「精神保健福祉士」は、福祉業界においてなくてはならない重要な職種・資格の一つです。
この「精神保健福祉士」については、これまでに色々とご紹介をしてきました。
≪仕事内容や各福祉士との違いについて≫
≪なり方・国家試験の内容・合格率について≫
そして今回は、以下の点に焦点を当てて、ご紹介をしていきたいと思います。
◆給与や福利厚生について
◆この仕事に向いている人
◆”やりがい”や”大変こと”について
雇用形態や働き方などについて
まずは、精神保健福祉士の働き方について、詳しくご紹介していきたいと思います。
“勤務先”はさまざまに存在する
以前の記事でもご紹介をしましたが、精神保健福祉士の働く先は数多く存在します。
◆福祉ホーム・就労継続支援事業所などの「福祉施設」
◆市役所、保健所、精神保健福祉センターなどの「行政機関」
◆その他、高齢者施設、司法施設、職業訓練施設など
また、最近では「一般企業」に就職し、“労働環境を整えていくための対策を行う”などを生業としている精神保健福祉士もいます。
(一般企業に就職する場合、人事部などの管理部門に所属することが多い)
このことから、精神保健福祉士は“さまざまな働き方ができる仕事である”と言えます。
「雇用形態」もさまざまに存在する
上記のことから、求人募集の仕方は企業(事業所)によって様々です。
常勤・正社員(公務員)としてガッツリ勤務している人もいれば、アルバイト・パートなどの非正規雇用として時間に融通を利かせながら働いている人もいます。
ただし、共通して言えることは「どんな雇用形態であっても、精神保健福祉士の国家資格は必須となる」です。
精神保健福祉士は、心に病を持った人(精神障害をお持ちの方)およびそのご家族や身の回りの人の相談に乗り、社会参加のための助言や手助けを行うことが主な仕事となります。
そのため、国家資格の所持は絶対です。
これは、正社員などの正規雇用はもちろんのこと、アルバイト・パートなどの非正規雇用であっても対象外となることはありません。
つまり「無資格では精神保健福祉士にはなれない」ということです。
※精神保健福祉士のなり方の詳細は、以下記事をご覧ください※
勤務時間や休みはどうなる?
勤務先がさまざまに存在することから、勤務時間や休みも事業所によって大きく異なります。
大きく分けると、以下の3つのパターンがあるでしょうか。
②一般企業:一般的な会社と同じで、日中のみ(9時~18時+残業など)の勤務が基本となる。休みは企業によりけり。
③医療機関or福祉施設:シフト制となることが多く、夜勤などの対応を求められることもある
特に病院などの「医療機関」やグループホームなどの「障害者入所施設」などの場合は24時間体制で施設が稼働しているため、夜勤を含めたシフト制勤務を取ることが基本となります。
そのため、上記③で勤務する人は、生活リズムが不規則になりがちとも言えます。
もちろん、シフト制のため基本的には決まった休みもありません。
①②の場合は土日祝が休みとなることがほとんどとなりますが、③の場合は月に6日~8日程度となることが多いと言われています。
ただし、精神保健福祉士の場合、残業や休日出勤はあまり発生しない施設が多いようです。
とはいえ、上記はあくまで“環境が整っている施設での話”であり、人手不足の職場や繁忙期・年度末の時期には連日遅くまで残務処理に当たることもあります。
業務の幅は非常に広い
精神保健福祉士の業務の幅は非常に広く、例えば以下が挙げられます。
◆障害者本人やご家族との面談
◆医師や看護師への情報提供
◆地域の関連施設との連携強化
◆デイケアプログラムの作成 など
そのため、デスクワークなどの内勤中心の日もあれば、利用者の自宅や関連施設を訪問するための外出が多くなる人もあり、日によって働き方は大きく異なります。
給与・福利厚生などについて
次に、精神保健福祉士の給与や福利厚生についてのご紹介です。
こちらも、勤務先・雇用形態がさまざまに存在することから、得られるものは場所によって異なります。
この項目では「正社員・常勤」をベースにご紹介していきますが、あくまで“目安”として参考程度に捉えていただけると幸いです。
「給与」はどのくらい?
勤務先や年齢などによって差が出るためあくまで目安となりますが、精神保健福祉士の月収・年収は以下ほどと考えられています。
◆年収:300万円~400万円
◆月収:250,000円~330,000円
そこまで金額が高いという訳ではありませんが、この仕事は福利厚生が充実していることが多く“安定した待遇の職場が多い”のが特徴として挙げられます。
特に「行政施設」や「医療機関」で勤務している人は充実した待遇が設定されていることが多いとされています。
昇給・賞与(ボーナス)、交通費支給や社会保険完備はもちろんのこと、資格手当・処遇改善手当・住宅手当などの「各種手当」も用意されていることでしょう。
また、施設によっては「夜勤手当」も発生するため、より高収入を狙うこともできるかもしれません。
ただし、“事業所の規模に左右されやすい”という注意点もあります。
病院や行政機関なら充実している可能性は高いでしょうが、小規模な介護施設などでは給与も待遇もあまり良くない場合があるので、この点は事前にしっかりと確認しておく(調べておく)必要はあるかと思います。
「初任給」はどのくらい?
精神保健福祉士の「初任給」ですが、これは勤務先や地域だけでなく“最終学歴”によっても金額に差が出てきます。
例えば……ではありますが、「大学卒」の場合の初任給は“170,000円~200,000円ほど”となるのが一般的と言われています。
専門の学校で知識と技術を学び、国家試験に合格してようやく職に就ける精神保健福祉士ですが、初任給だけで見ると一般企業と大きな違いはありません。
ただし、専門家としての知識を増やし・技量を磨くことで給与額は着実にアップしていき、勤続年数とともに上昇していきます。
(ただし昇給スピードは遅い傾向にはあると言われている)
「勤続年数」によって給与はどのくらい上昇するの?
まず、勤続年数による平均年収の違いですが、以下ほどの違いがあると言われています。
◆30代:約319万円
◆40代:約380万円
◆50代:約468万円
◆60代:約262万円
「勤続年数=知識と技術の蓄積」により、年齢とともに給与は上昇していきます。
そのため、20代で就職した場合、30代・40代と順調にキャリアアップを実現することが可能となるでしょう。
「性別」による給与額の違いはある?
これも勤務する場所や地域・勤続年数によって異なりますが、一般的には「女性よりも男性の方が収入は高い」とされています。
例えば、「社会福祉振興・試験センター」の『平成27年度 精神保健福祉士就労状況調査結果』によると、
◆女性:平均年収「321万円」
となっており、「82万円」もの差が生じているようです。
「社会福祉士」とのWライセンスでキャリアアップを目指す
上記の記事でもご紹介しましたが、「社会福祉士」と「精神保健福祉士」は仕事内容こそ似ているものの、実際は似て非なるものです。
そのため、両方の資格を取得することで業務の幅は格段に広がるため、両方の取得を目指す人も多いと言われています。
ただし上記の資格は、2つとも“国家資格”です。
取得するには相応の努力が必要ですが、取得できれば収入アップはもちろん組織内での責任ある職務に就くことだって可能となるかもしれません。
また、所持している国家資格が多ければ、当然転職時にも有利となることでしょう。
精神保健福祉士に向いている人・”やりがい”や”大変なこと”について
精神保健福祉士は、その仕事の特性上“誰にでもできる仕事ではありません”。
- どういう人が向いているのか?
- この仕事の”やりがい”や”大変なこと”とはどんなものか?
この項目にて、ご紹介をしていければと思います。
「向き」「不向き」について
この仕事は「精神障害者の方が、よりよい日常生活を送れるようにサポートしていくこと」が主な仕事となります。
精神に障害を持つ人というのは、当然“なりたくてなった訳ではありません”。
生まれつきであったり・事故や病気が原因であったり・仕事環境の劣悪さから「うつ病」を患ったり……と、さまざまな問題がキッカケとなって起こり得ます。
そして、その心の病の程度は人によって千差万別です。
だからこそ、「目の前の方(精神障害を持つ方)一人ひとりのことを大切に思いやり、どれだけ真摯に向き合うことができるか?」が大切なのです。
福祉に関する専門的な知識や技術も確かに必要です。
でも、それ以上に大切なことは「困っているさまざまな人を”一人の人間”として尊重し、その人たちが社会復帰できるよう何とか助けになりたいという気持ち」があるかどうかです。
そのため、以下のような人がこの仕事に向いていると言えます。
◆人と関わることが“本質的に”好きな人
◆人の話を聞くことが好きな人
◆「誰かの役に立つことをしたい」と考えている人
そしてもう一つ大切なことがあります。
それは、「障害を持つ方を、変に特別扱いしないこと」です。
この仕事は「同情」では成り立ちません。
大切なのは、同情することではなく「社会復帰できるように助力すること」なのです。
そのため、客観的かつ冷静に目の前の障害者と接することも、大切なポイントの一つとなってくるかと思います。
ちなみに、この仕事に向いていない人は、上記の“逆”となる人です。
もちろん、合う合わないはやってみなければ分からない部分でもありますので「適性を知るためにチャレンジする」のも良いかと思います。
でも、人によっては“自分自身の心も疲れてしまう場合ある”ため、絶対に無理はしないでください。
この仕事の「やりがい」について
この仕事で、もっとも「やりがい」を感じる時というのは、「対象者が自立への一歩を踏み出し、社会へと復帰していく姿を見ることができた時」です。
この仕事を志す人は、以下がキッカケとなることが多いと言われています。
◆家族や身近な人に精神障害者がおり、精神保健福祉士の仕事を間近で体感した人
◆ボランティアや職場体験などで、実際に精神障害者と接し「この人たちの自立をサポートできる仕事に就きたい」と感じた人
つまり、「(自身の経験を通して)精神保健福祉士という仕事で、困っている人の助けになりたい」と考えて仕事に就く人が多いのです。
そういう人は、目の前の方に対しての問題解決に全力を注ぎます。
そして、「自分が関わったことで、目の前の人の人生を少しでも良い方向に導けたと実感できた時」に、大きな達成感を得ることができるのです。
また、この仕事は対象者のご家族ともコミュニケーションをとる機会が多いため、ご家族から直接「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えてもらえることもあります。
こういった時に、「この仕事をやっていて良かった……」とやりがいを感じる人もいらっしゃいます。
この仕事の「大変なこと」とは?
この仕事の根本となる部分ですが、“精神障害者と接することの難しさ”が、もっとも大変なことと言えるでしょう。
上記でも記載した通り、何がキッカケで精神に障害をきたすか……、そして抱えている“障害の重み”は人によってさまざまに異なるのです。
中には、妄想や幻覚・幻聴の症状が出ている人もいますし、「自傷行為」におよんでしまう人もいます。
そのため、仕事をする人自身が心を強く持っていないと、引きずられて自身の心も大きく疲弊してしまうこともあるのです。
心の病気は”伝染”してしまうため、特に気を付けておかなくてはいけません。
そしてもう一つ。
この仕事は、対象者のご家族・多数の医療関係者や行政関係者など、多くの方々と接する機会があります。
そのため、“人間関係がうまくいかない”と、大きな悩みを抱え込んでしまう可能性があるため要注意です。
特に精神保健福祉士は、“対象者や家族”と“医療・行政関係者”との仲介役を担うことが多いので、板挟みにあって精神が疲弊してしまうこともあり得ます。
この点も、注意しておいた方がいいかと思われます。
まとめ
精神保健福祉士の仕事は、決して楽な仕事ではありません。
しかし“目の前の人としっかりと向き合い、社会復帰への助力ができた時”に大きなやりがいと達成感を得られる仕事でもあります。
まずは国家資格を取得することからがはじまりとなりますが、資格を取得できれば勤務先はさまざまに存在し、それに応じて働き方もある程度選択できる自由があります。
「精神保健福祉士として、困っている誰かを助けたい」とお考えの方は、是非自分のライフスタイルとも相談しながら、自分に合った働き方で多くの方々の社会復帰へのサポートをしていただけたらと思います。