一刻を争う事態に、医師の指導の下で救急救命処置を行う「救急救命士」。
これまで、仕事内容やなり方などこの仕事に関する記事をいくつか公開してきました。
【仕事内容・勤務地・歴史などについて】
【なり方・国家試験の内容や合格率について】
救急救命士として仕事をする人のほとんどは「消防署」に勤務します。
そして“消防署に勤務する=地方公務員”という扱いとなります。
この、消防署に勤務する救急救命士の方々は、普段どんな勤務形態で仕事をしているのでしょうか?
そして、「給与」はどのくらいもらえ、「福利厚生」はどのくらい充実しているのか?
今回は、上記のような点をピックアップしてご紹介していきたいと思います。
救急救命士の「働き方」について
まずは、救急救命士の「働き方」について、ご紹介していきたいと思います。
「雇用形態」について
これまでの記事、そして冒頭でもお伝えしたように、救急救命士は「消防署」に勤務をする人が大半です。
つまり、正規の地方公務員として働く人……つまり「正規雇用」で働いている人がもっとも多いと言われています。
ただし、中には「テーマパーク」や「民間の介護タクシー会社」に“パート勤務”として働いている人もいます。
(もちろん正社員雇用もある)
ここでは、もっとも勤務率が多い「消防署に勤務する救急救命士」の方に焦点を当ててご紹介していこうと思います。
消防署に勤務する人は、どんな風に仕事をしているの?
まず、「消防署で勤務をする消防士」は、“24時間勤務を交代(シフト制)で行う”ケースが一般的とされています。
なぜなら、災害や事故はいつ発生するか分からず、出動要請があれば迅速に現場へ急行しなければいけないから”です。
そして救急救命士は、「重度傷病者に対して、医師の指示のもとで特定行為の治療を行う」専門職です。
そのため、消防署で勤務をする救急救命士も「消防士と同じように24時間勤務を交代で行う」ことが基本となります。
ただし、24時間勤務だからといって、24時間ずっと仕事をしている訳ではありません。
昼食や夕食の休憩時間はもちろん、仮眠時間(6~8時間とされる)なども設けられています。
とはいえ、勤務時間中は食事中であろうと仮眠中であろうと、“出動要請が出れば”必ず現場に出場しなくてはいけません。
出動時以外は、どんなことをしているの?
上記でもお伝えしたように、災害や事故はいつ発生するかが分かりません。
そのため、“いつ問題が発生しても迅速に出動できるよう、(出動に備え)待機しておく”必要があります。
この「待機中」は何をしているのでしょうか?
大まかにではありますが、以下のようなことをしています。
◆車両点検や当日の搬送先の病院(何科の医師がいるのか)などのチェック
◆勉強や訓練(体を鍛える)
◆事務処理や書類作成 など
「消防署で働く人=体を使う仕事」ではありますが、出動から戻った後(帰署後)は出動時の状況を報告=書類作成などもしなくてはいけません。
近年は(もちろん地域や日によりけりですが)出動回数が増えているところが多く、多い時は1日で10件以上出動することもあるようです。
出動~帰署までには最低でも1時間はかかることが多く、その後に書類作成も行う必要があるため、出勤1件あたり約1時間半ほどの時間を使うことが基本となります。
余談:「消防うどん」ってなに!?
仮眠中はもちろん、食事中であっても出動指令に対応しておく必要がある「消防士」や「救急救命士」。
このことから、消防署の食事は“どんな状態であっても食べられるものが多い”と言われています。
そのもっとも特徴的なものが「消防うどん」と呼ばれるものです。
実は、消防署のうどんは全て「つけ麺タイプ」になっています。
その理由は、食事中に出動要請が入った後であっても“麺がのびるのを防げるため”です。
ただし、あくまで「うどん」は「うどん」であり、消防署で勤務する人たちは自分たちで「消防うどん」ということはありません。
いわゆる「海軍カレー」のようなものとイメージしてもらえれば分かりやすいかと思います。
この消防うどん(というより消防メシ)は、消防署によって味付けや使用される食材は様々です。
ネットで「消防うどん」と検索すれば色々情報が出てくるので、気になる人は調べてみてください。
「休み」はどうなっているの?
1回の勤務が24時間となる消防署の場合、勤務日の翌日は休みとなります。
勤務日のシフトは明確に決められており、基本的に残業はないのですが……。
もし出動が長引いて帰署後であっても、引き継ぎを済ませるまでは帰宅はできません。
また深夜帯(22:00~翌6:00)は、出動がない限りは基本仮眠をとることとなります(事務処理や勉強をしている人もいる)。
この深夜帯に出動があった場合、「超過勤務」扱いとして一ヵ月のトータル勤務時間で調整がされることとなります。
救急救命士の「給与」「福利厚生」について
次に、地方公務員として勤務する救急救命士の「給与」や「福利厚生」について、詳しくご紹介していきたいと思います。
平均月収・年収はどのくらい?
まず、ここでは資格者のほとんどが就くとされる「消防士=公務員」での平均給与のご紹介をしていきます。
公務員の給与というのは「各自治体が定める”地方公務員の給与表”に基づいて算出される」とあります。
そのため、基本的には“年功序列”であり、勤務年数(年齢)を重ねるごとに給与が増加していきます。
その上で、救急救命士全体の平均月収・年収をご紹介すると、おおよそ以下のようになっています。
【救急救命士の平均月収・年収】
◆平均月収:350,000円~458,000円
◆平均年収:420万円~550万円
消防署に勤務する人々は、危険と隣り合わせで働く仕事であり、24時間勤務と休日を交互に行っていくため生活リズムが不規則になりがちです。
そのため、一般的な公務員と比べて給与額は少し高めに設定されています(一般行政職に比べ”12%”ほど高くなる)。
また、上記に加え各種手当も加算されるため、毎月の給与額はさらに増加する傾向にあります。
とはいえ、「給与額が高い=相応の労力を必要とする」ということでもあります。
業務は多忙かつ過酷な内容なので、相応の覚悟は必要と言えるでしょう。
初任給はどのくらい?
まずはじめにお伝えしておくことがあるのですが、公務員の給与は“最終学歴”によって変動します。
以前に【救急救命士のなり方】についてご紹介しましたが(以下参照)、救急救命科(もしくはそれに関連する科)は「大学・短大・専門学校」と幅が広いです。
また、救急救命士になるためのルートは2種類あり「消防士から救急救命士になる」ルートの場合、まず「消防官採用試験」に合格することとなります。
この「消防官採用試験」は、“高卒であっても受験可能”です。
そうなると、高卒・専門学校卒・短大卒・大学卒など、最終学歴が人によって大きく変化します。
各自治体によっても変化しますが、高卒と大卒との間には“5万円”ほどの給与の差があると言われています。
おおよその目安ですが、高卒と大卒の初任給は以下ほどと言われています。
◆高卒:160,000円~200,000円
◆大卒:200,000円~230,000円
ちなみに、東京消防庁I類(大学卒)で合格した消防士の初任給は「24万7000円」でした(2015年東京消防庁)。
福利厚生は充実している?
結論から言うと、福利厚生は他職種に比べても中々に充実しています。
まず、危険と隣り合わせの仕事であることから、“業務内でのケガなどに関する各種補償”が充実しており、安心して働ける待遇が用意されています。
またここまでに何度もお伝えしてきた通り、「24時間勤務の交代制」で働くこともあって、各種手当も充実しています。
手当だけでも、以下のようなものが挙げられます。
◆出動手当
◆時間外手当
◆災害時の派遣手当
◆通勤手当
◆扶養手当
◆住居手当
◆期末・勤勉手当
加えて、「昇給/賞与(年2回)」も用意されていますし、自治体によっては「消防官専用の寮(個人寮・家族寮などを安い家賃で入居できる)」が設けられていることもあります。
ただし、各種手当の内容・金額は各自治体・勤務年数・階級によって異なります。
どんな手当が支給されるかは、自身が務める自治体の内容を確認してみてください。
まとめ
給与や福利厚生は勤務する自治体・勤続年数・階級などによって差異は発生します。
しかし、それを差し引いても他の一般行政職に比べれば高水準なものとなっています。
ただ、上述でもお伝えしたように“相応の労力が求めらえる仕事”であることに間違いはありません。
24時間勤務の交代制であることから生活リズムが不規則になりやすいですし、勤務時はどんな状況であっても出動要請がかかれば迅速に対応していく必要があります。
また、“自身が危険と隣り合わせである”ということはもちろん、“市民の命を預かる仕事”でもあります。
特に救急救命士は、心肺停止状態などの「重度傷病者」の治療にあたることになるので、より“命の重み”を体感する仕事です。
生半可な覚悟では仕事を続けていくことはできませんので、その点はしっかりと覚悟した上で救急救命士を目指すかどうかを決めていくといいかと思います。
ただ、救急救命士の仕事はニーズが高く、今後もより様々な業態で求められるものと考えられています。
「救急救命士に適性のある人(向き・不向き)」や、「救急救命士の現状や将来性」については、改めて別の記事にてご紹介をしていければと思います。