保育所の形態も、時代の変化とともにその広がりを見せています。
その一つが「小規模保育園」です。
現在は“待機児童問題”の解消を加速化するための一環として、この小規模保育事業が進められていますが、従来の保育所とはどのような違いがあるのでしょうか?
今回は、「小規模保育園の特徴、メリット・デメリット」などについて、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「小規模保育園」とはなんなのか?
概要
これは、“0~2歳児を対象”とした、“定員6~19名”の少人数で運営される保育園のことを指しています。
定員5名以下の「家庭的保育」と、定員20名以上の従来の「認可保育園」との中間に位置するものです。
これまで、認可保育園の定員は“原則20名以上”とされていましたが、「子ども・子育て支援新制度」(2015年にスタート)で基準が緩和されることとなり、定員20名未満でも“認可事業”に位置づけられることとなったのです。
ちなみに、“認可=国や自治体に認められる”ことを意味しますが、認可されるメリットはなにがあるのでしょうか?
それは、「補助金や支援の対象となる」という点にあります。
これによって、運営の維持がしやすくなるというわけです。
認可された理由とは?
この背景には、「待機児童問題」が挙げられます。
待機児童のことを端的にご紹介すると、「保育園に入りたいのに、入れずに待機している子ども」のことをいいます。
待機児童は、特に都市部に多く存在します。
そのうちの約9割が“0~2歳児”とされており、保育園の拡充が求められていました。
しかし、上記でもお伝えした通り、認可保育園として認められるのは“定員20名以上”です。
20名以上の児童を預かる施設を創ろうと思うと、相応の広い土地が必要となります。
でも、都市部ではなかなか“広い土地を確保する”ことが難しく、大規模な保育園は容易に作ることはできません。
そこで、この立地問題を解決するために、“小さなスペースでも開園できる保育園”として制度化されたのが「小規模保育事業」なのです。
大規模保育園のように、園舎や園庭の整備に何か月も時間をかける必要はなく、一定の基準を満たせば既存のマンションの一室などでも開園が認められるため、短期間で開園することが可能となるのです。
ちなみに、待機児童数についてですが、これは厚生労働省にて統計が取られており、以下のようになっています。
◆利用児童数:151,362人
◆待機児童数:1,227人
≪1・2歳児≫
◆利用児童数:958,288人
◆待機児童数:9,603人
≪3歳児以上≫
◆利用児童数:1,627,709人
◆待機児童数:1,609人
≪全年齢の総計≫
◆利用児童数:2,737,359人
◆待機児童数:12,439人
数字をご覧の通り「1・2歳児」の待機児童数が、他よりも圧倒的に多くなっています。
特徴について
特徴としては、以下の3つが挙げられます。
「満2歳未満の乳児を保育する」
上記でご紹介した通り、圧倒的に「1・2歳児」の待機児童が多い点が挙げられます。
一般的な認可保育園は、0歳~5歳児(年度中に6歳となる児童)の乳児保育・幼児保育を行います。
対して、こちらでは乳児保育がメインとなります。
この点で、待機児童問題の解消が期待できるのです。
「家庭環境に近い環境で保育できる」
子どもの保育人数は「6~19人」と決められています。
そして、保育士の配置基準は一般的な保育園の配置基準よりも多く設定されています。
このことから“保育士と子どもが密接に関わる時間が長くとれる”というメリットが存在し、他の認可保育園に比べて、家庭環境に近い状態で“質の高い保育”を行えるようになるのです。
加えて、保育スペースは一般的な保育所よりも小さく、子ども一人ひとりに目が届きやすい環境にもなります。
「地域のニーズに合わせた保育を展開している」
これは、「地域型保育の小規模保育」に位置づけられています。
つまり、地域のニーズに合わせた保育を展開していることになるのです。
種類は、「A型」「B型」「C型」の3種類に分類されており、各施設の設置基準は、国が定める認可基準に沿って各自治体が決定しています。
(詳細は後述にて)
このことから、お子さんの状態や家庭環境に合わせて、自分たちに合った小規模保育園に通園させることが可能となるわけです。
「3歳」になったら、卒園後はどうなるの?
上記でも記載した通り、対象児童は「2歳まで」となります。
卒園したらどうするのでしょうか?
この事業には、卒園後の受け皿として「連携施設」を設けることが必ず決められています。
(連携先は「認定こども園」「認可保育園」「幼稚園」など)
基本的には、この保育園を利用していた子どもは、優先的に入園できるといわれています。
ただ、定員などの問題で希望した施設へ入園できない場合もあるため、事前に各市町村に確認を取ることが大切です。
「A型」「B型」「C型」の特徴とは?
次に、上項でも挙げた、種類についてのご紹介です。
「A型」「B型」「C型」に分類されており、それぞれで特徴が異なります。
以下にて、その違いを解説していきます。
「A型」について
まず、「職員数」は“保育所の配置基準+1名”であり、全員が「保育士免許」を取得していなくてはいけません。
定員数は「6人以上20人未満」であり、部屋面積は以下のように定義されています。
◆2歳児…1人当たり1.98㎡
「B型」について
「職員数」「定員」「保育室の面積」は、A型と変わりません。
何が違うのかというと、「職員の資格」にあります。
A型の場合は、職員全員が「保育士免許」を所持している必要がありましたが、B型は“職員の1/2が「保育士免許」を所持していればいい”ということになるのです。
「C型」について
「職員数」は「園児3人につき1人(補助者を置く場合は5人に2人)」となります。
そして、「定員」は“6人以上10人以下”であり、保育室の面積も“1人当たり3.30㎡”となります。
C型は、より家庭的な保育に近い形態となるのが特徴です。
また、職員は必ずしも「保育士免許」を所持している必要はなく、市町村が行う一定の研修を終了している「家庭的保育者」が働けるようになっているのが特徴です。
小規模保育園のメリット・デメリットとは?
この記事の最後に、小規模保育園に通園する上での「メリット・デメリット」について、ご紹介をしたいと思います。
「メリット」について
最大のメリットは、待機児童問題を緩和できるという点です。
「待機児童=お子さんが自宅にいる状態が続く」ということにつながります。
そうなれば、家族の誰かがお子さんの面倒を見なければいかず、他のことに手を付けられなくなります。
特に「仕事」です。
現在の家庭は、共働きであることが多く、共働きでなければ生活を維持することが困難な場合も増えています。
こういった際に、待機児童問題を解消できる小規模保育園が重宝することでしょう。
もう一つのメリットは、「一人ひとりの子どもに目が届きやすい環境にあり、きめ細やかで質の高い保育を実現できる」という点です。
上記でもご紹介した通り、小規模保育園の定員は「19名以下」です。
状況によって臨機応変にプログラムを組むことができるので、それぞれの子どもに合わせた保育がしやすくなると言えます。
これは、もちろん“働く側”にとってもメリットとなります。
大規模保育園のような業務に追われることがなく、落ち着いた家庭的な環境の中で、保育に集中することができるのです。
「デメリット」について
デメリットとしては、「子ども同士の人間関係の範囲が狭いこと」が挙げられます。
また、施設そのものも小さい場合がほとんどなので、もし仮にトラブルに発展した場合、距離感を取るのが難しくもなります。
加えて、“施設が広くない”という関係上、運動会などの大きなイベント(行事)が組めないため、若干盛り上がりに欠ける点もデメリットとして挙げられるでしょうか……。
総じて、「定員が少ない」「施設が狭い」という点が、デメリットに起因すると考えられます。
また、職員についても、「保育士としての業務負担が少ない」というメリットの反面、「行事の経験値や運営のスキルが身につきにくくなる」というデメリットも生じてしまいます。
乳児保育には、専門的な知識が必須であり、それは経験とともに蓄積されていくものでもあります。
しかし、規模が小さい保育園ほど、保育士の知識にばらつきが生じてしまう可能性があるのです。
「キャリアアップを目指したい」という人にとっては、なかなか成長の機会が見込めない場合があるため、注意が必要かと思います。
まとめ
以上が、「小規模保育園の特徴、メリット・デメリットのご紹介」となります。
待機児童は大半が3歳未満の低年齢児であることから、小規模保育は待機児童解消の切り札として、その活用は大いに期待されています。
また、待機児童は都市部に近づくほどその数が多く、しかし都市部では「施設を充実させる」ことが難しくもあるのです。
小規模保育園であれば、その問題を解消できるため、今度もますますその需要が高まっていくものと考えられています。
もし待機児童の点で悩まれている方は、ぜひ小規模保育園も選択肢の一つに加えてみてはいかがでしょうか。
ただし、メリットもあれば、デメリットも存在します。
必ずしも、良いことばかりではありません。
保育園に通わせるかどうかを決めるのは、確かに親(大人)です。
しかし、通園するのは子どもなのです。
ぜひ、子供の意見にも耳を傾けて、双方にとってプラスになる保育を目指してみてください。