日々の生活の中で、ストレスを感じるシーンは誰にでもあります。
しかし、仮に似た環境・境遇であっても、ストレスを感じやすい(溜めやすい)人と感じにくい(溜めにくい)人がいます。
この違いは一体なんなのでしょうか。
そして、どうすればストレスを感じにくい人になれるのでしょうか。
今回は、「ストレスとの向き合い方」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「ストレス耐性」とは?
概要
これは、その名の通り「ストレスに耐える力」のことをいいます。
ただし、“我慢”や“根性”のような、「ストレスに耐え忍ぶ」という意味ではありません。
ストレス耐性とは、
◆ストレスに対し、どの程度耐えられるか?
などを意味しているのです。
ストレス社会ともいわれる現代では、否が応でもストレスを感じる機会に遭遇してしまいます。
どんな人であっても、ストレスと無縁の生活を送ることは難しいのです。
そのため、「ストレスを無くそう」と考えるのではなく、「ストレスに適応し、どう処理していくか?」を考えることが重要となるのです。
ストレス耐性を決める要素は6つある
ストレス耐性は、「高い」「低い」で表現されます。
そして、このストレス耐性を決める要素は、主に以下の6つが挙げられます。
①【容量】
その名の通り、ストレスを受け止められるキャパシティのことを指しています。
容量が大きいほどストレスに反応が出づらくなりますし、逆に容量が小さいと心身にトラブルが起きやすくなります。
②【処理】
ストレスとなる物事に直面したとき、「その物事にどう対応できるか?」という行動の差を指しています。
ストレスの原因に対して、冷静かつ臨機応変に対応できる人ほど、ストレスに強いといえるのです。
③【感知】
これは、“ストレスを感じ取る能力”のことです。
要するに、「アクシデントが発生したときに、その物事をストレスと感じるか否か?」ということ。
感知能力が低い人ほどストレスに強いといえ、逆に高い人(敏感な人)ほどストレスに弱いといえます。
④【経験】
端的にいうなれば、“慣れ”です。
ストレスの原因のことを「ストレッサー」といいますが、経験を重ねるといずれ同じ行動にも慣れが生じてきます。
例えば、初めて接客業を経験する人は、緊張から接客に対してストレスを感じてしまうことがあります。
しかし、経験を重ねるといつしか接客に慣れて、その行為自体がストレスではなくなっていくこととなるのです。
ただし、何度も同じ失敗を繰り返すと、自信を喪失しストレス耐性が弱まってしまう可能性もあります。
ストレスを感じる環境に長く居続けると、それが積もり積もって心身に悪影響を及ぼすこともありますので、この点には十分ご注意下さい。
⑤【回避】
例えば、理不尽だと受け取れる内容であっても「仕事だから」などと割り切れる人もいます。
こういう人は、ストレス耐性が高いといえます。
ただし、これは性格が大きく左右したり、自律神経系や免疫系の安定とも関連性があるとされています。
要するに、心身の状態が大きく影響してくるということです。
心身の影響が健康であるほど、ストレスの影響は少なくなるといえるでしょう。
⑥【転換】
ストレッサーを、ポジティブな事柄に転換する能力のことをいいます。
例えば、同じ失敗をしたとき、「自分はダメだ……」とネガティブに捉える人もいれば、「良い経験ができた」「自分にとって成長できる機会だった」とポジティブな思考に切り替えられる人もいます。
当然、後者の方がストレス耐性が高いといえるでしょう。
ストレスの根本と向き合い、良い方向へ捉えなおすこと……。これが重要なのです。
ストレス耐性をチェックする企業もある
尚、企業の中には、採用選考時などにストレス耐性をチェックするところもあります(というより増えています)。
必ずしも「ストレス耐性が高い=優秀な人材」につながるわけではありませんが、それでも“ストレス耐性が高い”ことは人事面でプラスに働く要素の一つなのは確かです。
そのため、ストレス耐性を高めておくことは、個人・組織の双方にとってプラスに働くことになるでしょう。
ストレス耐性が「低い人」「高い人」の特徴
自身の性格や置かれている環境など、状況によってストレスへの耐性度は変化します。
ただ、大まかに「ストレスへの耐性が”低い人”と”高い人”の特徴」をご紹介することはできます。
もちろんすべての人が以下に該当するわけではありませんが、参考程度にご覧下さい。
ストレス耐性が「低い人」の特徴
その1.完璧主義な人
完璧主義の人は、自分だけでなく周囲の人にも完璧さを求める傾向があります。
「自分ができることは、他の人もできて当たり前」と捉える節があるのです(もちろん人によります)。
「どうしてこんな簡単なことができないのか?」「なぜ言われたことができないのか?」など、完璧主義者である人ほど周囲との考え方のギャップで思い悩む人が多いのです。
また、完璧主義な人であるほど、“真面目”で“几帳面”で“責任感が強い”という人が多い傾向にあります。
“完璧さ”を求めるあまり、小さなミスが気になり、そのトラブルを1人で解決しようと抱え込み、結果として自分で自分を追い詰めてしまうのです。
こういう人は(真面目が故)職場では評価されやすいのですが、知らず知らずのうちにストレスを溜め込み、あるとき限界を超えて一気に崩れてしまう可能性があります。
難しいという感じる人もいるかもしれませんが、完璧主義な人ほど「もっと肩の力を抜いて良い」といえます。
その2.協調性が高すぎる人
協調性が高い人は、周囲の空気を読むことに長けています。
言い方を変えると、「人の感情に敏感」なのです。
こういう人ほど“優しい人”が多く、状況に合わせながら仕事ができるので職場でも重宝されます。
しかし、優しい人ほど「相手を優先し、自分の気持ちを押し殺してしまう」人が多いのも事実です。
それが積もり積もって、ストレス耐性を下げてしまうケースもあり得ます。
他人への気遣いができる人は、素晴らしい人です。
しかし、我慢は時として体に毒でもあります。
時には、自分をさらけ出す勇気を持つのも良いかもしれません。
その3.気持ちの切り替えが苦手な人
思い悩みやすい人は、小さなトラブルをいつまでも気にしてしまう傾向にあります。
他のことが手につかなくなったり、下手をすれば数日考え込んだりしてしまう人もいるほどです。
このような性格の場合、仕事とプライベートの切り替えがうまくできず、どちらにも悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。
“ストレスを溜め込んでしまう=ストレスへの適応力が低い”ということにつながり、結果として「ストレス耐性が低い」となってしまうのです。
残念ながら、起こってしまったことを変えることはできません。
また、自分が悩んでいるほど、周囲の人は気にしていない可能性も高いです。
難しいと感じる人もいるかもしれませんが、極力“気にしない”ことが一番です。
その4.自分と他人を比べてしまう人
自己肯定感の低い人ほど、「自分と他人を比較する人」が多い傾向にあります。
そして、そういう人ほど「自分なんて……」と悲観的に捉えてしまう人が多いのです。
こういう人は、他人と比較して“自分の悪い面”ばかりを見てしまう傾向が強く、自分で自分を傷つけてしまう可能性が高いです。
「自分は自分、他人は他人」です。
他の人と比べ・自分の足りない部分を伸ばそうとすることは良いことですが、それで自分を卑下する必要はまったくありません。
“あなた”にも良い点はたくさんあるのです。
他人と比べ過ぎず、マイペースに進んでいきましょう。
ストレス耐性が「高い人」の特徴
その1.物事をポジティブに捉えられる人
失敗をしたとき、「やってしまった……最悪……」「怒られる……」と感じる人もいれば、「良い勉強(経験)になった!」「次は同じミスをしない!」「失敗は成功のもと!」と感じる人もいます。
ストレス耐性が高いのは、当然ながら後者の“物事をポジティブに捉えられる人”の方です。
仮に、まったく同じ状況や不利な状況に立たされたとしても、ポジティブな人はそれを“成長のチャンス”と捉えます。
「失敗してもあまり気にしない(失敗を恐れない)」「次に活かす」
ある種、「まぁ、いっかぁ!」くらい楽観的に物事を捉えられる人の方が、人生を楽しく過ごすことができるといえるかもしれません。
その2.自己肯定感が高い人
自己肯定感とは、その言葉の通りありのままの自分を肯定する感覚」のことです。
他者と比較することなく、自分自身が“今の自分”を認め・尊重することで生まれる感覚であり、物事を前に進めるための原動力となります。
自己肯定感が高い人は、ありのまま自分を受け入れることができます。
そのため、仮にストレスを感じることがあったとしても、必要以上に自分を追い込まないのが特徴といえます。
自己評価が主軸であり、他者からの評価はあまり気にしないため、ストレスを感じにくいのです。
その3.マイペースを維持できる人
マイペースとは、「自分のペースで生きること(生きている人)」を指す言葉です。
他の人の意見や周囲の環境に流されず、自分が決めた方法や自分らしい速度で進んでいく人のことをいいます。
こういう人は、自分のペースで作業するため、無理な行動をしません。
また、必要以上に自分と他者を比べることもしません。
自分ができる範囲で物事に対応していくので、ストレスが溜まりにくく耐性が高いといわれています。
ストレス耐性を高めるにはどうしたらいい?
ストレス耐性を高める方法は、「考え方を変える」ことです。
この項目にて、ストレス耐性を高める方法をいくつかご紹介していきます。
方法1.ストレスを感じている自分に気づくこと
生きている以上、ストレスと無縁の生活を送ることは不可能です。
だからこそ、「どういった時にストレスを感じるのか?」「ストレスを感じたときにどんな反応をするのか?」を客観的に分析し、それに合わせて対策を講じる必要があります。
まずは、“自分のことを知ること”から初めてみましょう。
方法2.ストレスの原因がコントロールできるものかを考えること
ストレスの原因=ストレッサーには、コントロールできるものとできないものがあります。
自分の思考や行動が原因であるならば、考え方を改めるだけでストレッサーを減らすことができるかもしれません。
逆に、他者や環境などはコントロールすることができないor難しいため、「悩んでも仕方ない」と割り切る・切り替えることが重要といえます。
時間はかかるかもしれませんが、人付き合いや環境を変えるなどして、“ストレッサーから離れる”ことも大切かと思います。
方法3.物事を加点主義で捉えるようにすること
物事の捉え方には、「減点主義」と「加点主義」に大別されます。
減点主義というのは、ミスや問題があったときに、満点から減算していくこと。
加点主義は、意欲的な姿勢や優れた成果に注目して点数を加算していくことをいいます。
完璧主義な人ほど減点主義である人が多く「完璧以外はすべて失敗」と考えてしまう傾向にあるといえます。
そうすると、いつしか“失敗=悪いこと”と捉えるようになり、失敗ばかりに目を向けストレスを溜め込みやすくなってしまうのです。
逆に、加点主義の人は「できた物事を成功」と捉え、成功体験を増やしていく傾向にあります。
失敗した物事の中から気づきや学びを得ていくため、ストレス耐性を高めていくことができるのです。
失敗ばかりに目を向けていると、それが積み重なって自信が喪失してしまいます。
できる限り、物事はポジティブに捉えていきましょう。
方法4.自分に合ったストレス解消法を見つける
どんな人でも、ストレスは感じます。
どんなに人間性が高い人であっても、イラッとすることもあれば傷つくこともあるのです。
しかし、そういう人はあまり細かいことを気にしないし、ネガティブな感情を引きずり続けることがありません。
なぜなら、“自分なりのストレス解消法を理解しているから”です。
ストレスを感じたら、無視せずに解消させることが大切です。
このストレス解消法は、人によってやり方が異なります。
運動する人・睡眠を取る人・趣味に没頭する人などさまざまなので、自分に合ったストレス解消法を見つけ、ストレスを解消する術を身に付けてみて下さい。
尚、できることならストレス解消方法は、複数持っておくことをオススメします。
いろんなことにチャレンジしてみて、自分が「楽しい!」と感じるものを取り入れてみて下さい。
ストレス耐性が高いからといって、無理をしないこと
ストレス耐性を「器」に例えてみましょう。
この器に水を注ぐとき、器が小さいほどすぐに水がいっぱいになり零れてしまいます。
逆に、器が大きいほど、水はたくさん貯めることができます。
しかし、どれだけ器が大きかろうと、いずれはいっぱいになり零れてしまうのです。
ストレスも同じで、どれだけ耐性が高かろうと、無理をすればいずれは爆発してしまいます。
だからこそ、ストレスを解消(発散)する術を身に付けておく必要があるのです。
ここまでにご紹介した通り、考え方一つで、物事の捉え方は大きく変わってきます。
とはいえ、何年も培ってきた性格や思考は、一朝一夕で大きく変化させることはできません。
その点、ストレス解消法は“自分の好きなことをする”ため、比較的簡単に取り入れることができます。
自分の“心の健康”を把握できるのは、自分だけです。
無理をしないで、適度に自分自身に休息を与えてあげるようにして下さい。
また、時には「環境を変える」ことも大切です。
ストレスを溜め込む原因として多いのは、“人間関係”です。
しかし、いくら自分を変える努力をしても、環境が変わらなければ原因が解消されない可能性もあります。
他者や環境をコントロールすることはできないからです。
環境を変えるのは難しいかもしれません。
しかし、「変えられないから」と無理をしていては、いずれはストレスが限界を迎えてしまうことも考えられます。
自分自身としっかり向き合いながら、「どうやったらストレスを軽減できるか?」を模索してみて下さい。
まとめ
どんな人にも、大なり小なりストレスは発生します。
大切なのは、そのストレスと「どう向き合うか?」です。
ストレス耐性は、性格やこれまでの経験から培われるものであり、いきなり高めることは難しいかもしれません。
しかし、ストレスの発散方法は意外とすぐに見つけることができたりもします。
自分に合った方法を見つけ実践し、自分のペースでストレス耐性を身に付けていきましょう。