「待機児童問題」を解消するため、新たな子育て支援の一つとしてスタートした「認定こども園」。
施設の新設、および幼稚園や保育園からの移行も増加しており、年々施設の数は増加しています。
この、認定こども園には「認定区分」というものがあり、お子さんは認定された施設に入所することとなります。
この認定区分とは何か?
今回は、この点について、詳しくお話していきたいと思います。
尚、「待機児童問題」については、以前に別の記事でご紹介をしておりますので、気になる方は以下のリンクよりご覧ください。
「認定区分」とはなんなのか?
まず、「そもそも……認定こども園ってなんですか?」という方がいらっしゃれば、こちらも以前に別の記事にて詳しくご紹介しておりますので、下記より内容をご覧ください。
そして、「認定区分」ですが、これは認定こども園だけに関係する話ではなく、保育園や幼稚園も対象となります。
これは、「年齢や保育の必要性によって分けられる、”3つの支給区分”のこと」を指しています。
2015年に誕生した「子ども・子育て支援新制度」からスタートしており、認定こども園および新制度下にある保育園・幼稚園に入園するために、“自治体から認定を受ける必要ができた”のです。
そして、この区分は「1号・2号・3号」の3つが存在し、認定対象の施設に子どもを入所させることとなります。
どう区分されるの?
「1号~3号まであるのは分かったけど……どういう条件で区分されるの?」
「そもそも、認定されたとして、どういう施設が利用できるようになるの?」
次に、上記の疑問についてお話していきます。
まず、どう区分されるのか?ですが、これは「お子さんの年齢」と「保育の必要性」によって区分されます。
そして、各認定によって利用できる施設は、「幼稚園」「保育園」「認定こども園」「地域型保育」の4つが存在します。
表にしてまとめてみると、以下のようになります。
保育の必要性=「保育を必要とする事由」なのですが、これは様々な事情が考えられます。
一般的にイメージしやすいのは、「就労/求職活動・職業訓練中/妊娠・出産/病気・障害/家族の介護や看護」などが挙げられますが、他にも「虐待やDVの恐れがある」や「災害復旧の最中」であったりと様々です(他にもあります)。
最後にもう一つ、お子さんの預け(預かり)時間)ですが、これも一部異なります。
1号認定の場合、”教育”がメインとなるため、預け(預かり)時間の標準は幼稚園と同じ「4時間」ほどとなります。
対して、他の2つの場合は”保育”の必要性もあることから、預け(預かり)時間の最長は「8時間(保育短時間)or11時間(保育標準時間)」となります。
この2号・3号の預け(預かり)時間については、保護者の就労状況によって変化します。
「保育料」ってどのくらいかかるの?
保育料の基本的な設定方法
次に、各認定区分ごとに必要となる「保育料」についてです。
これについては、施設によって設定の仕方が変わってきます。
【保育園・こども園】
- 自治体が、保護者の所得状況に応じて設定する
【幼稚園】
- 公立:自治体が設定する
- 私立:設置者が設定する
ただ、この保育料に関してですが、2019年10月から「幼児教育・保育の無償化(幼保無償化)」という制度が実施され、費用を抑えることが可能となっています。
ただし、“全てが対象”という訳ではありません。
「幼保無償化」の対象とは?どのくらい安くなるの?
2019年10月から施行された「幼保無償化」は、子育てを支援するために国や自治体が実施した助成金のことです。
ただし、対象は限定されます。
基本的には、「3歳~5歳の児童」であり、「幼稚園・認可保育園・認定こども園・地域型保育・企業主導型保育事業に通っている子どもたち」が対象となります。
上記対象者であれば、“保育料が無料”となります。
尚、「幼稚園に通っている児童」のみ、一つ注意点があります。
それは、金額の上限があることです(所得制限はなし)。
これは、助成金額が、全国の幼稚園利用料の平均から算出した“月25,700円まで”となります。
もしそれを上回ってしまった場合は、差額分が自己負担となってしまいます。
そして……この上記の点が、一時期少し話題(問題)となってしまったのです。
この点については、別の項目でご紹介します。
他に、助成の対象となるサービスはないの?
結論、「保育の必要性の認定」を受けることで、助成金額の上限こそあるものの、制度の対象となるサービスがあります。
例えば、「認可外保育園」や「幼稚園の預かり保育」、「ベビーシッター」などです。
ただし、上記の「保育の必要性の認定」は、自治体によって内容が若干異なるため、まずはお住いの自治体のホームページなどを確認してみてください。
「0歳~2歳」の保育料は対象にならないの……?
上記でご紹介した、基本的な助成対象は、認定区分で言えば「1号・2号」となります。
0歳~2歳が対象となる「3号認定」の場合は、対象とはならないのでしょうか……?
実は、「住民税非課税世帯のみ無償化の対象」となります。
つまり、低所得世帯であり、世帯の所得が約200万円~300万円の家庭にいるお子さんであれば、保育料無償化の対象となるのです。
無償化の対象は、あくまで「保育料」のみ
注意しておかなくてはいけないは、無償となるのは「保育料のみ」……つまり「施設の利用料」が無償となるだけということです。
例えば、入園にかかる際の費用や、毎月の給食費・バス代・用品代・行事費など……。
通園の際に発生する費用は、これまで通り、保護者負担となります。
それでも、毎月の保育料だけでも無料になれば、家計の負担を大きく減らすことができます。
子育て支援の一環として、活用できるものはしっかりと活用していきましょう。
「幼保無償化」の問題点……?
「保育料が無料になる」
これだけを見ると、メリットしか思い浮かばないと感じるかもしれませんが、この幼保無償化が始まってしばらくの間、少し問題点がありました。
この項目にて、ご紹介していきたいと思います。
幼保無償化に合わせ”保育料が引き上げられた”
前項で、「幼稚園の利用料には上限があり、それを上回ると自己負担額が発生する」とお伝えしました。
2019年10月に幼保無償化の制度が施行されましたが、このタイミングで「保育料を引き上げた幼稚園が増加した」のです。
無償化の上限は「月25,700円」なので、この保育料の値上げによって、一部の幼稚園では結果的に無償での利用ができなくなってしまったのです。
この問題は全国的に発生したため、文部科学省にて「値上げの有無および値上げした理由」についての調査が実施され、もし不適切な値上げがあれば都道府県から指導が入るようになったほどです。
ただ……。
確かに、「無償化に便乗して値上げした」という印象は拭えず、中には「私腹を肥やすために引き上げたんじゃないの……?」と疑ってしまう人もいると思います。
もしかしたら中にはそのような園もあったかもしれませんが、「幼稚園の現場が疲弊しきっている」ことも原因の一つであり、「保護者の懐を痛めないこの機会だからこそ……」と値上げに踏み切った幼稚園が非常に多かったのも事実なのです。
その理由は、「少子化」と「保育園の利用者が増加していたこと」です。
上記が理由で幼稚園の保育料収入が減り続けており、現場で働く人たちへの負担は増大していました。
- 職員の処遇改善のため
- 老朽化した建物の整備
こういった点に、利用したいと考えていたのです。
中には、キチンと事情を説明した上で、保護者の理解を得ている幼稚園も多く存在します。
尚、これは幼稚園だけでなく、認可外保育施設などでも行われていたようで、こちらは厚生労働省が調査に動いていたとのことです。
「待機児童」の数と「保育士」の負担
「保育料を無料にして子どもを園に通わせられるなら……」と、一時的に入園希望者が増加しました。
この時、一つ問題が発生します。
入園希望者が増える=入園できない児童……つまり「待機児童」も増加するということです。
上記で「保育を必要とする事由」についてお話をしましたが、その対象の中には「就労」も入っています。
「この機会にパートで働いてみようかな……?」と考える主婦(夫)も少なくはありません。
もちろん、今の世の中、多くのご家庭が生活することに必死ではあります。
この機会に……と、家計の負担を軽減するために仕事をすることも何も間違ってはいません。
ただ、待機児童の数が増えてしまうと、「共働きで働かなければ生活も苦しい……生活ができない」というご家庭のお子さんが入園できない自体に陥る可能性もあるのです。
とはいえ、定員数以上のお子さんを入園させることはできません。
保育士自体、“保育士不足”が課題視されていますし、経験の浅い保育士……つまり(言い方はちょっと悪いですが)頭数だけ揃えたとしても「それで保育環境は保たれるのか?」という問題が発生します。
家計の負担を軽くできるという点で、無償化そのものは大変にありがたいものです。
ただ、園の労働環境自体はまだまだ改善がされていない状況です。
無償化の制度がスタートして、1年半と少しが経ちましたが、まだまだ改善しなければいけない点は山ほどあると言えるのではないでしょうか。
今後の「課題」について
待機児童数を減らすために、様々な制度が打ち出されており、実際に待機児童数は減少傾向にあります。
例えば、2019年(令和元年)4月1日時点での待機児童数は「16,772人」で、2018年4月の時と比べると「3,123人」も減少しています。
さらに、2020年(令和2年)4月1日時点では「12,439人」となり、昨年よりも「4,333人」減っています。
ただし、年齢で見ると「1,2歳時の待機児童が全体の75.7%を占めている」という数値が出ています。
つまり「3号認定の施設が不足している」ということです。
共働きの世帯、各家族の世帯が年々増加しており、今後もさらに増えていくものと考えられています。
つまり、0~3歳以内の児童が対象となる「3号認定の施設」は、今度さらに需要が高まっていくと思われます。
「3号認定施設に関係する待機児童数を、どう減少させていくか?」
これが、今後の課題の一つとなりそうです。
まとめ
待機児童問題の改善に向けて、今後も様々な施策が打ち出されていくことと思われます。
ただ、制度を設けることや子育て支援を行うことも非常に大切なことですが、それと同じく“現場環境を整備すること”も必要なことだと感じます。
保育の現場を支えてくれているのは、その現場で働いている従業員の方々です。
上で紹介した「無償化と保育料の値上げ」もそうですが、現場で働く人たちの負担は大きく、それに対する見返り(給与や福利厚生など)はさほど大きくありません。
これが、人材不足となる原因の一つであることは、以前から言われ続けていることです。
処遇改善についても、今後さらに手が加えられていき、多くの人が過ごしやすい国になってくれればと思います。