みなさんは、生活指導員という仕事をご存じですか?
福祉に関わるお仕事や勉強をされてきた方は馴染みがあるかもしれません。
生活指導員は、福祉の歴史の中で重要な役割を果たしてきました。
ここでは、生活指導員とはどのようなお仕事なのか分かりやすく紹介していきます。
生活指導員の歴史
生活指導員という名前は、福祉の歴史の流れとともに制定される法律によって変更を繰り返してきました。
1963年に老人福祉法が制定される前は、「指導員」という名前で養護施設の中で寮母さんとともに、入居者の生活を支える存在でした。
老人福祉法が制定されてからは、「生活指導員」という名前に変わり、高齢者や障碍者の相談窓口として機能してきました。
生活指導員がつくられた当初は、高齢者の自立更生を指導する目的があり、「指導」という少し強めの言葉が使われています。
その後、2000年に介護保険制度が導入されたタイミングで「生活相談員」という名前に変わりました。
介護保険制度は、要介護状態の人が尊厳を保持し、持っている能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにサポートすることを目的としています。
そのため、「指導」という言葉は不適切であると考えられたのです。
現在では、生活指導員ではなく「生活相談員」という名前が主流になっています。
生活相談員(生活指導員)の勤務先
生活相談員の働く場所は、主に入所または通所の老人福祉施設です。
老人福祉施設とは、老人福祉法で定められた施設のことです。
老人デイサービスセンターや老人短期入所施設(ショートステイ)、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、経費老人ホーム、老人福祉センター、老人介護支援センターがあります。
施設の規模により生活相談員の配置基準は異なりますが、施設に必ず1人以上の配置が義務づけられているのが特徴です。
2017年に厚生労働省が調査した社会福祉施設等調査の概要によると、老人福祉士施設は全体で5,293施設ありました。
働く施設によって異なりますが、生活相談員と兼務して介護支援専門員や介護職の仕事をしている人も多くいます。
生活相談員専任の場合は、仕事の内容が相談援助や連絡調整、それに伴う事務業務等であるため、働く時間は日勤です。
介護職の方もスキルアップの一つとして生活相談員を目指す方も多くいます。
生活相談員になるために必要な資格
生活相談員は利用者の状況を理解し、他職種や施設外の医療関係者等と連携しながら、利用者が快適にできる範囲で自律的な日常生活を送ることができるよう支援することが求められます。
そのため、専門知識や調整役としてのコミュニケーション能力が必要です。
生活相談員になるためには、社会福祉士、精神保健福祉士、社会福祉主事任用資格のうちどれか一つを取得することが必要です。
①社会福祉士とは?
社会福祉士は、身体上もしくは精神上の障害があること又は環境上の理由により、日常生活を営むのに支障がある人の福祉に関する相談を受けます。
相談を受けた後、相談者と福祉サービスを提供する者や医師、保健医療サービスを提供する者との連絡調整を行います。
社会福祉士になるためには、福祉系の大学や一般養成施設等で勉強し国家試験に合格することが必要です。
②精神保健福祉士とは?
精神保健福祉士は、精神障害者の保健及び福祉に関する専門知識や技術を学びます。
その専門知識を活用し、病院で精神障害の医療を受けている人や、精神障害者の社会復帰の促進を図ることを目的とした施設を利用する人の相談を受けます。
相談を受けた後、社会復帰のための支援や日常生活への適応のために必要な訓練や援助を行います。
精神保健福祉士になるためには、保健福祉系の大学や一般養成施設等で勉強し国家試験に合格することが必要です。
③社会福祉主事任用資格とは?
社会福祉主事任用資格とは、自治体での勤務に必要な資格です。
大学等で指定された科目の修了や養成機関や講習会の修了により取得できます。
児童福祉や身体障害者福祉、老人福祉、心理学、公的扶助、社会保障など、福祉に関する幅広い分野について勉強することが求められます。
自治体によっては、介護福祉士や介護支援専門員の資格を持っている人も生活相談員になれる場合があります。
生活相談員(生活指導員)の役割
生活相談員は、老人福祉施設に入所あるいは通所している利用者の方が、快適に、できる範囲で自律的に日常生活を送ることができるように相談援助や連絡調整を行います。
生活相談員の活躍の場である特別養護老人ホームの設置及び運営に関する基準の中には、「特別養護老人ホームは、入居者の心身の状況やその置かれている環境に照らし、そのものが居宅において日常生活を営むことができるかどうかについて定期的に検討しなければならない」というものがあります。
その検討するべき職員には生活相談員が含まれており、その他に介護職員、看護職員等とされています。
また、生活相談員の役割を規定する条文の「基準省令 介護老人福祉施設の人員、設置及び運営に関する基準」には、次の5つの役割が記載されています。
1つ目は、指定介護老人福祉施設の入所申込者の入所の際に、入所申込者に係る居宅介護支援事業者に対する照会等により、心身の状況や生活歴、病歴、指定居宅サービス等の利用状況の把握に努めることです。
2つ目は、入所者の心身の状況、その置かれている環境等に照らし、入所者が居宅において日常生活を営むことができるかどうか定期的に検討することです。
3つ目は、前項の検討にあたり生活相談員、介護職員、看護職員、介護支援相談員等の従事者の間で協議することです。
4つ目は、心身の状況や環境に照らし、居宅にお居宅において日常生活を営むことができると認められる入所者に対し、本人や家族の希望、入所者が退所後に置かれることになる状況を考え、円滑な退所のために必要な援助を行うことです。
5つ目は、入所者の退所の際に、居宅介護支援事業者に対する情報の提供に努めるほか、保健医療サービスまたは福祉サービスを提供する者との密接な連携に努めることです。
以上のことを簡単にまとめると、入所者や入所希望者に対し「心身の状況」「生活歴」「病歴」「置かれている環境」「居宅において日常生活を送ることができるか」把握を行うことが求められています。
生活相談員自身も、利用者について積極的に理解する姿勢が必要なのです。
さらに、施設内の他職種との連携、外部の事業所や医療機関等とも情報提供を行い連携することが求められています。
生活相談員(生活指導員)の仕事内容
それでは、生活相談員は具体的にどのような仕事をしているの紹介していきます。
生活相談員の仕事内容については、各施設で決めることになってるため施設により内容は異なってきます。
様々な業務を大きく7つに分類しました。
①施設利用に関する手続き
介護事業所の利用を検討している人に対し、施設の見学案内や説明、契約手続きを行います。
介護保険制度は一般の方が理解するのは難しいため、専門用語を使わず分かりやすく説明することが求められます。
また、利用開始の手続きだけでなく、サービス利用をやめる場合も必要な手続きのサポートを行います。
②相談援助業務
利用者本人や家族に対し、施設利用にあたって不安なことはないか、どのような生活をしたいのかなどの様々な相談に応じます。より良い生活を送ることができるよう、本人だけでなく家族の状況も把握し、一人ひとりに合わせたサービスを提案します。
③連絡調整業務
利用者を受け入れるために、主治医やケアマネジャーとの連絡調整を行います。ここで利用者の情報をしっかりと把握することが、利用者のニーズに合わせたサービスの提供に繋がります。主治医やケアマネジャー以外にも、地域の行政機関や保険・医療機関、地域のコミュニティなどと連携を行うこともあります。
④他職種との情報共有
施設内の介護職員や看護師等と情報共有を行い、より良い生活を送れるように努めます。利用者の日常生活を観察し、状況に変化があった際には情報を共有し合います。必要に応じて医師に相談をすることもあります。
⑤サービス提供内容の見直し
利用者の日々の心身状態の変化を観察し、変化があった際には他職種とも相談し合いながら、サービスの内容を検討し直します。
⑥地域住民への対応
地域の住民からの施設に対する苦情等の処理と対応を行います。また、施設について地域住民の理解を得るために地域住民との交流を行うこともあります。
⑦その他
学生の実習、インターンシップ等の受け入れ調整、実習時の指導研修等の対応全般を行います。
その他にも、利用者の送迎や送迎管理、行事の企画・運営、事故・ヒヤリハット対応等、施設ごとに様々な仕事を行っています。
まとめ
ここまで話してきたことをまとめると、生活相談員は利用者が快適に、できる範囲で自律的に日常生活を送ることができるように支援をするのが仕事です。
それを達成するために、生活相談員が積極的に利用者やその家族について理解を深め、他の専門職や外部と連携をしながら介護サービスを提供します。
人と人を繋ぎ、より良い生活を送るための橋渡しをするのが生活相談員です。
その他にも、働く施設によっては様々な業務をこなすオールマイティな存在です。
そんな生活相談員になるには、社会福祉士、精神保健福祉士、社会福祉主事任用資格のうちどれか一つを取得することが必要です。
生活相談員の仕事の一つである「相談援助業務」は、利用者や家族に直接支援を行うとても重要な仕事です。
施設の利用に対する不安を解消するだけでなく、利用者や家族と話しをする中で、抱えている問題を発見し解決したり、適切なサービスと結びつけることで利用者の生活を豊かにすることができるからです。
生活相談員は、施設の利用者や家族にとってとても重要な働きをする、とてもやりがいのある仕事ということが分かっていただけたと思います。
資格の取得は簡単ではありませんが、自分のスキルアップに是非目指してみてはいかがでしょうか。