「人生100年時代」と言われている現代。
できる限り健康に過ごしたいですし、周囲の人々に対しても健康に長生きしてほしいと思うものです。
健康に長生きするために重要なことは、「健康寿命をいかに延ばすか?」です。
そして、そのためには具体的にどんな対策・備えが必要となるのでしょうか。
今回は、「健康寿命の定義」「平均寿命との違い」「健康寿命を延ばすためにできること」について、解説していきたいと思います。
そもそも「寿命」とはなんなのか?
「寿命」というのは“命がある長さ”のことであり、“生まれてから死ぬまでの時間”のことを指しています。
寿命は人によって異なることとなりますが、厚生労働省では定期的(3年ごと)に日本国民の寿命を調査・報告しています。
そして、その項目には「平均寿命」と「健康寿命」という2つの区分があるのです。
「平均寿命」と「健康寿命」の違いとはなにか?
それぞれの違いは、以下のようになります。
◆「健康寿命」:健康上の問題によって日常生活が制限されることなく生活できる期間のこと
この2つの最大の違いは、「その人の健康状況を考慮するか否か」にあります。
健康寿命はあくまで「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間を指している」ため、病気によって介護や支援を必要とする期間については“寿命”に加算されないのです。
しかし、平均寿命は「健康・不健康に関わらず、生存している期間が”寿命”として換算される」こととなります。
そのため、一般的には「平均寿命>健康寿命」となり、「平均寿命よりも健康寿命の方が約9年~12年ほど短い」と言われています。
ちなみに「健康寿命」は、2000年にWHO(世界保健機関)が提唱した新しい指標となります。
日本の「平均寿命」と「健康寿命」は延び続けている
日本の「平均寿命」と「健康寿命」は、どちらも延び続けています。
以下は、厚生労働省が公開している「健康寿命の令和元年値について」の情報になります。
平成13年(2001年)と令和元年(2019年)を比較してみると、以下のようになります。
【男性】
◆平均寿命:78.07歳
◆健康寿命:69.40歳
【女性】
◆平均寿命:84.93歳
◆健康寿命:72.65歳
≪令和元年(2019年)≫
【男性】
◆平均寿命:81.41歳
◆健康寿命:72.68歳
【女性】
◆平均寿命:87.45歳
◆健康寿命:75.38歳
ご覧の通り、男女ともに年々延びていることが分かります。
ちなみに、世界的に見ても、日本の「平均寿命」「健康寿命」はどちらも1位となっています。
ただし、この数字はあくまで平均値であり地域格差はあります。
全国的に延びていることは事実であり朗報ではありますが、地域によらず「平均寿命」と「健康寿命」の差を縮小させていくことが、今後の課題とされているのです。
健康寿命を延ばす「メリット」とは?
最大のメリットは、やはり「健康な状態で長く老後を過ごすことができる」という点にあります。
長生きするのであれば、やはり介護などに頼らず、長く健康に過ごしたいものです。
それに平均寿命と健康寿命の差が短ければ短いほど、それだけ介護に頼る期間も短くなります。
それは、「介護費用を減らせる」ということにつながります。
訪問介護であれ施設での介護であれ、事業所に介護を依頼すれば、必ず介護費用が発生します。
仮に家族が介護に携わってくれたとしても、介護用に住宅を改装したり介護用ベッドを購入したりと、一時的な費用が発生することとなります。
それに、家族への負担だって大きくなってしまうのです。
健康寿命が延びれば、それだけ介護を必要とする期間が短くなり、結果として介護費用の出費を抑えたり家族への負担が少なくなるのです。
最後にもう一つ。
健康寿命を延ばす取り組みを行うことで、保険料が安くなる保険というものがあります。
それが、「健康増進型保険」というものです。
長生きするのであれば、できる限り長く・元気で健康な老後を送りたいと考えるのが普通だと思いますが、やはり健康寿命が延びるほどに、自他ともにさまざまなメリットがあるのです。
健康寿命を延ばすためにはどうしたらいい?
健康寿命を延ばすために個人ができることは、以下の4つに大別することができます。
◆「適度に運動をする」
◆「生活習慣を整える」
◆「社会的活動に参加する」
順に解説していきたいと思います。
「正しい食生活を送る」
大切なことは、「1日3食、バランスの取れた食事を摂取すること」です。
◆骨を強化する牛乳や乳製品
◆ビタミンや食物繊維を含む野菜や果物
これらを積極的に摂取していきましょう。
ただし、食塩の取りすぎにはお気を付けください。
加えてもう一つ。
毎日の食事を楽しく食べるためにも、「歯の健康」にも気を配りたいところです。
根菜などの噛み応えのある食品を食べ、噛む力を維持すること。
毎日の歯磨きや定期的な歯科医院でのケアなどもしっかりと行い、歯の健康を長く維持できるようにすること。
食事は栄養を摂取する手段だけでなく、「楽しく食べることで、日々の生活を豊かにする」役割も担っています。
食事以外の方法でも栄養を摂取することはできますが、それだけだとどうしても味気なくなってしまうものです。
美味しい食事を食べることでも、人は幸福感を得ることができます。
ぜひ「日々の食生活」と「歯の健康」に意識を向けてみてください。
「適度に運動をする」
“運動をする”というよりも“体を動かす習慣をつける”といった方が正しいかもしれません。
◆「エレベーターなどを使わずに階段を上がる」
◆「スポーツや体を動かすことを生活に取り入れる」
必ずしもハードな運動を取り入れることはありません。
「日頃から継続して体を動かす=活動量を増やすことを意識する」だけでも、十分に効果はあります。
特に高齢の方は、日々の生活の中でも転倒を引き起こす可能性があり、下手をすればそれが体に重大な影響を及ぼしてしまう場合もあります。
体を動かす習慣をつけることで、筋力の低下を防ぐことが重要となるのです。
また、新型コロナウイルスの影響で、現在は在宅で仕事をする人も増えています。
「家から出る機会がほとんどない」という人もおり、若い人でも体を動かす機会が減っているケースが多くなっています。
そうすると、若いうちからどんどん筋力が低下していき、年齢以上に体力が衰えてしまう可能性もあるのです。
できる限り体を動かすことを習慣づけて、健康な体を維持できるように工夫してみてください。
そして、体を動かすメリットはもう一つあります。
それは、「気分をリフレッシュすることができる」という点です。
家にこもりっきりだと、活動範囲と視野が狭まり、なかなか気分をリフレッシュすることができない人もいます。
外に出るだけでも気分は大きく変化しますので、ぜひ体を動かす習慣をつけてみてください。
「生活習慣を整える」
生活習慣を整えることも、健康寿命を延ばすうえで非常に重要です。
例えば、以下が該当します。
◆「十分な睡眠・休息をとる」
◆「多量の飲酒や喫煙をしない」
食生活の見直しや適度な運動はもちろんのこと、生活習慣を整えることでも「生活習慣病」の予防に効果があります。
飲酒や喫煙は生活習慣病のリスクを高めることは周知の事実ですが、睡眠不足も生活習慣のリスクが高まると考えられているのです。
加えて、慢性的な睡眠不足は、意欲の低下や抑うつ・自律神経機能への影響なども引き起こす可能性があり、注意が必要となります。
健康の増進には、「栄養」「運動」「休養」をしっかりと取り入れた生活習慣を身に着けることが大切なのです。
「社会的活動に参加する」
人が生きていく上で、“社会とのつながり”……というよりも“人とのつながり”は絶対に切り離せないものです。
近年は、人との関わりが希薄になっており、特に新型コロナウイルスの影響以後はそれがより顕著に表れています。
外出や人と接する機会が少ない人は、積極的に社会との関係を深めることを意識してみてください。
例えば、地域のボランティアやイベントに参加したり、習い事を始めたりなど。
人によっては、散歩に出かけてご近所の方と挨拶を交わすなどでも大丈夫です。
大切なのは「人とコミュニケーションをとる機会を増やす」ことです。
特に高齢者の場合は、より「人と関わる」ことを意識づけた方が良いかと思います。
そうすることで、認知症の予防やフレイル予防にもなるのです。
老後のリスクに備えよう!
「平均寿命」と「健康寿命」の差は縮まりつつはあります。
しかし、それでも約10年間ほどの差があり、いずれは介護に頼らざるを得ないときも訪れることでしょう。
確かに、健康寿命を延ばすための取り組みも非常に大切です。
ただ、健康な間に“いざというときの備えを確保しておく”ことも重要なのです。
そのために重要なポイントの一つは、「老後資金を貯蓄しておく」ことです。
若いうちからコツコツと貯蓄をしておけば、いざというときの備えとして役立てることができるはずです。
ただ、日々の生活はもちろん、結婚・出産・子育て・マイホームの取得など、ライフスタイルは目まぐるしく変化し、状況に応じて資金も必要となります。
「思ったように貯蓄ができない!」「老後の資金作りが遅れてしまう!」といったケースも十分あり得るはずです。
そういう場合は、「先取り貯蓄」を利用するのもいいかもしれません。
これは、“給与を受け取ったら一定額を自動的に積み立ててくれるサービス”のことです。
金融機関が扱っているものの他にも、勤務先に財形貯蓄などの制度があれば給与天引きで貯蓄することができますので、うまく活用するのも一つの手段といえるでしょう。
もう一つは、「保険に加入する」という点です。
保険に加入しておけば、いざというときに治療費や介護サービス費として給付金を受け取ることができます。
保険の種類や内容、保険料に応じた保障があるため、貯蓄ですべてをカバーする方法よりも高い費用対効果を期待できるはずです。
ただし、「老後の経済的なリスクのうち、何の備えをしておきたいか?」をしっかりと検討しておくことが重要です。
なぜなら、それによって選ぶ保険が変わってくるからです。
「医療保険」「介護保険」「認知症保険」など、保険にもさまざまな種類が存在し、公的だけでなく民間の保険会社が扱っている保険も多数存在します。
各々が求めている保険に加入し、加えて将来に向けた貯蓄も行い、もしもの時の備えを確保しておくことをオススメします。
まとめ
日本は世界一の長寿大国であり、「平均寿命」と「健康寿命」はともに年々上昇しています。
しかし、両者の間には約10年ほどの差があるのです。
この差をできるだけ短くし、長く健康的な老後を送るためには、日々の生活習慣の見直しや改善が必須となります。
また、いざというときのための備えをしておくことも大切です。
日本では、2000年から「21世紀における国民健康づくり運動」がスタートしています。
「健康日本21」と呼ばれるものです。
基本方針は、以下の5つです。
◆生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底
◆社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上
◆健康を支え、守るための社会環境の整備
◆栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙および歯・口腔の健康に関する生活習慣および社会環境の改善
また、健康寿命を延ばす取り組みとして、2019年に「健康寿命延伸プラン」を策定しており、これにより2040年までに健康寿命を男女ともに「75歳以上」にすることを目指しています。
これからも、「平均寿命」「健康寿命」ともに延びていくはずです。
ただ、元気で健康な老後を長く送れるかどうかは、その人次第でもあります。
老後のリスクへの備えをしながら、安心して老後を過ごせるよう、ぜひ健康寿命を延ばせるよう積極的に日々の生活をより良いものにしてみてください。