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「児童養護施設」ってどんなところ?受けられる支援内容や現状について解説します!

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ニュースなどで時折耳にすることがある「児童養護施設」

数はそれほど多くはありませんが、求人サイトなどでも「児童養護施設の保育士を募集中!」なとと目にすることもあります。

この児童養護施設とは、どのような施設なのか。

そして、どんな子どもたちが入所しているのか。

今回は、こういった点について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。

「児童養護施設」とはどんなところなのか?

概要


この施設のことを端的にお伝えすると、「何らかの理由で保護者と生活することが難しい、そして社会のサポートが必要と判断された児童が入所する施設」のことです。

入所した子どもたちを保護し、生活習慣を身に着けたり社会生活に必要なスキルを得られるように支援を行います。

また、自立に向けた支援はもちろん、退所した子どもに対してもアフターケア支援を行っています。

施設の目的について

施設に求められている役割は、「入所している児童が健やかに発達できるよう、できる限り家庭的で落ち着いた環境で生活を送れるようにする」ことです。

いうなれば、「家庭に代わる家」のような存在です。

児童福祉法では、「どの児童も適切に養育され、生活を保障され、愛され、保護されることで心身の健やかな成長を保障される権利を有する」と定められています。

そのための場所・手段として、この施設が存在するのです。

この施設は、全国に615ヶ所あり、約3万人の子どもたちが暮らしています(平成29年時点)。

少し言い方を変えると、「2歳~18歳までの子どもが一緒に暮らす”学生寮”のようなもの」とイメージしてもらえると分かりやすいかもしれません。

学生寮で生活したことがある方なら分かると思いますが、寮によって建物の大きさや利用者の人数には違いがあります。

それと同じように、児童養護施設でも施設ごとに一緒に暮らす人数やルールが異なるのです。

尚、運営は社会福祉法に基づいて経営されており、施設の規模によって呼び方は変わります。

◆生活人数20人以上:「大舎制」
◆生活人数13人~19人:「中舎制」
◆生活人数12人以下:「小舎制」

対象となるのは、どのような子どもなのか?

対象となるのは、「乳児を除く原則18歳まで(※)」で、「保護者による養育が困難な児童」もしくは「何らかの理由で児童養護施設によるサポートを必要とする児童」となります。

ただし、年齢に関してはお子さんの状況によって変化することがあります。

上限は(必要に応じて)20歳までとなることがありますし、”特に必要がある”と判断された場合は乳児も対象となることがあります。
(基本的に2歳未満の乳幼児は「乳児院」を利用することとなっている)

そして入所の理由についてですが、以下が該当します。

◆「保護者から何らかの虐待を受けた子ども」
◆「何らかの理由で親がいない子ども」
◆「何らかの理由で両親のもとで育てられない子ども」

もう少し具体的にいうと、「保護者からの虐待」「保護者の精神疾患」「養育拒否」「破産や離婚などの経済的理由」「保護者の死亡」「保護者の行方不明」など……さまざまな理由が存在します。

また、現代は「相談相手が少ない」「離婚率が高まりシングルマザーが増えている」など、子育て環境が保護者の孤立や困難を生みやすいということも、その原因にあるといえるかもしれません。

ちなみに、「施設で暮らす=両親と絶縁状態」と考える人もいるかもしれませんが、すべての子ども(家庭)がそうとは限りません。

家庭によって事情は異なりますが、両親もしくはひとり親が存在する家庭もあり、入所後も親との交流が続いている子どももいるのです。
(交流=電話やメールなどの間接的な交流、面会、一時帰宅など)

中には、家庭状況が改善し、家庭に復帰する子どももいます。

とはいえ、約半数以上の子どもが家庭に復帰できず、自立まで施設で暮らし続けるというのも現実ではあります……。

施設にはどういう職員が働いているのか?


児童養護施設では、主に以下のような専門職員が働いています。

◆児童指導員・保育士:保護者に代わって子どもの養育を担う
◆嘱託医・看護師  :子どもの健康をサポートする
◆栄養士      :子どもの栄養や食生活をサポートする
◆個別対応職員   :虐待を受けた子どもを個別にサポートする
◆心理療法担当職員 :虐待を受けた子どもを心理面からサポートする
◆家庭支援専門相談員:親子関係の修復を図り、子どもの家庭復帰をサポートする
◆里親支援専門相談員:里親委託の推進や地域の里親をサポートする
◆職業指導員    :社会生活ができるようなスキルを指導する

他にも、「施設長」(施設の責任者)、「調理員」(食事の提供のサポートする)、「事務員」(施設運営をサポートする)の方なども働いています。

さまざまな人たちのサポートがあってこそ、児童養護施設は成り立っているのです。

「児童相談所」とはなにが違うの?

似た名称の施設として、「児童相談所」というものがあります。

この施設の役割は、「子供(0才~17才)の権利を守り、子供本人、そしてその家庭の問題に対して的確な援助を行うこと」です。

家庭・両親からの相談受付・家庭についての診断や調査・家庭への指導・一時保護など、様々な「子供のサポート」についての役割を担っています。

どちらの施設も「児童福祉法」で定められた施設です。

しかし両者には、大きく2つの違いがあります。

一つは、“運営元”です。

「児童相談所」は、都道府県あるいは政令市などの公立の機関が運営しています。

対して「児童養護施設」は、社会福法人などの民間団体が運営しています。

そのため、児童相談所の職員は地方公務員となり、児童養護施設の職員は団体職員つまり“公務員ではない”ということになります。
※自治体が運営する児童養護施設もあるため、そこで働く職員は公務員となる※

もう一つの違いは、施設の“役割”です。

「児童相談所」の業務は、児童に関するさまざまな問題(非行・虐待・発達障害・引きこもりなど)についての“相談”に応じ、必要な調査や判定を行います。

また、児童および保護者に適切な“指導”も行いますし、児童を家庭に置いておけない状況のときは“一時保護”を行います。

対して「児童養護施設」は、保護者のいない児童、虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を、“児童相談所の判断で入所させて、養育する場所”です。

このように、両者には施設ごとの特徴があり、その役割は大きく変わることとなります。

児童養護施設で暮らす子どもの進路について


上述でもお伝えした通り、児童養護施設とは「家庭に代わる”家”のような存在」です。

そのため、施設内での生活は特別なものではありません。

地域の幼稚園や学校に通い、友達と遊び、周囲からさまざまなことを学んで育っていきます。

ただ、この施設で暮らす子どもたちの進学率は全国平均と比較しても低く、高校を卒業後、6割以上の子どもが就職する……という現実があります。

児童養護施設で暮らす子どもは、上述の通り原則18歳になると退所して、自立した生活を送ることとなります。

しかし退所後は、(施設のアフターケア支援はあるものの)周囲に頼れる大人がいなかったり・経済的な不安があったりして、「進学を選択しづらい現状」があるのです。

進学するとしても、進学するための受験料や入学金などは自分で準備しなければいけません。

それに、退所後の生活費なども稼いでおく必要があるため、受験直前であってもアルバイトを続ける例もあるのです。

こういった理由から、進学したくてもできない子どもが多数いるのが現状となります。

ちなみに、「児童養護施設を退所する=自立を意味する」こととなります。

基本的には高校を卒業する18歳のタイミングで施設を退所することとなりますが、高校を中退した場合やそもそも高校に進学しない場合は15歳で退所することもあります。

そうなると、そこからは自分一人で生きていかなければなりません。

“退職直後に困ったこと”としては、以下のような精神面・金銭面の問題が多く挙げられます。

◆孤独感・孤立感
◆金銭管理
◆生活費
◆住民票や戸籍の手続き
◆健康保険や年金などの知識や加入手続き
など

アフターケア支援があるといっても、これまでのように施設の職員に悩みを相談することは難しくなります。

そうなると、他に気軽に相談できる人が身近にいなくなり、孤独感や孤立感が大きくなってしまうのです。

また生活を行う上で「保証人」が必要となる場面も多くあります。

例えば賃貸契約であったり携帯電話の契約であったりなどです。

しかし、家族に頼ることができないことから、自立したくてもできない……いわゆる“社会の壁”を感じることもあるのです。

まとめ

さまざまな家庭の事情によって、施設で生活する子どもはたくさんいます。

この現実を受けて、国や地域によってさまざまな環境整備も行われているのです。

◆「国や地域による児童養護施設の小規模化」
◆「里親委託の推進」
◆「自立支援ホームの整備」
など

しかし、同時に児童養護施設に求められる量や質も増加しています。
(そもそも、施設で働く職員の人員不足も問題として挙がっている)

また、退所後の自立支援や金瀬的不安など、抱えている課題はたくさんあるのです。

家庭の事情はさまざまであり、今後も児童養護施設はなくなることはありません。

これからの社会を創っていく若者のためにも、より良い環境が整備されていくことを願っております。

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