近年は、転職することがそう珍しいことではなくなりました。
昔は、一つの会社に長く勤務することが一般的であり、もちろん現代でも長く勤務した方が収入は年々増加する傾向にあります。
とはいえ、人間関係や仕事内容など、様々な理由で転職を検討される方もいらっしゃいます。
しかし……転職には多くの悩みや不安がつきものでもあります。
すぐに次の職場が見つかるだろうか……
次の職場に馴染めるだろうか……
看護の世界でも、こういった悩みや不安は尽きません。
それに、「看護師にとって、ベストな転職タイミングが分からない」や「そもそもベストなタイミングなんてあるの?」と感じる方もいらっしゃるかと思います。
実は、看護の世界は、1年を通して『良い転職時期』と『悪い転職時期』が存在します。
今回は、こういった看護師の転職について、お話をしていこうと思います。
転職を考える”本当の理由”
看護師の仕事は、激務と言われており、離職率も高い傾向にあります。
特に、現場で働く人たちが「辛い……」と感じてしまう理由に、下記4点が挙げられます。
人間関係
給与や待遇に対する不満
自信喪失
それぞれ、詳細をお話ししていきましょう。
転職理由その1:体力面
もちろん勤め先にもよりますが……特に病院に勤めている看護師は、夜勤・残業が続く・中々休みが取れないことが多く、生活リズムが整え辛いと言われています。
加えて、立ち仕事が多く、患者さんを介助したりなど力も必要とします。
また、高齢化の現代は、患者の数に対して看護師の数が足りておらず、一人ひとりの業務内容は非常に多くなっています。
このことから、「体力が続かない……」「この先もずっと続けていける自信がない」と、感じる方は少なくありません。
実際に、激務続きで体調を崩してしまう人もたくさんいるのです。
転職理由:その2:人間関係
「どこの会社でも一緒でしょう?」と感じる方もいるとは思います。
もちろん、どんな会社であっても人が会社を動かしている以上、人間関係は切っても切り離せないものです。
ただ、看護師はまだまだ女性の比率が多く、精神的・肉体的に疲れている方も多くいらっしゃることから、少々ドロドロとした職場環境であることが多いのです(もちろん勤め先によりけりです)。
同僚・先輩・上司などと良い人間関係が構築できず、それが退職を決めるキッカケとなることもあります。
それでなくても体力的にも厳しいと言われる中で、精神面でも我慢を続けていくと、やがてそのストレスは限界を迎えてしまいます。
自分の生活のために仕事をしているのに、仕事のために体を壊してしまっては本末転倒です。
人間関係でお悩みの方がいらっしゃれば、限界を迎える前に転職を検討するのも大切な一つの選択といえるでしょう。
転職理由その3:給与や待遇への不満
この理由の中でも特に不満を感じてしまうのは仕事量と給与が割に合わないという点です。
看護師は、基本給だけで見ると、他業種の同年代の収入量とさほど差がありません。
看護師の収入の要は、各種手当です。
特に、夜勤手当の存在が大きく、その他にも休日手当や資格取得手当など、様々な手当が用意されています。
もちろんキャリアを積み上げることでも、キチンと収入は上がっていきます。
ただ、それでもこれまでご紹介してきたような『辛い』と感じる点から、「もう少し給与を上げてほしい」と考える人も非常に多いと言われています。
転職理由その4:自信喪失
これは、特に新人看護師の人に多い退職理由です。
この仕事は、患者の命に関わる責任重大な仕事であり、毎日数多くの患者に関わっています。
業務に慣れていない新人看護師は、「ミスをしてしまったら……どうしよう……」と、不安や恐怖を感じてしまうことが少なくありません。
それは、患者はもちろん、医師や先輩スタッフに対しても抱く感情です。
自分の重大なミスが原因で、先生や先輩に迷惑をかけてしまったら……
不安は過度な緊張を生み、それが小さなミスを何度も犯してしまう原因となります。
それが毎日続けば「自分はこの仕事に向いていない」と感じてしまい、どんどん自信は失われていきます。
転職時期にタイミングってあるの?
どんな仕事にも共通して言えることですが、転職にはベストな時期が必ずあります。
それは、看護師も同じです。
結論から言うと、以下のタイミングとなります。
悪い時期:3月・12日
それぞれ、もう少し詳しくお話していきましょう。
転職に適した時期:1月・7月について
まず、医療業界のボーナスは、6月・12月となることがほとんどです。
そのため、ボーナスが支給される翌月の1月・7月が、採用募集が掛かりやすい時期となります。
ボーナス支給後に退職し、お金に余裕を持たせつつ少しリフレッシュ……その後ゆっくりと次の職場を探すと言った流れで、転職希望者が増加するのです。
病院側としては、離職者分の補充を行う必要があるため、求人数も必然的に増加します。
ちなみに、特に1月は求人数に反比例して競争率は低い傾向にあります。
この理由は、12月が業界全体で最も忙しい時期のため、その反動で「1月は少し休息を取りたい……」と考える人が多いからです。
もし「12月一杯での退職を」とお考えの方で早く次の職場を探したいと考えている場合は、年始1月からすぐに求人を探してみると、良い案件に巡り合える可能性が高まるかもしれません。
転職に適した時期:9月・11月について
9月は年末、11月は年明けや春先に向けて、採用活動が活発化する時期です。
特に9月は年末の人員強化に向けて、即戦力を採用したいと考える病院がほとんどです。
大量採用を行う病院も多いため、実務経験が豊かな看護師であれば、転職に適した時期と言えます。
転職に適さない時期:3月・12月について
12月は、上記でもお伝えした通り、業界全体で多忙な時期のため、退職に最も不向きな時期です。
仮に入職ができたとしても、先輩看護師も自分の業務で手一杯のため、十分なフォローが望めない可能性も高いのです。
そして、3月。3月というよりも、3月~5月頃にかけた春先と言ってもいいかと思います。
この時期は、新卒入社の関係で、求人数は減少傾向にあります(募集人員に満たない場合は求人を出している場合もある)。
また、5月は新人研修の関係で慌ただしい時期ですし、ゴールデンウィークの大型連休もあって動き出しも遅くなります。
その他の時期はどうなの?
上記でご紹介したタイミングは、あくまで「その傾向がある」というだけです。
もちろん、上記で挙げた時期以外でも、求人募集をしている病院はたくさんあります。
また、大手施設では毎年一定数の採用をすることがほとんどですが、小規模の診療所や個人クリニックなどは、退職者が出たタイミングで採用するケースが多く見られます。
「欠員が出たので、1枠だけ求人を募集する」という施設もあるため、もし早めの転職をお考えの方は、求人をこまめにチェックするといいかと思います。
転職”理由”って、どう伝える?
看護師が転職する本当の理由については、冒頭でお伝えした通りです。
しかし、退職時であれ次の職場の面接時であれ、退職理由を聞かれた時に本当のことをありのままに伝えては、相手に与える印象が悪くなってしまいます(仮に本当のことであったとしても、です)。
退職時・面接時で伝え方は異なるため、ここではそれぞれのパターンをご紹介していきたいと思います。
退職時の伝え方
「仕事がしんどいので、もう辞めます!」
退職の際に、ネガティブな退職理由を聞いてしまうと、当然聞く側としては良い気持ちにはなりません。
場合によっては引き止められるかもしれませんし、最悪口論になる可能性も出てきます。
「辞めるんなら、別に関係ないんじゃない?」と思う方もいるかもしれませんが、退職の旨を伝えてもその日すぐに退職できる訳ではありません。
退職するまでの間、不穏な空気の中で仕事をするのは大変ですし、(真意を見抜かれているかどうかはともかく)どうせなら円満退社で平穏に職場を去れればそれに越したことはありません。
ある程度、円満に退職できる(受理されやすい)事情としては、下記3つが挙げられます。
自身のキャリアアップのため
体調を崩してしまったため
それぞれ、詳しくお話していきます。
理由その1:育児や介護に専念するため
恐らく、最も受理されやすいであろう理由です。
出産・育児・親の介護など他者(家庭の問題)が関わってくる以上、多少「もう少しなんとかならないの?」と期間を引き延ばされることはあっても、完全に引き止められることは早々ありません。
仮に今現在で直面している訳ではなかったとしても、「先々に向けて準備をしなければいけないので……」と伝えれば、相手方も断ることはできません。
理由その2:自身のキャリアアップのため
例えば、下記のような理由が挙げられます。
今の職場では枠がない(空いていない)ポジションで、仕事をしていきたい
このように、「今の職場では得られない、新たな知識や技術を得られる何か」のために、転職をしたいと伝えるのも良いかと思います。
もちろん、人や状況にもよりますが、比較的転職を応援して送り出してくれる可能性が高い、前向きな理由となります。
理由その3:体調を崩してしまったため
ネガティブな理由にはなりますが、健康上の問題は他人にはどうすることもできません。
「自分の健康のことを考えて、休養させてほしい」となれば、相手方も引き止めることはできなくなります。
ただし、この時に職場に対する不満を言うのはNGです。
あくまで、自身の体調を優先したいという旨を伝えるようにしましょう。
転職(面接)時の伝え方
面接の際に、「どうして前の職場を退職されたのですか?」と退職理由を聞かれることは多いです。
この時に大切なことは、以下のような点です。
以前勤めていた施設・他者を否定する発言はしない
改善するために、自身がどういう行動をしてきたかを”具体的”に話す
一言でまとめるなら、ポジティブ(前向き)な発言をするということです。
面接官からすれば、“あなた”はこれから同じ施設で働く仲間なのです。
逆の立場で考えてみると分かりやすいことですが、「不平不満ばかり言う人と一緒に仕事をしたいと思うか?」ということです。
特に、以前の施設を短期間で退職した人の場合、面接官は以下のような点をより注意して確認しようとします。
仕事への向き合い方(意欲)はどうか
長く働いてくれる人かどうか
仮に、以前の職場環境において『自分に一切の非がない』場合であっても、誰か(何か)を否定することはNGです。
なぜなら、面接官は以前の職場環境(人間関係)のことなど知る由もないからです。
面接官にとって大切なのは、『今目の前にいる人が、どのような人物か?』です。
「協調性がなさそう」「他責性が強そうな人」「不平不満ばかり言う人」「コミュニケーションが取り辛そう」……このようなネガティブなイメージを持たれてしまうと、当然のことながら採用からは遠のいてしまいます。
重要なのは、過去の出来事ではなく、これからどうしていきたい(自分自身がどうなりたい)かです。
看護師の離職率ってどのくらい?
この記事の冒頭で、『看護師は離職率が高い傾向にある』と記載しましたが、実際に離職率はどの程度のものかをご紹介しておこうと思います。
他業種と比べてみると、以下のようになります。
出展:看護roo!-【2019年度】地域別・年代別データ 看護師の離職率と離職理由
平均11%であり、1年間に約10人に1人が退職しているという計算になります。
特に、以下の離職率が高い傾向にあります。
施設の規模が小さい病院
新卒の看護師
他業種と比べて極端に高い数値という訳ではありませんが、それでも1年間に約11%の人が退職をしています。
もちろん、退職理由は人それぞれです。
キャリアアップのためと前向きな理由もあれば、精神的・肉体的な疲れから退職してしまう人もいます。
ここで大切なことは、無茶をしないことです。
無茶とは、「頑張ったらできるという範囲を超えているもの」のことをいいます。
確かに、業務内容や職場環境に慣れるためには、ある程度の年月は必要です。
しかし、無茶をし過ぎて体を壊してしまっては本末転倒なのです。
特に新人看護師の方は色々なことを我慢しがちなので、心身ともに疲れやすいと言われます(新人看護師の退職率が高い理由の一つ)。
無茶をすることと無理をすることは、似ているようで意味が異なります。
もちろん環境によりけりではありますが、限界を感じるようであれば、転職を検討するのも一つの手段です。
まとめ
転職理由は人それぞれではありますが、基本的にはネガティブな理由による退職が多いと思われます。
『石の上にも三年』ということわざがありますが、だからと言って無茶をしてまで長く勤めようとしても、いずれ限界を迎えてしまうのは自分自身です。
もちろん、「合わないと感じれば、すぐに辞めたら良い」という訳ではありません。
早期退職者であれば、別の職場の面接官も大なり小なり警戒してしまいます。
結論、自分の体のことを理解できるのは、自分だけです。
状況に応じて、どうしていくかを前向きに考えていくのが一番かと思います。