以前にご紹介した「社会福祉士」や「児童福祉司」など、現在の日本は「子どもと接する仕事」が増加しています。
≪社会福祉士についての記事は、以下参照≫
≪児童福祉司についての記事は、以下参照≫
そして、今回ご紹介する「スクールカウンセラー」も、未成年の子どもたちと深い関りを持つ仕事の一つです。
◆どうすればなれるのか?就職時に役立つ資格とは?
◆働き方について
◆他の似た職種との違いは?
◆現状や将来性について
この記事では、「スクールカウンセラー」という仕事について、詳しくご紹介していきたいと思います。
「スクールカウンセラー」ってどんな仕事なの?
「スクールカウンセラー」とは、その名の通り「学校で、生徒や教師たちの心のケアを行う仕事」のことを言います。
また、状況に応じて保護者に対しても面談を行うこともあります。
“いじめ問題が深刻化”や“不登校児童の増加”、そして“受験勉強による生徒の精神的な負担の増加(いわゆるプレッシャー)”などもあって、スクールカウンセラーは現代社会になくてはならない重要な職種の一つとなっているのです。
そして、スクールカウンセラーの具体的な業務内容は、以下が挙げられます。
◆コンサルテーション
◆研修
◆カンファレンス
◆アセスメント
順番に、その詳細をご紹介していきたいと思います。
「カウンセリング」
スクールカウンセラーのもっとも重要かつメインとなる業務が「カウンセリング=面談」です。
生徒・保護者・学校教員と面談を行い、面談相手の“ストレス解消”や“悩みの原因を解決”したりします。
面談を行う際にもっとも大切なことは、「相談相手の話にしっかりと耳を傾ける」ことです。
つまり「話す」ではなく、「聞く」ことが重要となってくるのです。
ちなみに、このカウンセリングの形態は学校によってさまざまです。
生徒や教員の自主性に任せている学校もあれば、定期的な面談を義務化しているところもあります。
「どういった方法で面談を実施するべきか?」
この点を、教員と考えるところからスクールカウンセラーの仕事は始まっているのです。
「コンサルテーション」
上記のカウンセリングが「相手の話に耳を傾ける」だったのに対し、コンサルテーションは「スクールカウンセラーから的確なアドバイスをする」ことが目的となります。
ただし、これは相談者の誰に対しても行う訳ではありません。
相談者の中には、「話すことで、ストレス解消ができたり・不明確だった悩みを自覚できることがある」からです。
つまり、コンサルテーションを必要とする人は、“対象者が明確な指示を欲しがっている状態”にある時に行います。
代表的な例としては、以下が挙げられます。
◆「保護者と子供の向き合い方」
◆「災害の後のPTSDケア」
上記のような場合、相談者はただ話を聞くだけ(カウンセリングのみ)で終わってしまうと、余計にフラストレーションを抱え込んでしまうことがあります。
人によっては、“家庭環境”や“児童間/教師間/児童・教師間”など、深刻な問題も含まれてくることがあるため、特に伝え方には注意を払っていく必要があるといえます。
「研修」
保護者であっても教師であっても、例えば「不登校児」や「発達障碍児道の心理」などのさまざまな理由で、「子どもとの向き合い方が分からない」という方もいらっしゃるかと思います。
分からないままの状態にしておくと、生徒との間に深刻なトラブルが発生する可能性もあります。
スクールカウンセラーは、研修や講演などを通じて、“学校生活の問題点を取り除いていく”という業務も行っているのです。
“研修や講演=学びの場”を設け、学校に関連する全ての人々が平穏に過ごせるように、さまざまな工夫を凝らしていくのです。
「カンファレンス」
「あるテーマについて、関係者が集まって話し合う場」のことを「カンファレンス」といいます。
“あるテーマ”と言えば……例えば、近年であれば2020年から蔓延している「新型コロナウイルス」についてなどが挙げられます。
(他にもさまざまなテーマが存在します)
学校におけるカンファレンスでは、医師や保健師といった各分野の専門家が参加することがあり、スクールカウンセンラーは“心理ケアのプロフェッショナル”として、彼らと連携しながらカンファレンスが有意義な機会になるよう準備しなければいけません。
ちなみに、実際のカンファレンスの最中は、基本的に“スクールカウンセラーも参加者の一人”となります。
「アセスメント」
「アセスメント=心理検査の総称」のことを言います。
これは生徒を対象として、例えば以下のような検査を行うことがあります。
◆「YG性格検査」
◆「発達障害の度合いを調べるための検査」
「なぜアセスメントを行う必要があるのか?」ですが、これは“生徒の個性に応じて、教職員は接し方を考える必要があるから”です。
尚、教員に検査結果を伝えるときには、“分かりやすく伝える=理解してもらう”ことが大切です。
専門用語を並び立てても、教師には伝わりません。
教員が正しく理解し、一人ひとりの子どもと正しく接することができるよう、伝え方にも一工夫が必要となるのです。
どんな働き方をするの?
基本的に“スクールカウンセラーは、一つの学校で勤務している訳ではありません”。
週に数回の限られた日数だけ学校に出勤し、必要な業務を行っていきます。
つまり「非常勤」ということであり、“学校=公務員として勤務している訳でもない”のです。
スクールカウンセラーの働き方は、大きく2つあります。
②他の仕事を掛け持ちして、「副業」として仕事をするパターン
②については、別の資格を所持していれば、「精神科医」「大学教授」「心理カウンセラー」などを本業として働き、決められた日数だけスクールカウンセラーの稼働をすることがあるのです。
ただ、近年は生徒・保護者・教員など、学校が関連する様々な問題が増加しており「スクールカウンセラー1本で頑張っていきたい」と考える人も増えてきています。
尚、お給料・勤務日数・福利厚生などについては、働き方によって大きく変化することとなります。
◆どこに勤務しているのか?
◆どんな資格を所有しているのか?
もちろん、独立開業して生計を立てている人もいるため、費用相場としてもひとまとめにご紹介するのが難しい状況です。
心理系の資格は多種多様なので、資格内容に応じて得られる専門知識や給料が異なります。
また、働く場所によっても求められる知識や給与なども変わります。
言い方を変えると、「働き方は多種多様であり、(ある程度)自分の意志で働き方を変えることができる」ということにもなります。
資格は所有しておいて損のない……というより仕事の幅が広がる重要なものなので、スクールカウンセラーを目指す人の多くはさまざまな資格取得のために勉強を繰り返しています。
せっかく取得した仕事を仕事を活かせないのでは宝の持ち腐れなので、自分に合った資格選び・仕事選びをすると良いかと思います。
スクールカウンセラーに必要な「資格」について
次に、スクールカウンセラーに必要な「資格」について、詳しくご紹介していきたいと思います。
なるために必要な資格とは?
結論を言うと、「スクールカウンセラーになるために、必須となる資格はない」です。
そのため無資格でも応募することはできる……のですが、ただ無資格のまま採用されることはほぼありません。
その理由は、“子ども・保護者・教師などの繊細な心の問題に対処していく必要があるから”です。
「資格を所持している=心理学の知識や実践力を証明できる」ため、資格を明確に提示できる方が「この人になら任せても大丈夫だろう」と相手も判断し、仕事を請け負いやすくなるのです。
持っていると役立つ資格とは?
「心の問題に対処していく必要がある=心理学のプロフェッショナルであるという証明」ができればいいため、必要な資格は必然的に“心理学に関連する資格”となります。
代表的なものを以下に挙げておきたいと思います。
◆公認心理士
◆社会福祉士
◆精神保健福祉士
【民間資格】
◆臨床心理士
◆メンタル心理カウンセラー資格
◆チャイルドカウンセラー資格
◆不登校訪問支援カウンセラー資格
取得の仕方はそれぞれで異なるため説明は省きますが、スクールカウンセラーとして勤務するのであれば、どれもこれも取得しておいて損のないものばかりです。
特に、【国家資格】として挙げた「公認心理士/社会福祉士/精神保健福祉士」、そして【民間資格】で挙げた「臨床心理士」は優先的に取得しておくべきものと言えるでしょう。
取得難度は高くはなりますが、業務の幅が各段に広がり、スクールカウンセラーはもちろんそれ以外の職種でも勤務ができる(就職にも有利となる)はずです。
また、上記でご紹介した資格以外にも、民間資格には数多くの心理系の資格が存在します。
大学に通わなくても、通信講座で学び取得できる資格もあるため、既に別の職業で働いている人も仕事と学業を両立して資格取得を目指せるパターンもあります。
資格の数に合わせて、取得方法も無数に存在するので、ぜひ自分に合ったやり方で資格取得を目指してみてください。
似た職種との違いは?
似た職業は数多いので、ここではもっとも違いを表現しやすい「社会福祉士」と「児童福祉司」との違いをご紹介していきたいと思います。
それぞれの仕事内容や働き方については、以下を参照ください。
≪社会福祉士についての記事は、以下参照≫
≪児童福祉司についての記事は、以下参照≫
まず、もっとも相談対象の幅が広く、就職先も多種多様に存在するのが「社会福祉士」です。
これは国家資格であり、相談対象は“病気・障害・貧困”などさまざまで、高齢者から児童まで多くの方々の相談に乗ることとなります。
対して、同じ「相談・支援を行い、的確なサポートに誘導する児童福祉司」ですが、こちらの相談対象は“未成年の子どものみ”となります。
必須となる資格は「児童福祉司任用資格」であり、各自治体が設置している「児童相談所」が勤務先となります。
つまり「公務員として勤務する」ということなのです。
最後に「スクールカウンセラー」ですが、これは必須となる資格はなく、どんな資格を所有しているかで勤務先は多様に変化します。
また、あくまで業務の対象は「学校に関連することのみ」です。
社会福祉士や児童福祉司の場合は、家庭問題(虐待など)に踏み込むこともあります。
しかしスクールカウンセラーのメインとなる業務は「学校で、生徒や教師たちの心のケアを行うこと」であるため、よほどのことがない限り、家庭問題にまで踏み込むことはありません。
(仮に踏み込むことがあっても、それは社会福祉士や児童福祉司など、別の職種が基本的に行うこととなる)
他の仕事でも同じことが言えますが、「名称が違う=業務内容は異なる」ということになります。
もちろん“必要な資格”や“踏み込める範囲”も職種によって大きく異なるため、例え似た名称であっても、名前が違うことにはきちんとした意味があるのです。
スクールカウンセラーの「現状」と「将来性」は?
上述でもお伝えした通り、スクールカウンセラーは基本的に「非常勤」であり、仮に「常勤」であったとしても、“1校につき1人のスクールカウンセラー”が基本となります(常駐しているケースは現時点では稀である)。
そのため、現在の日本では完全に浸透していない職業ともいえるでしょう。
しかし、結論を言うと「スクールカウンセラーの需要は伸びている」のです。
その理由は「教育の現場にまつわるトラブルは続出しており、解決策の一つとしてスクールカウンセラーが注目を集めているから」です。
現代の日本はさまざまな社会問題に見舞われています。
◆少子化の問題
◆核家族化の増加
◆モンスターペアレントの増加
◆新型コロナウイルスによる生活困窮者の増加 など
成人している大人ですら「毎日の生活を送ることで精いっぱい……」という状況である人も多く、そうなると精神的な余裕がどんどんなくなってしまいます。
それは、何らかの形で“子どもにも伝染”してしまいます。
そうなると、“いじめ/不登校/非行”などに走る子どもも増加してしまい、健全な子どもの育成から遠のくばかりです。
そもそも、異なる個性を持った少年少女が集団生活を営む以上、学校での問題をゼロにすることが非常に困難です。
生徒たちのストレスが、大人にも予想できない形で発露することは十分にあり得ます。
だからこそ、そのような時に、生徒はもちろん教員や保護者をケアする存在としてのスクールカウンセラーは強く望まれているのです。
このことから、スクールカウンセラーの重要性を見直す気運は高まっています。
そして「スクールカウンセラーの待遇を改善し、必要なときは誰もがすぐ相談できる態勢を作ろう」という声も生まれてきています。
すぐすぐに状況が改善することはないかもしれませんが、スクールカウンセラーの重要性は増しているため、今後はよりスクールカウンセラーにとって働きやすい環境が整備されている可能性は十分にあると言えるでしょう。
まとめ
スクールカウンセラーの需要は今後も増加し続けていくと考えられています。
そして、それに合わせてより働き方の改善もされていく可能性は高いと思われます。
将来性は明るく、目指す価値のある仕事だといえるでしょう。
また、現在の日本は“機械による自動化”が増加し続けています。
しかし、福祉関係のどの仕事もそうですが、スクールカウンセラーの仕事も機械にとって代わられることはありません。
なぜなら、この仕事は「子ども・保護者・教師の話を親身に聞き、心のケアを行うこと」だからです。
人の話に耳を傾け、適切なアドバイスをし、状況に応じて研修や講演を行う……。
“人”と向き合う仕事は、”人”にしかできません。
だからこそ、今後もなくなることのない仕事の一つであり「将来性は明るい」と言われるのです。
ただし、無資格ではなかなか仕事に巡り合うことはできませんので、さまざまな資格を取得する=勉強をしなければいけない仕事です。
また、子どもから大人まで“人の心に踏み込む仕事”であるため、繊細かつ重要な仕事で誰にでもできる訳でもありません。
この点だけは注意しておいた方が良いかとは思います。
もし「スクールカウンセラーという仕事に関心がある」という方は、ぜひ色々な情報を仕入れて知見を広げてみてください。
職に就くための方法・可能性は無数にあるので、調べた中から自分に合ったやり方でスクールカウンセラーを目指してみてください。