近年、お肌の美しさを保つ・磨くために「美容クリニック」を受診する人は増加し続けています。
そして当然、そのニーズに合わせて美容クリニックもどんどん増え続けています。
しかし、母数が増えれば増えるほど、いわゆる「悪徳美容外科」のような存在も見受けられるようになるのです。
実際、美容医療の分野は、“トラブルが多い”と言われています。
なぜトラブルが多いのか?
その原因はなんなのか?
今回はこういった「美容医療に関するトラブル」について、詳しくご紹介していきたいと思います。
美容医療は、なぜ”トラブル”が多いのか?
美容医療の業界は、実はトラブルが多いことで有名です。
その理由の根底にあるのは、「利用者の無知につけこむ、悪徳業者の存在」にあります。
まずは、この項目でトラブルの発端となりやすい内容を、いくつかご紹介していきます。
特にトラブルに発展しやすいのは「契約内容」である
以前の記事でもご紹介しましたが、美容医療は「自由診療」であり、保険適用外となります。
そして、特に美容整形外科の場合は“手術”を行うことが多いため、手術費用は相応に高額です。
この「契約費用」に関することや、「医師の説明が不十分なまま強引に契約を迫られる」と言った点が、特にトラブルに発展しやすいと言われています。
医療美容だけに限った話ではありませんが、ホームページや折込チラシなどで、キャッチーな価格が記載されているのを見かける人は多いと思います。
そして、「こんなに安いなら、試しに話だけでも聞いてみようかな……?」となって来店を決意する人もいるかもしれません。
しかし、来店し話を伺っていくと……、不要な施術を進められたり、カウンセラーの話術に乗せられ、最終的に「広告表示価格より、遥かに高い金額で契約させられてしまった……」となる場合があるのです。
他にも、
- 無料チケットで施術を受けていたが、途中から高額な契約をさせられてしまった
- 施術内容に関して何の説明もなく、勝手に追加で施術が行われてしまった(当然費用が発生する)
など……。
「元々の話と違う!」として、全国の消費生活センターにも多数の相談が寄せられています(この点は後述にて追記)。
何にせよ、“安ければ良い”という訳ではありません。
どんな業界・どんな商材にも、必ず「適正価格」というものが存在します。
その値段になるには相応の理由があるのです。
こと美容医療に関しては、「医師・看護師・場所・機材の確保・リスクへの対応」……などなど、掛かる費用も相当なものとなるため、費用相場がそもそも高額となるのです。
他の業界ならともかく、医療美容に関しては“安い=怪しい”と考えておいてもいいかもしれません。
残念ながら、低価格になるには相応のカラクリがあると見て良いかと思います……。
「施術内容」に対するトラブル
注射であれ、レーザー治療であれ、メスを入れた手術であれ、肌に直接何かしらの施術を施す美容医療は、施術後に身体に異常が発生する“リスク”や“副作用”を伴う危険があります。
そう……、このトラブルの最大の原因は「リスクや副作用に対する説明が不十分orされていない」ことにあります。
もしくは、「医師が失敗を認めない」であったり、「別の病院に変えたいが、施術したクリニックがカルテの開示請求に応じない」など……、他にも色々あります。
上記の通り、肌に直接治療を施すのですから、“100%、安心・安全な治療”というのは基本的に存在せず、ほぼ必ず何かしらのリスク(もしくは副作用)が発生する恐れがあります。
でも、悪徳業者は、その説明をしません。
そして、施術後に問題が起こっても、責任を取りません。
そのため、この「直接的な危害に関する相談」も、消費生活センターへの相談が多発しています。
医師にも2つの種類がある
美容医療の施術を行う医師……つまり「美容外科専門医」ですが、実は大きく2つの種類があります。
端的に言うと、以下の通りです。
◆「JSAPS」という美容外科学会にて、厳しい審査を通過し美容外科専門医になるパターン
要するに、日本の美容外科医には「簡単になれる方法」と、「米国並みの高いハードルを通過する方法」の2種類が存在するということです。
「どちらの方が、美容外科医として信用ができるか?」は一目瞭然だと思います。
この美容外科専門医については、また別の記事にて改めて詳しくご紹介していきたいと思います。
美容医療は「クーリング・オフ」ができない?
少し前の話になりますが、美容医療には契約を縛る法律がありませんでした。
つまり、何か違和感や問題があったとしても、“クーリング・オフができない”のです。
実は、エステサロンの場合は、特定商取引法で利用者の保護が図られています。
クーリング・オフができますし、仮に期間を過ぎていても、途中で解約をすることも法律上認められています。
ただし、これまでに様々な問題が浮上していることから、厚生労働省や消費者庁も調査に乗り出し、2017年12月1日から美容医療にも「改正特定商取引法」が施工されることとなりました。
これにより、一部の美容医療(※)でクーリング・オフが可能となったのです。
※一部の美容医療:脱毛、にきび・しみ等の除去、しわ・たるみの軽減、脂肪の減少、歯の漂白など※
とはいえ、美容クリニックもエステサロンも、まだまだ法律の落とし穴のようなものは存在し、特にクーリング・オフの場面は何かと問題に発展しがちのようです。
消費生活センターに寄せられている相談件数は?
「具体的に、消費生活センターにはどのくらいの相談が寄せられているの?」と疑問を感じた人もいるかもしれません。
以下は、政府広報オンラインにて公開されている「美容医療サービスに関する年度別相談件数」の表(画像)となります。
年度によって多少の差異はありますが、おおよそ2,000件程度の相談が、全国の消費生活センターに寄せられています。
基本は、契約内容や返金・解約に関する相談(美容医療サービス相談)が大半ではありますが、中には危害(やけどや傷など)に遭われた方による相談も発生しています。
上述でもお話しましたが、“美容医療で100% 安心・安全というものはなく、何かしらリスクが伴う可能性がある”ということは、頭に入れておいた方が良いかと思います。
事前にしっかりと情報収集を行い、契約・施術内容について医師や看護師とキチンと納得いくまで話をする。
そして、もし何かしら問題が発生すれば、消費生活センターに相談する……。
これらを徹底することをオススメいたします。
消費者の”無知”が悪いのか?
上述で「利用者の無知につけこむ、悪徳業者の存在」と記載しましたが、利用者側で美容医療に関しての知識に秀でている人はほとんどいません。
いるとすれば、美容医療や医療に関連する業務に就いているorいた人くらいでしょう。
美容医療を利用したいと考える人のキッカケは、大概以下のようなものです。
◆「かわいくなりたい」
◆「自分を変えたい」
◆「自分に自信が持てるようになりたい」
◆「コンプレックスをなくしたい」
でも、普段のお手入れだけでは不十分と感じつつも、どうすればこれらの目的を叶えることができるのかが分かりません。
だから、美容クリニックなどに行って、施術を受けるのです。
決して、美容医療に関して知識がない消費者が悪いのではありません(もちろんある程度情報収集することは大事ですが)。
消費者の無知につけこんで、違法もしくはそれに近いことをしでかす悪徳業者側が悪いのです。
消費生活センターにも多くの相談が寄せられていますが、問題を危惧して厚生労働省や消費者庁も動いています。
少しでも早く環境が整備され、悪徳業者による被害が減ることを祈るばかりです……。
まとめ
美容医療に関するニーズが増え、それに伴い美容クリニックの数も年々増加傾向にあります。
数が増えれば、それだけ法律の穴をついたり、違法まがいのことをしてしまう「悪徳業者」も増えてしまうのが現状ではあります。
残念ながら、それは美容業界だけでなく、他の業界であっても同じことが言えます。
だからこそ、法による整備が必要不可欠なのです。
美容医療の法律はまだまだ整備が行き届いていませんが、厚生労働省や消費者庁が動いていることも事実なので、今後の政府の動きには注目が集まっています。
尚、いくら法律がしっかりしていたとしても、消費者自身もしっかりと“良いクリニックを選んでいく必要がある”と言えます。
今でもそうですが、正しく運営している美容クリニック(法に触れることをしていない)であっても、「良いクリニック」と「よろしくないクリニック」というものは存在します。
その良し悪しを「消費者自身がどう判断していくか?」が、とても大切なのです。
次回は、「良い美容クリニックの選び方」について、詳しくご紹介をしていければと思います。