介護用語には似たような言葉があり、それぞれで使う場面が異なったり、実はまったく別の意味だったりするものがあります。
「〇〇介助」も、その中の一つです。
介助には4つの名称があり、それぞれで意味が異なります。
特に、その中の一つである「臥床介助」は、介護の現場では頻繁に使用される言葉です。
今回は、それぞれの言葉の意味について、詳しくご紹介していきたいと思います。
そもそも「介護」と「介助」はなにが違うのか?
まずはじめに、「介護」と「介助」の違いからご紹介します。
両者は、どちらも介護の分野で頻繁に使用される言葉であり、どちらの言葉も法律による明確な定義が存在するわけではありません。
ただ、厚生労働省などでは概念的に「介護」を提供する手段として「介助」を使用しています。
介護とは、高齢者などのサポートを必要とする方の活動を支援することを通じて“自立”を目指す(実現する)ものです。
そして、それを実現する“具体的な手段”が介助であると捉えられています。
介護と介助には、それぞれ種類が存在します。
それが、以下です。
◆「身体介護」
◆「生活援助」
≪介助≫
◆「食事介助」
◆「排泄介助」
◆「入浴介助」
◆「歩行介助」
◆「移乗介助」
◆「更衣介助」
「介護」は利用者の自立を目指して行われるものであり、「介助」は基本的に介護を提供する手段のことをいいます。
意味合いが異なるため、混同して使用することがないよう、意味をしっかりと理解しておくことをオススメします。
「臥床」とはなにか?
これは、「がしょう」と呼びます。
辞書などでこの言葉の意味を調べてみると、「床につくこと」や「病気により寝込むこと」などと記載されています。
普段ほとんど耳にすることがない言葉ですが、介護の現場においてはよく使用されており、「ベッドなどに寝ること(起きている姿勢から、横になる姿勢に移行する)」という意味で使われます。
(体調の良し悪しは関係ない)
ちなみに、勘違いしやすいのが「臥位(がい)」や「離床(りしょう)」とは言葉の意味が違うということです。
前者は、寝る際の姿勢のことであり、「ベッドや布団の上で身体が横になっている姿勢」のことを指しています。
要するに、“臥床させた後の姿勢”のことであり、横になっている人が覚醒しているか・眠っているかは関係ありません。
そして後者は「臥床」の反対語……つまり、「ベッドや布団に横たわっている姿勢から起き上がること」を意味しています。
このとき、介助の有無は関係ありません。
介護士が介助をしていても、利用者自身が自力で起き上がっても、ベッドから起き上がることそのものを「離床」というのです。
臥位の種類について
上述の通り、横になった際の姿勢にはさまざまな種類があります。
例えば、以下があります。
◆「腹臥位」 :うつ伏せの状態
◆「側臥位」 :仰臥位の状態から左や右に90度体を傾けた姿勢
◆「半側臥位」 :仰臥位の状態から左や右に45度体を傾けた姿勢
◆「背殿位」 :背臥位をとった状態で、両膝を立てた姿勢
◆「半腹臥位」 :側臥位と腹臥位の中間あたりの姿勢
◆「屈曲側臥位」 :手足を抱え込むように丸くなった姿勢
病気や怪我などの何らかの理由で長時間の臥床が必要となった場合、こまめに体位を変更する必要があります。
長時間同じ姿勢のままでいると、「腰痛」や「褥瘡(床ずれ)」などを引き起こす原因となってしまうからです。
人によっては、適切な頻度で寝返りを打てない場合もあります。
その場合は、介助者による定期的な体位変換が必要となるのです。
また、利用者の状態や体調によって、適切な体位を選択することも重要となります。
長期化すると、どうなるのか?
病気や怪我の際、場合によっては、横になって安静にしておく必要があります。
しかし、この状態が長期化してしまうと、心身の機能が低下してしまう恐れがあります。
この身体・精神・認知機能の低下を総称して「廃用症候群(はいようしょうこうぐん)」というのです。
これは、安静を保ちすぎて活動量が極端に少なくなることが原因で引き起こされるものです。
発症してしまうと、自立生活を送れない「寝たきり」の状態に進行しやすくなり、さらに障害が悪化する悪循環が懸念されています。
廃用症候群は“安静を保ちすぎて活動量が極端に少なくなる”ことが原因で引き起こされるため、若い人であっても起こりうる可能性があります。
ただ、やはり高齢者の方が引き起こしやすい症状であることは確かです。
なぜなら、「加齢によって身体機能が低下する=心身の機能回復に時間がかかることが多くなる」からです。
そのため、
◆利用者にもできる限り自分の力で動いてもらう
◆適切な臥位を取ってもらう
◆定期的に体位交換を行う
など、介助する際の工夫が大切となります。
「4つの介助」について
怪我・病気など、さまざまな要因から体の自由が制限され、「介助」を必要とする方々がいます。
そして、冒頭でもお伝えした通り、介助と一言でいってもさまざまな種類が存在するのです。
この項目にて、それぞれの違いをご紹介していきましょう。
「臥床介助」とは?
これは、「横になる動作をお手伝いすること」を指しています。
後述で紹介する「就寝介助」もこの介助の一つにあたりますが、それ以外にも”寝たきりの高齢者がトイレやお風呂から戻ってきて、ベッドに寝かせる動作”も臥床介助に含まれます。
「起床介助」とは?
“起床”という名の通り、これは「朝起きるための準備をお手伝いすること」を指しています。
◆ベッドからの離床
◆寝巻きから普段着への着替えの介助
◆体調の確認
◆洗顔
◆排泄介助
◆口腔ケア
◆整容
など、「モーニングケア」と呼ばれる介助全般のことをいうのです。
「離床介助」とは?
これは、「ベッドから離れる際の介助」のことを指しています。
起床介助の体を起こす動作を離床介助ともいいますし、他にも“トイレ・入浴・食事の際にベッドから起こして誘導する”ことや、“手繋ぎでの介助であったり・車椅子への移乗介助”なども離床介助といいます。
「就寝介助」とは?
“就寝”という名が付いている通り、「夜に、寝るための準備をお手伝いすること」を指しています。
◆口腔ケア
◆入れ歯の洗浄
◆普段着から寝巻きへの着替え
◆服薬
◆ベッド臥床する際の介助
◆枕やクッションのポジショニング
など、寝るための一連の動作を総称した介助のことをいうのです。
職場によって使い方はさまざまである
基本的に、
◆「就寝介助」:夜の介助
◆「離床介助」:上記以外でベッドから起こす際の介助
◆「臥床介助」:ベッドに寝かす介助
となります。
(いうなれば、眠りに関係する介助かそうでない介助かに分けられる)
また、「起床介助には離床介助が含まれる」「就寝介助には臥床介助が含まれる」といった認識でも問題はありません。
ただ、上記のように意味合いが含まれる言葉もあり、加えて施設によって4語の使い方はさまざまとなります。
(施設によって独自の解釈をしていることがある)
職場が変われば言葉の使い方が変わる可能性もありますので、確認も兼ねて先輩スタッフに質問してみるのもいいかもしれません。
まとめ
介護に携わるなかで、「臥床」に関わる介助を行う機会はなかなかに多いです。
また、臥位の種類は数多く存在し、長時間の臥床にはリスクも伴います。
それぞれの意味をしっかりと理解し、利用者が安楽に過ごせる介助を提供できるよう意識してみてください。
そして、介助には4つの種類が存在し、その4語は施設によって使い方(意味合い)が異なる場合があります。
現場でのコミュニケーションはもちろん、記録を付ける際にも必要となりますので、施設ごとに正しい言葉の使い方を理解しておくようにしましょう。