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「乳児院」ってどういう施設なの?施設の役割、現状や今後の課題について解説します!

この記事は約9分で読めます。

さまざまな事情によって、保護者との生活が困難なお子さんがいらっしゃいます。

そういった子供たちを保護し、養育する施設として「児童養護施設」「乳児院」が存在します。

児童養護施設については、以前の記事にて詳細をご紹介させていただきました。

今回は「乳児院」についてのご紹介です。

施設の役割とはいったいなんなのか。

児童養護施設や保育園とはどういった違いがあるのか。

施設の現状や今後の課題はなにか。

この記事では、こういった内容について触れていきたいと思います。

「乳児院」とはどのような施設なのか?

概要


この施設は、なんらかの理由があって保護者と一緒に住むことが難しい”乳児”を預かるための施設のことをいいます。
(一時保護やショートステイも受け入れている)

「乳児」=主に0歳児~2歳児ほどの年齢の子どもたちが入所しており、施設の運営は地方自治体や社会福祉法人などが行っていることが多いとされています。

尚、上記で記載した“何らかの理由”というのは、家庭によってさまざまです。

例えば、このようなものが理由として挙げられます。

◆保護者の精神疾患
◆保護者の放任・怠情
◆保護者からの虐待
◆養育拒否
◆破産や両親の離婚などの経済的理由
◆保護者の行方不明
◆保護者の死亡 など

また、その理由も一つに絞れるほど単純なものではなく、複雑でいくつもの要因が重なっていることも多いです。

さらに、この施設は「児童相談所」などの一時保護施設を経由せずに直接入所することとなるため、入所後に虐待やネグレクト(※)などの問題が新たに判明することも多くあるようです。
※ネグレクト:セルフケアができない弱者の世話をする責任がある保護者が責務を怠たることによって加害者となる行為のこと※

施設の「役割」について

この施設の役割は、“入所期間”によって大別されます。

短期間の入所(一時保護やショートステイ):子育て支援
長期間の入所:子どもの療育、保護者支援、退所後のアフターケア

ただし、共通していえるもっとも重要な役割は、「乳幼児を保護し、安全な環境で養育すること」にあります。

上述で記載した通り、施設にはさまざまな事情で入所してくる子どもたちがいます。

乳幼児は特に繊細な時期であり、正しく養育してあげないと、将来はもちろん目の前の命が危機にさらされる可能性もあるのです。

だからこそ、家庭での養育が困難な場合に、子どもたちに救いの手を差し伸べてあげる必要があるのです。

また、保護者支援はもちろん、地域の子育て支援なども行っています。

「児童養護施設」や「保育園」などとの違いは?

「児童養護施設」との違いについて


まず「児童養護施設」との違いについてですが、もっとも異なる点は“入所する子どもの年齢”です。

◆「乳児院」:主に0歳~2歳の乳幼児が入所する
◆「児童養護施設」:主に2歳~18歳の子どもが入所する

どちらも、「何らかの理由があって保護者との生活が困難な子どもを預かる施設」という点は共通しています。

しかし、乳幼児とそれ以後の年齢の子どもとでは、養育の仕方が大きく変化することとなります。

乳幼児は、24時間365日しっかりと寄り添い、適切なケアを行ってあげる必要があります。

それ以後の年齢の子どもは、(健やかな成功を助けるという点では共通していますが)保育園や学校に通ったり、友達と遊んだり、多くの人と接しながらさまざまなことを学んでいくのです。

環境が大きく変わることから、両者には共通した点もあるものの、養育内容には若干の違いがあるのです。

さらに、もう一つ共通していえることは、「家庭復帰が見込めると判断された子どもは、保護者支援や退所後のアフターケアを徹底しながら親元へ戻る」という点です。

ただし、家庭復帰や里親といった選択ができない場合は、両者で違った道を選択することとなります。

◆「乳児院」:児童養護施設に措置変更となる
◆「児童養護施設」:”退所=自立”を意味し、退所後は自身の力で生活していく必要がある

尚、上記で“主に”と記載した通り、保護する年齢はあくまで目安です。

2歳を過ぎても乳児院で保護する場合もありますし、逆に乳幼児であっても児童養護施設で保護する場合もあります。

また、児童養護施設で保護する年齢は基本的に18歳までではありますが、(必要と判断されれば)20歳まで上限が延びることもありますし、高校を中退した場合やそもそも高校に進学しない場合は15歳で退所することもあります。

「保育園」との違いについて

“子どもを預かって養育する”という点では共通の目的を持っていますが、両者では異なる点がいくつかあります。

一つは、「養育を行う時間」です。

保育園の場合、親の就労など一定の時間帯のみ子どもを預かり、養育します。

(保護時間の延長こそあれど)時間が来れば保護者が迎えに来て、一緒に家に帰宅するのです。

対して乳児院の場合は、送り迎えをするべき保護者がいないため、24時間365日子どもの養育を行うこととなります。

いうなれば、乳児院が子どもにとっての“家”となるわけです。

もう一つは、「子どもが置かれている境遇」です。

保育園と比較して、乳児院に入所している子どもは、複雑な家庭環境や事情を抱えた子が多いのです。

最後に、「職員の配置人数」も異なることとなります。

乳児院の場合、0,1歳の乳幼児1.6人につき看護師(または保育士,児童指導員)を1人以上,2歳児2人につき1人以上設置する基準が設けられています。

つまり、“より少人数での養育を行う”という点が保育園と異なるのです。

上記に記載の通り、乳児院は子どもにとっての“家”です。

そのため、乳児院で働く職員は、子どもにとってお母さん・お父さんのような“家族”のような存在となるのです。

乳児院の「設置基準」について

保育園などと同様に、乳児院にも「施設規定」「職員配置」が定められています。

まず「施設規定」ですが、子どもの人数によって必要な設備が異なります。

≪乳幼児が10人以上いる場合≫
◆寝室(乳幼児1人につき2.47㎡以上)
◆観察室(乳児1人につき1.65㎡以上)
◆診察室
◆病室
◆ほふく質
◆相談室
◆調理室
◆浴室
◆トイレ

≪乳児院が10人未満の場合≫
◆乳幼児の養育のための専用の部屋
(1室につき9.91㎡、乳幼児1人につき2.47㎡以上)
◆相談室

このように、子どもが生活するスペースには、十分な広さを設ける義務があるのです。

そして「職員配置」についてですが、児童福祉法により以下の職員を配置しなければならないと定められています。

●保育士
●医師または嘱託医
●看護師
●個別対応職員
●家庭支援専門相談員
●栄養士および調理員
●心理療法担当職員

もちろん、各職員で行う業務や役割は異なります。

ただし、共通していえるのは「子どもの健全な成長と将来的な自立のために、一人一人と愛着・信頼関係を築いて発達を支援すること」にあります。

尚、乳児院は親からの虐待や保護者との分離を経験して精神的に傷を負った子どもたち、もしくはなんらかの病気や障害を抱えた子どもたちが多数在所しています。

そのため、子どもの状態に応じた“保育・医療・療育・心理的なケア”を専門的な観点から行っていく必要があるのです。

「医師・嘱託医」「看護師」「心理療法担当職員」などの設置義務があるのは、このためなのです。

乳児院の「現状」について

厚生労働省の調査によると、2020年度の施設数は全国に145ヶ所、入所児童数は2,472人と言われています。

また、2000年~2020年までの20年間で施設設置数は上昇傾向にあり、2012年~2022年の10年間で、施設数は約1.2倍に増加しています。

ただ、施設の増加に対して入所児童数は少しずつ減少傾向にはあります。

2001年にピークを迎えたあと、2012年~2022年の10年間では約0.8倍となっているのです。

この点については、厚生労働省が公開している「社会的養育の推進に向けて」にて確認することができます。

尚、近年では乳児院の“小規模化”が進められてもいます。

その理由は、「乳児期は愛着形成においてとても重要な時期」だからです。

「小規模化する=職員一人一人が子どもとじっくりと向き合うことができる時間を増やすことができる」でもあり、より家庭に近い環境で子どもが過ごせるようになるのです。

今後の「課題」について

この点についても、厚生労働省から「乳児院の課題」という資料が公開されています。

それによると、課題には短期的なものと長期的なものがあるといわれています。

【短期的な課題】
●児童福祉施設の最低基準の見直し
●施設の小規模化
●職員雇用確保のための方策

【長期的な課題】
●乳児院機能の将来性
●養育の質を確保するための職員配置基準の見直し
●養育の質向上のための人材育成
●専門的養育機能の充実
●保護者支援または地域支援機能の充実

乳幼児の養育は、子どもの成長にとって非常に欠かせない時期です。

だからこそ、養育の質を確保するために、「職員の配置基準の見直し」「質向上のための人材育成」を行っていく必要があります。

また、他の職種の例に漏れず、乳児院の職員も人手不足が顕著です。

職員の雇用確保のため、さまざまな取り組みを行っていかなくてはいけません。

まとめ

入所する子どもはさまざまな困難を抱えており、子どもだけでなく時には保護者とも関わりサポートする機会があります。

「子どもの養育」「保護者の働きかけ」「アフターケア」など、職員が抱える仕事の種類は多く、その責任はとても重大なものです。

また、勤務も24時間体制であることから、夜勤や休日勤務もあります。

このことから、精神的・肉体的な負担は、非常に高いものとなるはずです。

ただ、その反面、社会貢献や人助けをしているという実感が湧きやすい仕事であることも確かです。

子どもとの信頼関係を築くことができれば、それまでの多くの苦労が報われた気がして達成感を感じることもできるでしょう。

我が子を育てることは親の責務であり、親の事情なんて生まれてくる子どもからすれば一切関係がありません。

しかし、さまざまな事情で子どもを(育てたくても)育てられない家庭が存在することもまた事実であり、そんな家庭に生まれた子どもを保護し・養育するのが「乳児院」の役割となります。

乳児院は、子どもにとって“家”であり、そこで働く職員はお母さんやお父さんのような存在……いわば“家族”なのです。

責任が重くかなりの負担を強いられる仕事ではありますが同時にやりがいもある仕事なので、保育に関連する資格をお持ちの方は、その資格を生かして働くことを検討してみるのもいいかもしれません。

ただし、上述でもお伝えした通り、乳児院の数は少なく、それに合わせて求人の数自体も少ないのが現状です。

もし乳児院関連の求人が見つかりにくいのであれば、施設のホームページを確認してみるのも良いと思います。

施設によっては見学が可能なところもあるので、事前に乳児院のことを把握する良い機会となるかもしれません。

また、施設によっては資格の有無を問わず、ボランティアを募集しているところもあります。

ボランティアの内容は施設によってさまざまではありますが、例えば「子どもたちの遊び相手」や「食事のお世話」「施設の掃除」など、保育意外にも施設の運営に関わることができる場合もあります。

ボランティアに参加すれば、施設の雰囲気や仕事内容を知れるため、乳児院とはどんな施設かを深く理解する機会として活用してみるのもいいかもしれません。

子どもたちが健全に成長し、将来的に自立できるように、あなたがお持ちの資格や経験、そして熱意をぜひ活かしてみてください。

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