現代社会は、さまざまな“心の問題”と向き合っていかなくてはいけない時代です。
心身ともに何不自由なく生活していた人であっても、環境が変わることで悩みを抱えることがあり、それが積もり積もって「うつ病」などの心の病に侵されてしまう可能性も否定できません。
大きな問題へと発展する前に、さまざまな心の問題に対して相談にのってくれる人(職業)のことを「心理カウンセラー」と言います。
悩みを抱える人の話を聞いたり・相談に乗ったりする人のことを指していますが、心理カウンセラーについて具体的な詳細をご存じの方も少ないのではないでしょうか。
今回は、この心理カウンセラーについて、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「心理カウンセラー」とは、どんな仕事をするの?
心理カウンセラー(相談員)とは、「カウンセリングの技法や心理学の知識を用いて、クライエント(相談者)の心の問題や悩みに向き合い、対話などを通じて心理的支援を行うスペシャリスト」のことを指しています。
現代社会では社会環境の複雑化に伴い、人間関係をはじめとして、さまざまなタイプのストレスに悩まされる人が増加しています。
そのため、“心の病”一歩手前の悩みや問題を抱える人も少なくありません。
それをずっと一人で抱え込んでしまうと「うつ病」などに発展し、生活することそのものが困難となってしまう可能性も高いのです。
心理カウンセラーは、こういった心の問題・悩みを聞き、それらを解決できるよう導いていくのです。
カウンセリングには2つの種類が存在する
“心の土台作り”とも呼ばれることがある心理カウンセリングには、大きく以下の2種類が存在します。
②治療的カウンセリング
それぞれ個別にご紹介していきましょう。
「開発的カウンセリング」とは?
心の不調というのは中々自分では気づきずらく、仮に不調を自覚していたとしても病院やクリニックに行って治療を受けようと考える人は少なくありません。
◆「病院に行ってる暇がない」
◆「ちょっと休めば治るだろう」
◆「心に不調があることを(自身が)認めたくない」
しかし、その不調をそのままにしておくと、うつの症状や睡眠障害……子どもであれば不登校などに繋がることもあります。
この「開発的カウンセリング」では、以下を目的としたカウンセリングが行われます。
◆心の健康維持・増進 など
尚、この開発的カウンセリングには、「コーチング」や「メンタルトレーニング」が行われることがあります。
●メンタルトレーニング:ストレスや緊張をコントロールして、潜在能力を発揮させるための訓練を行う
これらは、心の不調を訴える人に対してだけ行われるものではありません。
予防やパフォーマンス向上を目的としているため、例えば“企業の社員教育”であったり“スポーツトレーニング”などに導入・活用されることもあるのです。
治療的カウンセリング
これは、「臨床的カウンセリング」とも呼ばれています。
開発的カウンセリングは不調が深刻になる前の“予防”を目的としていたのに対し、治療的カウンセリングは心の問題が深刻になり“具体的な症状や行動が現れた時”に、治療のための支援を行うことを言います。
“具体的な症状や行動”というのは、例えば「摂食障害」や「ひきこもり」といったものです。
不調が表面化した場合は、必ず治療を行う必要があるため、こちらは医師などと連携しながら支援を進めていく必要があります。
そのため、専門的な知識と訓練が必要となってきます。
心理カウンセラーはどういうところで活躍しているのか?
心の不調というのは、教育の場でも仕事先でも関係なく、どこででも発生する可能性があります。
そのため、心理カウンセラーが必要とされるフィールドは非常に幅広く、さまざまな場所で活躍しています。
大別すると、以下のようになるでしょうか。
◆職場・企業
◆福祉
◆医療
◆司法
◆その他
こちらも、それぞれ個別に補足を加えていきます。
「教育現場」
教育現場で勤務する心理カウンセラーは、「スクールカウンセラー」とも呼ばれています。
スクールカウンセラーについては、以前に記事にしておりますので以下をご覧ください。
小・中・高・大学などの各学校において、子ども(未成年者)の心の問題に向き合い、時に保護者や教師などへ面談・助言・指導などを行うこともあります。
「職場・企業」
◆パワハラ・セクハラ
◆長時間労働・休日出勤
◆リストラ
など、働く人の多くがさまざまな悩みを抱えており、それが積もり積もって「うつ病」などに発展してしまいます。
「うつ病」が、社会問題へと発展した原因の一つとも言えるでしょう。
心理カウンセラーは、各企業やハローワークにて、働く人が抱える悩みや心の不調をサポートすることとなります。
これらは「産業カウンセラー」や「キャリアカウンセラー」と呼ばれることもあります。
「福祉」
福祉の活躍の場も非常に多いのですが、主に以下の2つに大別されるでしょうか。
◆高齢者施設:高齢者の心のケアや、介護をする家族の相談に対応する
児童から高齢者まで、相談対象の幅が非常に広いのも、心理カウンセラーの特徴の一つと言えるでしょう。
「医療」
医療も活躍の場は非常に広いです。
医療の中でも、もっともイメージしやすいのは「精神科」や「心療内科」ではないかと思います。
医師などと連携しつつ、心理療法的なケアやサポートを行います。
ただし、医療の働く場は「内科/産婦人科/小児科/整形外科/歯科/口腔外科」など、他にも多種多様に存在します。
病院などにお世話になる方の多くは、大なり小なり何かしらの悩みや不安を抱えているものです。
心理カウンセラーは、その患者の心理的なサポートを行い、時に家族などの相談にも対応しています。
「司法」
これも2つに大別することができます。
1つは「少年鑑別所/少年院/刑務所/警察署」などの、“非行”や“犯罪”などのトラブルを起こした人の心をケアし、社会復帰をサポートすることです。
そしてもう一つは「家庭裁判所」です。
こちらは、離婚等・法律問題に関わる心の問題などに対し、面接や調査などを行いサポートしていきます。
「その他」
例えば、以下のような施設が挙げられます。
◆保健センター
◆精神保健福祉センター
◆個人開業のカウンセリングルーム
◆いのちの電話 など
施設は違えど、やるべきことの基本はほぼ同じであり、相談者やクライエントの心理的なケア・サポートを行っていきます。
心理カウンセラーの現状や将来性はどんなもの?
上記でも記載した通り、「うつ病」は社会問題にまで発展しています。
「ストレスと戦い、どう向き合っていくか?」が問われている日本では、児童から高齢者まで老若男女関係なく心の病にかかる人が増え続けています。
このことから、現状はもちろん将来的にも、心理カウンセラーの需要は増加し続けていくものと言われているのです。
今後、心理カウンセラーの果たす役割はいっそう大きくなり、社会的地位も高まっていくものと考えられます。
また、2017年には心理カウンセラーに関わる初の国家資格として、「公認心理師」という資格が誕生しました。
心理学の資格としては、例えば「臨床心理士」などの民間資格ばかりでしたが、今後はさらに専門性が求められ、資格の幅も広がっていくのかもしれません。
最後にもう一つ。
この手の記事では再三申し上げておりますが、こういった“人との関り”が重要となる仕事では、「機械に仕事を取って代わられることはない」と言えます。
簡単な事務作業などは機械による自動化はより進んでいくでしょうが、少なくとも機械に“人の悩み相談を聞き、解決する力(技術)はまだない”のです。
もちろん今後はどうなっていくかは分かりませんが、少なくとも直近で“機械がカウンセリングをする時代が来ることはない”と断言できます。
人の心の問題を解決できるのは、人だけなのです。
まとめ
ストレス社会の現在の日本において、心理カウンセラーの需要は今後もどんどん高まっていくものと言われています。
ただ、“相談対象が幅広い=働き先は非常にある”ではありますが、それに反して「非正規雇用が多いなど、恵まれた状況とは言えない」のが現状でもあります。
とはいえ、2017年に心理カウンセラー初の国家資格が誕生したことや、今後の需要の高まりもあって、待遇はより良くなっていく可能性はあるかもしれません。
この点については未知数ではありますが、関心がある方は情報収集しておいて損はないのではと思います。
尚、今回は仕事内容や需要について記載しましたが、別の記事には「心理カウンセラーのなり方」「役立つ資格」「働き方」などについても詳しくご紹介していければと思います。