停滞期は生理前にも起こりやすくなると言われているのです。
停滞期を抜け出すと一気に体重が落ちる……?
停滞期を抜け出すと、一気に体重が落ちることがあります。
これも、上記でご紹介した「ホメオスタシス機能」が関係していると言われています。
というのも、停滞期中も(正しい方法で)これまでと同じようにダイエットを続けていると、いずれ身体がその状態に慣れていきます。
身体が慣れていくと、ホメオスタシス機能によって省エネモードになっていた状態から、いつも通りにエネルギーを消費する状態に戻るのです。
そのため、停滞期を脱すると「体重が一気に落ちた!」と感じやすくなるわけです。
ただし、もちろんこれも個人差があります。
中には、停滞期を脱したと思っても、また停滞期を繰り返す人もいます。
なんにせよ言えることは、「体重がまったく落ちない」と不安がる必要もダイエットを中断する必要もないということです。
健康的にダイエットを行うためには、長期的な視野を持って取り組む必要があります。
“停滞期=ダイエットの失敗”と考える必要はありません。
むしろ、「停滞期に突入した=ダイエットが成功している証である」くらいの気持ちで、前向きにダイエットに励んでみてください。
停滞期を突破するにはどうしたらいい?
停滞期は、ダイエットを行う上で必ず通過しなければいけない壁の一つです。
しかし、体重計の数字がピクリとも動かない日々に「果たしてこのダイエットは成功できるのか?」と不安が募る人も多いかと思います。
不安や焦る気持ちを抑えて、停滞期を突破するにはどうすればいいのか?
この項目にて、いくつかご紹介をしていきたいと思います。
そもそも”停滞期かどうか”をどう判断すればいい?
そもそも、「停滞期に突入しているかどうかが分からない」という人もいらっしゃるかもしれません。
その場合は、以下の2つを確認してみてください。
◆2週間での体重の変動
ダイエットを行う上で大切なことは、「体重を減らす」ことではなく「体脂肪率を減らす」ことにあります。
体重が減っていても、実際に減っているのが“脂肪”ではなく“筋肉”だったら意味がありません。
言い方を変えると、「”体重”が減っていなくても”体脂肪率”は減っている」状態であれば、これは脂肪が減り筋肉量が増えたことにつながるため、むしろダイエットに成功しているといえます。
また、体重の変動は、2週間ほどを目安にして確認してみてください。
というのも、体重は水分量・塩分量・汗などによっても変動する可能性があるからです。
1日・2日などの短期間では見極めることはできませんので、2週間ぐらいを目安にしてチェックしてみましょう。
次に、停滞期の突破方法についてご紹介していきます。
突破方法1.ビタミン・ミネラルを積極的に摂取する
停滞期に突入すると、ホメオスタシス機能によって栄養の吸収率が上がります。
このときに吸収されやすくなる栄養素は、脂肪や糖分といった太りやすい栄養素ばかりではありません。
たんぱく質・ビタミン・ミネラルなど、美しい肌や筋肉を作るために欠かせない栄養素も吸収されやすくなるのです。
ダイエットを行う上で、食事制限もしくは食習慣の改善は絶対に外せないものですが、重要なのは「バランスよく栄養を摂取する」ことです。
特に食事制限は、食事の全体量が減るだけでなく栄養バランスも偏りやすくなってしまうため、注意が必要です。
身体に必要な「五大栄養素」(たんぱく質・ビタミン・ミネラル・脂質・炭水化物)をバランスよく摂取し、ダイエットだけでなく健康的な体を手に入れらるよう工夫してみてください。
尚、「食事だけでは必要な栄養素を摂取しきれない」という方は、サプリメントなどをうまく組み合わせてみるのも良いかもしれません。
突破方法2.食事内容・トレーニング内容を見直してみる
「停滞期に突入したな……?」と感じたら、食事内容・トレーニング内容を見直してみることが大切です。
人によっては、「過度な食事制限だけでダイエットを行ってきた」「食事に偏りがある」「有酸素運動しかしていない」など、健康的なダイエットとは少し違う方向性でダイエットを行ってきた場合もあるかもしれません。
食事の見直しについては、上記で記載した通りです。
バランス良く栄養素を摂取できるよう、食生活の見直しを行ってみてください。
そして運動に関してですが、同じ運動の繰り返しで“身体が動作に慣れてしまう”こともあります。
そうすると、無意識に楽な動作を行ったり、時には飽きてしまう可能性もあり得るのです。
そういう人は、普段と違う種目に挑戦してみたり、少しずつ強度レベルを上げてみるなどしてみましょう。
有酸素運動を中心にしていた人であれば、筋トレを取り入れて筋力アップを図るのも良いです。
その場合、筋トレ後に有酸素運動をするようにしてください。
理由は、“筋肉には脂肪を燃焼させる効果があるため”です。
加えて、筋肉量がアップすれば、基礎代謝量もアップします。
相乗効果でダイエットや健康そのものに良い効果をもたらしてくれるので、ぜひ筋トレも積極的に取り入れてみてください。
突破方法3.週1回で「チートデイ」を取り入れる
チートデイとは、「ダイエット中に我慢していた好物をガッツリ食べてよい日」のことです。
停滞期が訪れる理由は、ダイエットによる食事制限を、身体が“飢餓状態”と判断しホメオスタシスが働くためです。
チートデイを設け身体に十分なカロリー摂取することで、「十分な量の食べ物が入ってくる」ことを認識させ、ホメオスタシスの機能を解除させることが目的となるのです。
加えて、ダイエット中は心身ともにストレスを感じやすくなるので、その解消の意味もあります。
ただし、チートデイは計画的に実行することがポイントとなります。
「今日は疲れたからチートデイ!」「ストレスを発散したいからチートデイ!」としていると、結局食べる量が増えて太る原因になってしまいかねません。
「毎週〇曜日だけ、好きなものを一杯食べる!」と、チートデイの日を決めておくことが重要なのです(事前に食べたいものを決めておくのも良い)。
大切なのは、「我慢する日」と「好きなだけ食べる日」を分けて、メリハリをつけること。
ご褒美があれば、人はより継続がしやすくなります。
その仕組みがうまく機能するようになれば、精神的にも停滞期を乗り越えやすくなるはずです。
突破方法4.睡眠をしっかりとる
停滞期を乗り越えるためには、睡眠をしっかりとることも重要です。
なぜなら、睡眠中に活発に分泌される成長ホルモンが、筋トレなどでダメージを受けた筋肉を修復するためです。
また、睡眠をしっかりとることで代謝量アップにもつながります。
加えて、睡眠不足になると「食欲を促すホルモンが増える」「日中に集中力が途切れる」などのデメリットが発生してしまいます。
お菓子をつまみ食いしたり、カフェインや糖分が多く含まれた缶コーヒーなどを飲む機会も多くなるのではないでしょうか。
カフェインには、たくさん摂り過ぎると「脳が覚醒して眠れない」「寝たとしても眠りが浅くなる」などのデメリットがあります。
お菓子のつまみ食いや糖分摂取も、ダイエットに効果があるとは言えません。
そのため、できる限り良質な睡眠をとれるよう工夫してみてください。
ちなみに、睡眠の質を向上させる方法はいくつかあります。
◆夕食後すぐに眠らないこと
◆就寝2時間前までに入浴を済ませ、体の中心の温度である「深部体温」を上げておくこと
また朝起床したときに、カーテンを開けて朝日を浴びるなど、朝と夜のサイクルをきちんと体に習慣づけることも意識してみるといいでしょう。
停滞期のNG行動とは?
ダイエットが停滞すると、焦りや不安から無茶な行動をしたり、挫折したりすることが多くなります。
しかし、停滞期中に以下の行動は絶対に避けた方が良いです。
◆運動量を無理に増やす
◆チートデイでの暴飲暴食をする
停滞期中に食事量を減らすと、身体がさらに飢餓状態になり、停滞期が長引くorより太りやすくなる可能性があります。
また栄養が偏ったりカロリーが不足したりすると、甘味や脂質への欲求が増大する恐れもあります。
運動量も同様で、無理に運動量を増やすと「さらにエネルギー状態が悪化した」と判断してしまい、停滞期を抜けにくくなってしまう可能性があります。
チートデイでの暴飲暴食はもってのほかです。
チートデイは、「ホメオスタシス機能の解除」「ストレスを緩和する」ことが目的であり、決して「ヤケ食いできる日」ではありません。
いずれも諦めやリバウンドを招きやすくなるため、無理な現状改善を狙わず、「現状維持」を目標として動くのが良いかと思います。
停滞期中にダイエットを諦めないで!
停滞期に突入すると、体重が一向に減らないことにストレスを感じ、ダイエットそのものを諦めてしまう人が多いです。
しかし、この時期にダイエットを中断することはオススメしません。
なぜなら、「リバウンドを引き起こしやすい状態になっている」からです。
停滞期中は身体が省エネモードになっているため、栄養が吸収されやすく・脂肪が蓄積されやすい状態になっています。
この状態で元の食生活に戻ってしまうと、当然脂肪が蓄積されやすく・太りやすい身体となってしまいます。
リバウンドを繰り返すと、筋肉量が減って脂肪が蓄積しやすくもなります。
つまり、より“太りやすく・痩せにくい身体”になってしまうのです。
※リバウンドについては、以下記事を参照ください※
停滞期は、減量後の体重に身体を慣らすための大切な準備期間という認識を持ってみてください。
“停滞期=ダイエットの失敗”ではありません。
むしろ、ダイエットを成功に導く通過儀礼の一つと考え、諦めず、そして焦らず、じっくりダイエットを継続してみてください。
まとめ
停滞期は、ダイエットを行う上で必ず訪れるものと認識しておくことをオススメします。
停滞期が来ることがあらかじめ分かっていれば、急に体重が減らなくなったとしても、焦ることも不安になることもありません。
継続してダイエットを行い、着実に健康な体へと近づけるはずです。
また、停滞期が訪れた際に、日々の生活を見直してみることも大切です。
ただし、この時に「食事制限をさらに厳しくする」「運動量をさらに増やす」などは禁止です。
正しいダイエット方法が実践できているのであれば、あくまで「現状維持」を目的にしつつ、(必要があれば)より良い方向に進めるように方向性を少し修正してみてください。
焦らず・不安にならず、自分のペースでダイエットを続けてみてください。