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なくならない「待機児童問題」……その原因と新たな取り組み「新子育て安心プラン」について

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一時期、Twitterで「保育園、落ちた」と話題になったり、とあるワードが2016年のユーキャン流行語に受賞したり……。

今や「待機児童問題」は、日本の大きな社会問題の一つにまで発展しています。

  • 「なぜ、待機児童が増加しているのか?」
  • 「待機児童が増えることで、どんな問題が起こるのか?」
  • 「今後、改善する可能性はあるのか?」

今回は、こういった点に焦点を当てて、ご紹介していきたいと思います。

「待機児童問題」について

そもそも「待機児童」ってなに?


「待機児童」のことを端的にいうと、“保育施設に入所したい(させたい)けれど、入所できずにいる子ども”のことです。

入所申請済み+入所条件を満たしているにも関わらず、保育所に入所できない児童が増加しているのです。

この待機児童数が増加し続け、「保育園、落ちた」とつぶやかれるようになり、その情報が世間一般に広く認知されたことから、「待機児童問題」として日本の大きな社会問題の一つにまで発展してしまったのです。

「待機児童」が増えるとどうなる?

例えば、「出産も終わって落ち着いてきたので、そろそろ仕事復帰がしたい!」と考えるお母さんがいらっしゃったとします。

しかし、小さなこどもは皆無邪気であり、ちょっとでも目を離すと突飛なことをしてしまう可能性があることから、基本的には付きっきりでいる必要があります。

加えて、仕事に出ている時に、子どもを長時間家の中で一人にしておく訳にはいきません。

だから、「子どもを保育園に入所させよう!」と考えるのです。

しかし……。

いざ入所条件を満たし・入所申請を行ったとしても、「保育所に空きがないため、子どもを受け入れることができません……」と言われてしまうのです。

上記の状態を「待機児童」といい、こうなると子育てをしているお母さん(場合によってはお父さん)は、自宅で子どもの面倒を見る必要があるため、本格的な社会復帰ができなくなります。

待機児童が増えることで、“仕事をしたくても、仕事復帰ができないお母さん・お父さんが増えてしまう”……という問題に繋がってしまうのです。

「待機児童問題」が、社会問題にまで発展した原因はなにか?


“結果”には、必ず“原因”があります。

この待機児童問題も、社会問題にまで発展してしまった理由・原因があるのです。

その点を、この項目でご紹介していきましょう。

理由①:家庭環境が大きく変化したから

多くの人がもっともイメージしやすいのは、恐らく「共働きをする(せざるを得ない)家庭が増えたこと」ではないでしょうか。

古くは、“男性が仕事をしてお金を稼ぎ、女性は家庭を支える”というイメージが固定概念としてありました。

しかし、それはもう古い考えであり、女性の社会進出者は増加し続けています。

それは、「生活のため」という人もいるでしょうし、「仕事が楽しいから」「もっとキャリアを積んで出世したいから」など自身の”夢のため”という人もいるでしょうし、千差万別です。

なんにせよ、女性の社会進出が増加したことにより共働き世代が増え、保育園を利用するご家庭が増加したのです。

加えて、「所得の水準が低い」傾向にある地方では、共働きを余儀なくされるケースもあります。

例えば、沖縄県は全国でもっとも平均年収が低い地域であり、沖縄の待機児童数は東京に次いで2位となっています。

ちなみに、厚生労働省が集計した「共働き等世帯数の年次推移」によると、1980年の共働き世帯は“614万世帯”となっていますが、2019年には“1,245万世帯”と、倍以上の数値に跳ね上がっています。

理由②:都市部を中心に「核家族化」が増加している

住む環境にしろ、仕事の条件にしろ、やはり地方より都心の方が環境の整備は進んでいます。
(環境整備の優先度も、都心の方が早くなる傾向にある)

もちろん、全ての人がこれに当てはまる訳ではありませんが、どちらかというと「都心に人工が集まりやすい」という傾向にあります。

そして、その都市部を中心に「核家族化」が増加しているのです。

「核家族」というのは、夫婦とその未婚の子どもで構成される家族のことを指しています。
(夫婦のみの世帯や一人親世帯も含まれる)

昔は三世代で住むご家庭も多く、共働きの夫婦であっても仕事をしている間はおじいちゃん・おばあちゃんなどに子どもの面倒を見てもらう家も多かったのですが……。

現在は、仕事や家の都合で地方(実家)を離れて、核家族だけで住むご家庭が多く、保育所の需要が高くなっているのです。

理由③:保育所・保育士が不足している

まず、保育所というのは“どこにでも自由に設置することはできない”のです。

その理由の一つは、「国の基準を満たす”敷地”を確保しなければいけない」ということ。

さらに、以前にニュースになったこともありますが、「子どもの声がうるさい」と近隣住民からクレームが入る場合などもあり、下手をすればそこから何かしたらの問題に発展してしまう可能性もあります。
(絶対にあってはならないことですが、現実として事件に発展している例などもあるのです……)

また、その他の事情もあって、保育所の設置自体を反対される可能性もあります。

特に、都心部は建物が密集しており、上記の問題をクリアするのは中々に困難です。

中には、「保育所が少ないなら増やせばいいでしょ!」と考える人もいるかもしれませんが、むやみやたらと簡単に増やすことはできないというのが現実なのです。

加えて、“保育士が不足している”という問題もあります。

今現在でも保育士不足が問題となっているのに、保育所だけ増やしても園は成り立ちません。

現在は、保育士の国家資格を所持しているものの保育士として働いていない、「潜在保育士」も増加しています。

保育士不足の理由や潜在保育士については様々な事情がありますので、この点については別の項目でご紹介しようと思います。

なんにせよ、こういった問題が積み重なり……、つまり“保育園の需要と供給が見合わなくなってきている”ことが原因で、待機児童数が増加しているということなのです。

「待機児童問題」は、解消されているのか?

結論からいうと、「待機児童数は減少傾向にはあるが、まだまだ改善が必要」という感じです。

以下は、厚生労働省が発表している「2020(令和2)年4月1日時点の待機児童数について」の、2013年~2020年までの待機児童数です。


引用:厚生労働省-2020(令和2)年4月1日時点の待機児童数について

2017年をピークに、そこからは減少傾向にはあります。

2020年4月も、1年前の同月に比べると約4,000人減少しており、この数字だけを見ると大幅な改善が見られるように感じるのですが……一つ大きな問題があります。

それは、「待機児童の6割強が、都市部で発生していること」です。


引用:厚生労働省-新子育て安心プランの概要

こちらも厚生労働省が発表している資料となりますが、ご覧の通り“東京圏:38.2%”“大阪圏:15.5%”を合わせて、都市部のみで“63.5%”もの待機児童がいるのです。

そして、上記でご紹介したのは、あくまで国や自治体が把握している待機児童数であり、実際はもっと多くの待機児童がいると予想されています。

その理由は「隠れ待機児童」の存在があるからです。

待機児童にカウントされない?「隠れ待機児童」ってなに?

2017年より前の話になりますが、希望している認可保育所に入れていないにも関わらず、待機児童としてカウントされなかった子どもが大勢いました。

それが、「隠れ待機児童」と呼ばれるものです。

なぜこの問題が発生していたかというと、以下のケースなどが対象から外されていたからです。

☆★☆待機児童にカウントされない(しなくてもよい)とされるケース☆★☆

◆保護者が、育児休暇を延長した場合
◆保護者が、求職活動を休止している
◆特定の保育所を希望している(第一希望の保育所に入れず、無認可保育所に入所した場合など)
◆自治体が補助している保育サービスを利用している(保育ママや認証保育所など)

※「無認可保育所」とは、施設の広さや保育士などの職員数と言った”認可基準”がクリアできていない施設のこと※

上記のことから、「国や自治体が把握できていない待機児童がもっといるのではないか?」と問題になり、2017年3月から「待機児童の定義」が変更されることとなったのです。

この定義の変更によって、それまで以上に正確な待機児童の数が公表・把握されるようなりました。

ただ……、確かに以前よりは正確な数を把握できるようにはなったのですが、だからといって「隠れ待機児童」が完全にいなくなった訳でもありません。

そもそも、待機児童してカウントするかの判断は、各自治体に委ねられているのが現状です。

そのため、上記でご紹介したように待機児童してカウントされるようになったケースも増えているものの、新たな定義のもとでも「まだまだ隠れ待機児童の存在は残っていくのではないか?」と考えられているのです。

改善するための政策は、以前より行われていた……?

これまでの取り組みについて


ご存知の方も多いかと思いますが、待機児童の解消を目指すための政策は、以前より打たれ続けてきました。

例えば、平成25年度~平成30年度には「待機児童解消加速化プラン」が行われ、平成30年度~令和3年度の間には「子育て安心プラン」が施行されたのです。

これら政策の目的は、当然「待機児童数を減らすこと」です。

実は、「待機児童解消加速化プラン」が打ち出された際は、“平成29年度末には、待機児童をゼロにする”ことを目標に動いていたのです。

しかし、確かに数こそ減少してはいるものの待機児童はゼロにはなっておらず、平成30年度より、新たに「子育て安心プラン」が打ち出されることとなります。

この「子育て安心プラン」は、平成30年度~令和3年度の間で全国の待機児童を解消し、5年間で約32万人分の受け皿を整備するという目的のもと動き出しました。

そして、2020年4月時点での待機児童数は、上の表でご紹介した通り12,439人と大きく減少することとなります。

ただ、それと同時に、女性の就業率もさらに上昇傾向にあります

このことから、2020年12月21日に、「新子育て安心プラン」という新たな政策が公表されたのです。

「新子育て安心プラン」とは?

「新子育て安心プラン」は、「待機児童解消加速化プラン」「子育て安心プラン」と同じく、待機児童の解消を目指すこと・女性の就業率の上昇を考慮した“保育の受け皿整備”を進めるための計画のことです。

そもそも政府は、25歳~44歳の女性の就業率を82%にすることを目標にしています。

それを実現するには、児童待機数をさらに大きく減らす必要があります。

このことから、「2021年度~2024年度までの4年間で、約14万人の保育の受け皿を整備する」としているのです。

これを実現するには、保育士(保育補助や短時間勤務の)の確保はもちろんのこと、保育コンシェルジュによる相談支援の拡充、幼稚園の空きスペースやベビーシッターなど、地域のさまざまな子育て支援を活用していく必要があります。

また、前項でもご紹介した通り、“保育士不足となった(潜在保育士が増えた)こと”には、相応の原因があります。

ただ単に「保育士を必要としています!」と訴えるだけでは意味がなく、働く環境や待遇の改善など、保育士の方々が「働きたい」と感じる環境整備を行っていく必要もあるのではないかと思います。

保育士免許は国家資格であり、取得するにはそれ相応の努力を必要とします。

一生懸命努力をして国家資格を取ったのに、「仕事量に見合った条件ではない……」と保育士の道を諦めるのは、資格を取得した当人にとってもあまり良い気はしません。

保育所を利用する側にとっても・保育所で働く人にとっても、納得のできる形で、今後も園が運営されていってくれれば……と思います。

まとめ

ここまでにご紹介した通り、「保育の需要」は年々高まり続けています。

2020年から猛威を振るい続けている新型コロナウイルスにおいても、改めて保育所の必要性やありがたさを感じた方々が多くおり、そこで勤務する先生方に感謝の気持ちを伝える人(親御さんだけでなく、お子さんも)が大勢いたと言われています。

仮に、今後テレワークなどの在宅勤務をする人が増えたとしても、「仕事をしながら、子どもの面倒も見る」というのは非常に難しいです。

むしろ、“在宅勤務+子育て”に多大な負荷を感じて、保育所への入園を強く希望する親御さんがいらっしゃることも事実なのです。

新型コロナの影響もあって、現在の日本は大きく変化しようとしています。

それは、保育業界も同じことです。

ただ、どんな形であっても「保育」という仕事・業界がなくなることは絶対になく、今後もより一層社会から必要とされる職業に間違いはありません。

保育は、“人”にしかできない仕事です。

他の多くの仕事は、「いずれ機械に取って代わられる」と言われますが、子どもと接し・気持ちを汲み取り・多くの方々とのコミュニケーションを必要とする保育は、機械で代行することは絶対にできません。

「保育士」になるには国家資格を必要としますが、保育の仕事に携わる別の職種であれば、保育士免許がなくても勤務が可能な場合もあります。

もしこの業界に興味を持たれた方がいらっしゃれば、様々な情報を調べて、一歩踏み込んでみてください。

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