義肢装具士は、障害や病気、事故など、様々な事情で手足に障害があったり、手足を失ったりした人の日常生活をサポートするための、補助道具を作ったり、人工の手足を作成したりする専門職です。
日本ではまだ数が少ない職種でもあり、義肢装具士と言われてなんとなくイメージすることは出来るかもしれませんが、あまり見聞きする機会がなく、具体的にどんな仕事をするのか、資格は必要なのか、疑問に思うことが多いですよね。
手足に障害がある人の日常生活をサポートする職種ですが、手足に障害があるアスリートをサポートする職種としても注目されている職種でもあり、今後ますます発展していく職種ともいわれています。
今回は、そんな義肢装具士についてお話していきたいと思います。
義肢装具士ってなに?
義肢装具士は、何らかの事情によって手足を失ったり、障害を持っている人に、補助道具を作ったり、人工の手足を作ったりする専門家です。
義肢といって、足の変わりとなる「義足」や、手の変わりになる「義手」などを作成する技法では、実際に動かすことが出来る義肢と、見た目を整えるための義肢があります。
また、このような義肢だけでなく、身体の機能を補ったり、回復を目的として使う、装具と呼ばれるものを作るのも、義肢装具士の役割です。
装具には、コルセットやサポーター、インソール、義眼などが当てはまります。
日本の義肢装具士の歴史
日本での義肢装具士の歴史は、1800年代後半にさかのぼります。
この時代に活躍した、ある歌舞伎役者が病気によって下腿切断をした際に、当時の人形師が義足を作成したそうです。100年以上前の日本で、義足を作るという知識があったことが分かりますね。
しかし、このときに人形師が作った義足は履くことが出来ず、この歌舞伎役者は当時義足の技術が進んでいた、アメリカにオーダーして履ける義足を作り舞台に上がったという記録があります。
海外ではこの時代から、活用することが出来る義足の技術があったのですね。
実際に日本に義肢装具を作る工房が出来たのは、明治初期になってからです。
また、1980年代になって義肢装具士を専門職として本格的な教育がスタートしました。
そして、1987年に義肢装具士法が成立されました。
現在の日本において、義肢装具士の数が少ないのは、このような歴史的背景から見ると、先進国の中でも発展が非常に遅れている分野であることも原因の1つとなっています。
義肢装具士になるには?
義肢装具士は誰でもなれる職業というわけではありません。
高校卒業後に、いくつかのルートで受験資格を得る必要があります。
① 指定された養成校で学ぶ
② 大学、短大、専門学校で指定科目を履修後、2年間養成校で学ぶ
③ 外国の義肢装具士学校を卒業している場合、外国の義肢装具士免許を所持している場合は、厚生労働大臣の認定を受ける
この3つのルートのどれかで受験資格を得たのち、国家試験を受験することとなります。
養成校が現時点で国内には10校のみとなり、他の医療系資格を得る養成校と比べると非常に少ないです。
そして義肢装具士になるためには、国家試験を合格することが必須です。
義肢装具士の国家試験の合格率は、75%ほどで、誰でも受かるというわけではありませんが、国家試験の中では合格率が高い資格でもあります。
養成校でしっかりと受験対策をし、国家試験に臨めば合格する可能性が高い資格といえます。
義肢装具士はどこで働く?
義肢装具士の大半は、義肢装具を作成する一般企業や、日本義肢協会に所属する事業所で勤務をします。
義肢装具を制作する一般企業は、アスリート向けの義肢装具作成に特化しているところも多いです。
義肢装具士の約8割以上が義肢装具を制作するこのような職場で働くことになります。
こうした工房や事業所では、病院等への営業や、採寸、実際の制作など部門ごとに分担されていることが多く、希望の仕事を出来ることが少ない、という現状の悩みもあるようです。
それ以外の勤務先は、リハビリ病院などの医療機関や、養成校などの教育機関へ勤務する人も全体から見ると少ない割合ですがいます。
最近は、スポーツ選手の義肢装具にも注目がされています。
障害を持っているアスリートの多くは、義肢装具の技術が発展している海外に発注する選手も多いのですが、採寸や採型といった工程や、装着後の使用感など連携が取りやすいことから、国内での作成を望んでいる選手が多くいます。
また、国産素材や日本人の技術にも注目が集まっており、最近はスポーツ選手を支えるチームの一員として、試合などに同行する義肢装具士もいるほどです。
パラスポーツの分野では、今後ますます発展が期待できる職種ともいえます。
義肢装具の分野以外では、オーダーメイドのインソール作成などが流行しており、一般企業の靴メーカーなどで勤務する義肢装具士もいます。
オーダーメイドでインソールを作る義肢装具士は、一般企業の他、整形外科や整体院などで勤務する人もいます。
義肢装具士の収入はどれくらい?
義肢装具士の年収は約300万円~400万円という回答が多く、他の一般職と比べると平均的か、少し低い水準ともいえます。
月給は約18万円~25万円が平均的のようです。
しかし、どの職種にも言えることですが、勤続年数や経験年数が多くなるほど、収入アプも見込めます。
義肢装具士は、1人1人オーダーメイドで作る技法や、専門的なスキル、経験が重要な職種でもあるため、経験が重要と言える職種です。
経験別にみると5年目で約200万~300万、10年目で約300万~400万、10年目で約400万~500万、15年目以降で約500万~600万、15年以上になると約600万円以上の年収があるとなります。
一般企業や事業所よりも、医療機関のほうが収入が高い傾向もあるため、収入アップを目的とした転職を考える人もいます。
義肢装具士の将来性は?
義肢装具士の資格を所持して働いている人は、現在国内で5000人ほどと言われており、他の医療系資格を持った人と比べると、非常に少ない数といえます。
今までの義肢装具士というと、障害を持った人や事故にあった人の手足を補助する補助具の作成などが一般的でしたが、近年はパラスポーツの発展などで、義肢装具士が活躍する場も広がりつつあります。
中には、スポーツ選手に帯同するメカニストとして活躍する人がいたり、国産のアスリート向け補助具の作成なども注目されています。
パラスポーツで見ると、ただ走るだけでなく、泳いだり、スキーで滑ったり、ボート競技に使うもの、球技に使うものなど、その競技によって義肢装具や補助具が異なるため、それぞれのスポーツに合わせた補助具や義肢装具の開発なども進む未来ある分野です。
他にも、最新テクノロジーを駆使し、自動で動く義肢装具類や補助具などもあり、緻密な作業が求められ、IT技術との関わりが大きくなってきています。
ただ、このような最新技術を用いたものは、通常学んでいる義肢装具士の専門課程以外にも、IT技術やより専門的なメカニックな技法など、新しい分野での知識やスキルが重要となります。
一般的に使用できるまでのコスト面での課題など、研究対象が多岐に渡るにため、今後の義肢装具士が活躍するフィールドはより広がってくるといえます。
まとめ
義肢装具士は日本ではまだマイナーな職種であるといえます。
資格所持者も他の医療資格と比べると格段に少ないのが現状です。
パラスポーツの発展、オーダーメイドで作れる補助具の需要、高齢化社会が進むことや、生活習慣病の罹患者の増加などで、今後ますます需要が増えるともいわれている職種です。
収入は平均的といえますが、利用者との繋がりや、関わる人のQOLの向上によるやりがいを感じられる職種です。
興味がある人は、ぜひ目指してみるのはどうでしょうか。