ケースワーカーとは、自治体の福祉事務所や、介護施設・福祉施設等で勤務する、主に相談業務にあたる職種のことを指します。
勤務先によって、相談業務にあたる職種のことを、ケースワーカーと呼んだり、生活相談員、児童相談員、ソーシャルワーカーと呼び方が異なりますが、今回は福祉事務所や福祉施設で相談業務にあたる人をケースワーカーとして、ケースワーカーになるための方法や、ケースワーカーの年収について紹介していきます。
ケースワーカーになるには
まず初めに、ケースワーカーになるための方法について解説します。
必要な資格
ケースワーカーになるためには、社会福祉主事任用資格を取得する必要があります。
自治体が設置する福祉事務所において、ケースワーカーとして勤務する場合には、社会福祉主事任用資格を取得していることが絶対条件です。
社会福祉主事任用資格の取得方法
社会福祉主事任用資格の取得は、以下のどれか条件を満たすことで取得できます。
① 大学等において社会福祉に関する指定の科目(3科目以上)を履修し、卒業している
② 指定の通信教育にて学習を修了した(通信1年)
③ 指定養成機関を修了した(22科目1,500時間)
④ 都道府県等の講習会に参加(19科目279時間)
⑤ 社会福祉士、精神保健福祉士を所持している
社会福祉主事任用資格は、上記の(1)で示した大学等で指定科目3科目以上を履修し、卒業したものに与えられる、という条件を満たしている人が多いです。
取得しようと思っていたわけでなくても、「実は条件を満たしていた」という場合があります。
福祉学部や児童学部に在籍していた人は、指定科目の履修状況を確認してみましょう。
また、科目は時代によって名称等が変化しています。
確認するときには、自らが在籍した年代の指定科目名が原則一言一句同じでなければなりません。
厚生労働省のホームページでも確認することが可能です。
(2)の所定の通信課程は、
・全社協中央福祉学院社会福祉主事任用資格認定通信課程
・日本社会事業大学通信教育科
このどちらかで1年学ぶことで、社会福祉主事任用資格を取得することが出来ます。
通信課程での取得は、社会福祉事業の現場で働いている人が対象となります。
(3)の指定養成機関とは、専門学校のことを指します。
福祉系の学部と思つ専門学校は多いと思いますが、注意したいのは「指定されている学校」で、全国に40校未満と少なく、指定された専門学校がない県も多いです。
また、22科目1,500時間以上という規定があるため、2~4年の通学が必要になる学校が多いです。
(4)の都道府県の講習会は、現在社会福祉事業で勤務している公務員を対象に開催されます。
(5)の社会福祉士、精神保健福祉士をすでに取得している人は、社会福祉主事として勤務することが可能です。
ケースワーカーとして働ける場所
ケースワーカーが働く場所は、都道府県や市町村などの自治体が運営する事務所や、一般企業の福祉事業所など、多岐にわたります。
自治体の福祉事務所
都道府県、市町村では福祉事務所の設置が義務付けられています。
この自治体が運営する福祉事務所では、「ケースワーカー」を設置することが義務付けられています。
ケースワーカーという名称は、介護・福祉業界では表現があいまいになっている部分も多く、相談業務にあたる人をケースワーカーと呼ばず、生活相談員やソーシャルワーカーと呼ぶこともありますが、自治体の福祉事務所では必ず「ケースワーカー」という名称で職務にあたります。
自治体の福祉事務所でケースワーカーとして勤務する場合は、社会福祉主事任用資格の取得と併せて、公務員試験に合格することが必須です。
自治体の福祉事務所の業務
・生活保護法
・児童福祉法
・身体障害者福祉法
・知的障害者福祉法
・老人福祉法
・母子及び寡婦福祉法
上記の福祉6法と呼ばれる法律に関する事務業務を行います。
自治体の福祉サービスの第一線と呼ばれる期間でもあり、こうした福祉6法に関わるサービスの決定や調整業務、利用の相談、サービス開始時期の調整や、各サービスと利用者のパイプ役となる重要な相談機関です。
介護施設
介護施設では、ケースワーカーを生活相談員と呼びます。
介護施設の中でも、
・デイサービス
・ショートスティ
・特別養護老人ホーム
などに勤務することが多いです。
介護施設で勤務する場合にも、社会福祉主事任用資格など専門資格の保有が条件とされることが多いです。
一部ですが、介護福祉サービスでの職務歴があれば生活相談員として勤務出来る場合もありますが、専門的な内容が多い職種なので、自分自身のスキルアップのためにも、専門資格を所持していることが望ましいです。
また、施設長などの条件として社会福祉主事任用資格を所持していることを条件としていることは非常に多いです。
介護施設での業務
介護施設で働く生活相談員も、職務の中心は相談業務です。
・利用者や家族に対する相談援助
・ケアマネージャー等との連絡、調整
・新規サービス利用の手続
・サービス中止に関わる業務
こうした業務が中心ですが、施設によっては介助業務や、その他の業務と兼務することが多く、介護業界でマルチに働くことが求められます。
病院や保健所
病院で勤務するケースワーカーは、「医療ソーシャルワーカー」と呼ばれます。
医療ソーシャルワーカーとして勤務する場合には、社会福祉主事任用資格よりも、国家資格である精神保健福祉士や社会福祉士を条件としていることが大半です。
また、経験を優遇することも多いです。
国立病院や保健所で勤務する場合には、公務員試験に合格する必要があります。
病院や保健所での業務内容
病院や保健所で医療ソーシャルワーカーとして勤務する場合には、医療に関する知識や、退院後に受けられるサポートの提案、医療費に不安がある人への公費医療費制度などの提案など、ケースワーカーとしてもより幅広い専門知識が必用となります。
・患者や家族の相談業務
・社会保険制度などについての案内
・医療費(公費医療制度など)についての案内
・退院後の生活のサポートの提案
このような提案、相談業務の他にも、
・受診にあたっての援助業務
・退院後の援助
・社会問題の解決
・地域活動
こうした業務があります。
ケースワーカーの年収はいくら?
ケースワーカーの収入は、専門職でもあるため、介護福祉業界の中でも安定した収入を得ることが出来ます。
こちらの項目では、ケースワーカーの収入について紹介していきます。
ケースワーカーの平均年収
ケースワーカーの年収は勤務先によっても異なります。
平均300万円~600万円と言われていますが、様々なアンケート結果や調査内容を見てみると、ケースワーカーとして600万円台の高収入を得ている人はごく一部なようです。
民間の福祉介護施設等で、施設長など役職を兼務している場合に、600万円と高い水準を得ることが出来ます。
一般職では、平均して300万円~400万円台程度となります。
自治体の福祉事務所に勤務するケースワーカーの場合、公務員となるので、各自治体の公務員給与規定に沿った収入が得られます。
ケースワーカーの中でも、公務員として勤務するケースワーカーは高い収入を得ることが出来ますが、
・公務員の割には収入に期待できる職種ではない
・業務の多さに比べると収入がわりに合わない
という意見もありました。
ただ、公務員として勤務するケースワーカーの場合は、諸手当や休暇制度、年齢が上がるごとに収入も上がるシステムなどというように、勤続年数が長くなるほど収入アップにもつながります。
民間の介護福祉施設や、病院等に勤務するケースワーカーの場合、平均年収は300万円~350万円というのが多いようです。
介護福祉業界から見る収入
介護福祉業界には、様々な職種があります。
その1つでもあるケースワーカーの収入ですが、資格手当や相談手当が付くこともあり、他の介護職に比べると収入は高い傾向があります。
・ケースワーカーの給与 25万円~30万円
・その他の介護職の給与 20万円~30万円
ケースワーカーで収入アップを目指すなら
ケースワーカーとしての勤務で収入アップを目指す場合は、いくつかの方法があります。
資格取得を目指す
社会福祉士や精神保健福祉士といった国家資格の取得で、資格手当が出る場合があります。
1資格に対して1万円~2万円というところが多かったのですが、自分のスキルアップと併せて、収入アップを目指すきっかけになります。
また、社会福祉士や精神保健福祉士を所持していると、転職にも有利です。
ケースワーカーとして、収入アップを目指して転職する場合にもあるといい資格になります。
自治体の福祉事務所で働く
自治体の福祉事務所で働くケースワーカーは、ケースワーカーの中でも収入が安定しています。
諸手当、休暇制度、年2回の賞与など、待遇も他の勤務先に比べてしっかりしています。
査察指導員になる
ケースワーカーのスーパーバイザーとして、ケースワーカーの指導や運用にあたる査察指導員の平均年収は500万円前後と言われています。
実務経験だけでなく、ケースワーカーとしての能力や、人間性などコミュニケーション力も求められる職務ですが、スキルアップとしてもおすすめです。
フリーランスのケースワーカー
ケースワーカーは自治体の福祉事務所や、民間の介護・福祉事務所などで働く以外に、フリーランスとして働くという働き方があります。
フリーランスとして働くケースワーカーの平均年収は、1000万円近くになることもあるようで、ケースワーカーとして働く場合の最高収入に近い値を目指すことが出来ます。
とはいえ、フリーランスとして働く場合には、自分自身のスキルや知識以外にも、病院や施設などとの繋がりが非常に重要で、なかなか狭き門でもあります。
まとめ
ケースワーカーになるためには、まず社会福祉主事任用資格の取得を目指しましょう。
ケースワーカーが勤務するのは、自治体の福祉事務所の他に、民間の介護・福祉施設や病院等があります。
ケースワーカーは、介護福祉業界の専門職の中では収入が高い傾向がありますが、働く場所によっても大きく収入が異なります。
より高い収入を目指すためには、査察指導員を目指したり、フリーランスになったりする働き方も出来ます。
また、ケースワーカーは民間企業ではアルバイトやパート勤務が出来ることもあります。
理想とする働き方、収入を見直しながら検討してみるといいですね。