皆さんは、寒い時に体がガタガタと震えたり、歯がガチガチと震えたりした経験はありませんか?
また、発熱時に体がブルブルッと震えたりすることはありませんか?
あれは、医学用語で「シバリング」と呼ばれています。
寒いと、なぜシバリングが発生するのでしょうか?
実は、あれは私たちが生命を維持するための大切な機能だったのです。
今回は、この「シバリング」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「シバリング」ってなに?
「シバリング」とは医学用語であり、日本語では「悪寒戦慄」とも呼ばれています。
これは、人が体温を保つために行う生理現象のことで、筋肉を小刻みに動かすことで“熱”を発生させているのです。
震えは1分間に最大200〜250回にのぼる不随意運動を起こし、じっとしている時に比べて最大で6倍の熱を作り出します。
この「シバリング」は、以下のような時に発生します。
◆風邪を引いたりなどして「悪寒・寒気」を感じるとき
周囲の環境が寒い時に、体がブルブルと震えたり・歯がガチガチと震えること。
熱がある時に、体がゾクゾクと震えること(=悪寒が走る)。
これらを、「シバリング」というのです。
なぜ「シバリング」が発生するのか?
なぜ寒い時にシバリングが発生するのか?ですが、これは「生命活動を維持するために必要なこと」なのです。
例えば、お腹を冷やすと下痢になることがありますが、これは消化管の温度が低下すると、消化酵素が十分に働かなくなるためです。
私たちのエネルギー源は、ブドウ糖などの糖が酸化分解されてできるアデノシン三リン酸(ATP)ですが、その過程で働く酵素も体温が下がると働きが低下して、エネルギーが供給されなくなります。
エネルギーが体内で供給されなくなる(その状態が続く)と、人は生命活動を維持できなくなってしまいます。
また、“風邪を引く=ウイルスなどの微生物が体内に侵入する”ということですが、こういったウイルスは基本“熱に弱い”です。
つまり、“シバリングを行う=体内で熱を作り出す”ことによって、体温が上昇し、侵入した微生物の増殖を抑制し死滅へと導くのです。
ちなみに、体温が約31度以上あればシバリング発生し熱を作り出しますが、約31度を下回るとシバリングが止まり、体温が急速に下がってしまいます。
「シバリング」というのは、命を守るうえで大切な生理作用なのです。
人によっては、シバリングによる命の危険がある
これが発生することで、人によっては危険な状態になり得る場合がありますが、それが以下のような時です。
◆高齢者の方
なぜなら、シバリングが発生した際には、酸素消費量が増加して混合静脈血の酸素含有量が低下することや、二酸化炭素や乳酸の産生量が増加することが指摘されており、分時換気量が増加しないと混合性アシドーシスに陥る可能性があるからです。
そして交感神経系が緊張を起こして、血圧や心拍数は上昇しますし、心筋酸素需給のバランスの乱れが生じると、心筋虚血や心室性不整脈を引き起こしかねない状態にもなります。
シバリング中は保温をするのが基本です。
微生物の増殖を抑えたり免疫の活性化を促すために体温を上昇させるので、基本的にクーリングは行いません。
人為的に体温を低下させようとすると治癒が遅れたり、余計な体力の消耗を招いたりする恐れがあります。震えが治まったら保温を中止し、必要に応じてクーリングを実施します。
解熱期は発汗するため、様子を見ながら清拭や更衣の介助をするといいでしょう。
「悪寒」が発生したらどうしたらいい?
冬の寒い環境かにいる時に、シバリング発生するのは“生命活動を維持するため”に大切なことです。
しかし、風邪などが原因で悪寒や寒気を引き起こす場合は、ウイルスや細菌による感染症が原因となるため、悪寒(寒気)が走った時は、しっかりと対処を行っておく必要があります。
そのための手段を以下にいくつか記載しておきたいと思います。
その1.暖かくして、安静にする
悪寒や寒気を感じる時は、体内で熱を作り出している状態です。
そのため、それを放置しておくと、その後に「発熱」を生じる可能性が予測されます。
このような場合は、まず以下の点に注意しておくことが大切です。
◆「安静にして、長めの睡眠を取る」
風邪のひき始めに体が冷えていると、生命の維持に欠かせない「酵素」の働きが弱くなったり、血流が悪くなったりして、体内に老廃物がたまりやすくなります。
そうなると自然治癒力が弱まり、風邪が長引いてしまう可能性もあるのです。
◆「内側から温める」:温かい飲み物を飲んだり、湯舟に浸かる
上記を行い、外・内からしっかりと体を温め、その上でしっかりと休息をとるようにしましょう。
また、以前に「風邪の引き始めに注意すること」の記事も作成しておりますので、関心がある方はこちらも合わせて確認してみてください。
その2.市販の薬や病院などの医療機関で診察を受ける
「風邪……かな?」と感じたら、早めの対処を行うことが大切です。
上記に加え、人によっては市販の風邪薬などを飲んで対処することも大切かと思います。
ただし、「風邪薬は風邪を治すための薬ではない」という点には注意が必要です。
市販の薬や病院でもらえる薬は、あくまでも“症状を和らげるためのもの”です。
「薬さえ飲んでいれば、普段通りの生活をしていればいい」という訳ではありませんので、この点だけはご留意いただければと思います。
また、現在は「新型コロナウイルス」が蔓延しています。
「長い期間熱が引かない……」など、何かしら気になる点があれば、病院などの医療機関で診察を受けることをオススメします。
大切なのは「予防」である
問題が起こってから対処を施すことも大切なことではあります。
しかし、大切なのは「普段から風邪を引かない体質作りを意識する」ことでもあります。
◆手洗い・うがいを徹底する
◆消毒をキチンと行う
◆バランスの取れた食事を摂る
◆良質な睡眠をとる
◆しっかりと体を温める
◆湿度を保つ
現在は「新型コロナウイルス」の影響もあって、上記に気を配っている人も多いかとは思います。
普段から“規則正しい生活を送る”こと……。
これが、風邪を予防をするために大切なことと言えるでしょう。
また、過去に「風邪の予防法」についての記事も作成しておりますので、以下にリンクを貼っておきたいと思います。
まとめ
「シバリング」とは、生命活動を維持するためにとても大切な生理現象の一つです。
そして、「一定の体温を保つこと」も、とても大切なことです。
2022年1月は、非常に寒波が激しく、外に出れば体がガチガチと震える人も多いかと思います。
外に出る時は、できるだけ温かい服装をし、体を温める工夫をする。
(使い捨てのカイロなどを使用するのも◎です)
そして、帰宅した際は、手洗い・うがい・消毒を徹底し、部屋を暖め・温かい飲み物や湯舟に浸かることを意識してみてください。
「シバリングが発生する=一定の体温を保てない状態にある」ということです。
体を冷やせば、それだけ風邪などの病気に発展する可能性が高いので、問題が起こる前にしっかりと対処・予防を行うことを徹底してみてください。