医療・介護・福祉・保育業界専門の求人をお探しの方は医療・介護・福祉・保育bizへ。詳しくはこちら!

「特別養護老人ホーム」とはどんな施設?サービス内容や入所条件などについて解説します!

この記事は約11分で読めます。

少子高齢化・核家族化・共働き世帯が増えたこと……など、在宅での介護が難しいと感じる家庭は増加しています。

そのため、被介護者を抱える方のなかには“介護施設への入所”を検討される方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ただ、介護施設はその種類が非常に多く、特徴や入所条件も施設によってさまざまです。

今回は、その介護施設の一種である「特別養護老人ホーム」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。

「特別養護老人ホーム」とはなにか?

概要


「特養」とも呼ばれるこの施設は、介護保険サービスが適用される公的施設の一つです。

「特別養護老人ホーム」とは老人福祉法上の呼び方であり、介護保険法では「介護老人福祉施設」と呼ばれています(両者は同じ施設のことを指している)。

この施設のことを端的に表現すると、「在宅での生活が困難になった要介護の高齢者が入居できる、公的な介護保険施設の一つ」となります。

施設の特徴

施設の特徴としては、以下の3つが挙げられます。

◆公的な施設のため、老人ホームの中では比較的安価に入居できる
◆看取りの対応が可能なため、「終の棲家」となりうる
◆地域によっては入居までに待機期間がかかる場合もある

最大の特徴は、「看取りの対応が可能な施設が増加している」という点でしょうか。

高齢化が加速する中で、「高齢者が最期をどこで迎えるのか?」「希望の場所で看取りを行うためにはどうしたらいいのか?」といった点は国としても検討が続いています。

特にこの施設の利用者は“要介護3以上=介護度の高い方”が多いため、看取りに対するニーズが高まっているのです。

実際、2006年からの介護報酬に「看取り介護加算」が追加されています。

施設は、3種類に大別できる

施設は、以下の3種類に大別されます。

①広域型特別養護老人ホーム
②地域密着型特別養護老人ホーム
③地域サポート型特別養護老人ホーム

①の特徴は、定員が30人以上+どこに住んでいても申し込みが可能な点です。

一般的には、「特養=広域型特別養護老人ホーム」のことを指しています。

そして②ですが、こちらは定員が30人未満+施設がある市区町村に住民票がある人だけが申し込むことができます(例外もある)。

これは、さらに「サテライト型」「単独型」の2つに分かれることとなります。

最後に③ですが、これは在宅での介護をしている方が対象であり、見守りなどのサービスを提供する施設のことを指しています。

利用するには、施設との契約が必要となりますので、この点にはご注意ください。

どういう人が利用(入居)できるの?

入居条件について


まず、入居条件は以下のように定められています。

◆65歳以上で要介護3以上の高齢者
◆40歳~64歳で特定疾病が認められた要介護3以上の方
◆特例により入居が認められた要介護1~2の方

基本的には、「65歳以上で、要介護3以上と認定された方」が入居対象となります。

ただし、特定疾病のある要介護3以上の方であれば、40差~64歳の方でも入所が可能です。

また、以下の条件に当てはまる場合は、要介護1・2の方でも入居できる可能性があります。

●認知症により日常生活に支障をきたす症状や行動などが見られる
●知的障害や精神障害などによる日常生活に支障が出る症状や行動、意思疎通が難しい症状が頻繁に見られる
●同居する家族などから深刻な虐待を受けた疑いがあり、心身の安全確保が難しい
●単身や同居家族が高齢や病弱などで家族の支援を受けられず、地域の介護サービスや生活支援の供給が不十分

ただし、“入居を断られる”もしくは“入所しても退去になる”といった可能性もあります。

「入居を断られる」「退去になる」ケースとは?

このケースに該当する理由は、いくつか存在します。

一つは、「医療的ケアが必要な場合」です。

特養は、“看護師の24時間配置が義務付けられておらず、不在の時間帯は医療的ケアの対応ができない”のです。

そのため、例えば24時間の医療的ケアを必要とする場合は入居を断られるケースがありますし、入居後に体調の悪化による医療的ケアが必要となった場合にも退去となる可能性があります。

また、専門的な医療ケアを受けることができないので、3ヶ月を超える入院が必要となった場合も、退去しなくてはいけません。

もう一つは、「認知症の悪化」です。

周りの入所者やスタッフに迷惑をかけてしまう行為があった(もしくは続く)場合は、入居を断られるor退去を要請されることがあります。

また、感染症を持つなど「集団生活が難しい」と判断される方も、入居は難しくなります。

入居条件に当てはまっていたとしても・入所ができたとしても、利用者の状態によっては入居を断られたり・退去を要請される可能性があるということは覚えておいてください。

どんなサービスが提供されるの?


受けられるサービスとしては、以下が挙げられます。

◆食事
◆入浴
◆排せつ
◆健康管理・緊急対応
◆リハビリ
◆生活支援
◆レクリエーション・イベント
◆看取り

食事は、栄養バランスや入居者の身体状況・嗜好などを考慮して、栄養士が献立を立てて提供しています。

食事は、入居者にとっての楽しみの一つです。

そのため、旬の食材を使ったメニューや季節に応じたイベントの食事、誕生日の特別食など、さまざまな工夫がされています。

そして、入浴は週に2回で、入所者の体調に合わせて介助を行ったり、特殊な浴槽や入浴剤などを活用し、安全・快適に入浴できるようになっています。

排せつに関しては、入居者の身体能力を最大限に活用するため、排せつの自立を促したうえで援助を行います(寝たきりの方は、ベッドの上で排せつの介助を行う)。

また、施設では医師や看護師が常駐しており、健康管理も行ってくれます。

ただし、24時間の配置が義務付けられているわけではあません。

緊急時や夜間に看護師がいない場合は、すぐに連絡が取れるよう緊急体制を整えているのです。

その他、「リハビリ」や「生活支援」を行ってくれたり、「レクリエーション・イベント」なども定期的に開催されています。

いずれも、長く健康に過ごしてもらうために極力「自立支援」を促し、自身でできないことを介助することが基本となります。

また、レクリエーションやイベントは、リハビリや娯楽の提供が目的であり・周囲の方々とコミュニケーションを取れる機会でもあります。

外出や散歩はもちろん、お花見・クリスマス会・運動会・お祭りなどの季節ごとの行事も行われています。

さらに、外部からボランティアを招いてのイベントが開催されたり、近くの幼稚園や小学校の子どもたちと触れ合える機会を設けているところもあり、施設によっては地域との交流が盛んなところもあるのです。

こういったレクリエーションやイベントは、施設のスタッフがさまざまなプログラムを計画してくれています。

最後に「看取り」であり、最近の施設は看取りに取り組んでいるところが多くあります。

住み慣れた施設で最期を迎えられるように、医師・看護師・介護職員などが共同して、看取りの体制を整えます。

そして、本人や家族にしっかりとした説明を行い・同意を得たうえで、看取りのための介護を提供するのです。

掛かる費用はどのくらい?

「公的な施設+介護保険が適用される」ということから、民間の施設に比べると費用は安く設定されています。

加えて、有料老人ホームのような「入居一時金」も発生しません。

費用項目としては、以下が挙げられます。

◆「施設サービス費」
◆「居住費」
◆「食費」
◆「日常生活費」

また、その他として「特別加算」が加わる場合もあります。

費用が加算されるケースとして多いのは、「看取り介護」です。

毎月掛かる費用に関しては、数万円~十数万円程度になることが多いですが、施設やサービス・住む部屋などによって金額は変化します。

いろいろな施設を、比較・検討してみてください。

どのような職員が働いているのか?

円滑な介護サービスを提供するため、施設にはさまざまな役割を持つスタッフが配置されています。

◆「施設長」
◆「医師」
◆「生活相談員」
◆「介護職員」
◆「看護職員」
◆「栄養士」
◆「機能訓練指導員」
◆「介護支援専門員(ケアマネージャー)」
◆「調理員」
◆「事務員」など

尚、人員基準は法令によって定められています。

職員の中でもっとも多いのが「介護職員」となります。

「看護師または介護士を、入所者3人に対して最低1人配置する」ことが求められています。

ちなみに少し余談となりますが、医師・看護師の配置基準は、他の介護施設と比べると、その配置数がもっとも少なくなります。

●「特別養護老人ホーム」
・医師 :1人
・看護師:3人(夜勤0人)

●「介護老人保健施設」
・医師 :1人
・看護師:10人(夜勤1人)

●「介護療養型医療施設」
・医師 :3人
・看護師:17人(夜勤2人)

特別養護老人ホームは、どちらかというと“医療ケア”よりも“介護ケア”に重点が置かれているといえます。

医師も常駐ではなく、看護師も夜間などは不在な場合もありますので、病院と同様の医療措置はできないのです。

そのため、上述でもご紹介した通り、特別な医療ケアが必要な方は入居を断られたり・退去を要請される可能性があるのです。

言い方を変えると、“人員体制”も施設選びの際のポイントの一つになると思います。

機能訓練に関しても同じことがいえます。

「機能訓練指導員」の配置も義務付けられていますが、その人数は“1人以上”です。

機能訓練指導員といっても、「理学療法士」「作業療法士」「言語聴覚士」「柔道整復師」「あん摩マッサージ師」「指圧師」「鍼灸師」など、その種類は多岐に渡り、専門とする分野もそれぞれで異なります。

介護度や体の状態、必要とするリハビリの種類によって、施設の人員体制を選択肢の一つに加えてみるのもいいかもしれません。

「メリット」「デメリット」について

どんな物事にも、メリットがあればデメリットも存在します。

この項目にて、施設を利用した際のメリット・デメリットをご紹介したいと思います。

「メリット」について

挙げられるメリットとしては、以下が挙げられます。

①「費用が安い」
②「24時間体制で介護が受けられる」
③「長期的または終身で入所できる」
④「倒産のリスクが少ない」

費用に関しては、入所一時金がかからないことと月々の利用料金が数万円~十数万円ということで、民間の有料老人ホームと比べても安く抑えることができます。

年金だけでまかなえる可能性もあるため、この点は老後の資金に不安がある人にも大きなメリットなり得るでしょう。

②は、介護スタッフが24時間常駐していることと介護に適した設備が充実していることから、家族では難しい介護も安心して任せることができます。

③は、特養は“長期入所”を前提とした施設であるため、他の高齢者施設のような入居期間の期限がありません。

看取りを行っている施設も多いため、入所期間を気にせずに安心して利用することができます。

最期に④ですが、“特養=公的な施設”であり、経営は地方自治体か社会福祉法人に限られています。

開設許可を得るに当たっては収支等の厳しい審査がありますし、補助金や税制面で優遇されるなど、民間企業に比べ倒産のリスクは少ないと言われているのです。

「デメリット」について

デメリットとして挙げられるのは、以下の3点です。

①「入居できるのは、原則要介護3以上である」
②「入居するまでに時間がかかる」
③「医療体制が整っていない可能性がある(もしくは限界がある)」

そもそもですが、特別養護老人ホームは入居希望者が多く「なかなか入れない」というイメージが強かったのです。

しかし、2015年4月の制度改正によって、要介護3以上の人が優先的に入所できるようになりました。

ただ、言い方を変えると“これまで入所できていた方が入所しにくくなった”とも言えます。

家庭環境や認知症の有無など、別途配慮されるケースもなくはないですが、基本的には要介護2以下の方は入所が難しいと考えておいた方がいいかもしれません。

また条件が変更されたとはいえ、それでも時間がかかる場合が多く、短くても1~2ヶ月・長い場合だと数年かかるとも言われています。

特に、地域別での差が激しく、都会の特養はなかなか入所ができない状況にあるようです。

待機者数は年々少なくなっているとは言われていますが、それでも多くの方が入所を希望しており、多くの入所待機者がいるのが現状なのです。

場合によっては、他の施設への入居を検討した方が良い場合もあるかもしれません。

最期に③ですが、医師の配置は義務付けられていますが、必ずしもずっと施設にいるわけではありません。

また、看護師も24時間体制で常駐しているわけではない可能性もあり、夜間や緊急対応が必要な場合には、すぐに医療ケアが受けることができません(もちろん緊急時の連絡体制は整えられている)。

どちらかというと、“医療ケア”よりも“介護ケア”に重点が置かれている施設であるため、特に医療ケアを必要とする方は、特養とは別の施設を選択した方が良いといえるかもしれません。

まとめ

一口に“特養”といっても、地域の医療福祉体制の変化や制度の見直しによって、その種類はさまざまに細分化されています。

もちろん、タイプによって介護のスタイルやサービス内容・費用にも違いが出てきますので、いろいろな施設を検討し自分に合った施設を見つけてみてください。

ただし、“待機者数が多く、利用するまでに時間がかかる”という点にはご注意ください。

年々待機者数は減少傾向にはありますが、それでも利用希望者は多く、場所によっては数年待たなければ入居できない可能性もあります。

待ちの期間を短くするポイントとしては、以下が挙げられます。

◆「体調の変化や要介護度の進行が見られたら、速やかに施設側に通達する」
◆「2ヶ所以上の施設に、同時に申し込んでおく」

順番に関しては施設ごとに毎月開催される「入所判定委員会」で決定されます。

“介護度が重い”または“緊急性がある”といった場合は判定の点数が高く、点数が高ければ高いほど早くに入所できる可能性が高まりますので、連絡はこまめに行っておいた方が良いのです。

施設利用を検討している方は、活用できるものは上手く活用し、できるだけ早くに施設を利用できるよう工夫してみてください。

参考メディア:特養についてはこちらもご確認ください。
ケアスル介護

タイトルとURLをコピーしました